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良からぬ企みは、なぜこうも生み出されるのか

#341 自国の事は自国でやってほしいけれどもデス

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SIDEシアン

‥‥‥ムーラッシュと仮称付けされた、賢者の石の化け物。

 いや、あれはもはや賢者の石ではなく、粗悪品・技量不足・野心などが混ざり合い、暴走を起こした愚か者の成れの果て。

 その当初の志は良かったのかもしれないが、何時しか曲がりに曲がりくねり、修正不可能と化してしまうほど堕ちてしまったものたちを糧にしてしまったろくでもないもの。


 仮に、名づけるのであれば、アレはもはや「賢者の石」ではなく「愚者の石」。

 愚か者どもの夢の果てであり、全てを喰らわんとする、ただの怪物。


「‥‥ここは他国で、手を出す真似はしたくないが‥‥‥けれども、どうにかしないといけない類だよね」

 そうつぶやき、迫りくる怪物ムーラッシュの動向を様子見ながらも、僕はそうつぶやいた。

 この騒動の元凶は、元をただせばこのディングルア王国の王族たちの判断の甘さゆえに引き起こされたもの。

 ゆえに、他国の僕らが責任を負う必要もなければ、手を貸す必要もない、自業自得の産物。

 だが、放置できず、襲ってくる怪物とあらば…‥‥戦うしかないだろう。

  あと、こっちを襲っておきながら、自滅して飲み込まれて、さらなる災厄になってしまったやつへの怒りもある。



 ひとまずは、相手は自身の材料‥‥‥人間の肉体が足りないようで、ワゼの分析では放置すると捕食し始めるようだ。

 にゅるんっと頭の方の、肥大化した賢者の石もとい愚者の石から赤い触手が伸び始める。

「そうはさせないよ『グランドアッパー』!!」

 魔法を発動させると、ムーラッシュの足元の地面が盛り上がり、巨大な土の腕が形成される。

 城下街の一部を少々破壊してしまうが、被害は我慢して欲しい。


ゴッスゥゥン!!
『ゲギャゲギャガァァァァァ!!』
「ん?声が‥‥‥なるほど」

 巨大なアッパーカットにぶっとばされ、宙を舞うムーラッシュ。

 だが、その悲鳴はどうもモンスターの声の類とも異なり、最初の方のあの元王子の拡声器のようなもので広がっていた声に近い。

 おそらくは、声帯とかそういう部分を、あの愚者の石が利用したのだろう。



 大きく宙を舞う中で、態勢を整えて着地しようとするムーラッシュ。

 だが、こんな近くであの巨体が落ちれば、その衝撃がまともに来るし‥‥‥できるだけ離す方が良い。

「ワゼ、一応全員の避難と、ハクロたちの安全を最優先!すべて終えたらシスターズと供に加勢!!」
「了解デス!」

 素早く指示を出し、ワゼが動いたところで、僕自身も相手の追撃のために動く。

 魔力の衣を翼状に形成し、飛行して空中の落下中ムーラッシュの側に距離を詰める。

「んもう一度ぶっ飛んでもらうよ!『ギガアイスナックル』!!」

 先ほどの土の拳に変わって、今度は空中に大きな氷の腕を形成し、更に殴り飛ばす。

 ついでに、ただの拳上に形成したわけではなく、曲げた関節部分から棘を生やしているので‥‥‥

ザッグドッガァァァアン!!
『ギガギャァァァァ!!』

 一瞬大きく突き刺さりつつ、返しもないつるつるした棘なのですぐに殴られた反動でずぼっと抜けて、更に中を真横に飛んでいく。

「よし、後はもうちょっと空の旅を楽しんでもらおうか」

 できるだけ、被害を少なくするための場所を探しながら、空中で殴って移動させればいい。

 

‥‥‥とは言え、僕だってある程度は察している。

 今の一撃、先ほどよりも得意な氷の魔法で攻撃したけれども、悲鳴の感じからなんとなくだが、思った以上に深く一撃が入っていない。

 結構威力を込めたはずだが…‥‥どうも最初よりも・・・・・魔法の攻撃を軽減しているようだ。

 長期戦はおそらく不利。愚者の石とはいえ、賢者の石のようなものだし、その詳細は分からないが、おそらく魔法に対して攻撃を受けるたびに、わずかながらに耐性を持つ可能性が大きい。

 中立の魔王という立場だけど、僕の攻撃は基本的に魔法だからなぁ‥‥‥魔法使わなくても、一応それなりに力とかはある自負はあるけど‥‥‥これ、下手すると魔法攻撃できなくなるな。

 何にしても、魔力の衣、ワゼ、シスターズという攻撃手段もあるので、そこまで不安を抱かなくても良いだろう。

 今はただ、相手がこの攻撃に対応できるようになるまでに、できるだけこの場からコイツをぶっとばしまくって離れさせることだけに集中すればいい。

 被害を減らせそうな場所に落とすまで、ひとまずは耐性の増減の有無を確かめるために、氷と土の腕の魔法を利用して詳細を調べつつ、殴りに殴って空の横移動の旅を行うのであった…‥‥

 

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