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春間近、でも頭春は来ないで欲しい

#250 その時までに間に合わせるのデス

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SIDEワゼ

‥‥‥シアンとハクロの子供が孵化する予定日まで、予測だとあと数日後。

 出てくるまでその卵を狙ってくるであろう愚者たちをワゼたちは選別し、各個撃破していく中、とあるターゲットの番となった。

「次は、これですか…‥‥ふむ、国の中枢でもありますカ」
「患部除去で大丈夫ファ」

 いくら腐った者がいようとも、早い段階で周囲から切り離せば問題ない。

 愚か者は持ちすぎた権力や金があるゆえに、自ら動いてしまうのであれば、それらをすべて消し飛ばせばいい。

「しかし、預言者逝きにはもうちょっと熟成待ちですね…‥‥」

 それならば、手加減すればいいだけの話。

 されども、その手加減はちょっと難しい。

 どの程度の量で事足りるのかを軽く議論し、ワゼたちは動くのであった‥‥‥‥



――――――――――――――――――
SIDE収穫予定ズレ愚者

‥‥‥その男は部屋で優越に浸っていた。

 彼はある珍しいものを求める収集家。ありとあらゆる求めるモノを確実に手に入れるために、自身の持てる権力を活用する。

 普通であれば、そうそう手に入らない物も、彼の持てる権力でどうにかしていた。

 というのも、ここはとある国であり、その国の上部に彼は入り込んでいたからだ。


 不正などを追求されれば首が飛びかねないが、それなりに頭もさえている方であったので、うまいこと隠し通してもいる。


「そして、もうすぐか‥‥‥世にも珍しい、亜種の卵‥‥‥ぐふふふふふ」

 自身の手に入れた情報を元に、その手に入れたい代物‥‥‥‥とあるアラクネの産んだ卵とやらを手に入れるために彼は手を尽くし、もう少しで手に入りそうだという報告を受けていた。

 正直、中身の方はどうでもいい。

 彼が手に入れたいのは、それを「手に入れた」という満足感でもあるからだ。


 世にもおぞましいような絵であろうとも、聴く者が発狂するような楽器であろうとも、性転換するお湯だろうとも、手に入れたいものは確実に手中に収め、それを手に入れたという快感を彼は味わいたいのだ。

 手に入れるものが普通のものであればまだ良いのだが…‥‥そうでないからこそ質が悪い。

 まぁ、この人物自身、その事を分かっている。けれどもやめられないのが腐った性でもあるのだろうか?




 そうこうしているうちに、もうすぐ手にはいったという情報が来るはずである。

 あるだけの権力や予算、その他扱える手段を活用し、これだけ準備をして無理なはずはない。

 その卵までの元には、色々な妨害もあるという話も聞くが…‥‥それでも不可能は無い。


 そう考え、思わず笑みを浮かべる。


コンコンコン
「お」

 扉のノックオンが聞こえ、いよいよかと彼は思う。

「良いぞ、入れ」

 そう口にし、扉が開けばその獲物を持った彼の手の者が現れる…‥‥と思った、次の瞬間であった。


ぶしゅうううううううううううううううううううううう!!
「うおうっ!?」

 扉が開くかと思ったら、その隙間から何かが噴き出してきた。

 煙のようだが、その色は明らかに普通のものではなく、何色かと言い難いような不気味な色合い。

「なんだなんだ!?よせ、来るな!!」

 手を払い、部屋の隅へ逃げるも煙が言う事を聞く訳もないし、払いきれない。

 逃げようと窓の方を見れば、その窓からもいつの間にか同じような不気味な煙が侵入しており、逃げる事すらできない。

 どう見ても不味い類のだと分かっているのに‥‥‥その煙から逃れる事が出来ず、彼は煙に包まれる。

「うっつ!?うごぶぅ!?」

 息を止めてみるも長続きせず、思わず吸った瞬間にその煙の味を彼は知る。

 舌が破壊されるようなおぞましさ。全身に回る悪寒。


 意識が薄れ、そのまま彼は気絶するのであった‥‥‥








「うう‥‥‥はっ!?」

 気が付くと、彼は周囲の状況が自分のいた場所とは違う事に気が付いた。

 だが、見覚えが無い場所にいるというわけでもない。

 むしろ、この国で彼の収集を邪魔した者を放り込んだ場所でもあり…‥‥

「ろ、牢獄だとぅ!?」

 彼の御用達とも言える、その牢獄がある場所。

 その牢の一つに、彼は入れられていた。

 そして、見れば鎖につながれており、其の先には彼の罪状を書いたと思わしき紙が貼られていた。

「な、なんだと!?なぜこれが全て!!」

 そこに書かれていた罪状は全て身に覚えがありつつも、隠してきたはずのもの。

 誰にも見つからない、わからないと思っていた、すべての罪状が延々とあり、しかも既に公の場にさらされたという事まであった。

「な、なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 そう叫ぶも、彼の言葉に答える者はいない。

 ふと、彼はある事にも気が付いた。

 この場は、彼の邪魔者たちを放り込んだ場所でもあったが…‥‥その者たちの姿が見えない。

 いや、むしろこの罪状によって釈放されたという可能性もあるが…‥‥もしそうだとするのであれば、彼らはどうするのか?

 割と悪くとも聡い彼はその事実に気が付き、どうなるのか想像し、血の気が引いた。

 そしてみれば、その罪状の紙の端の方に、どの様な刑に処されるのか書かれた部分もあり…‥‥




―――――――――――――――――――――――――
SIDEワゼ

「…‥‥まぁ、こんなところでしょウ」

 牢屋から離れた場所でも、聞こえてきた絶叫を聞き、ワゼはそうつぶやいた。

 シアンたちに害する者を排除するが、今回はちょっと趣向を変えて手加減しつつ、恐怖を味合わせることにして見たが…‥‥案外、精神的な部分でうまく言ったようである。


「屋敷に気化した物体X投入もしましたが、気絶させる以外にも、恐怖心倍増、想像力倍増などもありましたね…‥‥少々改良しましたが、まだまだ余地がありそうデス」

 そう言い、改良試作型気化物体X入りの瓶をポケットにしまい、彼女は帰還準備を行う。

 今回の相手は相手だけに、ちょっと遠出をしてきたが、シスターズと合体すればそう時間もかからない。


「ゼクス、ツヴァイ」
「シ!」
「ツ!!」

 本日連れてきたシスターズの名を呼び、彼女達を変形させ、身に纏う。

 とはいっても、纏う場所は手と足であり、それぞれに小さな小型のブースターのようなものが付き、背には姿勢制御用の安定翼が現れる。

「では、飛びましょウ」

 ごうっと音を立て、火を噴くブースターの推進力によって、彼女は宙を飛ぶ。

 下手に目撃されないように限界高度まで上昇し、そこから一直線に向かう。


『セー!!』
「ん?通信ですカ」

 っと、飛行中にふと通信が入って来た。

 どうやら‥‥‥‥

「なるほど、急がなくてはいけませんネ。120%加速!!」

 ドウッ!!っと更なる爆音が響き、さらに加速するワゼ。

 通信によれば、遂に卵の一つにひびが入り、孵化の時が来たということだ。

 予定よりもちょっと早いが、まぁあくまでも予定であり、全てがその通りになるわけでもない。

 ひとまずは、その産まれる前にたどり着けるように、彼女は超音速を越えた速度で帰還を急ぐのであった。


‥‥‥なお、超音速だとソニックブームという現象が生じるが、彼女はその点を既に解消していたりする。

 空気を切り裂くように移動できるおかげか、それとも抵抗を減らしたゆえか…‥‥いや、深くは語れないだろう。
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