上 下
312 / 459
火種はどこにでも落ちていた

#294 参考資料を間違えたのデス

しおりを挟む
SIDEシアン

「‥‥‥『万能家事戦闘人型ゴーレム13』‥‥‥とでも言うと思っていたけど‥‥‥」
【まさか‥‥‥違うバージョンを作り上げるとは…‥‥】
「正直言って、驚きですわね…‥‥」

…‥‥ハルディアの森、湖の地下深くに作られた一室。

 その室内にて、僕等はワゼに見せられたソレに驚愕していた。

 いやまぁ、いつものワゼの事だから、新しいメイドゴーレムでも作るのかと思いきや…‥‥


「流石に私でも、メイドばかりなわけではありまセン。ご主人様の役に立つためにメイドという道を歩んでいるとは言え、流石にメイドだけでは選択の幅が狭まりますからね」

 そう言いながら、わざわざ雰囲気づくりのためか、メイド服の上に白衣を着て、だて眼鏡をくいっとあげてワゼはそう言った。

「しかも、今回の対策相手としては悪魔を対象に‥‥‥つまり、人外対象と考えるのであれば、それに対応できるだけのものが必要となりマス。また、今後もそれ以上の脅威が現れると考えるのであれば、そのための対策を練るために、十分なデータも必要デス」

 カツカツと、靴音を鳴らし、てきぱきと先ほど出したソレを隠していたベールを片付けていく。

「ゆえに、『目には目を、歯には歯を』の精神で考え、『人外には人外を』の精神を基準にして、今回開発に成功したのデス」
「マァ、元々私達、人外デスガ‥‥‥‥」

 すごくまともな意見を、ゼロツーがツッコミをいれ、他のシスターズもうんうんと同意するようにうなずく。

 ワゼたち、メイドゴーレムだからね…‥‥元から人外だよね。


「何にしても、その為のノウハウを預言者の義体とやらを参考にしつつ…‥‥同じく、人外の類であるファフニールのシグルドさんや、温泉都市のダンジョンコア、蠢く植物ドーラさんなど、その他いろいろな方々のものも集め、集約し…‥‥結果として、これが出来まシタ」
「ポチは?」
「ロイヤルさん、ヴァルハラさんのほうでフェンリルデータはとってありますので別に良いのデス」

 そう言いながらも、ワゼは(無い)胸を張る。

「それがこちら!!シスターズシリーズから少々離れ、人外たちから得たデータの結晶を集めた1号!!新型動力機関搭載の『万能家事戦闘人型ゴーレム』改め、作戦参謀及び今後も増加予定を計画中の『新領域開拓人型ゴーレム01』、名称『フロン』デス!」


 ばばばーん!!っとBGMとかが聞こえてきそうな感じで、紹介されたのは…‥‥


「‥‥‥始めまして、ご主人様とその奥様方。拙者はその新領域人型ゴーレムの初号機となったらしい、フロンでござる」


「‥‥‥ちょっと待てワゼ」
「ハイ?」
「いや、100歩譲ってまだ辛うじて人の原型を留めているのは良いんだけど…‥‥シスターズにも副腕が付いていたけどさ…‥‥フロン、腕多すぎでしょ!?」
【100どころかどうなっているんですかこれ!?腕千本以上ありそうですよ!!】
「というか、まず東洋の侍に似た格好ですわよね!?貴女、先日悪魔側の思考を上回るようなものを開発すると言っていたのに、明かに戦闘面での方を意識しているようにしか見えませんわよ!?」

‥‥‥思わず、僕等は怒涛のツッコミを入れるのであった。

 いやまぁ、前に作戦参謀的なモノとか、頭脳明晰な方をとか考えていたと発言していただけに、てっきり学者とかそういう類をモデルにするのかなぁっと考えていたのに‥‥‥阿修羅観音像もびっくりな、腕が滅茶苦茶多い侍じゃん。

 一応、シスターズの例にもれず、女性のような見た目の女侍と言った感じだが、その腕の多さにむしろ目が引かれるよ。

「あの、拙者に何か不満でもあったのでござろうか?」
「いや、そこまでいう訳でもないけど‥‥‥コンセプトが前に聞いていたのと違うような」
「ああ、そうでござるか。安心するでござるよご主人様。拙者はこう見えても、刀ではなく‥‥‥」

 そう言いながら、彼女がその手のひらをこちらに向けた。


視界情報・・・・及び、計算情報・・・・の多重処理に長けた者でござる。刀は単に護身術のために、最低限の者しかインプットされていないのでござるよ」

…‥‥手のひらにあったのは、カメラのようなものや、あちこちに持っているのは紙や筆など。

 すべてが記録・計算用に最適化されているらしく、腕が多くてもすべての作業をそれぞれで行えるようになっているらしい。

 つまるところ、彼女は…‥‥

「‥‥‥女侍のように見えて、多重情報処理をメインにした機体ってこと‥‥?」
「正解デス」

 要は、あの手の多さは計算・記録などの情報を大量にこなすためのものらしい。

 頭を増やすとかも考えたそうだが、分担して行えるようにして負担を減らしたほうがいいと考えた結果、このような千手観音越えな腕を持つフロンが産まれたようであった。

「じゃぁ、侍のような見た目にする意味ないじゃん」
「それもそうですが…‥‥気が付いたらこうなったのデス」

 何をどうしたらこうなるんだ。



 なにはともあれ、メイドから初・脱却したものをワゼは創り出した。

 容姿が千手観音女侍モドキだが、計算能力等はシスターズたちよりも上らしい。

「疑うのであれば、何か問題でもドウゾ」
「じゃぁ‥‥‥フロン、円周率の値は?」
「‥‥‥3.1415926535897932384626433832795028841971…‥‥」
「あ、ごめん、今の無しで」

 うん、答えが分からないような計算はこっちが駄目か。

 あっていることが分かり、なおかつ彼女の能力も確認できるような物を考えるのであれば‥‥‥

「‥‥‥そうだ、作戦参謀も考えていた話があったなら、色々な案を思いつくことも可能だよね?」
「そうでござるが?」
「じゃあ、ワゼの(ごにょごにょ)をどうにかする方法は?」

「‥‥‥」

 聞こえないように注意を払いつつ、そっと耳打ちをしてそう問いかける。

 ワゼがあそこまで、自信満々にしていたのであれば、当然そのような方法も思いつくはずで‥‥‥

「‥‥‥うむ。演算終了でござるが…‥‥その、何でござろうな。ご主人様、拙者の稼働テスト時に、与えられた例題にあったものと同じでものでござって‥‥‥」
「‥‥‥え?」

 稼働テスト時に、与えられた例題…‥‥それはつまり、僕等に彼女を見せる前に、ワゼが既に問いかけていたという事なのだろうか。

 そう思い、ワゼの方を見れば‥‥‥








「‥‥‥あれ?おかしいな。昨日の記憶が飛んでいるような…‥‥」
【えっと‥シアン、世の中には尋ねてはいけない、深淵もあるそうですよ】

 なにやらハクロがそう言ったが、何があったのか僕は覚えていないのであった。

 なんか足がすごい震えているけど…‥‥何があった?

「悪魔に関する計算は、3日もあれば完全に終わるでござる。今はただ、休むのが良いでござるよ」
「えっと‥‥‥誰だっけ?」
「あ、結構記憶が飛んでいるようでござるな…‥‥何処から言えばいいのやら…‥‥」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

捕獲されました。酷い目にあう前に死にたいのですが、友人が自分の命を無理やり預けて行ったので、そうもいきません。早く返してしまいたい。

ともっぴー
ファンタジー
ある日罠にかかってしまったレイラ。捕まるくらいなら死を選ぶつもりだったのに、友人のシンが無理やり自分の命を押し付けて行ってしまった。冷酷な男?に飼われながらも、どうにかシンに命を返す事が出来たのだけど、これから先、私が生きていく理由って? 揺れながら、流されながら答えを探します。「逃げよう等と思うなよ。今日からお前は俺の物だ。」カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアップ+さんにも掲載しています。

死んだと思ったら異世界に

トワイライト
ファンタジー
18歳の時、世界初のVRMMOゲーム『ユグドラシルオンライン』を始めた事がきっかけで二つの世界を救った主人公、五十嵐祐也は一緒にゲームをプレイした仲間達と幸せな日々を過ごし…そして死んだ。 祐也は家族や親戚に看取られ、走馬灯の様に流れる人生を振り替える。 だが、死んだはず祐也は草原で目を覚ました。 そして自分の姿を確認するとソコにはユグドラシルオンラインでの装備をつけている自分の姿があった。 その後、なんと体は若返り、ゲーム時代のステータス、装備、アイテム等を引き継いだ状態で異世界に来たことが判明する。 20年間プレイし続けたゲームのステータスや道具などを持った状態で異世界に来てしまった祐也は異世界で何をするのか。 「取り敢えず、この世界を楽しもうか」 この作品は自分が以前に書いたユグドラシルオンラインの続編です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...