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幸せを乱されたくないので、徹底したい

#356 懇切丁寧にやってしまうべきなのデス

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SIDEワゼ

‥‥‥ボラーン王国、王城内。

 普段は焦点が当てられにくいが、一国の王城だけに、勤める人たちはそれなりにいる。

 王城の警備を行う衛兵、庭の手入れを行う庭師、各地の情報を整理する政務官、女王の政治に関して議論を行いより良い策を導き出す大臣たち…‥‥影が薄いのは良く理解しているけれども、それでも国のために働く人たちである。


 とはいえ、実は一昔前、前国王の在位時にはそこまで忠誠心が高い者はいなかった。

 それなりに権力を狙う輩や、国王の政治に不満を持つ者、他国の間者などが紛れ込んでいたのである。

 だがしかし、今ではそのような輩たちはいない。

 何故ならば‥‥‥‥



「…‥‥きちんと管理していますし、普通に分かってしまうのですが、その情報は入ってなかったのでしょうカ?」
「「「「「‥‥‥」」」」」

 牢の前に立つワゼの言葉に、何も言えずに縛られ、転がされている不審者たち。

 彼らはバレないようにこっそりと王城内にいる者たちの衣服に似せた服装で、紛れ込もうとしていたのだが、あっという間に全員捕縛されたのである。

 しかも、入る前ではなく、潜り込めたと安心させた次の瞬間に一気に捕縛という、安心から絶望への旅を味合わせたのである。


「管理主義も徹底しすぎると変化を生まず、停滞・衰退いたしますので、そこまで厳しくはしていないのですが‥‥‥それでも、私たちの目をごまかすことはできまセン」

 どのような目的であろうとも、ろくでも無い事ばかりなのは分かり切っているので、普段シアンたちに見せるよりも、非常に冷め切った目で彼らを見ると、不審者たちは背筋が凍ったかのような感覚を味わう。

 元々ワゼは、そこまで表情の変化を魅せることはなく、常に冷静沈着。

 それでもほほ笑んだりすることはできるのが、今の彼等に見せているのは絶対零度の冷たい視線である。

「どのような目的を持っていたのかは喋らずとも、ろくでもないのは分かっていマス。女王陛下の流産を引き起こすための薬の混入、卵情報から強奪、破壊、お子様方の誘拐・殺害‥‥‥あるいは、絶対に成しとげられないであろう、ご主人様魔王の暗殺…‥‥どれもこれもが無理だと分かり切っているはずなのに、どうしてこうもわざわざやってくるのでしょうカ」

 やれやれと、呆れたように肩をすくめながらつぶやかれるワゼのその言葉に、各々の目的を当てられ、不審者たちはギクッと体をこわばらせる。

 流石に無理かもしれない内容もあるのだが、もしかしたらという可能性や、出された報酬などに目がくらみ、勝手に動いた者たちでもあるのだ。

 また、人質を取られて仕方がなく、というような輩はいない。

 そのような者たちは、事前に・・・どこからか通達され、姿を先にくらましているからだ。

 

「何にしても、ちょうど都合がいいデス。そろそろ試験的に稼働し、排除するための部隊の一つを試せますからネ」
「「「「「?」」」」」

 にやりと口角を上げ、そう語るワゼの言葉に彼らは首をかしげる。

 だが、その数秒後に、彼女の背後に現れた者たちを見て、直感で悟ってしまった。

「ファー?」
「ええ、せっかくの機会ですし、やりましょウ」

 そこに現れたのは、黄色いメイド服を纏った一団。

 タダのメイドであれば、まだ可愛らしいものなのだが‥‥‥よーく見れば、何やら色々と滴り落ちていたり、何かの肉が付いていたり、明かにやばそうな道具を持った者たちがいたのだ。


 彼らは悟る。どう考えても、あの集団にこれから情報を吐かすために拷問されるのだと。

 タダの拷問ならまだしも、纏う雰囲気が明らかに異常であり、ほぼ100%で無事では済まないと。

「「「「「ひ、ひっぎゃあああああああああああああああ!!」」」」」


 その悲鳴は非常に大きかったそうだが、それでも外部へは伝わり切らない。

 そう、それはせめて、生まれる赤子たちのために、聞かせないようにというワゼの配慮が行き届き、超・防音が施されているからであった‥‥‥

「ああ、できれば精神は破壊し切らないでくだサイ」
「ファ?」
「どのような目的であれ、一応忍び込むだけの勇気があったことは感嘆に値しますからネ。更生の余地があれば再就職のための職業訓練及び再発防止のための教育を施しましょウ。それが見込めなければ‥‥‥いつもの方へ輸送デス」
「ファ!」
「ついでに背後関係も分かれば、直ぐに情報収集に出てくだサイ。ええ、そっちは完全に容赦なくで良いそうデス。ご主人様いわく、『家族へ害をなそうとする輩には、手を抜くな』というらしいですからネ。対応する際には、倫理機能を解除してくだサイ」
「ファファファ!!」

‥‥‥さらっと、背後にいた者たちの末路も決定したのであった。

 しらないのは、不審者たちを利用して、色々としでかそうとしている輩たちであったが‥‥‥どうやら今から、死神の鎌がゆっくりと迫り始めたのであった。



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