上 下
40 / 86
1章 旅立ちと始まり

1-38 遠足は終わりが肝心、油断しやすいからこそ

しおりを挟む
‥‥‥ダンジョンから退出し、ようやくギルドに僕らは辿り着いた。

 5階層までの調査依頼もこなしたし、道中で得た護衛依頼も達成したことで、依頼報酬をまとめて得られて中々良い成果を上げられたと言えるだろう。

「でも、素材の状態としてはちょっと残念なところが多いわよ。もうちょっと綺麗なら高く買い取りやすいけれども、少し安く買うことになるわ」
「あー、それでも良いので、お願いします」
【シュルルゥ、モウチョット、良イ感ジ狙ウ】
【グラグラァ】

 魔物たちを狩って得た素材に関しては、残念ながら低評価が多かったが‥‥‥うん、仕方がない事だろう。

 次はもうちょっと、綺麗に仕留める方法を模索して実践していくしかあるまい。僕らはまだ、冒険者としては経験も浅い方だし、戦闘が物凄く綺麗にできるという訳ではない。



 けれども、ダンジョンに挑んで得ることが出来たせいかとしては上々の出来であり、しばらくは稼がなくても普通に生活できそうなほど稼ぐことはできている。

「でも、やっぱり魔道具も狙いたい…‥‥今回の感じだと、5階層までは可能だったよね」
【楽ダッタ、問題ナカッタ】

 あるフレッドさんたちとはギルドの前で分かれ、僕等は今宿屋の一室に泊っていた。

 魔物も同室OKな宿のようで、彼女達と一緒の部屋であり、くつろぎやすい広さもあるので中々良い宿屋だろう。そこそこ料金も取られるのだが、今回の臨時護衛依頼の報酬で補えるので問題もない。


 それはともかくとして、僕等はちょっとあることに関して話し合っていた。

 自分達の今の腕前や、連携。その他何か起きたとしても、5階層までは特に問題はない。

 さらに現在、ラナの加入や依頼達成数なども相まってCランクになっているのでこここにあるダンジョン、ハルゾランド内に設けられた冒険者の挑戦可能な階数の基準であれば、実は15階層までは挑むことが可能らしい。

 なお、30階層までは存在しているようだが、20階層あたりで急にAランクから挑む様になっており、どうやら急激に魔物の強さが変わるそうだ。


 とにもかくにも、今回は様子見のために潜ったようなものだが、せっかくだからいけるところまで行った方が良いのだろうか。

 それとも、当初の目的として王都までまずは行ってみるということで寄り道に過ぎないダンジョンなので、このまま挑んだという記録だけ残して去るべきか‥‥‥ちょっと迷う。

 強さ自体に問題はないだろう。そもそも、ハクロもラナも強力な魔物だし、Aランクから挑める階層を越えても問題なく先へ進めそうではある。

 しかし、彼女達に対して僕自身の強さが見合うのかと言えば‥‥‥うん、まだまだなところが多いし、慢心をするのも良くはない。強い力にはそれに見合ったものを身に付けろと、昔い爺ちゃんも言っていたが、実体験から来るものだったようで結構説得力があった。

 だからこそ、下手に挑むのも不味いだろう。驕る者は痛い目にあうのは、当然のことだ。

「そう考えると、このままスルーしても良いけど‥‥‥でも、試せるところがあれば試したいし、やれるならやっちゃおうかな?」

 ラナのおかげで収納に関しての問題は解決したが、魔道具は欲しい。

 何かこう、役に立つ様なものでなくても売ることは可能だろうし、せっかくダンジョンがある場所なのだから、挑めるときは可能なところまで進めておきたい。

「‥‥‥なら、10階層を今度は目標にして、終わったら王都へ向かっての旅路を再開しようかな。ハクロ、ラナ、それでいいかな?」
【大丈夫、ジーク、ヤリタイコト、私達反対シナイヨ】
【グラグラ!】

 流石に15階層まで挑むには、時間がかかり過ぎるのもあるし、僕自身の経験が浅いので挑むにはちょっと勇気が足りない。

 けれども、今の実力などを見据えて、ひとまずは10階層を目標にしようと、僕等はそう決定し、明日は挑むための準備を始めようとするのであった…‥‥

「ところで、ここのダンジョン5階層までは毒物多めだけど、6~7階層辺りには超高級食材になるような魔物が極稀に出現するらしいんだよね。これもついでに狙おうか」
【絶対挑ム!!毒無理デハナイケド、美味シイノ、食ベテミタイ!!】
【グラァァァァ!!】

…‥‥やる気、そっちに出していいものなのだろうか。
 







―――――ところで、ジークたちはまだダンジョンに挑む経験が浅いので、あることがダンジョンや迷宮で起こり得る事を知らなかった。

 それは、魔物が生み出されるダンジョンだから可能性としてはあり得るが、それでも弱肉強食な世界ゆえに、ある程度住み心地のいい場所に居続けるからこそ、そんなに起こることはないもの。

 でも、それはあくまでも何事も無かったらの話であり‥‥‥何かきっかけがあることで、引き起こされる可能性を秘めており‥‥‥そして、そのきっかけは起きてしまった。

 ダンジョンの奥深くで、蠢く魔物たち。

 その中でも、とある魔物がそのきっかけを本能的に感じ取り‥‥‥そして、動き出してしまう。

 巡り合う時は、迫りつつあるのであった‥‥‥
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

処理中です...