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第2章:少年期後編~青年期へ

69話 事情聴取は、真夜中に

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SIDEエル

…まだ月明かりがともる中、ぎっちぎちに拘束されたハーピーの少女ジェリア。
 ハクロ達の必死な追跡によって大事に至ることはなかったが、どうしてエルを誘拐するという凶行に及んだのか調べるために事情聴取をこの場で行うことにした。
 都市へ戻るのもありだが、見た目が少女とはいえ手足から見てわかるとおり、ジェリアは立派なモンスター。
 ゆえに、危険と判断されればその場で討伐されそうだが…そこまですごい悪意があったようにも思えないし、何かしらの事情があると思い、本人の口から聞くことにしたのである。

 なお、流石にこのままの状態で行うには、ちょっとばかり野外から見た絵面としてはよろしくはないと判断し、クラフトハウスの魔法で簡易的なログハウスを作成し、その中で行うことにした。

 事情聴取としてはどうやって話させるかが課題になったが…しっかりとした拘束だから逃げられないと判断したのか、あっさりと彼女は口を割った。

「番探しをして、獲得できそうだったからさらっただけなのさ」

 カクカクシカジカピヨピヨと話を聞けば、どうやら彼女の種族だからこをやったことらしい。
 ハーピーの中でもより一層生々しいほうに素直なラヴハンター・ハーピーの大人としての儀式みたいなものとして、番探しと番攫いがあるらしい。
 空から強襲して攫うのは変わらないが、それでも生涯に確実に逃したくない男としての番がいるらしく、得るために番を探す旅に出るのが、大人になるための儀式になっているのだとか。

 この目の前にいるジェリアも例にもれず番を求めて旅に出ており、そしてエルを選んだのだ。
 その理由としては…

「単純に、勘なのさ。他の男たちを見ても感じるのはそうないけれども、番を目にするとびびっとこう、お腹の中に来るものがあるのさ!あなたはそのびびっと来た人になったから、番として判断したのさ!だけど、馬鹿正直に告げても、難しいと思えたのさ」
「どうして?」
「だって、周囲に他のメスがいるのさ…番なら独占しいけど、すぐにはできなかったのさ。だから、この夜中に行事の一つでもある番攫いを行うという強硬手段に出たのさ」

 番探しの旅路も大人の行事だが、そこから一歩踏み込んで番攫いもあったらしい。
 何しろ、求める相手が独身と限った話でもなく、独占したいのであれば己の手でつかみ取って見せろということで、どこか人の知ることのない場所へ攫うことも、大人の儀式の一種として受け入れられているそうである。
 そのこともあって、真夜中に無理やり攫って来たと言うのが、今回の騒動を引き起こした理由のようであった。


 ただ、ここで気になるのは、どうやってエルの寝ているところを特定し、忍び込んで攫えたのかというところがある。
 寮の場所が見えても、部屋まですぐに特定できるわけもない。
 そもそも、寝ている間にあの家のほうに運び、そこで一旦起きて、すぐに寝ていたので都市内の土地勘などはないはずだろう。

 だが、その答えはあっさりと出た。

「ふふん、ハーピーを舐めないでほしいのさ!一度ロックオンした番相手にならば、確実にどこに居ようが分かる勘を持っているのさ!!
「直感で当てたという事でしょうか?」
「無茶苦茶じゃな…寮の守りも薄くはないはずなのじゃがな(主にわっちら忍び込むので、多少細工はしているが)」
「空からの奇襲、地を這う人にとって対応できなかったのかも(根っこで入れるし、案外甘い)」
「野生の勘は恐ろしいね~♪(ミーたち、エルのためにこっそり寮の防衛体制、強化しているのにくぐりぬけられたのね~♪)」

…気のせいか、なんか副音声が聞こえる気がする。

 とにもかくにも、事情が聞けたとはいえ、無罪放免で済むようなことはない。
 討伐とまではいかないが、やらかしようがちょっとばかり度が過ぎている。

「盗賊から助けないほうが良かったかのぅ?どうする、エル。こやつ、タレか塩かそのままでいくかのぅ?」
「いや、焼き鳥にしなくていいから」
「だったら、羽毛布団でも作ってみましょうか?布ならいくらでも用意できますので、ギリギリむしれば何とかできそうですよね」
「むしるって言い方が、怖いんだけど」
「ゆでる、出汁とる、残りかす埋めて、肥料」
「出しきった時点で残っているものもなさそうなんだけど」
「ん~3日間連続耐久合唱はどうかな~♪ハーピー種は歌もうまいって聞くから一緒に歌ってみたいかな~♪」
「まともそうに聞こえるけど、えげつない耐久合唱になってないか、それ?」

 どうやらほかの面々、怒りはすぐに見せないようだが、内心結構思うところはあるようだ。
 かといって発散させないのも不味いような…とりあえず、討伐はないかな。全員の意見を聞くとされた方が救いがあるような気がしなくもないが、判断が難しい。


「とりあえず、ギルドに引き渡すか…何も問題なkれえばいいんだけどなぁ」

 厄介なのは、これ親がいるってことなんだよね…モンスターとはいえ、ハーピーとしての種族上父親のほうは人間だろうし、その場合の子供の扱いに関して悩むところはある。
 そのあたりの基準はわかっていないこともあるし、ここはギルドに一旦判断を任せるか。

「ハクロ、今日は遅いし、この子縛り上げたまま家に帰ってくれないかな?明日、ギルドに報告にしに向かうことにしようよ」
「そのほうがよさそうですね…なら、持っていきますかね」

 ぐるぐるまきにしたジェリアを蜘蛛の背中に固定し、運び始めるハクロ。
 彼女に任せて、僕らも都市へ戻ろうと思ったところで…ふと、気が付いた。

「あれ?タマモ、カトレア、ミモザどうした?なんですぐに動かないの?」

 ハクロがやれやれというようにジェリアを連れて出て行ったが、後に続けて向かわない様子。

 見れば、何か思案するような様子だったが…すぐにこちらへ目を向けた。
 その顔からは、何か思いっきり企んだ表情が読み取れるだろう。

「…のぅ、エル。ちょっと思いついたことがあったのじゃ」
「ハクロ、ジェリア連れて帰った。一緒に帰ろうと思ったけど、彼女だけ先に帰していい」
「そしてミーたちだけ後からゆっくりと帰っても良さそうだしね~♪」


…なんだろう。何を言わんとしているのか、わかってしまう自分がいる。
 察しが良いというべきか、この状況はまだ助かっていなかったというべきなのか。

「…要は全員、本日はハクロ抜きで交わりたいと」
「「「うん」」」

 そろって肯定したようである。
 そういえば、回数だけ言えば確かにハクロのほうが多いんだよな…だからこそ、この機会に回数の差を埋めようとしているわけか。

「うーん、まぁ、しょうがないか。今日はみんなに助けてもらったのもあるし、断ることもないな。でも、一応朝までには俺は寮へ戻らなきゃいけないのもあるから、やるとしても時間が限られるから、皆が満足するのに少々荒業を使うけど、いいかな?」
「「「もちろん!!」」」

 エルの問いかけに対して、タマモたちはそろって頷いた。
 時間制限ありだから、手加減全くなしの満足するまでの地獄に後悔するなよ。思いっきりやるからね?


 どうやらまだ夜は長そうだが…やるだけやってみますかね。
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