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良からぬ企みは、なぜこうも生み出されるのか

#339 自ら招き、そして得てしまうモノなのデス

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SIDE ディングルア王国:元第1王子・・・・・

「何故だ何故だ何故だぁぁぁぁ!!」

 ディングルア王国の、王城内の秘密の地下室。

 辺境の領地を治めるようにという事で、実質的な追放を受けており、ある事情でこの場所にいた元第1王子・・・・】、ゲルバーガー・ザ・ディングルアは叫んでいた。


 元々、彼はこの国の第1王子でもあり、次期王太子候補でもあった王族の一人。

 この国の錬金術の衰退を見て、再び発展させ、最盛期以上の国へ盛り立てようとしていた人物でもあった。




 だがしかし、彼はとある大馬鹿をやらかし、王太子候補から外された上に、王籍剥奪。

 新たな王太子は弟であった第2王子のモルドの方に決定されてしまったのである。

 それでも、平民落ちを免れたのは、一口にその技術力と、一応この国の発展を志していた心意気から、処分を甘くされたのだが…‥‥それがいけなかった。

 一度道を踏み外し、矯正されるなどして元の道へ歩む者もいるだろう。

 だがしかし、このゲルバーガーは道そのものを粉砕し、もはや修正不可能な状態。

 辺境という場所も相まって、彼の無駄な自尊心などが肥大化していく情報は首都までなかなか届かなくなり、、再び返り咲くための手段を模索し、手を悪い方向へ染めていったのである。



 そのための手段として、彼が狙ったのは錬金術を利用した、とある石の生成‥‥‥俗にいう、賢者の石と呼ばれる存在。

 いや、創り出すだけでも相当な功績があるかもしれないとされる代物ではあるのだが、彼の場合はさらにその賢者の石を利用したモノがあった。



 けれども、錬金術の衰退しているこの国で、そうやすやすとそんな代物が作れるわけではない。

 禁書庫に秘されていた、賢者の石の生成手段をいくつか発見したのは良いのだが、その材料などが収集不可能なほど、無理なものが多かったのである。

 それでも無駄に持っていた頭脳を活かして考え抜き、彼は王城内の錬金術師たちの中でも、過激な一派を仲間に引き入れ、その方法を模索させることまでは成功した。

 そして、模索していくうちに、可能そうな生成方歩の一つとして、「人間」を素体にした錬成術を発見したのだ。

 ただし、普通の人間ではダメであり、魂の穢れたような輩ではないと成功率が低いとあった。

‥‥‥死刑囚などを利用できないかと思ったが、生憎そんな者たちはこの国にはいない。

 衰退しつつ、錬金術無しで再び発展し始めたこの国に、相当な悪人がいなかったのだ。

 そのいない理由の一つに、新しい王太子に対して取り入ろうとしていた悪人たちが、王太子妃の元から脱走した料理にぱっくりとやられていたというのもあったのだが、そんなことは彼は知らなかった。




 ならば、他国からと探る中で、とある有効活用できそうな情報を入手した。

 それは、悪人などの魂が穢れている者だけを、呼び出すことができる召喚陣と呼ばれる存在。

 その内容をとある筋から大金をはたいて入手し、王城の方にある、秘密の地下室の方で、仲間の錬金術師たちに使用させたところ、目的通りにそのような輩たちを呼び寄せることが出来たのである。


 ついに手に入れた、都合のいい材料たち。

 そして、そこから錬金し、賢者の石を精製できると待ちわびていたのだが…‥‥世の中、そう都合よくはいかなかった。






 どこかの世界から手に入れてきた、穢れている者たち。

 いてもいなくても関係なく、どんどん使わせてみた物の、どれ一つとしてまともな賢者の石とはならず、失敗作を生み出し続ける。

 純度が低いのか、それともこの世界のものではない者を利用しているせいか、それとも生成方法が間違っているのか‥‥‥あと一押しでというような状態でありながらも、成功しない日々に彼はいら立ちを高めた。

 そして、辺境の領主として、王城へ領地の状態を報告しに行く中で、ふと仲間の錬金術師たちと話し合い、使えそうな情報を彼は得た。




 それが、今王城内に滞在している、他国からの客人。

 王太子妃の妹夫婦らしいが、その者たちに仕えているゴーレムの技術か、もしくは穢れた魂ではだめならば、無垢な子供であり、常人と異なるような者を利用すればいいと彼らは考えた。





 しかし、それは大きな間違いであった。

 その者たちは、魔王の家族であり、その魔王の怒りを買ってしまった。

 既に実行者たちは捕まっており、彼自身が捕まってしまうのも時間問題で、最悪の場合は死罪もあり得るだろう。

 考えていた計画も失敗し、滅亡するのも時間の問題。

 周囲の仲間の錬金術師たちもその事実が浸透し、慌てふためくがどうしようもない。

「考えろ考えろ考えろ‥‥‥‥」

 ぶつぶつと、憑りつかれたように繰り返しつぶやき…‥‥ふと、その無駄な頭が働いてしまった。

「‥‥‥そうだ」



 異世界からの者たちを素材に変え、賢者の石にしようとしていた仲間たち。

 魂が穢れているものを材料にしようとしていたのだが…‥‥その点で、彼は気が付いたのである。


 相手が穢れているとはいえ、一応生きている命。

 その命を冒涜するような真似を行い、研究馬鹿共の欲望とはいえ、倫理から外れた行いをしてしまったこの者たちもまた、穢れているのではないだろうか、と。

 自分も共犯者だが、実際に行っていたのはこの仲間たちであり、なおかつ自分の命は惜しいのだ。





…‥‥最初は純粋に、国の発展のためを思い、錬金術という道を選択し、まっすぐ進んでいたゲルバーガー。

 だが、それはいつしか道を踏み外し、矯正の機会もあったのにそれすら逃し、もはや修正不可能。

 その事こそが、一番自身を穢れさせていたのだが‥‥‥‥そのことに、彼は気が付かない。

 ろくでもない考えを実行し、周囲から断末魔が上がるが、もはやどうでもいい事だ。


「‥‥‥くくく、くははは、ははははははははははは!!」

 誰も叫ばなくなったその部屋で、彼は狂ったように、自身の策が成功したことに対して笑い声をあげる。

 その手に持つのは、真紅よりもさらに濃厚な輝きを放つ、ひときわ大きな石。

 それを手に持ち、この場所がバレるのも時間の問題という事で、笑いを辞め、急いで当初の計画にあった最終段階へ進めていくのであった…‥‥‥
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