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運命の結びつき
log-007 変装するは我にあり
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…この国の貴族たちが、身バレしないように義務付けられる変装。
その変装技術はこの国の中央の学び舎にて獲得できるものであり、やれる範囲は幅広い。
ある時は気のいい飲み屋のおっさん、ある時は寸胴鍋を抱えた料理人、またある時は井戸端会議を行うおばちゃん等、多種多様。
何故ここまで、変装の幅が広く、そもそも変装を義務付けられているのか。
表向きの理由としては、地位がばれることなく、ありのままのその日常を視察できるから。
隠されている…ように見えて、大抵のこの国の貴族たちが知っている真実としては、初代国王が遊びに出掛ける際によく変装しており、いっそ臣下たちにも義務付けることでより普通に城を抜け出せるようにしていたというものがあるだろう。
だがしかし、そのことに文句を言うものはいなかった。
身分がばれないようにするのは中々スリルがあり、なおかつ息抜きになったり、貴族の世界では見えないものが見えてくるなど、何かと利点が多かったからだ。
もちろん、警備の面や悪用に思考を向けてしまうものなどの問題も出てはいたが…そのあたりはまだまだ、改善の余地があるだろう。
とにもかくにもそんな理由がありつつ、本日このナモアリ村があるカルク領を治めるカルク男爵もまた、変装して訪れていた。
男爵の姿自体は中々村民がお目にかかれるものではないが、変装によってより自然に溶け込んだほうが都合が良いだろう。
事前に通知をしておくのも、いざという時に正体を明かして動きやすくするというのもある。
さて、そんな男爵が本日選択した変装としては…
「らっしゃいらっしゃい!!珍しい商品を仕入れてあるよ~」
「どばっとここで、普段使わない分を出してみよう!!」
…貴族御用達、変装用連れ添い人を利用した、流れの行商人であった。
変装するにしても、一人では普通に怪しいだろう。
そのため、こういう変装のための者たちが存在しており、こういう時に雇用して使われているのである。
もちろん、ただの変装用の小道具扱いな者たちではなく、護衛も兼ねており、護身術は優れている。
変装して紛れ込むのは良いのだが、それでも例え治安が良い場所でも万が一の可能性もあり、こうやってある程度の警護の人数を入れておくのだ。
そして本日の目的はこの村の視察でもあるが…メインは、村人たちの生活ではない。
いつもならば、今年度の税としてはどの程度が適正なのか見たりするのでそれも頭の隅に置いておくのは忘れないが…別のものが気になっているのだ。
(…村人たちが買うのは良いが、ここでは例のモンスターが姿を見せないな)
(立ち話をしたところ、どうやら今の時間は教会のほうにいるようです)
(ふむ、ならば寄付を行うことも兼ねて、向かってみるか)
村の広場では姿を見かけなかったが、どうやら今は教会のほうで子供たちと一緒にいるらしい。
そう、本日の目的はそのモンスター…今はハクロという名を貰っているという、下半身が蜘蛛で上半身が人型のモンスターの姿を見ることである。
好意的な存在ならば、普通のものであれば気にしなくてよかっただろう。
村長からの届け出を確認して、しかるべき機関に登録をお願いするだけで、問題はなかった。
だがしかし、その外見の特徴から、ある可能性も浮上しており、己の目で確認してみようと思い、本日の視察日程が組まれたのである。
広場から移動し、教会へ着き、男爵…ここでは流れの行商人ゲルハドとしての変装をしている彼は、中へ入った。
「もしもし、お邪魔しますよ」
「あ、誰?」
「何か変な人が入ってきたよー?」
「こら、変な人と言わない。どうやら、商人さんたちのようだね」
ちょうど今、子供たちの学びの時間だったのか、中々の人数が既にいた。
そして、その中には…
【教会に、何か御用でしょうか】
前に歩み寄り、人の言葉のようで人とは違うような声を発する女性…例の、ハクロと呼ばれるものがいた。
(なるほど、彼女か…)
ほぼ間違いないだろう。
事前に聞いていた情報通り、下半身に蜘蛛の体があり、そこに腰を掛けるようにして美しい女性の姿を持ったモンスターである。
ここでの生活に合わせているのか人の衣服を…教会だからか修道服のようなものを身に着けており、人の容姿の部分だけを見れば、麗しきシスターと言っても過言ではない。
だが、人ならざるものとしての蜘蛛の部分もしっかり見えており、その背中には従魔契約による印が見えている。
領主として、この領の外に出るモンスターで様々なものを見てきたことはあった。
だがしかし、彼女はそれとは異なり、確実に一介の魔物とはかけ離れていかのような印象を持つ。
(…それに、蜘蛛部分が白い毛並みも持つか…もう少し、見てみなければわからないか)
「…ああ、いえ、大した用事ではなく、教会に寄附をしようとしておりまして…そのついでに、よろしければ子供たちの様子を見ていても良いでしょうか?今時の授業の流行りで必要なものを、そろそろ入荷しようと思っておりまして、参考になればと」
【なるほど…どうしましょうか、神父様?】
「問題は無いと思うよ。どうぞ、お入りください」
観察を続けるために、子供たちのことを上げつつ、中へと入りこむのであった。
(…それにしても、本当に美しい姿をしている。ある可能性を持つとはいえ、そうでなくとも並のモンスターではないか…従魔契約が結ばれたモンスターで良かったか)
その変装技術はこの国の中央の学び舎にて獲得できるものであり、やれる範囲は幅広い。
ある時は気のいい飲み屋のおっさん、ある時は寸胴鍋を抱えた料理人、またある時は井戸端会議を行うおばちゃん等、多種多様。
何故ここまで、変装の幅が広く、そもそも変装を義務付けられているのか。
表向きの理由としては、地位がばれることなく、ありのままのその日常を視察できるから。
隠されている…ように見えて、大抵のこの国の貴族たちが知っている真実としては、初代国王が遊びに出掛ける際によく変装しており、いっそ臣下たちにも義務付けることでより普通に城を抜け出せるようにしていたというものがあるだろう。
だがしかし、そのことに文句を言うものはいなかった。
身分がばれないようにするのは中々スリルがあり、なおかつ息抜きになったり、貴族の世界では見えないものが見えてくるなど、何かと利点が多かったからだ。
もちろん、警備の面や悪用に思考を向けてしまうものなどの問題も出てはいたが…そのあたりはまだまだ、改善の余地があるだろう。
とにもかくにもそんな理由がありつつ、本日このナモアリ村があるカルク領を治めるカルク男爵もまた、変装して訪れていた。
男爵の姿自体は中々村民がお目にかかれるものではないが、変装によってより自然に溶け込んだほうが都合が良いだろう。
事前に通知をしておくのも、いざという時に正体を明かして動きやすくするというのもある。
さて、そんな男爵が本日選択した変装としては…
「らっしゃいらっしゃい!!珍しい商品を仕入れてあるよ~」
「どばっとここで、普段使わない分を出してみよう!!」
…貴族御用達、変装用連れ添い人を利用した、流れの行商人であった。
変装するにしても、一人では普通に怪しいだろう。
そのため、こういう変装のための者たちが存在しており、こういう時に雇用して使われているのである。
もちろん、ただの変装用の小道具扱いな者たちではなく、護衛も兼ねており、護身術は優れている。
変装して紛れ込むのは良いのだが、それでも例え治安が良い場所でも万が一の可能性もあり、こうやってある程度の警護の人数を入れておくのだ。
そして本日の目的はこの村の視察でもあるが…メインは、村人たちの生活ではない。
いつもならば、今年度の税としてはどの程度が適正なのか見たりするのでそれも頭の隅に置いておくのは忘れないが…別のものが気になっているのだ。
(…村人たちが買うのは良いが、ここでは例のモンスターが姿を見せないな)
(立ち話をしたところ、どうやら今の時間は教会のほうにいるようです)
(ふむ、ならば寄付を行うことも兼ねて、向かってみるか)
村の広場では姿を見かけなかったが、どうやら今は教会のほうで子供たちと一緒にいるらしい。
そう、本日の目的はそのモンスター…今はハクロという名を貰っているという、下半身が蜘蛛で上半身が人型のモンスターの姿を見ることである。
好意的な存在ならば、普通のものであれば気にしなくてよかっただろう。
村長からの届け出を確認して、しかるべき機関に登録をお願いするだけで、問題はなかった。
だがしかし、その外見の特徴から、ある可能性も浮上しており、己の目で確認してみようと思い、本日の視察日程が組まれたのである。
広場から移動し、教会へ着き、男爵…ここでは流れの行商人ゲルハドとしての変装をしている彼は、中へ入った。
「もしもし、お邪魔しますよ」
「あ、誰?」
「何か変な人が入ってきたよー?」
「こら、変な人と言わない。どうやら、商人さんたちのようだね」
ちょうど今、子供たちの学びの時間だったのか、中々の人数が既にいた。
そして、その中には…
【教会に、何か御用でしょうか】
前に歩み寄り、人の言葉のようで人とは違うような声を発する女性…例の、ハクロと呼ばれるものがいた。
(なるほど、彼女か…)
ほぼ間違いないだろう。
事前に聞いていた情報通り、下半身に蜘蛛の体があり、そこに腰を掛けるようにして美しい女性の姿を持ったモンスターである。
ここでの生活に合わせているのか人の衣服を…教会だからか修道服のようなものを身に着けており、人の容姿の部分だけを見れば、麗しきシスターと言っても過言ではない。
だが、人ならざるものとしての蜘蛛の部分もしっかり見えており、その背中には従魔契約による印が見えている。
領主として、この領の外に出るモンスターで様々なものを見てきたことはあった。
だがしかし、彼女はそれとは異なり、確実に一介の魔物とはかけ離れていかのような印象を持つ。
(…それに、蜘蛛部分が白い毛並みも持つか…もう少し、見てみなければわからないか)
「…ああ、いえ、大した用事ではなく、教会に寄附をしようとしておりまして…そのついでに、よろしければ子供たちの様子を見ていても良いでしょうか?今時の授業の流行りで必要なものを、そろそろ入荷しようと思っておりまして、参考になればと」
【なるほど…どうしましょうか、神父様?】
「問題は無いと思うよ。どうぞ、お入りください」
観察を続けるために、子供たちのことを上げつつ、中へと入りこむのであった。
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