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春間近、でも頭春は来ないで欲しい

#240 こういうのならば歓迎なのデス

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‥‥‥生物の繁殖方法には色々ある。

 この世界のものだと、分裂したりタマゴだったり腹の中で育ったり等々があり、その上モンスターなども含めるとさらに変わった方法が多くなる。

 そんな中には、それぞれのいいとこどりをした繁殖方法を持つものなどもあって‥‥‥

―――――――――――――――――――――
SIDEシアン

「…‥‥そういうこと?」
「ええ、そういう事デス」

 ハクロの検査が終わり、未だに気絶状態のハクロをベッドに寝かしつつ、僕らはワゼからその説明を受けた。

「アラクネという種族の場合は、卵胎生という‥‥‥卵生と胎生の両方を取りマス」

 ハクロは亜種のようなものだが、元々を考えるとアラクネ。

 アラクネは一か所にずっととどまり続ける事が余り無く、また人間部分とそうではない蜘蛛の部分があるゆえに、普通の胎生のままだとお腹の中を傷つけやすい。

 そこで、その種族がとった繁殖方法が…‥‥卵胎生。

 お腹の中で卵を作ってその中に子をいれ、ある程度の栄養を母体から与えつつ、適当なところで卵を産みだし、後はそのまま外で温めるらしい。

 殻で包むことによってお腹の中を守り、ある程度の栄養を渡せたところでタマゴのまま生み出し、移動しやすくするようだ。

 そして、そのような話が出てくるという事は‥‥‥‥

「ご主人様、おめでとうございマス。ハクロさんの‥‥‥いえ、この場合はもう奥様というべきでしょうカ。奥様のお腹の中に、新たな生命反応を確認いたしまシタ」
「…‥‥やったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 その言葉を聞き、僕は思わずそう喜びの声を上げた。

 やや時間もかかり、養女も得ているけどようやく子を授かった。

 なんというか、この世界へ来て本当に心の底からの嬉しい気持ちが沸き上がる。

「本当なにょ!?妹か弟どっちなにょ!?」
「現時点では不明デス。ですが、これでロールも姉という座に就くことになりマス」
「やったにょぉぉぉぉぉぉ!!」

 ロールもワゼからの回答を得て、同じく喜びに震える。

「あのー、一つ良いかしら?」

 っと、ここでミスティアが手を上げてワゼに向いた。

「ハクロさんってアラクネでしたわよね?アラクネの場合、その子供もアラクネという事にならないのかしら?それでしたらロールは妹を得るという回答で良いはずですわよね?」
「ええ、普通ならそうデス」

 ミスティアの問いかけに対し、ワゼはそう答える。

 言われてみれば、ハクロってアラクネだし、その子供もアラクネになるとは思ったが…‥‥「普通なら」というのはどういう事なのだろうか?

「何かダメな事でもあるのか?」
「いえ、母子ともに現在大丈夫なのは確認していマス。ここ最近の食欲増加も、栄養を子供へと渡すために本能的に動いていただけに違いありまセン。ですが、その生まれる種族という部分で、不明な部分があるのデス」

 ワゼいわく、普通の場合アラクネからはアラクネが産まれるというよりも‥‥‥その一段階前の「アルケニー」と呼ばれるような子蜘蛛の下半身を持つ子供が生まれるらしい。

 まぁ、直ぐに成長してアラクネになると言うが、今回の焦点はそこではない。

 
「奥様の場合、種族はアラクネで間違いないはずですが…‥‥区別的に言うのであれば亜種。通常の者とは異なりマス。また、ご主人様は人間というくくりに入りそうですが、全体的に見れば枠組み外れマス。まぁ、魔王という部分で考えれば魔王種族と言うので分けられマス」
「軽く人外宣言されたんだけど」
「まぁ、間違ってないですわね」
「おとうしゃん、そこは潔くあきらめるにょ」

 なんか憐れまれる視線をミスティアとロールに向けられた。

…‥‥まぁ、それはちょっと物悲しくなるから置いておいて、今はそこではない。

 種族的にはハクロは亜種であるという事と、僕自身が魔王という部分が、そのわからない部分に影響を与えるようだ。

「亜種から通常の種族が産まれる可能性はありますが、大抵の場合は子をなさない場合がありマス。亜種はモンスターの中でもそれなりに珍しいがゆえに、群れから追放されて天敵に襲われたり、物珍しい収集家などに狙われ、子をなす前に命を落とすことが多いのデス」

 それでもなお、生き延びて群れをつくったりして子をなす例もある。

「そういう場合、生まれるのは亜種同様亜種という事もありますが…‥‥場合によっては、どちらかの種族に偏る事もありマス。また、混ざってハーフになる事もあるのデス」

 わかりやすい例を言うと、花を上げるらしい。

 赤い花畑の中に、亜種で白い花があったとしよう。

 赤い花同士であれば赤い花ができるが、赤い花と白い花ではそのどちらかが産まれる事もあるし、赤と白の半々という事で縞模様か混ざってピンクの花が産まれるらしい。

…‥‥面倒な事で言えばメンデルの法則などがあるので、そう簡単に言えるわけではないのだが‥‥‥ややこしいことになるのでそこは省く。

「で、今度は魔王の方になるのですが…‥こちらの場合、過去のデータを見る限り子を得た記録はありマス」

 魔王の場合は、その伴侶を得て子も得るのだが、その子供が次代の魔王という事は無い。

 魔王という存在は記録はあれどもややこしい者も多くあり、ちょっとそのあたりのデータに関しては不足しているようだ。

「一応、子どもの種族自体はその魔王に沿った者か、伴侶の方という者もあるようですが…‥‥面倒なことに、まったく別の種族だったなどもありマス」
「要は生まれてみないと分からないのか」
「ハイ」

 申し訳なさそうにワゼは答えたが、別にどうでもいいか。

「生まれてくる子がどの様な種族になるかは不明だけど、自分の子供であればそれでいいかな。よっぽどの馬鹿とかにならないように、大切に育てよう」
「そうだにょ。弟か妹か分からなくてもロールは立派なお姉ちゃんとして頑張るにょ!」
「そうですわよね。わたくしの場合は嫁いできた身ですし、どの様な子であったとしても共に大事に育てますわ。…‥‥あ、でもその場合、わたくしの時もややこしいことになるような‥‥‥」

 ちょっとばかりミスティアが不安げな声を出したが、家族全員大丈夫そうだ。

「あとはハクロにきちんと言いたいけど‥‥‥‥気絶から目が覚めるまで、後どのぐらい?」
「サァ?今までのケースから言えば、あと2,30分ぐらいですかネ?」

 こういういいニュースの時に限って、気絶中だけど‥‥‥起きたら彼女も喜びそうだな。

「ところでご主人様、一つ相談して良いでしょうカ?」
「ん?」

 今からワクワクする誕生の事を考えていると、ふとワゼが問いかけてきた。

「実は、ミスティア様の分の部屋の確保なども考え、将来的にどうなるかを計算した結果、再びこの家の立て直しを決定したいのですが、大丈夫でしょうカ?」
「‥‥‥ハクロの身とかを考えると、そう長く外には出れないと思うけど」
「大丈夫デス。シスターズも総動員でやれば、1時間ほどで完了いたしマス」
「なら、ハクロが起きて、伝えて、その後にその話をしようか」
「了解デス」

‥‥‥家の立て直しかぁ。前にもあったけど今度は時間が短いな。シスターズのバージョンアップが関係あるのだろうけれども…‥‥ちょっと不安になるのは気のせいだろうか。

 何にしても、春間近な中での嬉しいニュース。

 正確な予定日などの計算にはまだ時間がかかるそうだが、それでもここ最近の騒動に比べれば非常に喜ばしい事なのであった。

 

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