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火種はどこにでも落ちていた

#286 何時も都合良い時間とは限らないのデス

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SIDEシアン

ズゥゥゥゥゥゥン!!
「うわっ!?」
【ひゃぁっ!?】

 真夜中、ぐっすりこれから眠ろうとヒルドたちも寝かし、ベッドへ僕らが入り込もうとしている中で、突然、地面が揺れた。

 何かこう、地震とは違うというか、隕石が落ちたかガス爆発をしたかのような衝撃に、僕等は思わず眠かった目が覚め、事態の把握にすぐに動く。

「なんだなんだ!!何が起きた!!」

 発信源は、感覚的に首都内。

 窓からその方角を見ると…‥‥夜中ゆえの暗闇に包まれる都市の中で、その闇ですらも飲み込むような黒い炎が上がっていた。

「なんだあれ‥‥?炎上にしては黒すぎるというか…‥‥」
「‥‥‥非常に不味い事態デス!」
「っと、ワゼか」

 いつもの冷静さはどこへやら、何やら焦った様子でワゼが来た。

「何者かの妨害工作によって探知不能。聖剣反応を確認するも、性質反転を確認」
「性質反転?」

 カクカクシカジカと手短に話を聞くと、どうやらあの魔王特攻聖剣が盗まれており、その足取りを彼女は追っていたらしい。

 だがしかし、どういう訳か何者かの・・・・妨害工作がされていて、なかなかつかめなかったようだ。

 そして数分前、ようやくつかんだ時に…‥‥今の事態に陥ってしまったようだ。

「所持している者自体は、人間のような生命反応ですが‥‥‥パターン不明。これまでのデータから比較すると、反応的には…‥‥」

 っと、ワゼが説明を続けようとしていたその時であった。


ズダァァァァァアン!!

 何かぶった切るような音が聞こえたので、その音の方を見てみれば、炎上地域から何かが迫ってきている。

 地面を砕き、そのまま城の壁すらも砕いて寸前まで迫りくる。

「っ!なんか不味い!!」

 直感で嫌なものを感じ、素早く魔法を発動させる。

「『アイスウォール』!!」

 氷の壁を出現させ、それと同時にその何かは壁に激突し‥‥‥

バッギィィィィィン!!
「砕け散った!?」

 かなり分厚くしていたはずだが、それすらも楽々と砕く何か。

 いや、この距離にまで見れば、黒い衝撃波というべきものである。

 とはいえ、そんなことを考えている暇もなく、その衝撃波は迫りくる。

「緊急最大出力!!『オーバーヒートカノン』!!」

 ガコンっと音がするや否や、ワゼの腕が変形し、巨大な大砲のような物に切り替わる。

 そのまま素早く強力な火柱のような物が発射され、衝撃波と激突しあった。

ドォォォォォォン!!

 黒い衝撃波と強力な火柱。

 互いに激突しあい、相殺しあう。

「ぐっ!!」
【ひゃぁあああああああ!?】

 そのぶつかり合った衝撃波に僕は何とか踏みとどまれたが、ハクロの方は吹っ飛ぶ。

 魔力の衣を伸ばして何とか受け止めつつ、すぐに別の方も気が付く。

「そうだ、ヒルドとオルトリンデ、ロールは!?」
「大丈夫にょー!」
【ふみゅ~!】
「みー!」
 
 寝ていたはずの娘たちでも、流石に今の衝撃とかで目が覚めていたのか、既に回避していた。

 ロールが雪のかまくらを作り、その中に揃って隠れていた。

‥‥‥いつの間にというか、その防ぎ方もあったか。


 とにもかくにも、今言えることは一つ。

 どう考えても、今の攻撃は完全にコチラを敵に回す気満々という事である。

「ワゼ!ハクロたちの避難を頼む!」
「了解デス!」

 魔力の衣を翼状にして、飛行する前に、素早くワゼにそう指示を出し、皆の安全を確保してもらう。

 今の攻撃、こちらとしてもさっさと逃げたいが、放置できない類がいそうなのは間違いない。


 都合よくというか、壊れた城壁から僕は飛び出し、その発信源へ向かうのであった‥‥‥


――――――――――――――――
SIDE神聖国ゲルマニア

「‥‥‥ん?」

 丁度その頃、神聖国の神殿内にて、預言者はふと首を傾げた。

「‥‥‥そこにいるのは誰だい?」


 今の義体、中性的な吟遊詩人風な体で振り向き、そう預言者は問いかける。

「‥‥‥やはりというか、この程度ではダメか」


 そう声が聞こえたかと思うと、その先にあった空間が揺らぎ、何者かが出現した。

 全身紫色のローブで身を包み、その正体はすぐに分かるモノではないが…‥‥預言者は、それが何者なのか、見ぬいた。

「また君か‥‥‥この間、別件で痛い目に遭って引っ込んでいるという風の噂を聞いたばかりなのに、ここに侵入してくるとはその噂は嘘だったのかな?」
「いや、あっている。ただ単に、こちらの回復力が上がっただけだ」

 預言者の問いかけに対して、そのローブの者はそう答える。

「まぁ、その件も確かに痛い目にはあったが…‥‥それでも、良い物がとれたからな。ちょっと実験に移せたので、その映像を観てもらおうと思ってここに来ただけだ」
「ふーん‥‥‥そういう事を言う人って、大抵の場合やばい件が多いんだけど…‥‥何をしたのかな?」
「簡単な事だ。この世界の・・・・・魔王に対して、代理の奴実験体に喧嘩を売ってもらった」
「なるほど、その実験に使った実験体で魔王に喧嘩を‥‥‥‥んん?」

 あまりにも自然に言われたのでついそのまま聞き流しかけたが、とんでもない言葉に預言者は気が付いた。

「ちょっと待って、今何と?魔王に喧嘩を売った?」
「ああ、そうだ。正確に言えば、実験体を使用して飲まれた相手をそのまま喧嘩売るようにしてやったというべきか」
「‥‥‥‥うわぁ、悪趣味」
「なんとでも言え。今、ちょうどやっているからな‥‥‥その映像をご覧あれ」

 そう言いながら、紫ローブは懐から小さな箱のような物を取り出し、壁に向ける。

 すると、その箱から光が漏れ出て、壁に映像を投影した。

 そこに移っていたのは、炎上するボラーン王国の首都に、その実験体と思わしき人物の容貌。

 そして空から魔王がやって来たタイミングであり、今まさに激突しようとしている光景だった。

「さてさて、ちょうど都合よく対峙する瞬間のようだ。決着がつくまで、映像は続くから見、」
「流石にやばいからね。ちょっと拘束させてもらうよ」

 言い終わる前に、預言者が動く。

 素早く何かを投げつけ、拘束しようとしたが‥‥‥ローブの者の体をすり抜けた。

「ああ、残念残念。生憎本体はこっちじゃなくて、今撮影側なんでね」
「‥‥‥死地に残ったままとか、バカなの?」

 どう考えても巻き添えになりそうな地で撮影中なことに関して、そうツッコミを入れるのであった‥‥‥
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