上 下
180 / 459
一難去ってもなぜこうも来るのか

#168 真っ直ぐなのデス

しおりを挟む
SIDEシアン

……翌朝、僕らは首都内の観光もある程度終わらせていたので、ハクロの姉であるルルの元へ、別れの挨拶をするために向かっていた。

「せっかく会えたんだし、騎士王国に入るのなら観光で向かえるけど、しっかりと挨拶をしておきたいよね」
【ええ、次に会えるのはいつになるのか、分かりませんからね】

 一応、手土産として、首都内の売店で少々聞き込みをして、騎士には好評だというお酒などを持ってきている。

 

 何処に宿泊しているのかについては、既に情報をつかんでいるので、迷う事は無かった。

「えっと、騎士たちの宿泊施設は‥‥‥あれか」
「ええ、間違いないようデス」

 親善試合も終わったので、帰り支度用の馬車があるようだが、まだ準備は済んでいないようだ。



 あらかじめ僕らが向かう事は、ワゼがミニワゼシスター経由で連絡しており、直ぐに彼女がいる部屋へ通された。

【姉さん、来ましたよー!】
【おお、来たか】

 部屋に入ってハクロが声をかけると、リラックスしていたのか、騎士鎧を脱いで私服になっているルルがいた。

……すごい今更だけど、今まで騎士鎧の彼女しか見ていなかったが‥‥‥意外に大きい。

 いやまぁ、どこがとは言わないけど、ワゼがぼそりと「そこも姉妹デスカ……」と、恐怖を感じるような声を出したような気がする。


 っと、よく見ればもう一人、その場にいた。

【あれ?その人って確か…‥‥】
【ん?ああ、うちは副団長のララや】

 そこにいたのは、昨日フィーア合体フォルムの翡翠と対戦した、デュラハン。

 ハクロが聞いた話によれば、数百年前の魔王と一線を交えた人らしい。


【っと、団長さんや。この子が言っていた妹かいな】
【ああ、そうだ。白チビのな】
【もう、姉さん。私はもうチビでもありませんし、名前で呼んでほしいですよ】
【ははは、ちょっとばかりふざけただけだ】

 ぷくぅっと頬を膨らませて抗議したハクロに対して、ルルは軽く笑う。

 姉妹仲はいいけど、その呼び方とかは変えにくいんだろうなぁ…‥‥そう言えば、前世で僕って兄がいたけど、あれに特に呼ばれるようなことは無かったな。

 まぁ、もう過ぎたことだし、預言者いわく食べちゃったらしいから関係ない話か。




 とにもかくにも、部屋に上がらせてもらい、僕らはそこにあった机を囲むようにして着席した。

……いやまぁ、正確に言えば僕とワゼとデュラハンの人だけであるが。体の構造がまず違うからね。

【それはそうとしてだ白チビ、こほん、ハクロ。今日でここを去って帰るという連絡なら貰ったぞ】
【ええ、試合も終わりましたし、観光もしたので帰るのですよ】

 茶を出され、飲みながらハクロはそう答える。

【また会えるまで結構かかりそうだが…‥‥別れのあいさつに来たようだが、その前にちょっとこっちも用があるから都合が良かった】
【と言いますと?】

 ハクロが首をかしげると、ルルは僕の方へ顔を向けた。

【ハクロのつがいなのが、お前だったよな】
「ええ、はい」

 初対面で軽く話した時に、確認したと思うが…‥‥なんとなく、雰囲気が張り詰めたような気がした。

【それでだな、大事な妹のつがいというのであれば一つ聞きたいことができてな…‥‥】
「聞きたいことですか?」
【ああ。私は話を分かりにくくするのも苦手だから、単刀直入に問う。‥‥‥ララが感じていたらしいが、お前がもしかして、今代の魔王というやつか?】
「‥‥‥っ!」

 その言葉に、僕は茶を吹き出しそうになるのをこらえつつ、今言っていたララというデュラハンの方へ顔を向けて見れば、何やら真偽を問うような目をしていた。

……いきなりの爆弾発言に、その場は少々固まるのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

捕獲されました。酷い目にあう前に死にたいのですが、友人が自分の命を無理やり預けて行ったので、そうもいきません。早く返してしまいたい。

ともっぴー
ファンタジー
ある日罠にかかってしまったレイラ。捕まるくらいなら死を選ぶつもりだったのに、友人のシンが無理やり自分の命を押し付けて行ってしまった。冷酷な男?に飼われながらも、どうにかシンに命を返す事が出来たのだけど、これから先、私が生きていく理由って? 揺れながら、流されながら答えを探します。「逃げよう等と思うなよ。今日からお前は俺の物だ。」カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアップ+さんにも掲載しています。

魔帝令嬢と妖精のおっさんの一年記

南野海風
ファンタジー
 フレイオージュ・オートミールは「魔帝ランク」である。  一色の魔法使い「ただの魔法使いランク」は、それなりにいる。  二色の魔法使い「魔鳥ランク」は、まあまあいる。  三色の魔法使い「魔王ランク」は、かなり珍しい。  四色の魔法使い「魔竜ランク」は、非常に珍しい。  五色を有する「魔帝ランク」は、数百年に一人という稀有な存在であった。  外敵から身を守るように。  また、外部要因で当人の人格や性格を歪ませないように。  オートミール家の箱庭で純粋培養で育てられた彼女は、十年ぶりに外出し、魔法騎士の士官学校に通うことになる。  特に問題もなく、順調に、しかし魔帝に恥じない実力を見せつけた一年間を経た、士官学校二年目の初日。  彼女は、おっさんの妖精と出会うことになる。  

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】悪役令嬢に転生しましたが、聞いてた話と違います

おのまとぺ
ファンタジー
ふと気付けば、暗記するほど読み込んだ恋愛小説の世界に転生していた。しかし、成り代わったのは愛されヒロインではなく、悪質な嫌がらせでヒロインを苦しめる悪役令嬢アリシア・ネイブリー。三日後に控える断罪イベントを回避するために逃亡を決意するも、あら…?なんだか話と違う? 次々に舞い込む真実の中で最後に選ぶ選択は? そして、明らかになる“悪役令嬢”アリシアの想いとは? ◆もふもふな魔獣と共に逃避行する話 ◇ご都合主義な設定です ◇実在しないどこかの世界です ◇恋愛はなかなか始まりません ◇設定は作者の頭と同じぐらいゆるゆるなので、もしも穴を見つけたらパンクする前に教えてくださると嬉しいです 📣ファンタジー小説大賞エントリー中 ▼R15(流血などあり)

処理中です...