絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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王都への道のり

log-019 出発進行

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…準備も終え、遂に王都へ向けて出発する日になった。

 この日、村に到着したのは推薦者用の…ハクロが乗車するため、より大きくなった専用の馬車。

 しかしながら、将来的に国のためになる子供たちを運ぶためなのか、ただの馬車ではない。

「うわぁ…凄い大きな…熊?え、これもう車じゃないじゃん」
「はっはぁ、坊主。甘いな。こいつは熊じゃねぇ、馬だ!!」
【どう見ても、馬じゃなくて熊なのですが…】

 がっはっはと笑うのは、この馬車の御者であるガンゴードさん。
 そしてその馬車の牽引となる存在が馬…いや、見た目がどう見ても8本足の熊のモンスターである。

 明かに、馬ではないのに馬車とはこれ以下に。

【グマアァァ!!】
「本人(?)も思いっきり名乗っているんだけど」
【あ、でも熊じゃないって言ってますね。えっと、『オラ、タゴホースのタゴサック』だって】
「そう、こいつの名前はタゴサック!!タコのように足がある馬のモンスターだ!!…あ、いや、そういえば嬢ちゃん、こいつの言葉分かるの?」
【私、モンスターですし】

 話を聞けば、一応馬のモンスターの一種『タゴホース』と呼ばれるものらしい。

―――
『タゴホース』
馬とタコが合体したような、奇妙な姿をしたモンスター。
足が多くなったことで悪路に強くなり、河や海を泳ぐ能力が向上し、どのような道も制覇しやすくなった。
ただし、足数が増えたが速度は下がっている。
また、極まれに上位種は馬頭ではなくなっており、牛だったり鳥だったりする。
―――

 そのタゴホースの上位種が、この目の前のタゴサックと名付けられた従魔のようで、一応きちんと印が付いている模様。

「というか、モンスターが馬車を牽引するの?」
「その通り。普通の馬と比較すると速度は落ちるが、確実に大切な子供たちは目的地まで送り届けられるように、戦闘力を有しているからな」
【グマママァァ!!】
【『おうよ、任せな坊主!!』と自信満々に言ってますよ】

 この世界、馬車は馬車でもこういうモンスターが牽引するタイプの馬車もそれなりにあるらしい。
 通常の馬と比較して、臨機応変に対応しやすく、確実に目的地まで送り届けられるように採用されるようだ。

 ただ、普通の馬車が無くなっているのかと言えばそうでもなく、そもそもこういうモンスターを手に入れるまでのほうが大変なのもあって、そう多くはない模様。

 そんな中で、王都へ向かう推薦者が搭乗する馬車は、確実に送り届けられるように、中々良いものを使うようになっているようである。

【ふむ…馬車ですか。私も、王都でバイト代わりにできるかも?】
「ああ、それは無理だ。こいつはしっかりと免許も必要でな、3年以上の実績と2年間の勉学と…まぁ、その他色々必要でな、バイト感覚ではできないぞ」

 ちょっと考えたようだが、あいにくその道はかなり厳しいらしい。
 そもそも、ハクロの容姿での馬車の牽引は絵面に問題しかないが…一部には需要がありそうか?


 とりあえず登場してみれば、大型の馬車というのもあって中は広い様子。
 荷物を運び入れ、両親や村の他の人たちとの別れを済ませ、出発する。

【グマァァァァァ!!】
 
 雄たけびを上げ、ずっしりとした動きで歩み始めるタゴサック。
 こうして無事に、王都へ向けての旅路が始まるのであった…



「ところで、実際に到着まではどのぐらいかかるの?」
「モンスターの牽引だから馬と違って寝ずに進むことも可能と言えば可能だが、休息は必要だからな。それでも、およそ4日ほどで到着する。あくまでもこれは、道中何もなければの話で、盗賊など出てきたら、その時間も追加されるだろう」
【グマァ!!】
【『血肉の処理が結構大変』…それ、完全に凄惨な光景になっていないですかね?】

…一応、過去数回は盗賊の襲撃を受けた経験はあるらしいが、それでも滅多に無いとのこと。
 こういう明らかにヤバそうな牽引モンスターを見たら、よっぽど切羽詰まっているような賊でもない限りは襲ってくることは無いらしい。

 確かに、普通はこんな異形の熊が引いている馬車よりも、普通の馬が引いている馬車のほうが、まだ襲う側としては安心感があるのか…見た目って、こういうところも大事なのかな?
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