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良からぬ企みは、なぜこうも生み出されるのか

#348 表裏での格差もあるのデス

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SIDEシアン


 ‥‥‥ハクロたちが入りたがっていた子宝の湯の時間まで、僕等は他の温泉を巡って時間を潰すことにした。

 本当は、この温泉都市にいるであろうボラーン王国の前国王の方にも挨拶をすべきなのだろうけれども、ミスティアいわくあっちからの方が良いらしい。

「仮にも前王であり、わたくしのお父様ですが‥‥‥仕事を押しつけてきた立場ですからね。ふふふふふふ‥‥‥‥」
「く、黒い笑みすぎる…‥‥」

 色々と貯まっていたというか、王位に元々つきたくなかったのに、色々あってさせられたというべきか‥‥‥何にしても、言いたいことがあり過ぎるのだが、まずはあっちから挨拶に来て欲しいようだ。

 シスターズ経由で素早く連絡を取っており、夕暮頃には話し合えるそうなので、まずはその時まで待つだけで良いだろう。


「何にしても、最初は水着着用の混浴だけど‥‥‥」
【ふわもこふわもこ~♪羊さんのまね~ふみゅ!】
「すっごいモコモコしているなぁ」
「まねしたみー!」

 とりあず、時間を潰すことには変わりないので、湯を巡るのだが、最初の湯で体を洗う際に、娘たちがそんなやんちゃな芸をしていた。

 石鹸を泡立てまくり、纏うさまはまさに羊。

 水で洗い流せばすぐに消えるけれども、そっくりさにおもわず笑いが漏れてしまう。

【ふふふ、似ていますね。でも、洗い流しますよー】
【ふみゅ~♪】
「みー♪」
 
 上からシャワーをかけられ、直ぐにその泡が流される。

「ハクロもやろうと思えば、できそうだよね」
【私ですと、まず足りないんですけれどね】
「子どもならではの特権ですわねぇ」

 きゃっきゃとする娘たちを見て、僕等はものすごく和まされる。

 ここ最近色々あったし、今のこのほのぼのした時間はまさに癒しである。

「あれ?そう言えばロールは?」
「ここにつかっているにょ~」

 こちらもこちらでゆったり浸かって‥‥‥

【お姉ちゃんにダ~イブふみゅ!】
「おなじくぴょーんっとみー!」
「あ、ちょっとすと、」

どばあああああああん!!
「にょああああああああああ!!」

「ちょっと二人とも!温泉で暴れるなl!」
【というか今、華麗にお腹から行きましたよね!?】
「見事な飛込でしたわね…‥‥」

‥‥‥訂正。温泉でゆっくりとさせるマナーを徹底させなきゃだめだった。

 ほのぼのしていた時間ではあったが、ちょっと教育が必要そうなのであった…‥‥

「そう言えば、ワゼさんの姿が見えませんわね」
「ああ、ワゼなら単独行動中だよ。今はシスターズがいるし、彼女だってこの温泉都市を気に入っているようだからね。まぁ、どこの湯を巡っているのかは…‥」
「何となく察しましたわね」

 できれば、色々あるこの温泉で、ワゼの悩みとかも解消されると良いなぁ。いつも何かとしてもらっているし、せめて彼女のコンプレックスとかどうにかなってほしい所である。



――――――――――――――――――――
SIDE温泉都市ネオ・オルセデス内


…‥‥どこかでダンジョンコアが、シアンのその願いを感じ取って微妙な表情になっているその頃、温泉都市の宿屋街の一角にて、ある者たちが集まっていた。

「何とか、早期に情報を入手したのは良いのだが‥‥‥本当にここで良いのか?」
「ああ、間違いないはずだ。情報をできるだけ集めたからな」
「しかし、この辺りにはいないようだが‥‥‥」
「なんとしても、偶然を装わねばならないから、あまり探すようなしぐさはしないでおけ」

 その者たちは、他国の‥‥‥王国よりもやや小規模の国々の王子や貴族たち。

 正確に言えば、それぞれ継承権を持ちえない第3,4王子であったり、3男5男だったり、将来的に家督を継ぐようなこともないような者たちである。

 そんな者たちが、なぜこの温泉都市にいるのか?

 その理由は…‥‥

「うまく繋がりを持てれば、それだけでもなんとかなるはずだ」
「ああ、あのボラーン王国の女王は魔王の妻らしいし、脅威度は減るだろう」
「そして場合によって見初められすれば、彼女の夫の座に就くかもしれん」
「側室などの逆ではあるが、そうだとしても我々が過ごしやすいのは間違いないだろう」

‥‥‥この者たちの目当ては、どうやってか入手した、ココに来たはずのボラーン王国の女王、ミスティア。

 正確には、彼女と親しくなることでその夫の魔王からの脅威を減少させられるか、もしくはその夫の座に自分たちもつくことで、地位を獲得するなどである。

 確かに、女王には夫も必要であり、後継者である王子などを求める分、数がいた方が良いのかもしれない。

 だがしかし、そういう事よりも、彼らが求めるのは非常に安定した生活であり、今の立場から落とされたくないという思い。

 王配には権力がないのだが、うまい事やってしまえばその権力を手に入れらるかもしれず、実家からは不必要に近くとも、その夫の座に入れば間違いなく安定した生活が入るだろうと考えているのだ。




 そもそもの話なのだが…‥‥まず、そんなに不必要な人は、貴族家にはいない。

 次男三男であろうとも、長子との家督争いで継ぐことができたり、支えたりすることができたり、何か功績を残して新しい家を興すことができたりもする。

 貴族家同士のつながり確保のために政略結婚などもあるし、無駄なことが普通は無いのだ。


…‥だがしかし、ならばここにいる者たちは何なのだと尋ねられれば、実はその普通ではない無駄な者たち。

 貴族、王族だからとか胡坐をかいていたら、いつの間にか何もなくなっており、後がなくなった者たちであるのだ。

 場合によっては平民落ちもあり、それでも冒険者や魔法屋などの職業があるので、そちらで稼ぐこともできるかもしれないが、彼らはそう苦労したくない。

 もっとわかりやすく言えば、ただ単に堕落した生活を楽して送りたい怠惰・能無し・国潰しなどそろえた者たちであった。

 

 なお、そんな野望を持つ愚か者どもに対して、彼らの親が対処していないわけはない。

 というか、やらかした後の方が怖ろしい事は、様々な前例が示しているのでわかっている。

 うまいこと行けばの話であれば、権力を持てるだろうが…‥‥ほぼうまくいかなそうなうえに、やらかされればそれこそ終焉になるのが目に見えているのである。

 


 だからこそ何とかそう馬鹿なことをしないでくれと妨害しまくるも、結果として彼らはここまでたどり着いてしまった。

‥‥‥ゆえに、その親の立場でもある者たちは、最後の手段にである。

 完全に絶縁し、既に何も関係がないという対策を。

 そもそも国そのものを滅ぼしかねない行為でもあるので、完全に逆賊としても対応撮れるようになるという事を。

 後は現地で、処分を頼むことを。

 まぁ、そもそも、まず彼らが無事に帰ってこれるかどうかという話なのだが…‥‥既に、その情報はしっかりとつかまれており、その事も考慮して処分の手が迫ってきていることなど、誰も知らないのであった…‥‥
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