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何をやらかしてくれるのでしょうか

#134 闇夜で行われるのデス

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SIDEシアン

……馬鹿殿下との接触があった後、僕らはいつも通りに魔法屋として依頼をこなし、わざと・・・日が沈み始め、夜になりかけた頃合いにギルドで依頼達成手続きを終え、停留所へ戻っていた。

「さてと、仕掛けてくるのであれば都市を出てから少し経った場所だろうけれども‥‥‥ワゼ、ばっちり予測もできているよね?」
「ええ、完璧デス。わざわざ襲いやすくした時間帯に、乗って来るでしょウ」

 確認しつつ、僕らは毎度おなじみのポチ馬車に乗り込み、都市アルバスから出発する。

 そして、獲物が隠れている場所へゆっくりと向かうのであった‥‥‥‥


―――――――――――――――――――――――
SIDEゴジャール私兵:団長デッドラ

……日が暮れ、辺りが闇に包まれた頃合いで、遂に我々のターゲットが接近してきた。

 都合よく、本日は月もない曇りの空なので、辺りは明かりが無ければほぼ見えないだろう。


 だが、ターゲットたちが乗る馬車は、夜間走行のために明かりをつけているようで有り、そのおかげで目標にしやすい。


 特定の場所に車で待ち伏せ、その馬車が目的の場所まで来たところで、実行に移した。

(撃てっ!!)

 合図を出すと同時に、道の両端から矢が放たれた。

 向かうのは、馬車を牽引している馬。

 命中してもしなくとも良い。馬をどうにかすれば残るは馬車のターゲットたち。

 その中でも、今回の目的であるメイドの着ているメイド服とやらを手に入れれば良い話しなのだ。



 しゅばばんっと矢が放たれ、馬へ向かっていく。

 命中すれば横転、しなくともビビッて暴れる…‥‥はずであった。


バシィッ!!
「は‥‥?」

 だが、結果は彼らの予想外であった。

 なんと馬が足を止めたかともうと身体を軽く回転させ、それだけの動作ですべての矢がはじかれたのだ。

「ば、馬鹿な!?」

 まさに馬相手なのでその言葉は半分あっているかもしれないが、信じられない光景に私兵たちは驚愕の顔をする。

 この隙に、逃げていればまた違ったかもしれないが‥‥‥‥もう、遅かった。


【…‥‥ふむ、なるほど。大体の馬鹿者たちはここにいる輩か】

 耳がおかしくなったのか、一瞬団長デッドラ及びその他私兵たちは、聞こえてきた声に耳を疑った。


 どう考えてもあり得ない…‥‥馬が言葉を発するなんて、思えなかった。

 驚愕している中、ふと明かりが天から差し込んできた。

 曇り空であったはずだが、いつの間にか晴れてきたようで、月明りが大地を照らす。

 そして、目の前に見えていた馬の姿が変わっていた。



 その体躯は大きく、巨大な狼のような姿。

 月夜の明かりに浮かぶ毛並みはつややかでありながら、緑色に輝くようにも見える。

 されども知恵のある瞳は彼らを見据えており、完全に敵と認めている殺気。

「あ、ま、ま、まさか…‥‥」

 その姿を見ただけで、彼らは目の前の馬であったはずの巨大な狼の正体を悟ってしまった。




 今いるこの王国には、神獣が確認されている。

 その神獣の中でも、このような姿を持つ者とすれば…‥‥フェンリルだ。

 別の噂に聞くような赤きフェンリルとは異なる個体のようだが、それでもフェンリル…‥‥神獣である。


 そして、そのような神獣が何故馬の姿になり、馬車を牽引していたのか。

 それはつまり、神獣を従えさせられるだけ者がいるという証明に他ならない。

 また、その証明があるという事は‥‥‥‥



 そこまで考え、デッドラは撤退の指示を出そうとした。

 だがそれよりも先に、彼らの背後で何かが動いた。


シュルルルルル、バシバシバシィッ!!
「ひぐえぇ!?」
「ぎえっ!?」
「ごべっぶ!?」
「あっふんぶぅ!?」

「な、なんだ!?」

 見れば、音のした方向には、潜んでいたはずの私兵たちが、吊るされていた。


ズドドドドン!!ズドぶすっドドドドドン!!
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
「ひげぇぇぇぇ!?」
「アァーッ!?」
「ぐわぁぁぁぁ!!」

 そしてまた響く悲鳴の方を見れば、そちらはそちらで全身が強烈な何かで殴打されたかのような痕が残る私兵たちが転がっており、数名ほどは何かが刺さっていた。


 気が付けば、私兵たちは全滅しており、無事に立っているのは団長であるデッドラだけである。

 前方フェンリル、左右謎の拘束者と殴打(刺殺)者。


 ならば、逃げるのは後方だと判断したが、それもすでに遅かった。



 ぞくうっ、と強烈な悪寒がデッドラの背中を駆け抜ける。

 その気配は、目の前や左右がから感じ取れる殺気とはけた違い。

 いや、むしろ殺気とは異なるが…‥‥いや、何とも言いようがない気配。

「さてと‥‥‥残るは、一人か」


 背後から聞こえてくる声は、通常であれば何事もない者だったかもしれない。

 昼間に、馬鹿殿下が交渉していた相手の声であれば、きちんと相手がどのような者か確認する際に聞いていたが…‥‥その時とは、桁違いに迫力が違いすぎる。


「ひっ、ひっ‥‥‥‥」

 言葉にならない、呼吸が整わない、体が動かないのないないだらけ。

 だが、そうしている間にも後方のその気配が強くなり、そしてデッドラの方にポンッと手が置かれた。


「それじゃ、残った…‥‥私兵団長、デッドラさんとやら、どうするかな?」

 なぜ自分の名前がという疑問よりも、今はこの場から全力で逃亡したい。

 しかし、不可能なその現実に、デッドラは深い絶望を覚えたのであった…‥‥‥



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