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何をやらかしてくれるのでしょうか
#120 これはこれで問題ないのデス
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SIDEボラーン王国:王城
……ボラーン王国の王城内、会議室にて、国王及びその他重鎮たちはある報告書を読んでいた。
「……我が娘と、最重要人物の中を深め、婚姻させようと企んでいたが……進展なしか」
「ですが、親睦を深めたと追う点で考えれば、ある意味成功でしょう」
「しかし、それ以上に別の面で物凄い厄介な事が判明したのだが……」
実は今回、第2王女ミスティアが温泉都市オルセデスに向かうことになったのは、偶然ではない。
戦争時の戦力や、その他実力面を考え、王国に引き入れたいシアンと言う人物に対して、彼女を嫁がせて、婚姻関係を利用して王国につなぎとめようという思惑があったのだが、愛がない結婚では幸せがないという想いがあり、国王及びその重鎮たちは、今回の計画を立てたのだ。
それが、「温泉偶然ラブコメ計画」。
温泉都市へと彼らを誘導し、そこで偶然を装って、互に温泉で中を深めてもらおうというのが、この計画の主な目的。
予算などは潤沢にあり、とある条件付きでHWGと言う組織などの協力を経て、今回実行したのだが……結果としては、中途半端に成功と言うだけで、完全ではなかった。
男女と言う異性の意識はある事を認識させはしたが、精々友情として親交を深めた程度で有り、今一つだったとしか言えないのだ。
いや、むしろ第2王女の方から別の厄介事として色々な事実が今回判明し、より一層悩みの種を増やされてしまったのである。
「男女の意識は良いとしてだ…‥‥神獣ファフニールとやらが、隠れて住んでいたのか……」
「しかも、あの都市が温泉が湧き出るダンジョンだと?聞いたことがないぞ、そんな話は?」
「そのうえ……今回のターゲットであったシアンとやらの魔力量が、ぶっ飛んだレベルという事が判明したとか、色々と面倒ごとの種しかないな……」
温泉都市オルセデスの神獣生息、ダンジョンだった事実、そのダンジョンコアの修復へつかわれた魔力量で推測でき……いや、むしろ測定不可能と判断できるシアン。
温泉を利用して、第2王女とくっつけてしまおうという目的であったはずだが、裏目に出たような状態でもあった。
まぁ、どうもその使い魔の方と進展が出てきそうだという報告もあったので、それはそれで何か面白そうだと思えたので、良しとしたが…‥‥
……国王にはこの後不幸が待ち受けていた。
温泉都市オルセデスは、その温泉が魅力的であり、行きたい人が多いという事を。
娘だからまだいいが、そういう計画があるのならば、そのついでに自分たちも向かいたかった王妃・側室たちが、特注の鞭やお仕置き道具を持って突撃して来るまで、あと数分……
――――――――――――――――――――――
SIDEシアン
……温泉都市が復活し、帰宅してから数日が経過した。
温泉で体の調子も良くなったのか、魔法の調子もなかなか良く、依頼なども簡単にこなせるようになったが…‥‥
「ハクロー、どこだー?」
キョロキョロと、家の中を歩いて探すが、見つからない。
帰りの馬車の中にはいたが、終始そっぽを向かれ、話しかける事が出来なかった。
足音などはあるので、いることはいるんだろうけれども……やっぱり、避けられているのか‥‥
……あの日、温泉でのハクロの発言。
【そうですよ!!だってシアンなら大丈夫だと思いますし、私自身貴方であればゆだねても大丈夫だという自信がありますからね!!】
あの言葉から、信頼されているらしいというのは良く分かった。
けれども、それとは別の、何かの感情があったようで、茹でガニのようにハクロは赤くなり、蒸気爆発してぶっ倒れたのだ。
ワゼがその場にいなかったが、ちょっと声を出して呼び掛けて見たら瞬時に来て、彼女を湯船から上がらせ、着替えさせて宿へ運んでくれたが…‥‥そこから、ハクロは全然話さなくなった。
どうにか話をして、彼女といつも通りに過ごしたいのだが、どうも羞恥心でもあったのか、全然関わってくれない。
朝食時に姿を見せたかと思えば、僕を見てすぐに赤くなり、その場を去るし……
「嫌われているのかな?」
「そうじゃないと思いマス」
そうつぶやくと、いつの間にか傍にいたワゼが答えていた。
「ハクロさん、おそらくはご主人様に対して、自覚したこともあり…‥‥それで恥ずかしいのでしょウ」
「自覚したこと?」
「ええ、鈍いというか、あれはあれでまだ自身の理解に至っていなかったのでしょうが……おそらくは、その温泉での発言で、ようやく彼女は理解したのでしょウ」
「理解って……?」
「私の口からは、答えられまセン。こういう事は、ご主人様の方から聞いてみるべきですからネ」
何を理解して、恥ずかしくなったのかわからない。
ワゼはもう、その内容を把握しているようだけど…‥‥いたずらをしているように微笑み、答えてくれなかった。
メイドゴーレムだし、僕の命令で答えさせることもできるのだろうけれども……それは何か違うだろう。
ワゼの言う通り、それは僕自身が辿り着かなければいけないのかもしれない。
……けれども、その内容は本当に何なのだろうか?
温泉で、混浴になった事?
互いに気恥ずかしく、話を踏み出せなかったこと?
いや、それよりも前からあった事なのかな?
考えてみても、まだわからない。
けれども、恥ずかしくなるって……どういうことなのだろうか。
あの彼女が言った言葉は特に恥ずかしいものでもないと思うが…‥‥自覚して、何か恥ずかしいと思えたのか。
つまり、その自覚によって芽生えた物・・・・?
「……という事なんだけど、ドーラは分かるかな?」
【シャ?シャ~……ゲェ】
「なんで呆れたように肩をすくめる動作をするのかな?」
考えても辿り着きにくいので、相談相手に庭にいたドーラに訪ねて見たが、やれやれと言うように肩をすくめる仕草をした。
【シャシャ~ゲ】
「話して自覚する……それは、心から来たもの?」
【シャ。シャシャゲシャゲ】
「つまり、その心が何なのか、理解できれば答えはおのずとわかる?」
【シャゲ】
うんうんと、頷くドーラ。
いや、その心が分からないからこそ、今こうして悩んでいるのだが……
【シャ~…‥‥シャシャゲ】
考え込むようなそぶりを見せた後、何か溜息を吐き、くいくいっと葉っぱを器用に動かして、ついてくるようにと言ったようなしぐさを見せた。
とりあえず、その指示に従って見る事にした。
隠れて、手渡された茂みモドキのような物を持たされ、ついていってみれば、ハクロの部屋の前にたどり着いた。
(シャゲ)
(聞き耳を立てろ?)
人の部屋の話を盗み聞きする趣味はないが…‥‥言われたとおりに、耳を澄ませてみた。
【う~……私だって、こうしていてはいけないと理解できているんですが…‥‥】
中からは、何やら悩んでいるような声を出す、ハクロの声が聞こえた。
今この部屋にいるようだけど…‥‥突撃しても、すぐに逃げるだろう。
そのため、バレないように気配をできる限り消しつつ、僕らはその言葉に耳を傾けた。
【何で私、温泉でああ口走ったのでしょうか…‥‥確かに、シアンにならば大丈夫だとは言いましたが……】
【いえ、何も思っていない相手と言う訳でもないですが‥‥‥‥どうしてこうも、恥ずかしくなるのでしょうか】
「それは、貴女が無意識の自覚をしたからではないですカ?」
【!?ワゼさん!?】
……え?今なんと?
ハクロの部屋の前に、僕とドーラがいるんだけど、ワゼがここから入って来た音なかったよね?
窓を開けたとか、天井裏から来たとか、侵入した音はなかったが…‥‥いや、今はそのことは気にしないで、話に集中しよう。ワゼならば何かしらの侵入手段をもっていても不思議ではないからね。
【無意識の自覚でしょうか?いえ、私は単純に、何故か気恥ずかしいだけで……】
「……はぁ、鈍いというか、自分の気持ちに関して素直になれないのでしょうかこの駄肉蜘蛛ハ」
【さらっと暴言吐いてませんか?】
「ええ、言いましたが何カ?」
【…‥‥】
何も言い返せないのか、しばし沈黙が漂ったのち、ワゼから口を開いた。
「全く、メイドゴーレムである私から見ても、わかる事ですのに、自分の事に関してはご主人様と言い、貴女と言い、なぜ理解できないのでしょうカ?」
【……どういう意味ですか?】
ハクロの問いかけに対して、何やらワゼが呆れたようなそぶりをした音が聞こえた。
「ふぅ…‥‥この際、はっきり言わせていただきますが、ハクロさん、貴女…‥‥ご主人様の事を意識したがゆえに、いえ、恋心を抱いているがゆえに、そのような煮えくりかえらないもどかしい態度になっているのデス」
【…‥‥え?】
(…‥え?)
そのワゼの発言に、ハクロの言葉と同じような感想を思わず僕は心の中でつぶやいた。
【えっと、その…‥‥恋心と言われましても……あれ?】
「反論できませんヨネ?こうして言われて、考え、ようやく自覚できましたカ?」
【…‥‥】
ワゼの言葉に対して、しばし無言が続き、ハクロが口を開いた。
【…‥‥ええ、そう考えると、そうなのでしょうか?】
「疑問形にしなくとも、自覚してくださいヨ…‥‥。まぁ、ともかく、考えにくいのであれば、単純に質問をしますから、それに答えてみてくだサイ」
【はい?】
「まず、貴女はご主人様…‥‥シアンの事を、どう思うのでしょうカ?」
【えっと、良い人だなと思いますよ?貴女に襲撃された時も、慰めてくれましたし、普段から着にかけてくれたり、一緒に遊んだり、依頼を受けて楽しんだり……一緒にいると、心が温かくなる人です】
「では、もしシアンに嫌われタラ?」
【それは絶対に嫌ですよ!?だってそうなれば、私は彼と一緒にいる事が出来ませんし、野生に還らなければいけないし、辛いんですよ!!】
「野生生活が辛いト?ならば、野生化ではなく保護されるような扱いであれば、彼と離れられますカ?」
【‥‥‥無理です!!保護されて不便ではなくなったとしても、それは違いますよ。私はシアンといたいですからね】
「それならば、ご主人様と子供を作って過ごしてみたいですカ?」
【それは確かに良いかもしれませんし、ロイヤルさんを見てちょっとは憧れ‥‥‥って、何を言わせるのでしょうか!?】
「いえ、単純にアラクネとしての子孫を残すための本能に影響されていないかという疑問があっただけデス」
【そんな本能あるかもしれませんが、今はそれ抜きで考えていましたからね!?】
「という事は、普通に子供を持った夫婦として過ごしてみたいという願望はあるんですネ?」
【そうですよ!!本能的なものでもありませんし、仮に子供を授かれなくとも…‥‥シアンと共に居る事が出来るのあれば‥‥‥‥あ】
そこで、ハクロの言葉が途切れた。
何かに気が付いたような声で、口に手を当てて塞いだのか、それとも考え込んだのか、色々と予想が出来る。
「…‥‥で、ようやく自覚しましたカ?子供が出来るできないは置いておいて……ハクロさん、貴女はシアンと共に居たいと思ってますが、それは使い魔としての関係ではなく…‥‥単純に、一人の女性としての心からきてますネ?」
【‥‥‥はい。‥‥‥ええ、確かに私はシアンと共に居たいですし、今の感情は‥‥‥こう、一緒にいたい気持ちが強く、それでいて離れたくないような、恥ずかしく思える様な‥‥‥この感じは…‥‥恋、なのでしょうか?】
「私のデータでは、それも恋の一つかト。ただし、驚異的な鈍感な人でもあることを示すことでもありマス」
【‥‥‥鈍感。ええ、確かにそうかもしれませんが…‥‥そう言われると、ちょっと解せないような気持ちですね。確かに、私は何かもやっとしてましたが‥‥‥‥恋だとすれば、間違いないです。私は…‥‥本当に、シアンの事が好きだからこそ、あの発言でただのメスのアラクネと思われるような行為だと思ってしまったからこそ、羞恥心を抱き…‥‥嫌われたくない、好かれたいという想いがあったのかもしれません】
そうゆっくりと、けれどもキチンと言うハクロ。
その言葉に満足したのか、ワゼの安堵の息が聞こえた。
「ふぅ‥‥‥自覚までに、ちょっとかかりましたネ。ご主人様への恋心とやらを持つ貴女が自覚しなければ、この特注の『気が付け鈍感しばき太郎君3号』を振るう所でしタ」
【何ですかその凶悪そうな、ダサい名前のハリセンは!?】
「まぁ、使わなくても済んだので、良かったでしょウ」
ごそごそと、その道具をしまう音が聞こえ‥‥‥いきなり、扉が開いた。
「そして、ここにご主人様がいまして、ばっちり全部聞かせることができましたからネ」
【…‥‥へ?し、シアン?】
「あ…‥‥えっと…‥‥」
ドアへの接近に気が付かず、聞き耳を立てていた状態で、僕とハクロは向かい合った。
しばしあっけにとられたような表情をしていたが…‥‥僕がここにいる意味を知って、茹でガニのように負合たたび彼女は赤くなる。
【えっと、シアン…‥‥どこから、私たちの会話を‥‥‥】
「その・・・・・ワゼがハクロに問いかけたあたりから」
【つまり全部?】
「‥‥‥うん」
【ワゼさんからの問いかけに答える、私の回答もすべて?】
「そうだよ」
【‥‥‥‥‥‥】
ぎぎぎっと音を立てるようにハクロがワゼの方へ顔を向けると、ワゼはニヤリといたずらが成功したかのような笑みを浮かべた。
ふと、共に居たはずのドーラの方を見れば…‥‥こっちも、食虫植物のような頭とは言え、ワゼと同様の表情を浮かべる。
・・・二人とも、グルだったのか。
最初から、ハクロの話を落ち着いて聞かせるために、組んでいたのか。
その事実に気が付きつつ、ハクロの方を見れば、彼女はしばし考えこむような状態となり…‥‥赤さがさらに増して、何色と表現して良いのかわからない状態となる。
【…‥‥ひ】
「ひ?」
【ひ、きゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!全部聞かれましたぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!】
そう叫び、羞恥心で真っ赤を通り越した色で、ハクロは部屋を飛び出そうとする。
だがしかし、そうは問屋が卸さず、ワゼがロケットパンチ(チェーン付き牽引タイプ)を放ち、がっちりとハクロを捕らえた。
【ああうううううううう!!シアン、今のは聞かなかったことにしてください!私はそんな、えっと】
「…‥‥僕の事が好きだというのが、知られて恥ずかしいの?」
【そうですよ!!こんなただのとりえもないアラクネの私が居候のような立場でシアンに恋心を抱くのはちょっとあさましいように思えるのですよーーーーー!!】
ぶんぶんと身体を振りつつ、拘束から逃れようとしているが、うまいこと行かないハクロ。
そしてその発言を聞き、本当の意味で彼女が何を恥ずかしがっていたのか、僕は理解した。
おそらくは、ハクロはアラクネ…‥‥モンスターと言う立場であり、居候のような状態でもあるため、そんな状態で家主でもある僕に対して恋をしたことに、羞恥心を覚えたのだろう。
いや、使い魔としても働いているし、ニートではないからそう恥ずかしがることもないが…‥‥違うな、何処かで僕とは違う事を、恥ずかしがっているのかもしれない。
羞恥で真っ赤に戻ったハクロに、僕はそっと近づく。
「‥‥ハクロ、それのどこがあさましいの?」
【‥‥‥へ?】
「だってさ、ハクロは僕の使い魔もしているし、糸で何でも作るし、恥ずかしい事はないじゃん」
【え、でも私は、その…‥‥糸はアラクネとしての特性のようなものですし、使い魔なのもモンスターだからですし…】
「‥‥‥わかっていないな、ハクロは」
しっかりと彼女を見据え、真正面から僕はそう語りかけた。
【へ?え?えっと…‥‥】
「ハクロ、君はね‥‥‥もうとっくの前から、僕らの家族じゃん。大事な大事な使い魔でもあり、仲間でもあって…‥‥」
彼女を落ち着かせるように言いつつ、僕もある心に気が付いた。
……以前から、ハクロに対して抱き始めた感情。
大切にしたくもあり、他のものに色々とやられるともやっとして、独占欲のようなものを感じた心。
それが何なのか、良く分からなかったが…‥‥考えてみれば、僕はその心を理解できないのは当たり前だったのだ。
なぜならば、前世でも‥‥‥その感情を知ることはなかった。
あの不倫しまくりの両親や、何もできない兄からも受けることはない、その感情。
「…‥‥僕の大事な人。いや、大事な彼女…‥‥本当の意味で、家族になりたい者なんだよ」
【っ……!!】
その言葉を聞き、ハクロの身体がびくっとして硬直した。
なんか熱くなったような…‥‥いや、僕も気恥しいように思えているからなのだろう。
そう、僕もその感情、前世では味わう事の無かった愛情、いや、恋心をいつしか抱いていたのだろう。
……そう、これが家族愛とかでもあるだろうし、恋人になりたい「恋愛感情」と言うやつであろう。
「だからこそ、それはあさましい思いとかではない。本当に大事な感情でもあるし……」
話を続けたいが、ちょっとこちらも口にするのが恥ずかしい。
いや、緊張するというか、今更ながら自覚したら、すっごい話しづらいというか…‥‥
ハクロの方を見れば、彼女の方も同様の思いを抱いているのか、赤くなりつつ、あわあわとやりようのない手を動かしている。
「‥‥‥もどかしいデス」
【シャゲ】
近くで見ているワゼとドーラがそうつぶやく。
そして、それぞれが何かサインを送り合い……僕らの後方へ回り込んだと思った、次の瞬間。
「こういう時は、押してあげるのデス」
【シャシャゲッ】
どんっ
「うわっ!?」
【っと!?】
痛くなく、それでいて強い力で、僕らはそれぞれ背中を思いっきり押された。
互に前にバランスを崩し、よろめき、そして顔が近づき…‥‥
―――――――――チュッ
「【‥‥‥-----っ!?】」
数秒ほど、状況が把握できなかったが、同時に理解したところで、大きく目を見開いた。
先ほどまで、真正面から向かい合った状態であり、今押されたことで距離が近くなった。
そして、その衝撃で足がもつれ、僕の方はちょっとこけそうに、ハクロの方は、より前のめりになって同じ顔の高さになって‥‥‥
すぐに互にばっと離れたが、その感触は唇に残っていた。
カシャリ、ジーっという音がして、その音の方を見てみれば、ミニワゼシスターズが合体して大きな箱のようになっており、何か一枚の大きな紙を出していた。
そこには、写真のように、さっき起きた出来事が収められており、その内容を見て、僕とハクロは互に認識してしまった。
「…‥‥っ!?」
【なっ…‥!?】
顔が赤くなり、熱くなる。
ほんの少し前に互に心が同じであったという事が伝わったばかりだというのに、いきなり…‥‥
「何をするんだよワゼとドーラぁぁぁぁぁぁぁ!!」
【ムード的に今一つだったのに、このタイミングで何してくれているんですかぁぁぁぁぁぁぁあ!!】
僕とハクロはそう叫び、ワゼたちに詰め寄った。
そう、さっき互にキスをしてしまったことと、その記録をばっちり撮られてしまったことに関して…‥‥
……ボラーン王国の王城内、会議室にて、国王及びその他重鎮たちはある報告書を読んでいた。
「……我が娘と、最重要人物の中を深め、婚姻させようと企んでいたが……進展なしか」
「ですが、親睦を深めたと追う点で考えれば、ある意味成功でしょう」
「しかし、それ以上に別の面で物凄い厄介な事が判明したのだが……」
実は今回、第2王女ミスティアが温泉都市オルセデスに向かうことになったのは、偶然ではない。
戦争時の戦力や、その他実力面を考え、王国に引き入れたいシアンと言う人物に対して、彼女を嫁がせて、婚姻関係を利用して王国につなぎとめようという思惑があったのだが、愛がない結婚では幸せがないという想いがあり、国王及びその重鎮たちは、今回の計画を立てたのだ。
それが、「温泉偶然ラブコメ計画」。
温泉都市へと彼らを誘導し、そこで偶然を装って、互に温泉で中を深めてもらおうというのが、この計画の主な目的。
予算などは潤沢にあり、とある条件付きでHWGと言う組織などの協力を経て、今回実行したのだが……結果としては、中途半端に成功と言うだけで、完全ではなかった。
男女と言う異性の意識はある事を認識させはしたが、精々友情として親交を深めた程度で有り、今一つだったとしか言えないのだ。
いや、むしろ第2王女の方から別の厄介事として色々な事実が今回判明し、より一層悩みの種を増やされてしまったのである。
「男女の意識は良いとしてだ…‥‥神獣ファフニールとやらが、隠れて住んでいたのか……」
「しかも、あの都市が温泉が湧き出るダンジョンだと?聞いたことがないぞ、そんな話は?」
「そのうえ……今回のターゲットであったシアンとやらの魔力量が、ぶっ飛んだレベルという事が判明したとか、色々と面倒ごとの種しかないな……」
温泉都市オルセデスの神獣生息、ダンジョンだった事実、そのダンジョンコアの修復へつかわれた魔力量で推測でき……いや、むしろ測定不可能と判断できるシアン。
温泉を利用して、第2王女とくっつけてしまおうという目的であったはずだが、裏目に出たような状態でもあった。
まぁ、どうもその使い魔の方と進展が出てきそうだという報告もあったので、それはそれで何か面白そうだと思えたので、良しとしたが…‥‥
……国王にはこの後不幸が待ち受けていた。
温泉都市オルセデスは、その温泉が魅力的であり、行きたい人が多いという事を。
娘だからまだいいが、そういう計画があるのならば、そのついでに自分たちも向かいたかった王妃・側室たちが、特注の鞭やお仕置き道具を持って突撃して来るまで、あと数分……
――――――――――――――――――――――
SIDEシアン
……温泉都市が復活し、帰宅してから数日が経過した。
温泉で体の調子も良くなったのか、魔法の調子もなかなか良く、依頼なども簡単にこなせるようになったが…‥‥
「ハクロー、どこだー?」
キョロキョロと、家の中を歩いて探すが、見つからない。
帰りの馬車の中にはいたが、終始そっぽを向かれ、話しかける事が出来なかった。
足音などはあるので、いることはいるんだろうけれども……やっぱり、避けられているのか‥‥
……あの日、温泉でのハクロの発言。
【そうですよ!!だってシアンなら大丈夫だと思いますし、私自身貴方であればゆだねても大丈夫だという自信がありますからね!!】
あの言葉から、信頼されているらしいというのは良く分かった。
けれども、それとは別の、何かの感情があったようで、茹でガニのようにハクロは赤くなり、蒸気爆発してぶっ倒れたのだ。
ワゼがその場にいなかったが、ちょっと声を出して呼び掛けて見たら瞬時に来て、彼女を湯船から上がらせ、着替えさせて宿へ運んでくれたが…‥‥そこから、ハクロは全然話さなくなった。
どうにか話をして、彼女といつも通りに過ごしたいのだが、どうも羞恥心でもあったのか、全然関わってくれない。
朝食時に姿を見せたかと思えば、僕を見てすぐに赤くなり、その場を去るし……
「嫌われているのかな?」
「そうじゃないと思いマス」
そうつぶやくと、いつの間にか傍にいたワゼが答えていた。
「ハクロさん、おそらくはご主人様に対して、自覚したこともあり…‥‥それで恥ずかしいのでしょウ」
「自覚したこと?」
「ええ、鈍いというか、あれはあれでまだ自身の理解に至っていなかったのでしょうが……おそらくは、その温泉での発言で、ようやく彼女は理解したのでしょウ」
「理解って……?」
「私の口からは、答えられまセン。こういう事は、ご主人様の方から聞いてみるべきですからネ」
何を理解して、恥ずかしくなったのかわからない。
ワゼはもう、その内容を把握しているようだけど…‥‥いたずらをしているように微笑み、答えてくれなかった。
メイドゴーレムだし、僕の命令で答えさせることもできるのだろうけれども……それは何か違うだろう。
ワゼの言う通り、それは僕自身が辿り着かなければいけないのかもしれない。
……けれども、その内容は本当に何なのだろうか?
温泉で、混浴になった事?
互いに気恥ずかしく、話を踏み出せなかったこと?
いや、それよりも前からあった事なのかな?
考えてみても、まだわからない。
けれども、恥ずかしくなるって……どういうことなのだろうか。
あの彼女が言った言葉は特に恥ずかしいものでもないと思うが…‥‥自覚して、何か恥ずかしいと思えたのか。
つまり、その自覚によって芽生えた物・・・・?
「……という事なんだけど、ドーラは分かるかな?」
【シャ?シャ~……ゲェ】
「なんで呆れたように肩をすくめる動作をするのかな?」
考えても辿り着きにくいので、相談相手に庭にいたドーラに訪ねて見たが、やれやれと言うように肩をすくめる仕草をした。
【シャシャ~ゲ】
「話して自覚する……それは、心から来たもの?」
【シャ。シャシャゲシャゲ】
「つまり、その心が何なのか、理解できれば答えはおのずとわかる?」
【シャゲ】
うんうんと、頷くドーラ。
いや、その心が分からないからこそ、今こうして悩んでいるのだが……
【シャ~…‥‥シャシャゲ】
考え込むようなそぶりを見せた後、何か溜息を吐き、くいくいっと葉っぱを器用に動かして、ついてくるようにと言ったようなしぐさを見せた。
とりあえず、その指示に従って見る事にした。
隠れて、手渡された茂みモドキのような物を持たされ、ついていってみれば、ハクロの部屋の前にたどり着いた。
(シャゲ)
(聞き耳を立てろ?)
人の部屋の話を盗み聞きする趣味はないが…‥‥言われたとおりに、耳を澄ませてみた。
【う~……私だって、こうしていてはいけないと理解できているんですが…‥‥】
中からは、何やら悩んでいるような声を出す、ハクロの声が聞こえた。
今この部屋にいるようだけど…‥‥突撃しても、すぐに逃げるだろう。
そのため、バレないように気配をできる限り消しつつ、僕らはその言葉に耳を傾けた。
【何で私、温泉でああ口走ったのでしょうか…‥‥確かに、シアンにならば大丈夫だとは言いましたが……】
【いえ、何も思っていない相手と言う訳でもないですが‥‥‥‥どうしてこうも、恥ずかしくなるのでしょうか】
「それは、貴女が無意識の自覚をしたからではないですカ?」
【!?ワゼさん!?】
……え?今なんと?
ハクロの部屋の前に、僕とドーラがいるんだけど、ワゼがここから入って来た音なかったよね?
窓を開けたとか、天井裏から来たとか、侵入した音はなかったが…‥‥いや、今はそのことは気にしないで、話に集中しよう。ワゼならば何かしらの侵入手段をもっていても不思議ではないからね。
【無意識の自覚でしょうか?いえ、私は単純に、何故か気恥ずかしいだけで……】
「……はぁ、鈍いというか、自分の気持ちに関して素直になれないのでしょうかこの駄肉蜘蛛ハ」
【さらっと暴言吐いてませんか?】
「ええ、言いましたが何カ?」
【…‥‥】
何も言い返せないのか、しばし沈黙が漂ったのち、ワゼから口を開いた。
「全く、メイドゴーレムである私から見ても、わかる事ですのに、自分の事に関してはご主人様と言い、貴女と言い、なぜ理解できないのでしょうカ?」
【……どういう意味ですか?】
ハクロの問いかけに対して、何やらワゼが呆れたようなそぶりをした音が聞こえた。
「ふぅ…‥‥この際、はっきり言わせていただきますが、ハクロさん、貴女…‥‥ご主人様の事を意識したがゆえに、いえ、恋心を抱いているがゆえに、そのような煮えくりかえらないもどかしい態度になっているのデス」
【…‥‥え?】
(…‥え?)
そのワゼの発言に、ハクロの言葉と同じような感想を思わず僕は心の中でつぶやいた。
【えっと、その…‥‥恋心と言われましても……あれ?】
「反論できませんヨネ?こうして言われて、考え、ようやく自覚できましたカ?」
【…‥‥】
ワゼの言葉に対して、しばし無言が続き、ハクロが口を開いた。
【…‥‥ええ、そう考えると、そうなのでしょうか?】
「疑問形にしなくとも、自覚してくださいヨ…‥‥。まぁ、ともかく、考えにくいのであれば、単純に質問をしますから、それに答えてみてくだサイ」
【はい?】
「まず、貴女はご主人様…‥‥シアンの事を、どう思うのでしょうカ?」
【えっと、良い人だなと思いますよ?貴女に襲撃された時も、慰めてくれましたし、普段から着にかけてくれたり、一緒に遊んだり、依頼を受けて楽しんだり……一緒にいると、心が温かくなる人です】
「では、もしシアンに嫌われタラ?」
【それは絶対に嫌ですよ!?だってそうなれば、私は彼と一緒にいる事が出来ませんし、野生に還らなければいけないし、辛いんですよ!!】
「野生生活が辛いト?ならば、野生化ではなく保護されるような扱いであれば、彼と離れられますカ?」
【‥‥‥無理です!!保護されて不便ではなくなったとしても、それは違いますよ。私はシアンといたいですからね】
「それならば、ご主人様と子供を作って過ごしてみたいですカ?」
【それは確かに良いかもしれませんし、ロイヤルさんを見てちょっとは憧れ‥‥‥って、何を言わせるのでしょうか!?】
「いえ、単純にアラクネとしての子孫を残すための本能に影響されていないかという疑問があっただけデス」
【そんな本能あるかもしれませんが、今はそれ抜きで考えていましたからね!?】
「という事は、普通に子供を持った夫婦として過ごしてみたいという願望はあるんですネ?」
【そうですよ!!本能的なものでもありませんし、仮に子供を授かれなくとも…‥‥シアンと共に居る事が出来るのあれば‥‥‥‥あ】
そこで、ハクロの言葉が途切れた。
何かに気が付いたような声で、口に手を当てて塞いだのか、それとも考え込んだのか、色々と予想が出来る。
「…‥‥で、ようやく自覚しましたカ?子供が出来るできないは置いておいて……ハクロさん、貴女はシアンと共に居たいと思ってますが、それは使い魔としての関係ではなく…‥‥単純に、一人の女性としての心からきてますネ?」
【‥‥‥はい。‥‥‥ええ、確かに私はシアンと共に居たいですし、今の感情は‥‥‥こう、一緒にいたい気持ちが強く、それでいて離れたくないような、恥ずかしく思える様な‥‥‥この感じは…‥‥恋、なのでしょうか?】
「私のデータでは、それも恋の一つかト。ただし、驚異的な鈍感な人でもあることを示すことでもありマス」
【‥‥‥鈍感。ええ、確かにそうかもしれませんが…‥‥そう言われると、ちょっと解せないような気持ちですね。確かに、私は何かもやっとしてましたが‥‥‥‥恋だとすれば、間違いないです。私は…‥‥本当に、シアンの事が好きだからこそ、あの発言でただのメスのアラクネと思われるような行為だと思ってしまったからこそ、羞恥心を抱き…‥‥嫌われたくない、好かれたいという想いがあったのかもしれません】
そうゆっくりと、けれどもキチンと言うハクロ。
その言葉に満足したのか、ワゼの安堵の息が聞こえた。
「ふぅ‥‥‥自覚までに、ちょっとかかりましたネ。ご主人様への恋心とやらを持つ貴女が自覚しなければ、この特注の『気が付け鈍感しばき太郎君3号』を振るう所でしタ」
【何ですかその凶悪そうな、ダサい名前のハリセンは!?】
「まぁ、使わなくても済んだので、良かったでしょウ」
ごそごそと、その道具をしまう音が聞こえ‥‥‥いきなり、扉が開いた。
「そして、ここにご主人様がいまして、ばっちり全部聞かせることができましたからネ」
【…‥‥へ?し、シアン?】
「あ…‥‥えっと…‥‥」
ドアへの接近に気が付かず、聞き耳を立てていた状態で、僕とハクロは向かい合った。
しばしあっけにとられたような表情をしていたが…‥‥僕がここにいる意味を知って、茹でガニのように負合たたび彼女は赤くなる。
【えっと、シアン…‥‥どこから、私たちの会話を‥‥‥】
「その・・・・・ワゼがハクロに問いかけたあたりから」
【つまり全部?】
「‥‥‥うん」
【ワゼさんからの問いかけに答える、私の回答もすべて?】
「そうだよ」
【‥‥‥‥‥‥】
ぎぎぎっと音を立てるようにハクロがワゼの方へ顔を向けると、ワゼはニヤリといたずらが成功したかのような笑みを浮かべた。
ふと、共に居たはずのドーラの方を見れば…‥‥こっちも、食虫植物のような頭とは言え、ワゼと同様の表情を浮かべる。
・・・二人とも、グルだったのか。
最初から、ハクロの話を落ち着いて聞かせるために、組んでいたのか。
その事実に気が付きつつ、ハクロの方を見れば、彼女はしばし考えこむような状態となり…‥‥赤さがさらに増して、何色と表現して良いのかわからない状態となる。
【…‥‥ひ】
「ひ?」
【ひ、きゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!全部聞かれましたぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!】
そう叫び、羞恥心で真っ赤を通り越した色で、ハクロは部屋を飛び出そうとする。
だがしかし、そうは問屋が卸さず、ワゼがロケットパンチ(チェーン付き牽引タイプ)を放ち、がっちりとハクロを捕らえた。
【ああうううううううう!!シアン、今のは聞かなかったことにしてください!私はそんな、えっと】
「…‥‥僕の事が好きだというのが、知られて恥ずかしいの?」
【そうですよ!!こんなただのとりえもないアラクネの私が居候のような立場でシアンに恋心を抱くのはちょっとあさましいように思えるのですよーーーーー!!】
ぶんぶんと身体を振りつつ、拘束から逃れようとしているが、うまいこと行かないハクロ。
そしてその発言を聞き、本当の意味で彼女が何を恥ずかしがっていたのか、僕は理解した。
おそらくは、ハクロはアラクネ…‥‥モンスターと言う立場であり、居候のような状態でもあるため、そんな状態で家主でもある僕に対して恋をしたことに、羞恥心を覚えたのだろう。
いや、使い魔としても働いているし、ニートではないからそう恥ずかしがることもないが…‥‥違うな、何処かで僕とは違う事を、恥ずかしがっているのかもしれない。
羞恥で真っ赤に戻ったハクロに、僕はそっと近づく。
「‥‥ハクロ、それのどこがあさましいの?」
【‥‥‥へ?】
「だってさ、ハクロは僕の使い魔もしているし、糸で何でも作るし、恥ずかしい事はないじゃん」
【え、でも私は、その…‥‥糸はアラクネとしての特性のようなものですし、使い魔なのもモンスターだからですし…】
「‥‥‥わかっていないな、ハクロは」
しっかりと彼女を見据え、真正面から僕はそう語りかけた。
【へ?え?えっと…‥‥】
「ハクロ、君はね‥‥‥もうとっくの前から、僕らの家族じゃん。大事な大事な使い魔でもあり、仲間でもあって…‥‥」
彼女を落ち着かせるように言いつつ、僕もある心に気が付いた。
……以前から、ハクロに対して抱き始めた感情。
大切にしたくもあり、他のものに色々とやられるともやっとして、独占欲のようなものを感じた心。
それが何なのか、良く分からなかったが…‥‥考えてみれば、僕はその心を理解できないのは当たり前だったのだ。
なぜならば、前世でも‥‥‥その感情を知ることはなかった。
あの不倫しまくりの両親や、何もできない兄からも受けることはない、その感情。
「…‥‥僕の大事な人。いや、大事な彼女…‥‥本当の意味で、家族になりたい者なんだよ」
【っ……!!】
その言葉を聞き、ハクロの身体がびくっとして硬直した。
なんか熱くなったような…‥‥いや、僕も気恥しいように思えているからなのだろう。
そう、僕もその感情、前世では味わう事の無かった愛情、いや、恋心をいつしか抱いていたのだろう。
……そう、これが家族愛とかでもあるだろうし、恋人になりたい「恋愛感情」と言うやつであろう。
「だからこそ、それはあさましい思いとかではない。本当に大事な感情でもあるし……」
話を続けたいが、ちょっとこちらも口にするのが恥ずかしい。
いや、緊張するというか、今更ながら自覚したら、すっごい話しづらいというか…‥‥
ハクロの方を見れば、彼女の方も同様の思いを抱いているのか、赤くなりつつ、あわあわとやりようのない手を動かしている。
「‥‥‥もどかしいデス」
【シャゲ】
近くで見ているワゼとドーラがそうつぶやく。
そして、それぞれが何かサインを送り合い……僕らの後方へ回り込んだと思った、次の瞬間。
「こういう時は、押してあげるのデス」
【シャシャゲッ】
どんっ
「うわっ!?」
【っと!?】
痛くなく、それでいて強い力で、僕らはそれぞれ背中を思いっきり押された。
互に前にバランスを崩し、よろめき、そして顔が近づき…‥‥
―――――――――チュッ
「【‥‥‥-----っ!?】」
数秒ほど、状況が把握できなかったが、同時に理解したところで、大きく目を見開いた。
先ほどまで、真正面から向かい合った状態であり、今押されたことで距離が近くなった。
そして、その衝撃で足がもつれ、僕の方はちょっとこけそうに、ハクロの方は、より前のめりになって同じ顔の高さになって‥‥‥
すぐに互にばっと離れたが、その感触は唇に残っていた。
カシャリ、ジーっという音がして、その音の方を見てみれば、ミニワゼシスターズが合体して大きな箱のようになっており、何か一枚の大きな紙を出していた。
そこには、写真のように、さっき起きた出来事が収められており、その内容を見て、僕とハクロは互に認識してしまった。
「…‥‥っ!?」
【なっ…‥!?】
顔が赤くなり、熱くなる。
ほんの少し前に互に心が同じであったという事が伝わったばかりだというのに、いきなり…‥‥
「何をするんだよワゼとドーラぁぁぁぁぁぁぁ!!」
【ムード的に今一つだったのに、このタイミングで何してくれているんですかぁぁぁぁぁぁぁあ!!】
僕とハクロはそう叫び、ワゼたちに詰め寄った。
そう、さっき互にキスをしてしまったことと、その記録をばっちり撮られてしまったことに関して…‥‥
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