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第3章:青年期~いよいよここから始まる話
99話 驚きの吸水力
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SIDEエル
ジュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「すごい勢いであっというまに、巨大なスライムが吸われていくな…」
「吸っている側はサイズが変わっていないのに、驚きの吸水力ですよね」
現在、目の前で巨大だったはずの湖の様なスライムがわずかな植物に吸われていく様を見て、、エルたちはあっけに取られていた。
今回、引き起こされたスライム大洪水に関して、元凶が残した日記から対策となりそうな特殊な草をカトレアに作ってもらい、葉っぱの状態よりも粉末のほうが吸水力があるらしいと鑑定結果が出たためすぐに粉末状にして上空からばらまいてみたところ、驚くべきことに、水位が、いや、スライム位がどんどん下がっていった。
見ている側からすれば、あのほんの少しの粉末で大海が瞬時に干からびていくように見える。
お風呂の栓を抜いてお湯が減っていく様子に近いが、規模としては比較にならないレベルとなっており、逸話が眉唾物ではないことを示している。
あまりにも規格外すぎる吸水力によって10分後、琵琶湖のごとく周囲に満たされていたスライムたちの見る影も形もない。
あれだけ何もかも飲みこんでいけそうだった大群が、わずかな粉末に吸われ切ったようだ。
「しかも、吸水した粉の粒のサイズは変わっていない…ちょっとぷるんっとした弾力はあるけど、それでもあの水分はどこへやったのかと疑問に思ってしまうよ」
ここまですさまじい吸水力であれば、例えば津波が起きてもすぐに防波堤として即座に役立ちそうな気もしなくはない。
しかし、あまりにも大量の水をここまで一気に給水することから、海で使用すると海が亡くなりそうな気がして恐ろしくてならない。
まぁ、幸いなことにどうやら塩水では効率がガタ落ちするようなので、ここまでの光景になることはないらしいが…それに一度吸水すると、この状態のままになってしまうらしく、吸水力はもうなくなってしまうらしい。
飲んだらそのままじわじわと出すのであれば、砂漠化とかにも対策できそうなものなのだが、あいにく熱にはちょっと弱いらしく、利用が難しいようだ。
なんにしても、周囲を覆いつくしていたスライムたちは失せ、後に残っているのは元からあった木々だけとなった。
喰われてしまったが故か獣ややモンスターなど見当たらないが…より大きな被害を出す前に、規模を縮小できたのは大きい。
「ヴヴィボボオボォォォゥ…」
「…そしてあれが残りかすか」
響くような、重い叫びをあげて蠢くカス。
いや、それはもはやただのカスではなく、物凄く毒々しい色合いをした、何かの成れの果てが振るわせながら、その声のような振動音を響かせている。
おそらくは、あのスライムの水分が一気に失われたことで、残っていた部分が凝縮されたものなのだろうが…物凄く弱っているようだ。
念のために、その正体を確認するために鑑定魔法も使用しておく。
「『鑑定』」
―――――――――――――――
『アンノウン・カオス・スライム』
…もはや人だったのか、それともスライムだったのかわからない、誰かの欲望がスライムとなった成れの果て。
何者かによる悪意が形を成し、欲望を体現し、まさに成し得ようとしているうちにその欲によって飲み込まれたものだったが、吸いつくされてしまい搾りかすになった哀れな生き物。
しかしそれでも一応、身体に凝縮された欲望は、自身の肉体すらも脅かし、何もかも溶かしてしまう猛毒へ変わってしまった。もし、その欲望が暴走せずに制御できていれば、より脅威の大きな未知のモンスターへと至っただろうが、毒以外の力を失ったカスに成り果てた。
―――――――――――――――――
「…カスの鑑定結果が出たな」
何者かの悪意の詳細までは出なかったが、利用された欲望はスライムを作っていた人のものであろう。
最初は純粋に、いや、ちょっと怪しいが自分の望むスライムを創り出そうとしていたはず。
けれどもいつしか、何者かによって利用されてしまい、何処かで欲望が変わって、スライムに飲み込まれてしまったのだろう。
カスになった、それでもまだ諦めていないのか敵対行動を見せようとして、身体を膨らませ、毒液を飛ばそうとしている。
だが、もはやその命は風前の灯火かと言うほどに、動作がどこか弱弱しい。
「ブヴィボバァ…」
「お前がもう、何を言いたいのか、そしてどのような目的を持っているのか分からない。それでもただ、利用されただけの哀れな奴だとは思う」
誰に利用されていたのかはさておき、不純な動機があったようにしか思えないが、それでも純粋にスライムを思ってやっていたはずの行動。
けれどもそれは、もはや害をなすものへと成り果てた。
家族へ害をなそうとする、ただの毒まみれのスライムであるならば、その毒ごと浄化すればいい。
危険性を考えると、火の魔法で焼き尽くすと毒ガスが出そうだし、水だと吸水してまた同じものになる可能性があるので…安全性を考えて使えるのならば、浄化が可能なものの代表となりそうな、聖なる魔法だろう。
「せめてもの慈悲だ、瞬時に終わらせろ『ホーリストーム』!!」
その魔法を発動させた途端、その哀れな生き物の周囲に風が渦を巻き始め、清らかな光が巻き込まれ始める。
「ヴボァァァァ、ヴボボ、ブボアァァァァァァァァァァア!!」
光り輝く竜巻に舞い上げられて、毒をまき散らすこともかなわず散っていく残りかす。
そのままスライムは消滅し、辺りには何も残らなかったのであった…
「あの、ところでエル」
「どうしたんだよハクロ、ようやく片付いたのにさ」
「私たちって依頼を受けて探索に来たんですよね?これってどう報告すればいいのでしょうか?」
…そういえば、そうだった。
ハクロの指摘に対して気が付き、その場の全員が固まった。
すっかり忘れていました。でも、馬鹿正直に話せば、スライムの兵器化なんてことになりかねないし…どうしようか、これ。
面倒なことを思い出させられたし…うん、とりあえずこのスライム研究本を悪用して、ハクロとちょっとじゃれて現実逃避しようかな…
ジュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「すごい勢いであっというまに、巨大なスライムが吸われていくな…」
「吸っている側はサイズが変わっていないのに、驚きの吸水力ですよね」
現在、目の前で巨大だったはずの湖の様なスライムがわずかな植物に吸われていく様を見て、、エルたちはあっけに取られていた。
今回、引き起こされたスライム大洪水に関して、元凶が残した日記から対策となりそうな特殊な草をカトレアに作ってもらい、葉っぱの状態よりも粉末のほうが吸水力があるらしいと鑑定結果が出たためすぐに粉末状にして上空からばらまいてみたところ、驚くべきことに、水位が、いや、スライム位がどんどん下がっていった。
見ている側からすれば、あのほんの少しの粉末で大海が瞬時に干からびていくように見える。
お風呂の栓を抜いてお湯が減っていく様子に近いが、規模としては比較にならないレベルとなっており、逸話が眉唾物ではないことを示している。
あまりにも規格外すぎる吸水力によって10分後、琵琶湖のごとく周囲に満たされていたスライムたちの見る影も形もない。
あれだけ何もかも飲みこんでいけそうだった大群が、わずかな粉末に吸われ切ったようだ。
「しかも、吸水した粉の粒のサイズは変わっていない…ちょっとぷるんっとした弾力はあるけど、それでもあの水分はどこへやったのかと疑問に思ってしまうよ」
ここまですさまじい吸水力であれば、例えば津波が起きてもすぐに防波堤として即座に役立ちそうな気もしなくはない。
しかし、あまりにも大量の水をここまで一気に給水することから、海で使用すると海が亡くなりそうな気がして恐ろしくてならない。
まぁ、幸いなことにどうやら塩水では効率がガタ落ちするようなので、ここまでの光景になることはないらしいが…それに一度吸水すると、この状態のままになってしまうらしく、吸水力はもうなくなってしまうらしい。
飲んだらそのままじわじわと出すのであれば、砂漠化とかにも対策できそうなものなのだが、あいにく熱にはちょっと弱いらしく、利用が難しいようだ。
なんにしても、周囲を覆いつくしていたスライムたちは失せ、後に残っているのは元からあった木々だけとなった。
喰われてしまったが故か獣ややモンスターなど見当たらないが…より大きな被害を出す前に、規模を縮小できたのは大きい。
「ヴヴィボボオボォォォゥ…」
「…そしてあれが残りかすか」
響くような、重い叫びをあげて蠢くカス。
いや、それはもはやただのカスではなく、物凄く毒々しい色合いをした、何かの成れの果てが振るわせながら、その声のような振動音を響かせている。
おそらくは、あのスライムの水分が一気に失われたことで、残っていた部分が凝縮されたものなのだろうが…物凄く弱っているようだ。
念のために、その正体を確認するために鑑定魔法も使用しておく。
「『鑑定』」
―――――――――――――――
『アンノウン・カオス・スライム』
…もはや人だったのか、それともスライムだったのかわからない、誰かの欲望がスライムとなった成れの果て。
何者かによる悪意が形を成し、欲望を体現し、まさに成し得ようとしているうちにその欲によって飲み込まれたものだったが、吸いつくされてしまい搾りかすになった哀れな生き物。
しかしそれでも一応、身体に凝縮された欲望は、自身の肉体すらも脅かし、何もかも溶かしてしまう猛毒へ変わってしまった。もし、その欲望が暴走せずに制御できていれば、より脅威の大きな未知のモンスターへと至っただろうが、毒以外の力を失ったカスに成り果てた。
―――――――――――――――――
「…カスの鑑定結果が出たな」
何者かの悪意の詳細までは出なかったが、利用された欲望はスライムを作っていた人のものであろう。
最初は純粋に、いや、ちょっと怪しいが自分の望むスライムを創り出そうとしていたはず。
けれどもいつしか、何者かによって利用されてしまい、何処かで欲望が変わって、スライムに飲み込まれてしまったのだろう。
カスになった、それでもまだ諦めていないのか敵対行動を見せようとして、身体を膨らませ、毒液を飛ばそうとしている。
だが、もはやその命は風前の灯火かと言うほどに、動作がどこか弱弱しい。
「ブヴィボバァ…」
「お前がもう、何を言いたいのか、そしてどのような目的を持っているのか分からない。それでもただ、利用されただけの哀れな奴だとは思う」
誰に利用されていたのかはさておき、不純な動機があったようにしか思えないが、それでも純粋にスライムを思ってやっていたはずの行動。
けれどもそれは、もはや害をなすものへと成り果てた。
家族へ害をなそうとする、ただの毒まみれのスライムであるならば、その毒ごと浄化すればいい。
危険性を考えると、火の魔法で焼き尽くすと毒ガスが出そうだし、水だと吸水してまた同じものになる可能性があるので…安全性を考えて使えるのならば、浄化が可能なものの代表となりそうな、聖なる魔法だろう。
「せめてもの慈悲だ、瞬時に終わらせろ『ホーリストーム』!!」
その魔法を発動させた途端、その哀れな生き物の周囲に風が渦を巻き始め、清らかな光が巻き込まれ始める。
「ヴボァァァァ、ヴボボ、ブボアァァァァァァァァァァア!!」
光り輝く竜巻に舞い上げられて、毒をまき散らすこともかなわず散っていく残りかす。
そのままスライムは消滅し、辺りには何も残らなかったのであった…
「あの、ところでエル」
「どうしたんだよハクロ、ようやく片付いたのにさ」
「私たちって依頼を受けて探索に来たんですよね?これってどう報告すればいいのでしょうか?」
…そういえば、そうだった。
ハクロの指摘に対して気が付き、その場の全員が固まった。
すっかり忘れていました。でも、馬鹿正直に話せば、スライムの兵器化なんてことになりかねないし…どうしようか、これ。
面倒なことを思い出させられたし…うん、とりあえずこのスライム研究本を悪用して、ハクロとちょっとじゃれて現実逃避しようかな…
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それが安定かな
危ない部分は使わないように…危なくない部分を利用しよう
クラゲもそうといえばそうなのか…
もっと良い方向に使えたら、本当に偉大なる天才になれただろうに…
こういう時にこそ、役に立つ
普段使ってないようなものだし
ここは盛大にね…