上 下
194 / 459
寒さ到来面倒事も到来するな

#181 寒さ本番間近デス

しおりを挟む
SIDEシアン

……寒さも厳しくなる中、本日の魔法ギルド内に書かれていたお知らせを、僕らは読んでいた。

「‥‥‥『積雪予報』か」
【もうすぐ積もってもおかしくなさそうですものね】

 冬真っ盛りというべき季節だが、どうもいよいよ積雪が予想されるらしい。

 前世とは違い、除雪機などもなく、除雪はほぼ人力。

 ゆえに、雪が降った場合活動が制限されることが多く、こういう予報は大事にされるのだとか。

「魔法ギルドへの依頼も、雪予防対策が多いなぁ」
【雪って結構、厄介ですからね。群れにいた頃はぎゅうぎゅうに集まってしのいだりしましたよ】

 それってペンギンがブリザードから身を守る方法と似たようなモノなんだろうけれど…‥‥アラクネってそこまで密集できるのかな?いや、工夫すればできるのか。

 ちなみに、大半のモンスターの寒さ対策はどうもその形態が多いらしく、この時期になると密集状態で良く見つかるそうだ。

 冬眠はあるそうだが、それは一部で大半が雪が降っていても動くそうだが‥‥‥それでもやはり、活動が制限されるようである。

「冒険者や魔法屋、商人なども活動が制限され、一時的に閑散としそうデス。今のうちに食料の確保などをしておきマス」
「ああ、そうしたほうが良さそうだよね」

 物資も不足しないように買い込む人が多くなるようで、いよいよ冬本番という事なのだろう。

「‥‥‥考えてみたら、この世界に来て初の越冬か」

 前世というべきか、兄や家族によって命を失い、この世界へ来て初めての本格的な冬。

 色々と違う点がありそうだが、対策しないといけないのは同じなのであろう。

 とにもかくにも、適当な依頼を受注し、早めに終わらせつつ、対策にさっさと僕らは移りだすのであった。


―――――――――――――――――
SIDE第2王女ミスティア

「‥‥‥はぁ、今年も雪の時期が来たわね」
「フ?」

 ボラーン王国の王城、第2王女用の執務室内にて、ミスティアは溜息を吐きつつ書類整理を行っていた。

「そう言えばフィーア、貴女ってまだ雪を見たことが無いのかしら?」
「フ!」

 ミスティの問いかけに対して、彼女の護衛を務めているミニワゼシスターズの一人、フィーアはそう返答した。

 フィーアが産まれたのは今年で有り、まだ雪を見たことが無い。

 一応、ワゼたちとの情報共有などもあるので、データとしては知っているのだが、それでも興味はあるのだ。

「雪はね、扱いによっては観光資源にもなるのだけれども、それ以上に物資の流通が滞る厄介な物なのよね。遊ぶと楽しいのだけれども…‥‥政治を担う立場としては、色々と厄介なのよ」
「フー」
「ええ、それなら降らないようにすれば良いって?ううん、それは無理なのよね」

 雨を降らせる、晴天にする、などの儀式型の魔法によって、積雪を予防することは実は可能だったりする。

 とはいえ、そういう行為は自然に何らかの影響を与える可能性があり、出来るだけ最小限に絞る必要などもあるのだ。

 それに、雪は雪で様々な役割もあって、降らないと困る事もある。


「フー!」
「雪が降ったら、王城の雪かきをするって?ええ、その時はお願いね」

 フィーアの言葉に微笑みつつ、ミスティアはそうお願いする。

「ああ、そう言えば忘れてましたわ」

 ふと、そこでミスティアは思い出し、いくつかの書類をまとめ、フィーアに渡した。


「えっと、こっちの書類はマイーナ兄様へ、こちらはゼルドラ兄様宛のものですわ」
「フ」
「内容としては、それぞれについているストーカーヤンデレな方々に対する対策費用の決算などで、さっさと渡したほうが良いですわよ」
「フー!」

 書類を手に取り、フィーアはそれぞれがいるであろう執務室へ向かって歩みだす。

 第1~5王子、第1王女なども本日は王城内にいるので、渡すのはさほど苦労はしないだろう。

 そう思いつつ、まずは第1王子であるマイーナの執務室へ近づいたとき、ふとフィーアは気が付いた。


「‥‥‥フ?」

 スンスンと嗅いでみれば、城内では嗅ぐことが無いような香り。

 なにやらどたばたとしているような音が聞こえ、嫌な予感が思いっきりし始める。


 何事かと思い、部屋のノックをしようと思ったが‥‥‥中から聞こえてくるのは激しい怒号。


「うわぁぁあ!何でここに来ているんだ!?接近禁止措置などされていただろ!?」
「おーっほっほっほ!!そんなものはこの愛の前には意味もなし、粉砕してやったのですわぁぁぁ!!」
「協力すれば怖いものなし!!あとは皆で争うだけよ!!」
「さぁ、観念してくださいましぃぃぃぃ!!」

「‥‥‥フ」
 
 あ、これ絶対に物凄く修羅場化しているやつだと思いつつも、フィーアはそっと扉を開け、中の様子を見る。

 見れば、マイーナ王子は全力で室内を駆け回って逃走しつつ、彼の後を数人ほどの貴族の女性たち、いや、飢えた肉食獣のような者たちが追いかけている。

 修羅場なこの状況、鍛冶場の馬鹿力とでもいうべきか、それともこういう時限定なのか、壁すらも走っているように見えるのだが、相手も負けていない様子。

「フー…‥‥」

 どうしたものかと考えつつ、とりあえず収めないことには意味がない。

 そこで、ひとまず沈静化させるために、フィーアはあるものを取り出した。

「フ」

 構え、狙いを定め、戦場に並ぶタイミングを見計らい、動く。



ビシビシバシン!!
「あふん!」
「おふん!」
「かふん!」

 綺麗に王子を除く肉食女性たちを気絶させ、フィーアは刀を収めた。

「フー」

 みねうちであるっと伝えつつ、王子へフィーアは駆けよった。

「フ!」
「ん?あ、ああ、ミスティアの護衛の子か…‥‥助かったよ」

 助かったことにほっとしつつ、マイーナは書類を受け取った。

「フ?」
「ああ、彼女達はとりあえず城内の警備兵たちへ引き渡してくれ。‥‥‥にしても、あっさりとして来ているような気がするし……あとで警備を見直したほうが良いな」
「フ」

 そうしたほうが良いと意見しつつ、フィーアは気絶した肉食女子たちを引きずって退出するのであった。
しおりを挟む
感想 1,076

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

処理中です...