1 / 178
プロローグ
log-000 それはほんのいたずらか、それとも狂う運命の始まりか
しおりを挟む
―――私は、人という生き物には興味がなかった。
どうでもいい、ただそれだけの存在。
私を見て狩ろうとする輩もいたようだが、それらはすぐに亡き者になった。
私を見て利用しようとする輩もいたようだが、それらはすぐに愚かさで滅亡した。
私を見て畏れ崇めようとする輩もいたが、それらはすぐに爆散した。
弱い者のはずなのに、自身より弱者だと判断した相手に対しては強者になったつもりでいるし、愚かなはずなのに、愚者だと思い込む相手には賢者のふりをする。
何故そうするのか、どうしてそうしなければいけないのか。
その行動が理解できないし、理解しようと思わない。
知る必要もない、気にかける必要もない、思う必要もそもそもない…生きている、ということ以外は大した違いも見つけられないものたちだった。
それなのに、いるだけでも何度も何度もやらかしてくるのは、精神的に疲れるものだ。
永遠に離れようとして、命を手放したとしても、残念ながらそうはいかないようで、新たな生では結局出会う羽目になり、また同様の面倒事になる。
それが何度も何度も何度も繰り返され、人間どもが言う神とやらの嫌がらせの類ではないかと思うほどであった。
…けれどもある時、その認識に変化があった。
どういうことなのだろうか。これまでどうでも良かったはずなのに、なぜか興味を持つ。
何かが前と変わったのだろうか?理解ができない。
ああ、この秘密を探るためにはどこかへ向かえばいいのか。
この本能が、今まで意味を成しえていなかった何かが働きかけ、自然と体が動く。
その道中で、人間どもに絡まれそうになることもあったが…かまっている暇が無いので、さっさと吹っ飛ばして先へ向かう。
何がこうさせるのか、何が私を突き動かすのか、それが理解できたのは…もう、終わっていた時だった。
【…ア、アア、アァァァァァァァァァァァ!!】
言葉にならない、私の悲鳴。
何故ここまでの感情を出すことができるのか、これまでの私からは理解もできない。
目の前に広がっていた光景は…人が暮らすコミュニティの一つ、村という塊だった場所。
そこが、人同士の争いでもあったのか燃えているだけなのに、なぜこうも胸がざわつくのかが理解できないが…一つ言えることとすれば、その中にひときわ何か感じさせるものがあった。
どうしてか、私の体は心よりも先に本能に従って動き出す。
この村を襲ったであろう人たちを全て屠りつつ、まっすぐに先へ進み、ある一軒家へ進む。
その中に糸を伸ばして、たぐりよせて…得られたのは、ほんの小さな消えかけの命。
でも、間違いない。この子が、私の本能を動かしていたモノ。
既にその命はこの世界から失われつつあり、灯が静かに消えようとしているモノ。
何の変哲もない、人の子なのになぜこれほどまでに感情をざわつかせるのだろうか。
いなくなっても影響がないと思えるような人の子の一人にすぎないはずなのに、どうしてここまで胸が引き裂かれるような想いを抱かせるのか。
わからないわからないワカラニワカラナイワカラナイナイナイナイナイーーーー…
永遠に辿り着けそうにもない場所へ、意識が飛びそうになり、かろうじて踏みとどまる。
消えゆく目の前の子に対して、せめてものできることをしたほうがいい。
考えろ、何故長年無駄に私は過ごしてきたのか。
考えろ、数多の生の中でやれることが無かったのか。
考えろ、ここでダメならば、次はどうすれば…「次」…これだ!!
これは一つの賭けである。
本当にそううまくいくかはわからないが、私の中でやるしかないと叫ぶものがある。
可能性に対して望みを…違う、必ず成し遂げなければいけないものだ。
その消えゆく命の炎に、ここから失われそうなその魂に、私は私をつなぐ。
そしてここから消えると同時に、私はすぐに自身の命も絶つことを迷いもなく実行し、後を追った。
どうして、ここまで必死になれるのか、これまでの生では考えられなかったこと。
一時的にでも面倒事から離れる手段として使ったことはあるが、今回はその目的ではない。
次に、その生で得ることを目指すためだ。
うまいこと、めぐり合えるかどうかはわからないし、めぐり合えない可能性だってある。
けれども、その可能性を吹き飛ばし、確実に私はめぐり合わなければいけないのだと心の底から強く思う。
ああ、ここまでの感情を抱いたのは、初めてな気がする。
これまで繰り返されていた意味のないものは、この感情を何千倍にも感じ取れるようにするために、存在していたのではないかとさえ思えるだろう。
次第に私の意識も失われ、次へとつながっていく感覚がある。
この次の生はどうなるのかもわからないが、どうしてもあの魂のものとつながらなければいけないとだけ叫んでいるものがある。
何度繰り返しても、どれほどの時間をかけ世界を超えようとも、 手繰り寄せ、糸を何重にも絡みつかせるようにしなければいけない。
ほんの一瞬の出会い、これが繰り返した先でたとえ覚えられていなかったとしても、私は必ず…
心の底から強く願い、それはもしかすると、神と呼ばれる存在に対して届いたのかもしれない。
…次の、その生を感じ取ってすぐに、私は突き動かされるその時の私の気持ちのままに、従って動くのであった。
どうでもいい、ただそれだけの存在。
私を見て狩ろうとする輩もいたようだが、それらはすぐに亡き者になった。
私を見て利用しようとする輩もいたようだが、それらはすぐに愚かさで滅亡した。
私を見て畏れ崇めようとする輩もいたが、それらはすぐに爆散した。
弱い者のはずなのに、自身より弱者だと判断した相手に対しては強者になったつもりでいるし、愚かなはずなのに、愚者だと思い込む相手には賢者のふりをする。
何故そうするのか、どうしてそうしなければいけないのか。
その行動が理解できないし、理解しようと思わない。
知る必要もない、気にかける必要もない、思う必要もそもそもない…生きている、ということ以外は大した違いも見つけられないものたちだった。
それなのに、いるだけでも何度も何度もやらかしてくるのは、精神的に疲れるものだ。
永遠に離れようとして、命を手放したとしても、残念ながらそうはいかないようで、新たな生では結局出会う羽目になり、また同様の面倒事になる。
それが何度も何度も何度も繰り返され、人間どもが言う神とやらの嫌がらせの類ではないかと思うほどであった。
…けれどもある時、その認識に変化があった。
どういうことなのだろうか。これまでどうでも良かったはずなのに、なぜか興味を持つ。
何かが前と変わったのだろうか?理解ができない。
ああ、この秘密を探るためにはどこかへ向かえばいいのか。
この本能が、今まで意味を成しえていなかった何かが働きかけ、自然と体が動く。
その道中で、人間どもに絡まれそうになることもあったが…かまっている暇が無いので、さっさと吹っ飛ばして先へ向かう。
何がこうさせるのか、何が私を突き動かすのか、それが理解できたのは…もう、終わっていた時だった。
【…ア、アア、アァァァァァァァァァァァ!!】
言葉にならない、私の悲鳴。
何故ここまでの感情を出すことができるのか、これまでの私からは理解もできない。
目の前に広がっていた光景は…人が暮らすコミュニティの一つ、村という塊だった場所。
そこが、人同士の争いでもあったのか燃えているだけなのに、なぜこうも胸がざわつくのかが理解できないが…一つ言えることとすれば、その中にひときわ何か感じさせるものがあった。
どうしてか、私の体は心よりも先に本能に従って動き出す。
この村を襲ったであろう人たちを全て屠りつつ、まっすぐに先へ進み、ある一軒家へ進む。
その中に糸を伸ばして、たぐりよせて…得られたのは、ほんの小さな消えかけの命。
でも、間違いない。この子が、私の本能を動かしていたモノ。
既にその命はこの世界から失われつつあり、灯が静かに消えようとしているモノ。
何の変哲もない、人の子なのになぜこれほどまでに感情をざわつかせるのだろうか。
いなくなっても影響がないと思えるような人の子の一人にすぎないはずなのに、どうしてここまで胸が引き裂かれるような想いを抱かせるのか。
わからないわからないワカラニワカラナイワカラナイナイナイナイナイーーーー…
永遠に辿り着けそうにもない場所へ、意識が飛びそうになり、かろうじて踏みとどまる。
消えゆく目の前の子に対して、せめてものできることをしたほうがいい。
考えろ、何故長年無駄に私は過ごしてきたのか。
考えろ、数多の生の中でやれることが無かったのか。
考えろ、ここでダメならば、次はどうすれば…「次」…これだ!!
これは一つの賭けである。
本当にそううまくいくかはわからないが、私の中でやるしかないと叫ぶものがある。
可能性に対して望みを…違う、必ず成し遂げなければいけないものだ。
その消えゆく命の炎に、ここから失われそうなその魂に、私は私をつなぐ。
そしてここから消えると同時に、私はすぐに自身の命も絶つことを迷いもなく実行し、後を追った。
どうして、ここまで必死になれるのか、これまでの生では考えられなかったこと。
一時的にでも面倒事から離れる手段として使ったことはあるが、今回はその目的ではない。
次に、その生で得ることを目指すためだ。
うまいこと、めぐり合えるかどうかはわからないし、めぐり合えない可能性だってある。
けれども、その可能性を吹き飛ばし、確実に私はめぐり合わなければいけないのだと心の底から強く思う。
ああ、ここまでの感情を抱いたのは、初めてな気がする。
これまで繰り返されていた意味のないものは、この感情を何千倍にも感じ取れるようにするために、存在していたのではないかとさえ思えるだろう。
次第に私の意識も失われ、次へとつながっていく感覚がある。
この次の生はどうなるのかもわからないが、どうしてもあの魂のものとつながらなければいけないとだけ叫んでいるものがある。
何度繰り返しても、どれほどの時間をかけ世界を超えようとも、 手繰り寄せ、糸を何重にも絡みつかせるようにしなければいけない。
ほんの一瞬の出会い、これが繰り返した先でたとえ覚えられていなかったとしても、私は必ず…
心の底から強く願い、それはもしかすると、神と呼ばれる存在に対して届いたのかもしれない。
…次の、その生を感じ取ってすぐに、私は突き動かされるその時の私の気持ちのままに、従って動くのであった。
14
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。


てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。


【完結】「図書館に居ましたので」で済む話でしょうに。婚約者様?
BBやっこ
恋愛
婚約者が煩いのはいつもの事ですが、場所と場合を選んでいただきたいものです。
婚約破棄の話が当事者同士で終わるわけがないし
こんな麗かなお茶会で、他の女を連れて言う事じゃないでしょうに。
この場所で貴方達の味方はいるのかしら?
【2023/7/31 24h. 9,201 pt (188位)】達成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる