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何をやらかしてくれるのでしょうか

#127 いつも通りなのか違うのかデス

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SIDEシアン

 朝食も食べ、僕らはこの都市キュルストンへ来た目的……アルバスの魔法ギルドが平常営業になるまで、試しに他の都市の魔法ギルドで、何かしらの依頼を受けてこなすために、この都市の魔法ギルドへ向かうことにした。

 ミニワゼシスターズは何やら昨日の混雑原因となった違法奴隷関係に関しての調査のために散開し、僕、ハクロ、ワゼで魔法ギルドへ向かう。

 
 何処にあるのかに関しては、既にワゼが調査済みなので迷うこともなかったのだが‥‥‥


「あれ、なんかやっているな?」
【何かあったのでしょうか?】

 魔法ギルドへ向かう途中、ふと何やらある店の前に人が集まっているのを僕らは見つけた。


「さぁ!!買った買ったの大安売り!!あの違法奴隷商人どもが手を伸ばしていた商品の大安売りだよぉぉ!!」

「‥‥‥違法奴隷商人の商品?」



 ちょっと気になったので探って見れば、どうも昨日の混雑原因であった違法奴隷商人とやらがこれの鯨飲らしい。

 違法奴隷を扱っていたとはいえ、それ以外の商品も扱っていた。

 こういうのは押収されそうな気がするのだが、いかんせん奴隷以外にその商人たちはどうも生鮮食品系統も販売していたようで、そのままにしておくと痛んでしまう。

 流石に何か薬物なども隠すようなものもなく、きちんと処分すればいいのだが、量が量だけに廃棄するのももったいなかったらしい。

 そこで今回、その違法奴隷商人に関わっていなかったと証拠づけられる商人たちが集まって、急きょその商品の販売会を行うことにしたようだ。

 もったいない精神とやらがこの世界にあったのだろう。


 何にしても、違法奴隷を扱っていた商人たちの商品とは言え、一応こちらはまともな物ばかり。

 通常よりも安く買えるという事で、早くも目ざとい買い物客たちが群がったそうだ。

……在庫一掃セールとか、前世のそういった類に似ている光景だよな。


「ふーん……せっかくだし、ギルドへ向かう前にちょっと買い物してみようか」
【結構混雑していますが…‥‥お得感はありますよね】
「狙い撃ちすれば問題ないデス。購入後もすべて私のポケットへ入れれば保存も可能デス」

 一応、手持ちの金を見ればそれなりにあったので、安売りのこの機会を逃さずに、僕らは買い物をすることにした。


 とは言え、安売りのパワーを甘く見る事はできない。

 そう、いかにして安く買うかなど日夜努力している者たちも多く、迂闊に関わればそれこそ死に直結するであろう。

【シアン、流石にそれは言いすぎですよ】
「でも、案外そうでもないデス」
【え?】

……何しろ、この世界には魔法がある。

 過激派な者たちが得るためにぶっ放してくる可能性だってゼロではない。

 と言うか、実際にビュンドンボンっと小さめの魔法が放たれていたりするんだが‥‥‥その辺の取り締まりとかはないのだろうか?



「まぁ、ハクロの糸で楽に取れるから安全か」
【よっと、一本釣りでいけますね】

 ちょっと離れた位置から商品をワゼが見定め、ハクロが糸を投げて捕獲する。

 僕の方は過激派の攻撃が無いように、魔法で防御しつつ、この混雑した買い物から皆を守る。

 
 バランスよく進め、どんどん商品を獲得しつつ30分ほどですべて売り切れた。






「ふぅ、思わず出来事とは言え、けっこう得られたな」
【ええ、全部確実に得られました!】
「手に入れたものは、全て入れましょウ」

 獲得した商品の山に僕らは満足しつつ、ワゼがメイド服のポケットの中へどんどんしまっていく。

 あれよあれよという間に、全部収納し終えた。


「全部入ったね」
「はイ。では、本来の目的のギルドへ……」

「ちょっと待ったぁぁぁ!!」

「「【ん?】」」

 収納し終え、魔法ギルドへ向かおうとしたその時、何やら声をかけられた。

 その声の方を見れば、そこには数人ほどの取りまきと思われる人たちに囲まれた者と、何やらその声の主らしき男性。


「そこのメイド服を着た者!!その服を譲れ!!」

 突然そう言われたが…‥‥なんだ、この人は。


「‥‥‥いえ、私のメイド服は私のものであり、私以外が着用しても意味を成しまセン。あなたのような男性が着用したところで、物凄く痛々しいお姿になると思われマス」
「そういう意味で言ったんじゃねぇぇぇぇ!!というか、誰がその服を着ると言った!!」

 ワゼの天然な振りをした断り方に、ツッコミを入れる男性。

 今の発言でちょっと想像したのか、取りまきらしい人たちが顔を青ざめさせている。

 うん、まぁそんな割とガタイよさげな男性が、どうどうとメイド服を服を着こなしていたら、なんの罰ゲームだと言いたくなるよね。同情したくなるような気がする。


「そもそもの話、彼女は僕のメイドなのですが‥‥‥道端でいきなりそんな発言をするなんて、貴方は変態なのでしょうか?」
「はぁ!?誰が変態だ!」
「だって、人もそれなりに行き交う往来で、衣服をよこせと言われても変わりはないし、裸になれと言っているようなものですよね?」

 その言葉に、相手ははっと気が付いたような表情になった。

 周囲を見渡せば、ちょっとしたこの騒ぎに気が付いた野次馬たちが、うんうんと頷きつつ、冷たい目を相手に向けている。

「な、ならば代わりの衣服を持ってきて交渉すれば譲るのだな?」
「譲るわけありまセン。名乗りもしないような相手で、変態で馬鹿で、どこの誰とも知らない様な人に私のメイド服を渡すわけがないのデス。そもそも、私が着ないと意味ないですヨ」
「今さらっと暴言増えているよな!?」

 一応、話は聞けているようだけど、いちいち声が大きいというか、面倒くさい人たちである。

「というわけでご主人様、さっさとここから去りまショウ」
「ああ、そうするか」
「というわけで、じゃないわぁぁぁぁぁ!!交渉しろよぉぉぉぉ!!」

 叫んでいるようだが、ここで下手に動く訳にもいかない様子。

 その隙に、僕らは追跡されないよう無茶苦茶な進路でこの場を去るのであった。


……名前も知らない、大声の人とその取りまきたちか‥‥‥このままここに滞在してもろくな目に合わなさそうだし、もう帰還したほうが良いかもね。


―――――――――――――――
SIDE大声男と愉快な取りまきたち

 シアンたちがさっさと逃走し、見失ったところでその者は怒るように地面を踏み鳴らした。

「くそう!!逃げられた!!」
「あのような収納能力がある衣服は、かなり便利そうだと思ったのですが‥‥‥」
「交渉の余地もなく逃亡されるとはなぁ」

 はぁっと溜息を吐く者に、落胆する者。


「あれだけの収納が出来る衣服を解析し、量産できれば軍事で非常に役立つと思うのだが…‥‥奴らに独占させていいのか?いや、良いわけがない!!」

 ぐっとこぶしを握り直し、自問自答して彼は答えを導き出す。

「徹底的に奴らを調べ上げろ!!この都市から去った可能性もあるが、あれだけの収納能力を持ち、ストライクゾーンではなかったがそれなりな美女も引き連れていたのだ!!情報収集しやすいに違いないだろう!!」
「あれ?結構美女だったような気がしますが…‥‥」
「余が好むのはよう、げほんげほん、とにもかくにもあのような下半身蜘蛛でか女は好かんのだ!!この、第2皇子ゴジャール・ザ・ベルガモットの名の元に、あいつらを調べろぉぉぉぉ!!」
ごきん!!
「はぐっあ!?」

 大声を出し過ぎたせいか、顎を外したゴジャール。

 取りまきたちがシアンたちに対して調査を開始し始めたが…‥‥どう考えても、やらかし街道を一直線に突き進んでいることには、全く気が付いていないのであった。



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