絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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運命の結びつき

log-010 悪事千里を走る、噂は…どのぐらいなの?

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…人の口には戸が立てられないというように、噂話というのは知らずのうちに広まっているモノ。
 それが報告として届けられていても、実はとっくの前に入っている情報だったりするものだ。


「…とはいえ、報告のほうがより詳細だったりするが…厄災種か」
「これまた厄介なものが、田舎に出てきましたな」
「神獣種であればよかったが…それ以上に、ヘビーなものとは」

…ナモアリ村があるカルク領。
 その領地の属する国、グラビティ王国の王都にある王城内部にて、国王モンドが報告書を読んでつぶやくと、臣下たちが答えた。

 カルク男爵から届けられた厄災種に関する報告だが、そのモンスターに付いての噂は既に、この王都の中でも出つつあった。

 曰く、辺境の地に突如として出てきた、人の姿を持ったモンスター。
 蜘蛛の体を持ちつつも、麗しい女性の見た目をし、たった一人を愛している姿が見られると。


「学習能力も高く、教会で子供たちの教師にもなるか…夜間の警備や害獣退治など、やっていることは利益となるし、有能な存在でもあるが」
「厄災種となると、扱いが本当に厳しいものになる」

 上に立つものだからこそ、どのようなものが国に影響を及ぼすのか知識を蓄積する必要があり、その中からすぐに厄災種がどのようなものなのか探り当て、理解する。

 下手に扱わず、逆鱗に触れることなく…うまいことできれば、神獣種のように富をもたらす。

 しかし、それでもどこでも馬鹿は生じるものであり、下手をすれば大災害をもたらす危険性もあるのだ。


「王都での噂になっている上、すでにいくつかの貴族が情報を得ているだろう」
「賢いものであれば良いが…残念ながら、愚かなものもいるのはどうしようもない」

 珍しいモンスター、美しい女性の姿などの情報だけで、好奇心で見るだけならまだしも、手中に収めようと企む馬鹿が出ているのは防ぎようのないこと。
 馬鹿一人だけが撃沈してくれればそれで問題は無いが、厄災種はそうもいかず、周囲を盛大に巻き込む可能性だってあるのだ。


「それで下手に箝口令を引けば探ろうとする輩もおり、他国でも既に情報を得て…何ともまぁ、面倒なものが出てきたものだ」

 上に立つものだからこそ、全てを守るために最低限の手は打たねばならない。
 だが、そういう時に限って排除したい馬鹿は、予想の斜め上の方法や、結束することでより大きな力を発揮することもあり、完全に防げない可能性もある。
 国を滅亡させたくなければ、事前に全ての首を落とすという手もありだが…そうやすやすと行えないのが、何とももどかしいことか。

「念のために、影を付けろ。厄介事が起きる前に先行して情報を集めるようにしなければいけないだろう」

 せめてもの救いは、厄災種の扱い方に関しては、歴史が方法を示しており、ソレに学んで動くべきである。
 愛を失えば狂うようなものであれば、その愛を守ればいい。
 

 愚者が失わせないように、賢者が先回りして動き、滅亡を引き起こさないようにすればいいのだ。

「既に他の厄災種で滅びた例があって、良かったというべきか、それともそれだけの歴史があったことに恐怖すべきか…何とも言えぬな」
「それだけの滅びがあったからこそ、今日の対策につながり、良い方だと思えばいいでしょう」
「我々が誤った手段を取らないように、過去の犠牲を無駄にしないように、警戒もできるのも良いでしょう」

 過ちを二度と、繰り返してはいけない。
 だからこそ、その過ちが起きる前に防げるものは防いだ方が良い。
 上に立つものだからこそ率先して動き、滅亡を避けるために動くのであった…


「…しかし、報告では絵姿なども送られてきたが、確かに美しい姿だな」
「これは、馬鹿どもが目を惹かれるな…美しきバラにこそ、とんでもない棘があるというのに」
「それで痛い目を見ても、何も学習しない馬鹿はいるのが、おかしな世の中だ」
「「「まったくもって、その通りなのがな…」」」

…人の性質というのは、下手したら厄災以上に厄介なものなのかもしれない。
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