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幸せを乱されたくないので、徹底したい
#362 予測できてしまったからこそ、未然に防ぐ前にどうにかしたくもなるのデス
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SIDE???
…‥‥深夜、ハルディアの森。
かつてはフェンリル一家が住まい、今は魔王の別拠点として存在する森へ、それは現れた。
バァァン!!
はじけるような音が響き渡り、寝静まっていた者たちは驚き、目を覚ます。
そして、その音の発信源へ、夜行性の動物たちが目を向けて見れば‥‥‥そこには一つの影があった。
何者なのかは、彼等には分からない。
でも、一つ言える事とすれば、その陰へ向かって、近くで寝ていた熊が襲い掛かったぐらいであろうか。
【グマァァァ!!】
森の木々に紛れるような色合いの毛皮を持つ、熊のモンスター『グリーンベアー』。
その凶悪爪をその影の者へ振り落とした、次の瞬間であった。
「‥‥‥えいっ☆」
ドゴブッツ!!
【グベッマァ!?】
軽い掛け声と共に、腹部への一撃で九の字に曲がり、ベアーは地に倒れ伏す。
たった一撃で、ベアーがやられたことに、周囲で見ていた動物たちは逃げ出し、その場にはその影だけが残る。
「ふーん、この程度かぁ。やっぱりつまらないなー」
腹部を貫いた感触を確かめながらその者はそうつぶやき、毛皮に沈みこみ、その血肉で汚れた手を綺麗に熊の毛皮を利用してふき取る。
「ま、仕方がないか。所詮は殴るだけにしかなかった生物。期待する価値もなかったようだしね」
そう言いながら、綺麗に吹き終えた後、ベアーの体をその影は綺麗に解体していく。
骨に肉すらも残さず、血を一滴も残さずに抜き取り、部位ごとにきちんと補完するその手際は、一流の解体職人とも言えるだろう。
「さてと、あとで美味しくいただくための調理方法を調べるとして‥‥‥この世界へ来た目的を忘れずに、まずは動きますかね」
解体し切った素材をすべて収納し終え、その影は動き出す。
木々の隙間から漏れ出る月明かりは、その影の正体を照らし出す。
一見、人間のように見えるが、その正体は人間にあらず。
髪が月明かりによって七色に輝き、目の色も同様の色合い。
その身に纏うのは真っ赤に染まったマントであり、その下の方はうかがえない。
「ははははは!!とりあえず強い奴に会いたいなぁー!!」
笑いながら、その影はその場から飛ぼうとして大地を砕くほど踏みしめ、跳躍するのであった…‥‥
―――――――――――――――――――
SIDE神聖国
「…‥‥あー、やっぱりというか、情報はもう掴んでいたのか」
『ええ、ですのでまずはその関係者にあたりそうなそちらに、話を聞こうと思いまシタ』
神聖国ゲルマニア、神殿内。
その内部では、派遣したシスターズ越しに預言者とワゼが話し合っていた。
『先ほど、森の方へ派遣していた部隊が確認を取り、位置を特定。この後は追跡し、進路を予測でき次第、迎撃を行いますが…‥そちらにとって都合の悪い者ではないですヨネ?』
「うん、都合悪くならないけど‥‥‥色々とやばい類だったはずだ。生憎こちらは事情があって詳細は話せないが…‥‥万が一にでもやらかしたら、潰しても大丈夫だったはず。詳しい事は、悪魔の方に聞けばいいと思う」
『なるホド。では、そちらでも確認が取れれば、勝手に行いマス』
そう告げ、ワゼからの通信が切れた。
「…‥‥ふぅ、案の定というか、彼女の方では既に確認していたか。想定できてはいたけど‥‥‥相手が相手だし、どうにかなるかなぁ?」
首を傾げつつ、預言者はそうつぶやく。
…‥‥預言者は知っている。今宵、現れたその存在について。
だがしかし、契約によって詳細を話せず、告げることはできない。
まぁ、それでもそう簡単に反撃にあう未来が見えないが…‥‥むしろ心配すべきなのは、その相手の方ではなかろうか。
「それはそれで、相手にとっては好都合だろうけれどね…‥‥」
彼女達が相手にしている者は、むしろそういう状況をより楽しむだろう。
戦闘よりも、いたずらの方を楽しむらしいが、戦いの場であろうとも何であろうとも、何事も求めては勝手に楽しむ迷惑な輩。
預言者の知り合いの悪魔も、あの冥界の主よりはマシとはいえ、できれば遭遇したくない類とも言わしめるほどなのである。
「‥‥‥これはこれで面白そうってのもあるけど、国が滅びそうって不安もあるからなぁ」
国どころか世界が危機に陥るかもしれないが、今から彼女達が相手にするのは、本気でそんなことはどうでもいいと考えるような輩。
その行動の結果は実に多種多様ではあるが…‥‥できれば最悪の事態は避けて欲しいと預言者は願う。
「善も悪もいる魔王と同じように、いや、それ以上に厄介な奴だし…‥‥トリックスター気取りでありつつ、結果が本当にひどい時もあるからな…‥‥」
はぁっと溜息を吐きつつも、預言者自身ではどうにもならないことに、頭も抱えたくなる。
ストレスをためて胃に負担をかけないように、今晩の食事はあっさりとした腐り加減の魂の持ち主にしようと、現実逃避を行うのであった…‥‥‥一応、予言でどうにかならないかという目的もあるが、そううまくいかなさそうなことは一番知っていたりするのであった‥‥‥‥
…‥‥深夜、ハルディアの森。
かつてはフェンリル一家が住まい、今は魔王の別拠点として存在する森へ、それは現れた。
バァァン!!
はじけるような音が響き渡り、寝静まっていた者たちは驚き、目を覚ます。
そして、その音の発信源へ、夜行性の動物たちが目を向けて見れば‥‥‥そこには一つの影があった。
何者なのかは、彼等には分からない。
でも、一つ言える事とすれば、その陰へ向かって、近くで寝ていた熊が襲い掛かったぐらいであろうか。
【グマァァァ!!】
森の木々に紛れるような色合いの毛皮を持つ、熊のモンスター『グリーンベアー』。
その凶悪爪をその影の者へ振り落とした、次の瞬間であった。
「‥‥‥えいっ☆」
ドゴブッツ!!
【グベッマァ!?】
軽い掛け声と共に、腹部への一撃で九の字に曲がり、ベアーは地に倒れ伏す。
たった一撃で、ベアーがやられたことに、周囲で見ていた動物たちは逃げ出し、その場にはその影だけが残る。
「ふーん、この程度かぁ。やっぱりつまらないなー」
腹部を貫いた感触を確かめながらその者はそうつぶやき、毛皮に沈みこみ、その血肉で汚れた手を綺麗に熊の毛皮を利用してふき取る。
「ま、仕方がないか。所詮は殴るだけにしかなかった生物。期待する価値もなかったようだしね」
そう言いながら、綺麗に吹き終えた後、ベアーの体をその影は綺麗に解体していく。
骨に肉すらも残さず、血を一滴も残さずに抜き取り、部位ごとにきちんと補完するその手際は、一流の解体職人とも言えるだろう。
「さてと、あとで美味しくいただくための調理方法を調べるとして‥‥‥この世界へ来た目的を忘れずに、まずは動きますかね」
解体し切った素材をすべて収納し終え、その影は動き出す。
木々の隙間から漏れ出る月明かりは、その影の正体を照らし出す。
一見、人間のように見えるが、その正体は人間にあらず。
髪が月明かりによって七色に輝き、目の色も同様の色合い。
その身に纏うのは真っ赤に染まったマントであり、その下の方はうかがえない。
「ははははは!!とりあえず強い奴に会いたいなぁー!!」
笑いながら、その影はその場から飛ぼうとして大地を砕くほど踏みしめ、跳躍するのであった…‥‥
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SIDE神聖国
「…‥‥あー、やっぱりというか、情報はもう掴んでいたのか」
『ええ、ですのでまずはその関係者にあたりそうなそちらに、話を聞こうと思いまシタ』
神聖国ゲルマニア、神殿内。
その内部では、派遣したシスターズ越しに預言者とワゼが話し合っていた。
『先ほど、森の方へ派遣していた部隊が確認を取り、位置を特定。この後は追跡し、進路を予測でき次第、迎撃を行いますが…‥そちらにとって都合の悪い者ではないですヨネ?』
「うん、都合悪くならないけど‥‥‥色々とやばい類だったはずだ。生憎こちらは事情があって詳細は話せないが…‥‥万が一にでもやらかしたら、潰しても大丈夫だったはず。詳しい事は、悪魔の方に聞けばいいと思う」
『なるホド。では、そちらでも確認が取れれば、勝手に行いマス』
そう告げ、ワゼからの通信が切れた。
「…‥‥ふぅ、案の定というか、彼女の方では既に確認していたか。想定できてはいたけど‥‥‥相手が相手だし、どうにかなるかなぁ?」
首を傾げつつ、預言者はそうつぶやく。
…‥‥預言者は知っている。今宵、現れたその存在について。
だがしかし、契約によって詳細を話せず、告げることはできない。
まぁ、それでもそう簡単に反撃にあう未来が見えないが…‥‥むしろ心配すべきなのは、その相手の方ではなかろうか。
「それはそれで、相手にとっては好都合だろうけれどね…‥‥」
彼女達が相手にしている者は、むしろそういう状況をより楽しむだろう。
戦闘よりも、いたずらの方を楽しむらしいが、戦いの場であろうとも何であろうとも、何事も求めては勝手に楽しむ迷惑な輩。
預言者の知り合いの悪魔も、あの冥界の主よりはマシとはいえ、できれば遭遇したくない類とも言わしめるほどなのである。
「‥‥‥これはこれで面白そうってのもあるけど、国が滅びそうって不安もあるからなぁ」
国どころか世界が危機に陥るかもしれないが、今から彼女達が相手にするのは、本気でそんなことはどうでもいいと考えるような輩。
その行動の結果は実に多種多様ではあるが…‥‥できれば最悪の事態は避けて欲しいと預言者は願う。
「善も悪もいる魔王と同じように、いや、それ以上に厄介な奴だし…‥‥トリックスター気取りでありつつ、結果が本当にひどい時もあるからな…‥‥」
はぁっと溜息を吐きつつも、預言者自身ではどうにもならないことに、頭も抱えたくなる。
ストレスをためて胃に負担をかけないように、今晩の食事はあっさりとした腐り加減の魂の持ち主にしようと、現実逃避を行うのであった…‥‥‥一応、予言でどうにかならないかという目的もあるが、そううまくいかなさそうなことは一番知っていたりするのであった‥‥‥‥
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