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運命の結びつき
log-015 後始末は上の仕事で
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ざぁぁぁ―――…
音を立て、昨晩の入浴時の残り湯をかぶり、ハクロは身を清めていた。
ゴブリンロードの群れ及び率いていたゴブリンを討伐し終え、その場の片づけ及び簡潔にどういう状態だったのかまとめたものを冒険者たちに押し付け、全速力で家に帰ってきたのだ。
【…ふぅ、さっぱりしました】
可能な限り返り血などの体液を浴びないように動いていたが、その分、少々汗もかいていたので、これできれいさっぱり臭いも残らずに消えただろう。
あの場では気にしないようにしていたが、ゴブリンたちの集団はどことなく臭さもあり、身に沁みついたら嫌だったので全力で洗ったが…心配する必要はなさそうだ。
ぶるるるうぅっと全身を震わせて水分を飛ばし、綺麗に拭っていく。
ドライヤー…のような物はないが、行商人が来た際に、すっきり乾くのに便利だということで、温風が出る魔道具ももらっており、丁寧に全身を乾かす。
少しの間行えば、あっという間に乾ききった。
すぐに衣をまとい、外に出てみれば太陽が昇ってきたころ合いのようで、周囲が明るくなりつつある。
さくっとジャックの家に入れば、朝早くから朝食を準備していた彼の母親がいたので、少し手伝って朝食を丁寧に机に並べていく。
蜘蛛部分の体格の関係上、普通ならば動きにくい人に合わせた家の中だが…こうやって過ごしている間にも少々コツをつかみ、無理やり体を細めて動きやすくするコツを得た。
また、中から動くだけではなく、外に回って窓から入る手段もあり、問題は無いだろう。
いや、絵面的な部分があるだろうが…既に、家族も慣れたものである。
そんなことはさておき、移動し、彼の部屋の中に入り込めば、まだ寝息を立ててベッドで寝ている姿を見ることができた。
【どうにか、この光景を見るために間に合いましたね…相手が弱くて、ラッキーでした】
もうちょっと手ごわい相手だったら、この時間に間に合わなかっただろう。
そう考えると、まだ弱いゴブリンたちで良かったと思える。
音を立てないように、下手に起こさないように気配を消しつつ、ベッドで寝ているジャックの体に糸を少しひっかけ、そのままそっと抱え込む。
【---ああ、本当に良いですね、愛する人がいるという実感は】
力の差ゆえに、加減を間違えれば間違いなく、失われてしまうであろうこの命の重み。
そんな馬鹿をやらかす気はさらさらないが、群れの討伐時に少しばかり暴れていた反動なのか、無性にジャックを実感したくなり、こうやって抱きしめるのだ。
思えば、あのゴブリンもゴブリンで、ある意味哀れな存在だったのだろう。
いくら力を持とうとも、愛するものを知らないがゆえに弱く、脆く、そして空虚なものだった。
それと比べてみれば、いかに自分がどれほど恵まれているのか、改めて思うのだ。
【ジャック、私の大事な番…ああ、いるだけで、本当にいとおしく…】
ここにいるという実感が、とてつもなくたまらないモノ。
何故ここまで求めてしまうのか、実はちょっとわからない部分もある。
番として大事なのはわかるが、それ以上にもっと根本的な部分で、彼を求めている。
愛するのはわかっているが、その愛の中にさらなる重い愛があるというのに、全てを出しきれていないような気がするのだ。
何故なのかはわからないが…今の自分よりも、もっと遠いどこかで、何かがあったのだろう。
それゆえに、ここまで狂おしいほど求めてしまうのかもしれないが…そんな事情はどうでもいい。
今の彼女にとって、何よりも大事なのがジャックという存在。
失いたくはなく、もしも無くせば…自身も、後を追ってすぐに消えるだろう。
【大事な、大事な番…いえ、それ以上にもっと愛する者。あなたへの愛が無ければ、もしかしたら…どこかで、私は狂っていたのかもしれないです】
いや、既に色々と遅い様な気がしなくもない、とツッコミを入れる人がいるだろうが、あいにくならばこの場には存在していない。
そのため、ジャックが目覚めるまでハクロはその寝顔と寝息を存分に感じ取りまくるのであった…
「んにゅ…ふわぁ…んー、おはよう、ハクロ…って、何で、朝からいるの」
【おはようございます、ジャック。朝食の準備ができたので、起きるまでちょっと入らせていただきました】
「…起こしに来たとか、じゃなくて起きるまでって…」
「…それで、今回のゴブリン共に関しての報告は、以上になるのか」
「はい、我々が偵察で得た情報…だけのはずでしたが、結果として群れは全滅し、周辺への脅威は去りました」
…ハクロがジャックを堪能していたその頃。
カルク領内の都市カルクリアンにあるギルドの内部にて、ギルドマスターの前で、冒険者パーティ『輝きのラッパ』のものたちが報告を終えていた。
元々は、領内に出現したゴブリンロードばかりの群れの討伐前に行う調査だったはずだが、あげられた報告は群れの全滅に関してのもの。
いったい何をどうすればそんなことになるのだとツッコミが入りつつ、詳細な情報が報告されたのである。
「…つまり、偶然にもナモアリ村の例のモンスターもこの状況を察知して、やってきたついでに脅威になるならということで、全滅させたということか」
「そうなります。ついでに、その群れを発生させた元凶に関しても何かを知ったようで、その場で手早く木を切り倒して薄皮を剥いて、ざくっと文字を掘って帰還しました」
「可能であればここで直接話を聞きたかったが…それでも、十分すぎるほどの内容だ。だが、群れに関しての話が…まさかの、人為的なものだということか」
細かい部分の正誤性は後からいくらでも確認することができるが、見逃せない情報があった。
今回のゴブリンロードの群れ、色々とおかしな部分があったが、どうやら人為的なものの可能性が高いということが書かれていたのだ。
その群れを率いていたのは、見た目は通常種のゴブリン。
だがしかし、知能や他能力も通常とは比較にならないとされつつ…
「…それで、解体して取り出した魔石が、こちらになります」
「これが、そのゴブリンのものか」
…机の上に出されたのは、モンスターであれば有している魔石と呼ばれるもの。
普通は宝石のような物でありつつ、能力が高いものほど美しいものになっているという。
だがしかし、目の前に転がされていたのは、ゴブリンの魔石と言って良いかどうか…いや、むしろ、魔石とすらいえないようなものである。
「他の臓器とか、そういうものではないだろうな?」
「間違いなく、ゴブリンならば取れる箇所に存在しており…他の内臓とはことなり、これが出てきたものになります」
出されたのは、宝石のような石ではなく、内臓のような生々しい色合いをした脈打つ物体。
既にゴブリン自体は命を失っているはずなのに、どくどくと脈を打っており、色合いが全体的に不揃いで不気味なものになっている。
「人為的な物…報告によれば、どうもゴブリンが発していた『あのお方』と呼ばれるものに力を貰い、あのような群れを形成できたと言うことです。残念ながらその元凶というべきものに関しての情報は得られていなかったようですが…彼女の所感では【どこか、遊びのようなものを感じるから…多分、知っているというだけで、本当はその詳細を教えてもらっていない、使い捨てのもの扱いになっているのかも?】とのことです」
何者かがゴブリンに力を与え、あのような群れを作り出した。
今回はまだ弱い方で良かったが…これが、もっと別のモンスターなどに広がれば、厄介なことになるのが目に見えるだろう。
「ぬぅ…これは難しい問題だな…」
ひとまず、情報を取りまとめ、上へ報告する必要があるだろう。
ギルドだけでの問題ではなく、より幅広いものに影響を与える可能性があるのだ。
今後は物凄い厄介事としてポンポン上がってきそうだと、嫌な予感に報告を受けたギルドマスターだけではなく、その場にいた全員が思うのであった…
「ところで、ダンデーム。今回の調査で出会ったというが、彼女に関してはどのような印象を抱いた?」
「ああ、例の蜘蛛の彼女ですか。ええ、話す感じとしては優しく、人の中にいても違和感なく溶け込めそうなものでしたが…何やら愛する人がいるようで、その人物に危害を加えられそうになったら…おそらく、今回のゴブリンたちの末路のように、いや、それ以上にヤバいことをやらかしてもおかしくはないものだと思いましたね」
「そこまで言うものなのか…なら、今後も引き続き、機嫌を損ねないようにしたほうが良いだろう」
「次に会う機会があるかはまだわかりませんが…」
音を立て、昨晩の入浴時の残り湯をかぶり、ハクロは身を清めていた。
ゴブリンロードの群れ及び率いていたゴブリンを討伐し終え、その場の片づけ及び簡潔にどういう状態だったのかまとめたものを冒険者たちに押し付け、全速力で家に帰ってきたのだ。
【…ふぅ、さっぱりしました】
可能な限り返り血などの体液を浴びないように動いていたが、その分、少々汗もかいていたので、これできれいさっぱり臭いも残らずに消えただろう。
あの場では気にしないようにしていたが、ゴブリンたちの集団はどことなく臭さもあり、身に沁みついたら嫌だったので全力で洗ったが…心配する必要はなさそうだ。
ぶるるるうぅっと全身を震わせて水分を飛ばし、綺麗に拭っていく。
ドライヤー…のような物はないが、行商人が来た際に、すっきり乾くのに便利だということで、温風が出る魔道具ももらっており、丁寧に全身を乾かす。
少しの間行えば、あっという間に乾ききった。
すぐに衣をまとい、外に出てみれば太陽が昇ってきたころ合いのようで、周囲が明るくなりつつある。
さくっとジャックの家に入れば、朝早くから朝食を準備していた彼の母親がいたので、少し手伝って朝食を丁寧に机に並べていく。
蜘蛛部分の体格の関係上、普通ならば動きにくい人に合わせた家の中だが…こうやって過ごしている間にも少々コツをつかみ、無理やり体を細めて動きやすくするコツを得た。
また、中から動くだけではなく、外に回って窓から入る手段もあり、問題は無いだろう。
いや、絵面的な部分があるだろうが…既に、家族も慣れたものである。
そんなことはさておき、移動し、彼の部屋の中に入り込めば、まだ寝息を立ててベッドで寝ている姿を見ることができた。
【どうにか、この光景を見るために間に合いましたね…相手が弱くて、ラッキーでした】
もうちょっと手ごわい相手だったら、この時間に間に合わなかっただろう。
そう考えると、まだ弱いゴブリンたちで良かったと思える。
音を立てないように、下手に起こさないように気配を消しつつ、ベッドで寝ているジャックの体に糸を少しひっかけ、そのままそっと抱え込む。
【---ああ、本当に良いですね、愛する人がいるという実感は】
力の差ゆえに、加減を間違えれば間違いなく、失われてしまうであろうこの命の重み。
そんな馬鹿をやらかす気はさらさらないが、群れの討伐時に少しばかり暴れていた反動なのか、無性にジャックを実感したくなり、こうやって抱きしめるのだ。
思えば、あのゴブリンもゴブリンで、ある意味哀れな存在だったのだろう。
いくら力を持とうとも、愛するものを知らないがゆえに弱く、脆く、そして空虚なものだった。
それと比べてみれば、いかに自分がどれほど恵まれているのか、改めて思うのだ。
【ジャック、私の大事な番…ああ、いるだけで、本当にいとおしく…】
ここにいるという実感が、とてつもなくたまらないモノ。
何故ここまで求めてしまうのか、実はちょっとわからない部分もある。
番として大事なのはわかるが、それ以上にもっと根本的な部分で、彼を求めている。
愛するのはわかっているが、その愛の中にさらなる重い愛があるというのに、全てを出しきれていないような気がするのだ。
何故なのかはわからないが…今の自分よりも、もっと遠いどこかで、何かがあったのだろう。
それゆえに、ここまで狂おしいほど求めてしまうのかもしれないが…そんな事情はどうでもいい。
今の彼女にとって、何よりも大事なのがジャックという存在。
失いたくはなく、もしも無くせば…自身も、後を追ってすぐに消えるだろう。
【大事な、大事な番…いえ、それ以上にもっと愛する者。あなたへの愛が無ければ、もしかしたら…どこかで、私は狂っていたのかもしれないです】
いや、既に色々と遅い様な気がしなくもない、とツッコミを入れる人がいるだろうが、あいにくならばこの場には存在していない。
そのため、ジャックが目覚めるまでハクロはその寝顔と寝息を存分に感じ取りまくるのであった…
「んにゅ…ふわぁ…んー、おはよう、ハクロ…って、何で、朝からいるの」
【おはようございます、ジャック。朝食の準備ができたので、起きるまでちょっと入らせていただきました】
「…起こしに来たとか、じゃなくて起きるまでって…」
「…それで、今回のゴブリン共に関しての報告は、以上になるのか」
「はい、我々が偵察で得た情報…だけのはずでしたが、結果として群れは全滅し、周辺への脅威は去りました」
…ハクロがジャックを堪能していたその頃。
カルク領内の都市カルクリアンにあるギルドの内部にて、ギルドマスターの前で、冒険者パーティ『輝きのラッパ』のものたちが報告を終えていた。
元々は、領内に出現したゴブリンロードばかりの群れの討伐前に行う調査だったはずだが、あげられた報告は群れの全滅に関してのもの。
いったい何をどうすればそんなことになるのだとツッコミが入りつつ、詳細な情報が報告されたのである。
「…つまり、偶然にもナモアリ村の例のモンスターもこの状況を察知して、やってきたついでに脅威になるならということで、全滅させたということか」
「そうなります。ついでに、その群れを発生させた元凶に関しても何かを知ったようで、その場で手早く木を切り倒して薄皮を剥いて、ざくっと文字を掘って帰還しました」
「可能であればここで直接話を聞きたかったが…それでも、十分すぎるほどの内容だ。だが、群れに関しての話が…まさかの、人為的なものだということか」
細かい部分の正誤性は後からいくらでも確認することができるが、見逃せない情報があった。
今回のゴブリンロードの群れ、色々とおかしな部分があったが、どうやら人為的なものの可能性が高いということが書かれていたのだ。
その群れを率いていたのは、見た目は通常種のゴブリン。
だがしかし、知能や他能力も通常とは比較にならないとされつつ…
「…それで、解体して取り出した魔石が、こちらになります」
「これが、そのゴブリンのものか」
…机の上に出されたのは、モンスターであれば有している魔石と呼ばれるもの。
普通は宝石のような物でありつつ、能力が高いものほど美しいものになっているという。
だがしかし、目の前に転がされていたのは、ゴブリンの魔石と言って良いかどうか…いや、むしろ、魔石とすらいえないようなものである。
「他の臓器とか、そういうものではないだろうな?」
「間違いなく、ゴブリンならば取れる箇所に存在しており…他の内臓とはことなり、これが出てきたものになります」
出されたのは、宝石のような石ではなく、内臓のような生々しい色合いをした脈打つ物体。
既にゴブリン自体は命を失っているはずなのに、どくどくと脈を打っており、色合いが全体的に不揃いで不気味なものになっている。
「人為的な物…報告によれば、どうもゴブリンが発していた『あのお方』と呼ばれるものに力を貰い、あのような群れを形成できたと言うことです。残念ながらその元凶というべきものに関しての情報は得られていなかったようですが…彼女の所感では【どこか、遊びのようなものを感じるから…多分、知っているというだけで、本当はその詳細を教えてもらっていない、使い捨てのもの扱いになっているのかも?】とのことです」
何者かがゴブリンに力を与え、あのような群れを作り出した。
今回はまだ弱い方で良かったが…これが、もっと別のモンスターなどに広がれば、厄介なことになるのが目に見えるだろう。
「ぬぅ…これは難しい問題だな…」
ひとまず、情報を取りまとめ、上へ報告する必要があるだろう。
ギルドだけでの問題ではなく、より幅広いものに影響を与える可能性があるのだ。
今後は物凄い厄介事としてポンポン上がってきそうだと、嫌な予感に報告を受けたギルドマスターだけではなく、その場にいた全員が思うのであった…
「ところで、ダンデーム。今回の調査で出会ったというが、彼女に関してはどのような印象を抱いた?」
「ああ、例の蜘蛛の彼女ですか。ええ、話す感じとしては優しく、人の中にいても違和感なく溶け込めそうなものでしたが…何やら愛する人がいるようで、その人物に危害を加えられそうになったら…おそらく、今回のゴブリンたちの末路のように、いや、それ以上にヤバいことをやらかしてもおかしくはないものだと思いましたね」
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