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王族とは何なのか

#102 それぞれの夜なのデス

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SIDEシアン

「……なんか寝にくいな」

 深夜、僕はなぜか目が冴えて眠りにくかった。

 明日には王女と彼女の兄弟たちと情報交換しつつ、何があったのかなど話すのに、寝不足になるのは困る。

 考えられる原因としては、馬車の中で軽い仮眠を取っていたはずだが、案外深い睡眠を取ったせいであろうか?

……ちょっと息苦しかったり、柔らかいものに包まれた感触があったり、綺麗な花畑がみえる夢を見たぐらいだしなぁ。あの柔らかいのって結局なんだったのか…‥‥起きたらハクロがワゼに説教喰らっていたし……まさかね。


 何にしても、寝不足になるのは良くない。

 羊の数を数えてみたり、何か難しい事を考えてと思っても……寝にくい。




 仕方がないので、この時間でも起きているであろうワゼに眠りやすくなるような和食か、もしくは睡眠薬があれば貰おうと思い、彼女の部屋へ向かって歩いていたその時、ふと物音が聞こえた。


がさっ、がさっ、がさっ
「ん?」

 庭の方から聞こえるので、暗闇に慣れた目で見てみれば、何かがうごめいていた。

 
 


 なんとなく気になり、庭に出てみると……

「……なんだあれ?」

 不思議な光景がそこにあった。




【シャ~ゲ~、シャゲ~ゲ~】

 月明りに照らされ、グネグネとドーラが不思議な踊りを踊っていた。

 根っこを地面から引き抜いて足のように動かし、手足代わりに葉っぱや蔓をバタバタと動かし、盆踊りや某ジブリの植物の踊りのような事をしていた。


「何をやっているんだよ、ドーラ?」
【シャゲェ~……シャゲェ?】

 思わず問いかけると、ドーラは僕の存在に気が付いたのかピタッと動きを止めた。

【シャゲェ、シャシャ】
「ふむふむ、なるほど…‥‥」

 身振り手振りのドーラのジェスチャーによる内容では、どうも今日は月明りがなかなか良かったので、日光浴ならぬ月光浴をしていたらしい。

 とは言え、太陽光よりも弱い光なので、全身にまんべんなく光を当てるために、あのような不思議な踊りをすることによって、当たる面積を増やしていたそうなのだ。

【シャシャ~ゲ?】
「え?僕が起きている理由?いや、ちょっと眠れなくてね…‥‥明日にはミスティアたち王族との話もあるのに、寝不足だと嫌だから、ワゼにちょっと寝かせてもらう方法が無いか聞きに行こうとしていたんだよ」
【シャゲェ。……シャシャゲェ】

 ふむ、っと考える様な仕草を見せた後、蔓を伸ばしてドーラはどこからか一凛の花を持って来た。

 月明りによって小さく輝いており、綺麗な三日月模様がある花だが…‥‥

【シャゲッチ】
「へぇ、この花の蜜が心地よい睡眠欲をそそらせるって?」

 ひょいっとついでに手渡されたストローを貰い、試しに吸ってみれば渋い味がした。

 けれども、その後からじんわりと甘みが来ると同時に、眠気も襲ってくる。

「ああ、確かにこれは……ふわぁぁ……うん、眠気が来るね……ありがとう」
【シャゲシャゲェ~】

 ドーラに手を振って別れ、眠気に襲われつつ僕は自室へ戻り、そこでぐっすりとベッドに倒れ込んで眠るのであった‥‥‥‥


――――――――――――――――――――――
SIDEドーラ

【シャゲェ……】

 ぐっすりと眠れる蜜を、この家の主に飲ませ、その場を別れたドーラ。


 月光浴のための踊りを再開しつつ、ドーラは考えていた。


 先ほどシアンに渡され、そして服用されたあの蜜は本当に眠気を誘うのだが…‥‥別の面もある。

 それは、あの花の蜜は普通の・・・人間に飲ませてしまうと、睡眠を促す効果を確かに発揮するのだが……その場ですぐにぶっ倒れ、永遠に目覚めない副作用があるのだ。

 つまり、シアンが普通の人間であればその場ですぐに永遠の眠りにつく可能性があった。


……一歩間違っていれば、毒殺に近い行為。

 けれども、ドーラはある予想を持っていたがゆえにシアンにあえてその蜜を飲ませたのだ。

 そして、その予想を裏付けるがように、確かにシアンには眠る作用が出たようだが……即効で眠らず、眠気をもたらしつつも部屋まで起きているという状態をもたらしたのだ。


【シャゲェ、シャゲェェ♪】

 自身の予想が確信へ変わったことに喜びの声を上げつつ、ドーラは月光浴の踊りを続ける。

 今の・・ドーラではない、別の知識を使用して確認したが…‥‥これはこれで良い収穫である。

 ここに来て良かったと思いつつ、その確信に対しての喜びも上げ、上機嫌になる。



 とは言え、今はまだその事にシアンは気が付いていないようだし、そのことに気が付くのも今はまだ早いだろう。

 とりあえず、まだ目覚めていないようなところもあるが……どうなろうが、シアンがそうしたいのであればそれで良いとドーラは思う。

【シャゲェ♪シャゲェ♪ゲゲゲノシャ~♪】


 とは言え、ちょっとばかりこの家の住人としては、ある意見でワゼと一致していることがあり、少々もやっとしている部分もあるのだ。

 そして、ふと踊っているさなかに、ドーラはあるいたずらを思いつく。

【シャゲェ!】

 名案と言わんばかりに喜びつつ、場合によっては色々と不味いと考え直し、ワゼにはきちんと説明したほうが良いだろうと結論づけ、一旦踊りを中断して彼女の部屋へ向かうのであった。





――――――――――――――――――――――
SIDE都市アルバス


……深夜、都市アルバスでは人々は眠りにつき、静寂が支配していた。

 ミスティアたち王女・王子が止まる宿も例外ではなく、明りは消され、誰もが眠っている。


 そんな中で、都市内である者たちが動き出し、その宿屋の周囲へ集い、そう簡単には聞こえないほどの小さな声で話し合い、宿の中へ侵入した。


 部屋にその者たちが忍びこめば、そこには眠っている王子王女たちがおり、彼らはそれぞれを襲撃すべき、そっと懐から武器を取り出そうとした……その時であった。



シュバシュッツ!!
「「「「っ!!」」」」

 突如として、彼らの懐の武器をはじくかのように、短剣が投げられる。

 武器を落としつつも、なんとかかわした彼らはその武器の投擲方向を見るが、既にそこには誰もいない。

 そして、背後に気配を感じたが……それは既に、遅かった。





「フー……」

 縄でぐるぐる巻きに襲撃者たち、いや、王族を狙ったであろうと考えられる暗殺者たちを捕縛しつつ、適当な物置にフィーアは彼らを放り込んだ。

 ミスティアの護衛をしつつ、一応嫌な予感がしたので真夜中もしっかり警戒していたのだが……どうやら正解だったようだ。

「フー、フー」
「セセ」
「シ」
「ファー!」
 ついでに念には念を押して、姉妹機であるミニワゼシスターズを数体ほど応援に呼んでいたが、そこまで必要なかったのかもしれない。

 ひとまずは、こういう時の情報を聞き出すのに長けている拷問もとい話し合いが得意なフンフに任せ、それぞれで動き、都市内に侵入してくる愚かな獲物たちを彼女達は狩りまくるのであった。

……途中であまりにも相手が弱かったために、獲物の数で競うようになっていたのは言うまでもない。

 そして、たっぷりとお仕置き拷問もとい話し合いが出来るフンフが、鞭を振り回して喜びまくっていたのも言うまではなかった。

 憐れむべきは、その犠牲となった者たちであろう………


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