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火種はどこにでも落ちていた
#293 心の準備ぐらいはしておきたいのデス
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SIDEシアン
ワゼの不穏な発言から数日が経過した。
ルルさんはあの後王子を連れ帰り、騎士王国にて徹底的に柔軟化させる再教育を施すらしい。
というのも、そもそもあの王子自体は根はまだ善人の方であり、少々思い込みが激しいだけの矯正可能な部類であったために、廃嫡とかにはならないそうだ。
「まぁ、後遺症が心配されたけど…‥‥大丈夫そうだったな」
【アレが大丈夫‥‥‥なのでしょうかね?】
うん、ハクロが疑問に思っているが、これ以上関わる気もないし、ああなったのは自己責任だと思って欲しい。
聖魔法によって浄化されたせいか、欲望も吹っ飛んで、また補填されたが故の意識変換のようなものだとワゼは分析したが‥‥‥騎士王国であれば、その状態の者でも大丈夫だろう。多分。
それはそうとして、悪魔ゼリアスとその妹魔女のミーナたちと言えば、用事が済んだゆえかさっさと帰ってしまった。
一応、あの悪魔グズゥエルゼ討伐には協力してくれるらしく、あちらはあちらで出来る限り動くらしい
「とはいえ、なーんかあの言葉は気になるよなぁ‥‥‥」
去り際にというか、ふと最後の方に彼が漏らした言葉に、僕はちょっと気になっていた。
―――――――
「ああ、そうだ。預言者のほうに聞きに行っても、多分制限がかかっているから色々聞けないだろうな」
「制限?」
「ん?‥‥‥なるほど、聞いていないのか。あの預言者の言動は全てを語る事がないというよりも、語れないようにされているからな」
――――――――
「…‥‥あの預言者の人が全てを語れないようにか‥‥‥その語れないようにした存在が気になるね」
【考えるだけでも、ろくでもなさそうですけどね】
預言者に関しては話したことはあれども、まだわからない事もある。
結構大昔からいるようだし、それだけの相手が何者かに制限されているとなると、その制限した存在というのは…‥‥いや、考えてもまだ確定できないし、わからないか。
何にしても、警戒はしておくべきか。なぁなぁの緩い感じで付き合いつつ、ある程度踏み込まないようにしておいたほうが良いだろうな。
それに、まだあの悪魔グズゥエルゼは捕えてないし、あの王子のような被害者が出てくるとも限らない。
ゆえに、ワゼが何やら思いついたものを作っているのだが…‥‥これはこれで不安である。
「さすがにまた増えるのは、そろそろ勘弁してほしいですわね‥‥‥最初の軍勢蹂時でさえも、色々と厄介事の火種になりかねないほどでしたものね」
「とはいえ、すでに遅いんだよなぁ‥‥‥」
女王としての執務を一旦終え、落ち着いて茶を飲むミスティアの言葉に、僕は苦笑いを浮かべながらそう答える。
シスターズ‥‥‥現時点で相当数増えているからね。
02~07までいたと思ったら、08~10までできているし、気が付けばワゼの原型となった試作機の00ことゼロツーもいるし、手遅れなレベルで増殖をしているよ。風の噂だとシスターズ自体はワリオファンクラブができる程度に受け入れられてはいるが、その配下にまだまだメイドが大勢いるとか聞くけど、まさかそれはない‥‥‥よね?
「みー?」
【ふみゅ~?】
【ああ、二人とも気にしなくても良いですよ。ほら、あーん】
「みー!」
【ふみゅ~!】
ハクロから手渡しでご飯を食べ、娘たちは笑顔になる。
‥‥‥一応、人間で言えばまだ早いはずだが、人間ではないが故か成長がちょっと早いらしく、現在娘二人は離乳食の開始時期となった。
ちょっと前までは、ハクロの乳を飲んでいたが、こうして普通にものを食べられるようになってきているのは良い事だろう。
「ほら、もうちょっと落ち着いて食べるにょ!口に色々ついているにょ!」
【ふみゅ~♪】
「み♪」
ロールがごしごしと二人の口周りについたご飯をふき、何となくほのぼのとした空気に変わる。
離乳食の材料自体は、ドーラが厳選したという花の蜜や果物のすりおろしなどで出来ており、ちょっと甘さ控えめらしい。
まぁ、ハクロも幼い時には蜜とかを貰っていたそうなので、その再現というべきなのだろうか。
「ちなみにですが、わたくしもちょっと勉強してみたところ、彼女達の食事自体、普通のアラクネとは違いますわね」
「そうかもしれないけど‥‥‥普通のアラクネの子育て離乳食の場合、何を食べさせるんだ?」
「血肉ですわね」
…‥‥何の、とは聞かずともなんとなくわかったような気がする。
そして今、ハクロ及び娘たちが本当に今のままでよかったと、心の底から思えたのであった。
穏やかな時間を過ごしていると、ふとコンコンっとノックをする音が聞こえた。
「ファー!」
「あ、フィーアですわね」
さっきから話に出ていたシスターズの一人、ミスティア付きになっているフィーア。
何やら連絡しに来たようだが…‥‥なんとなく、言われる前にその内容が分かるのであった。
―――――――――――――――――――――
SIDE騎士王国
【ふぅ‥‥‥どうしたものかな】
【団長、溜息をついてどうしたんや?】
【ああ、ララか】
丁度その頃、騎士王国の訓練場にて、休憩場所でルルが溜息を吐いていると、副団長であるデュラハンのララが声をかけてきた。
【あの国王陛下の命令で、王子を連れ戻してきたその疲れかいな?】
【いや、違う。その疲れは特に無い】
国王の任務を受け、無事(?)にレパーク王子を連れ戻してきたことに関してはまだ良い。
だがしかし、今出ている疲れはその後の処理に関することであった。
【レパーク殿下‥‥‥なぜああなってしまったのやら】
【‥‥ああ、質の悪い奴に色々施された話やな?】
ボラーン王国での王子にあったことは、既に報告がなされており、現在すでにレパークのその状態については広まっていた。
哀れに思う者や、彼をそう変えてしまったことに怒りを抱く者、それでも付き添い仕える者など反応は多種多様だが、一応人望は落ちていない。
うん、違って意味で上がってはいたが。
【今回の件は悪魔グズゥエルゼとやらの仕業でもあるが、元をたどれば殿下が思い込みで動いたのが原因。ゆえに、その思い込みなどを矯正するために訓練を施したが…‥‥はぁぁぁ‥‥‥】
【そりゃ、疲れるやろうなぁ‥‥‥何せ、厳しい訓練を望むけれども、恍惚とした表情で受けてしまう、ドM化した殿下にはなぁ…‥‥】
‥‥‥そう、レパーク王子。何をどう間違えたのか、浄化によって欲望が消えた後に何か間違った欲望が入ったのか、それとも隠れていたものがさらけ出されてしまったのか‥‥‥超ドM‥‥‥いわゆるマゾと呼ばれるような類に変わっていたのである。
走り込みではわざわざ何十キロもあるような重しを付けて身を重くし、剣の打ち合いでは訓練用の木刀に自ら打たれ、武器が使えない想定での体術では自分から技を受けたりかけたりして盛大に受け身も取らずにまともに喰らう。
けれども、そのどれも常人でやればアウトな代物を、嬉々としてレパークは取り組むようになってしまったのであった。
【騎士たるもの、正々堂々と真正面から、戦場では率いるように動くが…‥‥あの殿下であればそれはできるが、明かにドン引きするような顔で受けられるのは‥‥‥精神的に疲れるのだ】
【仕方がない事や…‥‥アンデッドのうちですら、相手にしたらあの世へ逃げたいようなレベルやねん‥‥‥】
はぁぁっと深い溜息を吐く二人を見て、周囲の訓練していた騎士たちは同情の目を向けつつ、自分たちも関わる機会がある事を考え、他人ごとではないと思い、同じように溜息を洩らす。
【他の王子たちも矯正を試みたり、ドMにはドSをぶつけるのが良いと言ったやつの案を採用して当てても、その恍惚さに耐えきれずに逃げ出すぐらいだからなぁ‥‥‥】
【市井に放りだすのもアウトやろうなぁ‥‥暴力的な快楽を得るために、何をするのかわからんもん】
【それもこれも、すべてがあの王子を変えた悪魔の仕業だ。ドン引きさせられるような生活を追加されたその仕返しに、絶対にしばき倒してやりたい…‥‥】
ぐっと拳を握り締め、そう宣言するルルに、周囲はうんうんと同意を示し、絶対に成しとげようと心に決める。
そして、そのほんのわずかな休憩時間もそろそろ終わり欠ける中、彼女達の元へ、件の王子が今度は全身とげとげの鎧(棘全部中へ)を着ながら、満面の笑みを浮かべて向かって来たのであった‥‥‥‥
ワゼの不穏な発言から数日が経過した。
ルルさんはあの後王子を連れ帰り、騎士王国にて徹底的に柔軟化させる再教育を施すらしい。
というのも、そもそもあの王子自体は根はまだ善人の方であり、少々思い込みが激しいだけの矯正可能な部類であったために、廃嫡とかにはならないそうだ。
「まぁ、後遺症が心配されたけど…‥‥大丈夫そうだったな」
【アレが大丈夫‥‥‥なのでしょうかね?】
うん、ハクロが疑問に思っているが、これ以上関わる気もないし、ああなったのは自己責任だと思って欲しい。
聖魔法によって浄化されたせいか、欲望も吹っ飛んで、また補填されたが故の意識変換のようなものだとワゼは分析したが‥‥‥騎士王国であれば、その状態の者でも大丈夫だろう。多分。
それはそうとして、悪魔ゼリアスとその妹魔女のミーナたちと言えば、用事が済んだゆえかさっさと帰ってしまった。
一応、あの悪魔グズゥエルゼ討伐には協力してくれるらしく、あちらはあちらで出来る限り動くらしい
「とはいえ、なーんかあの言葉は気になるよなぁ‥‥‥」
去り際にというか、ふと最後の方に彼が漏らした言葉に、僕はちょっと気になっていた。
―――――――
「ああ、そうだ。預言者のほうに聞きに行っても、多分制限がかかっているから色々聞けないだろうな」
「制限?」
「ん?‥‥‥なるほど、聞いていないのか。あの預言者の言動は全てを語る事がないというよりも、語れないようにされているからな」
――――――――
「…‥‥あの預言者の人が全てを語れないようにか‥‥‥その語れないようにした存在が気になるね」
【考えるだけでも、ろくでもなさそうですけどね】
預言者に関しては話したことはあれども、まだわからない事もある。
結構大昔からいるようだし、それだけの相手が何者かに制限されているとなると、その制限した存在というのは…‥‥いや、考えてもまだ確定できないし、わからないか。
何にしても、警戒はしておくべきか。なぁなぁの緩い感じで付き合いつつ、ある程度踏み込まないようにしておいたほうが良いだろうな。
それに、まだあの悪魔グズゥエルゼは捕えてないし、あの王子のような被害者が出てくるとも限らない。
ゆえに、ワゼが何やら思いついたものを作っているのだが…‥‥これはこれで不安である。
「さすがにまた増えるのは、そろそろ勘弁してほしいですわね‥‥‥最初の軍勢蹂時でさえも、色々と厄介事の火種になりかねないほどでしたものね」
「とはいえ、すでに遅いんだよなぁ‥‥‥」
女王としての執務を一旦終え、落ち着いて茶を飲むミスティアの言葉に、僕は苦笑いを浮かべながらそう答える。
シスターズ‥‥‥現時点で相当数増えているからね。
02~07までいたと思ったら、08~10までできているし、気が付けばワゼの原型となった試作機の00ことゼロツーもいるし、手遅れなレベルで増殖をしているよ。風の噂だとシスターズ自体はワリオファンクラブができる程度に受け入れられてはいるが、その配下にまだまだメイドが大勢いるとか聞くけど、まさかそれはない‥‥‥よね?
「みー?」
【ふみゅ~?】
【ああ、二人とも気にしなくても良いですよ。ほら、あーん】
「みー!」
【ふみゅ~!】
ハクロから手渡しでご飯を食べ、娘たちは笑顔になる。
‥‥‥一応、人間で言えばまだ早いはずだが、人間ではないが故か成長がちょっと早いらしく、現在娘二人は離乳食の開始時期となった。
ちょっと前までは、ハクロの乳を飲んでいたが、こうして普通にものを食べられるようになってきているのは良い事だろう。
「ほら、もうちょっと落ち着いて食べるにょ!口に色々ついているにょ!」
【ふみゅ~♪】
「み♪」
ロールがごしごしと二人の口周りについたご飯をふき、何となくほのぼのとした空気に変わる。
離乳食の材料自体は、ドーラが厳選したという花の蜜や果物のすりおろしなどで出来ており、ちょっと甘さ控えめらしい。
まぁ、ハクロも幼い時には蜜とかを貰っていたそうなので、その再現というべきなのだろうか。
「ちなみにですが、わたくしもちょっと勉強してみたところ、彼女達の食事自体、普通のアラクネとは違いますわね」
「そうかもしれないけど‥‥‥普通のアラクネの子育て離乳食の場合、何を食べさせるんだ?」
「血肉ですわね」
…‥‥何の、とは聞かずともなんとなくわかったような気がする。
そして今、ハクロ及び娘たちが本当に今のままでよかったと、心の底から思えたのであった。
穏やかな時間を過ごしていると、ふとコンコンっとノックをする音が聞こえた。
「ファー!」
「あ、フィーアですわね」
さっきから話に出ていたシスターズの一人、ミスティア付きになっているフィーア。
何やら連絡しに来たようだが…‥‥なんとなく、言われる前にその内容が分かるのであった。
―――――――――――――――――――――
SIDE騎士王国
【ふぅ‥‥‥どうしたものかな】
【団長、溜息をついてどうしたんや?】
【ああ、ララか】
丁度その頃、騎士王国の訓練場にて、休憩場所でルルが溜息を吐いていると、副団長であるデュラハンのララが声をかけてきた。
【あの国王陛下の命令で、王子を連れ戻してきたその疲れかいな?】
【いや、違う。その疲れは特に無い】
国王の任務を受け、無事(?)にレパーク王子を連れ戻してきたことに関してはまだ良い。
だがしかし、今出ている疲れはその後の処理に関することであった。
【レパーク殿下‥‥‥なぜああなってしまったのやら】
【‥‥ああ、質の悪い奴に色々施された話やな?】
ボラーン王国での王子にあったことは、既に報告がなされており、現在すでにレパークのその状態については広まっていた。
哀れに思う者や、彼をそう変えてしまったことに怒りを抱く者、それでも付き添い仕える者など反応は多種多様だが、一応人望は落ちていない。
うん、違って意味で上がってはいたが。
【今回の件は悪魔グズゥエルゼとやらの仕業でもあるが、元をたどれば殿下が思い込みで動いたのが原因。ゆえに、その思い込みなどを矯正するために訓練を施したが…‥‥はぁぁぁ‥‥‥】
【そりゃ、疲れるやろうなぁ‥‥‥何せ、厳しい訓練を望むけれども、恍惚とした表情で受けてしまう、ドM化した殿下にはなぁ…‥‥】
‥‥‥そう、レパーク王子。何をどう間違えたのか、浄化によって欲望が消えた後に何か間違った欲望が入ったのか、それとも隠れていたものがさらけ出されてしまったのか‥‥‥超ドM‥‥‥いわゆるマゾと呼ばれるような類に変わっていたのである。
走り込みではわざわざ何十キロもあるような重しを付けて身を重くし、剣の打ち合いでは訓練用の木刀に自ら打たれ、武器が使えない想定での体術では自分から技を受けたりかけたりして盛大に受け身も取らずにまともに喰らう。
けれども、そのどれも常人でやればアウトな代物を、嬉々としてレパークは取り組むようになってしまったのであった。
【騎士たるもの、正々堂々と真正面から、戦場では率いるように動くが…‥‥あの殿下であればそれはできるが、明かにドン引きするような顔で受けられるのは‥‥‥精神的に疲れるのだ】
【仕方がない事や…‥‥アンデッドのうちですら、相手にしたらあの世へ逃げたいようなレベルやねん‥‥‥】
はぁぁっと深い溜息を吐く二人を見て、周囲の訓練していた騎士たちは同情の目を向けつつ、自分たちも関わる機会がある事を考え、他人ごとではないと思い、同じように溜息を洩らす。
【他の王子たちも矯正を試みたり、ドMにはドSをぶつけるのが良いと言ったやつの案を採用して当てても、その恍惚さに耐えきれずに逃げ出すぐらいだからなぁ‥‥‥】
【市井に放りだすのもアウトやろうなぁ‥‥暴力的な快楽を得るために、何をするのかわからんもん】
【それもこれも、すべてがあの王子を変えた悪魔の仕業だ。ドン引きさせられるような生活を追加されたその仕返しに、絶対にしばき倒してやりたい…‥‥】
ぐっと拳を握り締め、そう宣言するルルに、周囲はうんうんと同意を示し、絶対に成しとげようと心に決める。
そして、そのほんのわずかな休憩時間もそろそろ終わり欠ける中、彼女達の元へ、件の王子が今度は全身とげとげの鎧(棘全部中へ)を着ながら、満面の笑みを浮かべて向かって来たのであった‥‥‥‥
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