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いざ、魔法屋へ……

#21 一応、順調デス

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SIDEシアン

「ううううっぐわぁ…‥‥」
「がふっ、ごふぅっ……」
「ああああああああああ…‥‥」


「……徒手空拳で、12名の盗賊の内5名は骨折、4名は降参したので何もなし、2名は麻痺、1名はバーコード状態デス」
「なんか最後の一人だけおかしくない?」
【あ、本当ですね。一人だけ髪形がおかしいです……ぷっ】


 現在、僕らの目の前には、ワゼによって見つかり、そしてズタボロにされてしまった盗賊たちがいた。

 一応、今回はハクロも一緒だったので、盗賊たちが暴れないように糸を出して縄を作ってもらい、縛ったが…‥なんだろう、唯一五体満足でありながらも、失ったものの大きさに打ちひしがれているバーコード頭の人だけが、非常に哀愁を漂わせていた。

「なんで自分だけこうなって……自慢だったボンバーヘッドのかけらもない上に、みじめすぎるわぁ……」
「ま、まぁ命があるだけでも、もうけもんで、くくくくっ」
「ぬ、抜けたんじゃなくて、切られたからまだ生え、ぶっふぅ!!」
「け、けっこういい髪形でやんす、ぶふぅ!!」

 捕らえられた盗賊たちのお頭らしいが、捕まっているにもかかわらず、そのバーコード頭になった人物を見て、まだ軽傷だったその部下たちが笑いをこらえていた。

 人望がなさそうだな…‥‥そしてちょっと哀れにも思えるけれども、なぜこのチョイスを選んだのか、笑いをこらえたいんだけど、結構苦しい。


「ワゼ、何であの盗賊の頭らしい人だけを、あんな頭にしたんだ?」
「目を合わせて早々、ナルシスト100%のセクハラをしてきたので、流石に私もイラっと来てついやっちゃいマシタ」

 ワゼでもいらつくことがあったのか…‥‥と言うか、盗賊にもナルシストな人がいるのか……もう、その哀れな姿しかないが、命があるだけでもいいんじゃないかな?



 でも、このまま盗賊たちを捕縛しておくわけにはいかない。

「近くに街とかないかな?そこへ引き渡してやりたいんだが」
「賞金首でしたら、賞金がもらえますからネ」

 でも、この辺りにどのような街があるのか、まだ僕らはよく知らない。

 となれば、盗賊たちに聞いた方が良いだろう。


「捕まえておいてなんですが、貴方達ってこの周辺に都合のいい都市とか知りませんかね?」
「はぁん?そんな俺たちを引き渡すような場所なんぞ、誰が教えるか?」

 まぁ、引き渡されるのが目に見えているからこそ、反抗的な態度を取られるのは分かっていたが・・・・・

「いう事を聞かないのでしたら、そこのお頭さん以上のヘンテコ頭にカットしマス」
「ごめんなさい。ここから南の方に都市が一つあるので、そこに引き渡してください」
「ちょっとお前!!捕まってしまうのになんでそんな情報を」
「うるせぇ!!お頭のような頭になりたいのかお前らは!!」

 ワゼの説得脅迫に対して、盗賊たちは捕縛されていながらも見事な土下座のような体勢を取って、速攻で答えてくれた。

 どうやらこの先に都市が一つあるようで、ついでに情報を貰ったが、どうやら魔法ギルドもあるそうだ。

 そこに行けば、ついでに今日中に魔法屋にも就けそうである。



「よし、ならそこへ向かうか」
【でも、どうやって輸送しますか?】
「それなら大丈夫デス。大型馬車なので荷台部分に押し込めば入り切ると思われマス」

 そう言えば、フェンリル(夫)サイズに合わせているから、それなりにこの馬車は大きいからな…‥‥でも、そんなに入るかな?

「全員の髪を剃って、身ぐるみを剥げばスペース的にいけマス」

 この瞬間、盗賊たちの顔はものすごい絶望に染まったのであった。

 ただ、バーコード頭にされていたお頭だけは、まだそっちのほうがましだというようにほっとした顔を浮かべつつ、笑われたことを根に持っているのか部下たちに嘲笑を向けていたのであった………


「さぁさぁ、一人ずつ丁寧に毛根全滅、コホン、ではなく剃っていきましょう」
「今毛根全滅って言わなかったか!?」
「生える未来を奪う気かよ!!」
「大丈夫デス。ちょっと未来永劫不毛になるだけですからネ」
「「「「「全然大丈夫じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」」」


「…‥‥なんかワゼが生き生きしているような」
【あの人、多分本性がドSじゃないですかね。ちょっと壊れている部分が見えて、怖いですよ…‥」

 捕縛されて抵抗できない盗賊たちが悲鳴を上げて、一人ずつ不毛になっていく様子を見て、僕とハクロは自然とその恐怖で互にしがみついた。

 そう言えば、ワゼって一部が壊れているらしいが…‥‥そのせいでこんな性格なのだろうか?製作者がいれば、ぜひとも直して欲しい・・・・。

【ああ、なんか同情したくなるなぁ……】

 先ほどからずっと空気だったフェンリル(夫)がそうぽつりとつぶやく。

 そう言えば、この神獣もある意味被害者でもあったか・・・・なんか、うちのメイドが本当にすいません。

――――――――――――――――――――――――――
SIDEフェンリル(妻)


【ふぅ、あの豚は今日は来なかったようだねぇ】

 丁度の頃、ハルディアの森ではフェンリル(妻)は子供たちのために狩りをしつつ、森の外周部の見回りをしていた。

 流石に口を無理やり閉じた、あの肥え太った豚男の姿は見えず、不快な気持ちにならなくてほっとした。


 と、ここでふと何やらある香りが漂った。

【ん?】

 その香りが気になって、その方向を見てみれば、二人の人物が目に入った。

 ただ、その人物たちの片方に、フェンリル(妻)は見覚えがあった。

【あれは確か・・・・‥‥気絶人望無し団長だったかしらね?】

 フェンリル(夫)がサボって綻んでいた結界の隙間から入り込み、調査しに来たという騎士団の団長であったはず。

 その横にいるローブを着た人物は知らないが、そのそれぞれの背中には、この森では獲れない獲物を背負っていた。

 そして、こちらに向かってきていることからして…‥‥何か目的があるのだろう。


 少なくとも、あの肥え太った豚男より話が通じそうなので、とりあえず彼女は対応し始めるのであった‥‥‥‥
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