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婚約破棄で、自由になったと思ったのに
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「ヴィーラ・エクス公爵令嬢!!貴様と婚約破棄をする!!」
・・・・・ようやく言ってくれました!!
とある馬鹿王子のその発言に対し、私、ヴィーラ・エクスは心中物凄く歓喜の声を上げたかった。
本日、ノーンガス王国の学園での卒業パーティにて、ついに私はあの馬鹿王子が婚約破棄を発現してくれたので、うれしさのあまり小躍りしたくなりました。
とはいえ、ここで嬉しがってしまえば、幼い時から企てていたせっかくの計画が台無しです。
ここはポーカーフェイスで・・・・
「あら?何を言うのでしょうか・・・・・殿下」
・・・・・うん、ちょっとこの馬鹿王子の名前を忘れて「殿下」としか言えないですね。
「もう一度言わせる気か!!まぁいい、改めて詳しく言うのであれば、このわたし、クーバズ・ノーンガス王太子は、この愛しの男爵令嬢マツーリン・チッビと婚約を結び、そしてこの諸悪の根源でもあるヴィーラ・エクス公爵令嬢との婚約を破棄することを宣言する!!」
どやぁっと、物凄く殴りたくなるような笑顔で、馬鹿王子はそう言い切った。
名前が分かったけど、いちいち言うのが面倒くさい。あと、あなたまだ王太子じゃないんだけど・・・・修正しなくていいか。
そして、その周囲を馬鹿王子の取りまきである宰相子息、騎士団長子息、魔術師長子息たちが守るように囲み、ニヤニヤとしているのは・・・・・なんというか、馬鹿の塊にしか見えません。
あ、中心に件の令嬢発見。あちらも笑ってはいますけど、どうでもいいです。
「‥‥‥えっと、何か私に至らぬところがあったのでしょうか?よりによってこの場で王太子と言った上に、婚約破棄宣言及び身分が会わない令嬢との婚約とは、何を考えているのでしょうか?」
さっさとこの場から去って、あの計画に移りたいのですが・・・・・少々我慢して、きちんとその理由を聞いておきましょう。
ところで会場の皆さま、全員顔面蒼白になっていますけど誰一人として止める勇気はないのです?まぁ、いない方が都合が良いのですがね。
「当り前だ!!お前は知らぬふりを通そうとしているが、このわたしの正義の鉄槌からは逃れられぬ!!貴様はこの愛しのマツーリンに対して長い間いじめをしており、殺そうとしただろう!」
「そうだそうだ!!お前はマツーリンの教科書を破ったり!!」
「せっかくやった宿題のレポートを盗作したり!!」
「水を被せて濡らしたり!!」
「「「挙句の果てには毒入りのクッキーを茶会に持ち込み、毒殺しようとしただろう!!」」」
馬鹿王子に続くように、取りまきの馬鹿子息たちも一緒にそう宣言しました。
‥‥‥なんというか、ここまで計画通りなのは良いんだけど、声がそろってなんかキモいです。
とはいえ、どれもこれも私には心当たりがありません。
だって普通、こういういじめってもっと苛烈にしますよね?もし本気で私がやれば、彼女は今頃この世にはいませんからね‥‥
ま、私を犯人だと思うように仕向けているので間違ってもいませんが。
「‥‥‥へぇ、ではそれらを私が本当にしたと言うならば、婚約破棄以外の罰をするつもりもあるんですね?」
「その通りだ!!生憎、この国には死刑制度がないゆえにお前の命を散らせないのが悔しいが、次に重い罰として、この場で身分剥奪の上の国外追放に処す!!お前はもはや、このノーンガス王国の国民でもないのだぁぁぁぁぁぁ!!」
堂々と宣言し、完全勝利だと思っていらっしゃる馬鹿王子。
・・・・・その言葉、待っていました(◎゚∀゚◎)!!
「では婚約破棄及び、身分剥奪、国外追放・・・・間違いないですよね?」
「何度言わせる気だ!!当たり前だ!!貴様は耳が遠いのか!!」
笑いたいのをこらえ、確認をとると馬鹿王子は顔を真っ赤にしてそう告げる。
よし、言質取ったぁぁぁぁあ!!
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!それでは間違いなく、この私はこの国を去ります!!では、どうぞ婚約破棄をしてくれてありがとうございました馬鹿王子!!」
「んなっ!?な、なんだいきなり!?」
私の喜びの叫びに、余りにも急な発言に驚き、どさくさに紛れていった悪口にも気が付かず、馬鹿王子たちは驚愕する。
さぁ、これでようやく心置きなく、私はこの国から去って、自由になれるのだ!!
嬉しさをあふれ出させ、私は背中から大きな翼を出した。
そして、そこからひび割れるようにしてこの体が砕け、本来の姿が中から解き放たれる。
ふと見れば、馬鹿王子たちは口を開けて固まっていた。
そりゃそうだろう、本来の姿の私は、あのかりそめの令嬢の姿でも美しかったのに、この姿になればさらに美しいのだ。
‥‥‥そう、私は実は、この国を代々守護していた天使なのだ。
数百年前、この国ができる前にとある者たちが、元は荒れ果てた大地しなかったこの国を豊かにしたいと神に願った者たちの想いが純粋だったゆえに、わざわざ派遣されてきて、豊かさをもたらしていたのだが、ここ最近では私がもたらしていた豊かさを忘れ、この国では馬鹿が多くなった。
ゆえに、この際忘れてしまった者たちを見捨てようと思い、神が最後通牒としてこの国国王に告げた。
わざわざこの国を守護していた私をとある貴族家の娘に仕立て上げたので、王子と婚約させろと。
だが、もしその王子が婚約破棄を言い渡したら私はこの国から去って、豊かだったこの国は滅びの道へ行くと。
聞いた話だと、枕元に血濡れ包丁を持ちながら告げたようだけど・・・・それ、神のお告げというよりも脅迫なのでは?
まぁ、最初から私はこの国を見捨てる気だったので、婚約破棄をしようと密かに馬鹿王子たちを支援していたんだけどね。
わざわざ頭の軽そうな馬鹿な令嬢を見付け出し、学園に入学させて馬鹿王子たちに出会いやすくして、親交を深めさせたのだ。
だってさ、数百年も豊かさをもたらしたのに、ここ最近忘れて貴族至上主義だの、自分たちこそが神に選ばれた人間だの、うっとおしかったもん。
その為、この婚約破棄に至るまで努力をしていたが・・・・・うまくいったようである。
とにもかくにも、馬鹿王子たちが言葉を発する前に、私は急いでその場から飛び立った。
追及されたりしたら不味いもんね。
というか、出る直前にこの国の国王と王妃、その他の王子たちが飛び込んできたのを見たけど‥‥‥まぁ、そうでもいいか。
そして飛び立ってから4年経過しました。
自由になって飛び回り、一旦もう一度あのかりそめの令嬢の肉体を作り、今はノーンガス王国とは別の適当な村で生活しています。
ある日いきなりこの村に降りたけど、この村の人達ってあの馬鹿共と違って綺麗な魂というか、良い心の持ち主なのは分かっているんだよね。
で、村娘として村中の仕事の手伝いをしているけど、一生懸命に生きている人間たちの姿を見るのはいいねぇ。
やっぱり、豊かさをただもたらすのは意味ないし、こうやってきちんと真面目なのが一番いいよ。
あの国に縛られて自由でなかったときに比べると、物凄く今の自由が心地いいな。
そんなこんなですごしていたある日のことである。
「ヴィーラちゃん、ちょっとおつかいに行ってくれないかしら?」
「はーい、分かりましたー」
近所のおばちゃんが腰を痛め、世話をしていたのだが、今日はおつかいを頼まれた。
そんでもって、村近くの市場でそのおつかいをしていた時だった。
「えっと、次に買うのは薬草と・・・」
「・・・・っ!!ヴィーラか!?」
「え?」
ふと、何か名前を叫ばれたので見てみれば、そこにいたのは・・・・
「‥・・・第2王子?」
あの馬鹿王子の弟であった、第2王子様。
その方がまさか市場にいるとは・・・・でも、ここってノーンガス王国から離れているはずだよね?
ちょっと場所を移し、とりあえず市場近くの喫茶店で話すことになりました。
あの馬鹿王子とは違って、この第2王子様は印象良いからね。根も腐っていなかったし。
「‥‥まさか、貴女がここにいるとは思ってもいませんでしたよ」
「ええ、でもどうして貴方がここにいるの?」
第2王子がこの場にいる理由が今一つわからないのだが・・・・・
「実は、貴女が天使だという存在なのは、神のお告げで聞いていました」
「え?」
なんでも、あの馬鹿王子の親である国王にお告げに行ってから数年後、神はこのお髄の枕元に絶ったそうなのです。
「いわく、貴女は最初から国外へ出る気満々で、確実に将来ノーンガス王国は滅亡の道へ歩むとおっしゃったのです」
・・・・・婚約破棄で国外逃亡計画、神にバレてた。いやまぁ、確かに神にバレるよね。
とはいえ、神自らが干渉しづらく、それゆえにお告げという形で何とか第2王子に言う事しかできなかったようなのである。
「ですが、貴女の決意が固いのは明白。ゆえに、わたしも実は国がいつ滅びてもいいように、鍛えていたのです」
「え?どうして?」
「だって・・・・・貴女の事が好きだったのですから」
「・・・・・・・ふわぃっ!?」
まさかの告白に、私は驚愕しました。
何でもある日、私を見かけた際に一目ぼれしたそうなのです。
ですが、その時すでに私はあの馬鹿王子の婚約者のみであり、どうしようもなかった。
そんな中で、その神からのお告げを聞き、この王子は私が国外へ出てもいいように、自らも王族の身分を捨てても大丈夫なようにしていたそうなのです。
国から出て、婚約者でなくなった私ならば、求婚しても問題ないからだとか・・・・・
「もはやあのノーンガス王国の第2王子ではありません。貴女を探すのに時間がかかり、その間に婚姻していたら陰から見守ろうとしていましたが・・・・・見たところ、未だに独身の様子。ですから、どうか結婚を前提にどうかお付き合いください!!」
堂々と第2王子・・・・いや、もはや国もなき元第2王子様はそう告げてくださった。
まさか、ここまで正面から来るとは思ってもいなかったけど・・・・・・良いかもしれない。
だって、何かと優しかったし、あの馬鹿王子とは天と地ほどの差があるんだもの。
「・・・・はい、喜んで!」
その後、私たちは一旦村へ行き、元第2王子さまも一緒に住み始め、1年後結婚した。
私は天使だったけど、人間と結ばれると死後に再び天使になるまで人間と同じ体になるらしい。
それ故に、彼との子供も生まれ、生涯穏やかに一緒に過ごすことができた。
「って、なんで死んだ後に私が天使になっているのに、貴方も天使になっているわけ!?」
「だって、一生を共にすると言ったからね!!」
・・・・・死後、天使に戻った際に、彼もまた天使になってしまったのは偶然だろうか?
いや、あの神がやらかしたのだろう。
どうやら婚約破棄をして自由を得たと思ったら、一生愛する男と結ばれてちょっと結婚相手の自由が無くなったらしい。
まぁいいか。幸せならいいんだもの。
―――完――――
・・・・・蛇足というか、ついでにその後のまとめも兼ねた人物紹介。
「ヴィーラ・エクス公爵令嬢」
この物語の主人公。
天使であり、ノーンガス王国へ恵みをもたらす天使として派遣されていたのだが、近年の王国内の人間の汚さに嫌気がさし、婚約破棄を企て国外へ逃亡した。
だが、元第2王子と結ばれて、死後再び天使となったときにまさかの一生のパートナーとして決まってしまったことにより、他の天使たちから「バカップル天使」と呼ばれることを今はまだ知る由もない。
「第2王子」
割とまともそうな思考だが、国を見捨てることを早々に決意していたのでどうなのだろうか?
ヴィーラに一目ぼれし、馬鹿王子の婚約者となっていたのであきらめかけていたが、神のお告げで婚約破棄後にフリーになることが分かり、其のために一生懸命彼女に釣り合うような男になるために努力をした。
ヴィーラの逃亡後、国があっという間に衰退する前に逃亡に成功し、結婚できたいわば勝ち組。
死後、神によって天使にされ、一生のパートナーとなれて幸せである。・・・・・実はちょっと軽いヤンデレ予定だった。
なお、本名はドール・ノーガスだったけど、本作では名前を出す機会がなかった。
「クーバズ・ノーンガス」
馬鹿王子。とりあえずそうとしか言い現わせないような、徹底的な顔だけの屑野郎。ついでに王太子になる予定もなかったので自称でしかなく、虚偽である。
ヴィーラいわく「魂まで完璧に汚れた典型的なダメ人間」。
ヴィーラの逃亡後、国王から恵みをもたらしていた天使を追い出したとして王籍を剥奪され、再び彼女を国へ戻すまで一生平民の身分へと落とされた。
探そうとしたが、早々に犯罪に手を染め、国の崩壊とともにその原因となった者として見つけ出され、袋叩き後に行方不明。一説では、どこかの国で奴隷をしているのだとか。
「マツーリン・チッビ」
馬鹿王子が将来国王になって贅沢できると思って近づいた、誰にでもべたべたする令嬢。
実は転生者であり、ここがよくある乙女ゲームのようで、ヴィーラがその悪役令嬢で自分がヒロインだと勘違いした、最も頭がお花畑な人。
国の衰退が見えると同時に逃亡し行方不明。別の国で新たに別の王子へ接近したが、既に所業がすべてバレており、国を滅ぼす要因として犯罪者として逮捕。後に、娼館で一生働くことを義務付けられた。
「宰相子息、騎士団長子息、魔術師長子息」
いわゆる取りまきABC。ヴィーラの逃亡後、それぞれの家から追放され、平民へ身分を落とした。原因が馬鹿王子だと言い張り、それぞれの才能を活かそうとしたが見事に下の下しか能力がなく、国の崩壊ともにあの馬鹿王子と同類とされ袋叩き後に行方不明。一説では、馬鹿王子と同じところに飛ばされたのだとか。
「ノーンガス王国の国王陛下」
空気。とりあえず、神からお告げをもらって国の衰退を免れたと思っていたが、まさかの馬鹿王子がやらかしたために心労で3日後には全部の毛が抜けてしまった。
第2王子を国王にして、国の崩壊を招いた要因が王家だと言われて威信が急落するのを避けようとしたが、第2王子がさっさと逃亡したために、残っていた王子たちから次の王を決めねばならなかったが・・・・・他にも子がいたために、王位継承権争いが発生。そのどさくさで毒殺されたある意味最も哀れな人物。
「神」
この世界を担当している神。実は他にも神々がいるのだが、その中でも下っ端なほう。
天使たちの上司だが、気まぐれゆえによく天使たちは振り回される。
・・・・・ようやく言ってくれました!!
とある馬鹿王子のその発言に対し、私、ヴィーラ・エクスは心中物凄く歓喜の声を上げたかった。
本日、ノーンガス王国の学園での卒業パーティにて、ついに私はあの馬鹿王子が婚約破棄を発現してくれたので、うれしさのあまり小躍りしたくなりました。
とはいえ、ここで嬉しがってしまえば、幼い時から企てていたせっかくの計画が台無しです。
ここはポーカーフェイスで・・・・
「あら?何を言うのでしょうか・・・・・殿下」
・・・・・うん、ちょっとこの馬鹿王子の名前を忘れて「殿下」としか言えないですね。
「もう一度言わせる気か!!まぁいい、改めて詳しく言うのであれば、このわたし、クーバズ・ノーンガス王太子は、この愛しの男爵令嬢マツーリン・チッビと婚約を結び、そしてこの諸悪の根源でもあるヴィーラ・エクス公爵令嬢との婚約を破棄することを宣言する!!」
どやぁっと、物凄く殴りたくなるような笑顔で、馬鹿王子はそう言い切った。
名前が分かったけど、いちいち言うのが面倒くさい。あと、あなたまだ王太子じゃないんだけど・・・・修正しなくていいか。
そして、その周囲を馬鹿王子の取りまきである宰相子息、騎士団長子息、魔術師長子息たちが守るように囲み、ニヤニヤとしているのは・・・・・なんというか、馬鹿の塊にしか見えません。
あ、中心に件の令嬢発見。あちらも笑ってはいますけど、どうでもいいです。
「‥‥‥えっと、何か私に至らぬところがあったのでしょうか?よりによってこの場で王太子と言った上に、婚約破棄宣言及び身分が会わない令嬢との婚約とは、何を考えているのでしょうか?」
さっさとこの場から去って、あの計画に移りたいのですが・・・・・少々我慢して、きちんとその理由を聞いておきましょう。
ところで会場の皆さま、全員顔面蒼白になっていますけど誰一人として止める勇気はないのです?まぁ、いない方が都合が良いのですがね。
「当り前だ!!お前は知らぬふりを通そうとしているが、このわたしの正義の鉄槌からは逃れられぬ!!貴様はこの愛しのマツーリンに対して長い間いじめをしており、殺そうとしただろう!」
「そうだそうだ!!お前はマツーリンの教科書を破ったり!!」
「せっかくやった宿題のレポートを盗作したり!!」
「水を被せて濡らしたり!!」
「「「挙句の果てには毒入りのクッキーを茶会に持ち込み、毒殺しようとしただろう!!」」」
馬鹿王子に続くように、取りまきの馬鹿子息たちも一緒にそう宣言しました。
‥‥‥なんというか、ここまで計画通りなのは良いんだけど、声がそろってなんかキモいです。
とはいえ、どれもこれも私には心当たりがありません。
だって普通、こういういじめってもっと苛烈にしますよね?もし本気で私がやれば、彼女は今頃この世にはいませんからね‥‥
ま、私を犯人だと思うように仕向けているので間違ってもいませんが。
「‥‥‥へぇ、ではそれらを私が本当にしたと言うならば、婚約破棄以外の罰をするつもりもあるんですね?」
「その通りだ!!生憎、この国には死刑制度がないゆえにお前の命を散らせないのが悔しいが、次に重い罰として、この場で身分剥奪の上の国外追放に処す!!お前はもはや、このノーンガス王国の国民でもないのだぁぁぁぁぁぁ!!」
堂々と宣言し、完全勝利だと思っていらっしゃる馬鹿王子。
・・・・・その言葉、待っていました(◎゚∀゚◎)!!
「では婚約破棄及び、身分剥奪、国外追放・・・・間違いないですよね?」
「何度言わせる気だ!!当たり前だ!!貴様は耳が遠いのか!!」
笑いたいのをこらえ、確認をとると馬鹿王子は顔を真っ赤にしてそう告げる。
よし、言質取ったぁぁぁぁあ!!
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!それでは間違いなく、この私はこの国を去ります!!では、どうぞ婚約破棄をしてくれてありがとうございました馬鹿王子!!」
「んなっ!?な、なんだいきなり!?」
私の喜びの叫びに、余りにも急な発言に驚き、どさくさに紛れていった悪口にも気が付かず、馬鹿王子たちは驚愕する。
さぁ、これでようやく心置きなく、私はこの国から去って、自由になれるのだ!!
嬉しさをあふれ出させ、私は背中から大きな翼を出した。
そして、そこからひび割れるようにしてこの体が砕け、本来の姿が中から解き放たれる。
ふと見れば、馬鹿王子たちは口を開けて固まっていた。
そりゃそうだろう、本来の姿の私は、あのかりそめの令嬢の姿でも美しかったのに、この姿になればさらに美しいのだ。
‥‥‥そう、私は実は、この国を代々守護していた天使なのだ。
数百年前、この国ができる前にとある者たちが、元は荒れ果てた大地しなかったこの国を豊かにしたいと神に願った者たちの想いが純粋だったゆえに、わざわざ派遣されてきて、豊かさをもたらしていたのだが、ここ最近では私がもたらしていた豊かさを忘れ、この国では馬鹿が多くなった。
ゆえに、この際忘れてしまった者たちを見捨てようと思い、神が最後通牒としてこの国国王に告げた。
わざわざこの国を守護していた私をとある貴族家の娘に仕立て上げたので、王子と婚約させろと。
だが、もしその王子が婚約破棄を言い渡したら私はこの国から去って、豊かだったこの国は滅びの道へ行くと。
聞いた話だと、枕元に血濡れ包丁を持ちながら告げたようだけど・・・・それ、神のお告げというよりも脅迫なのでは?
まぁ、最初から私はこの国を見捨てる気だったので、婚約破棄をしようと密かに馬鹿王子たちを支援していたんだけどね。
わざわざ頭の軽そうな馬鹿な令嬢を見付け出し、学園に入学させて馬鹿王子たちに出会いやすくして、親交を深めさせたのだ。
だってさ、数百年も豊かさをもたらしたのに、ここ最近忘れて貴族至上主義だの、自分たちこそが神に選ばれた人間だの、うっとおしかったもん。
その為、この婚約破棄に至るまで努力をしていたが・・・・・うまくいったようである。
とにもかくにも、馬鹿王子たちが言葉を発する前に、私は急いでその場から飛び立った。
追及されたりしたら不味いもんね。
というか、出る直前にこの国の国王と王妃、その他の王子たちが飛び込んできたのを見たけど‥‥‥まぁ、そうでもいいか。
そして飛び立ってから4年経過しました。
自由になって飛び回り、一旦もう一度あのかりそめの令嬢の肉体を作り、今はノーンガス王国とは別の適当な村で生活しています。
ある日いきなりこの村に降りたけど、この村の人達ってあの馬鹿共と違って綺麗な魂というか、良い心の持ち主なのは分かっているんだよね。
で、村娘として村中の仕事の手伝いをしているけど、一生懸命に生きている人間たちの姿を見るのはいいねぇ。
やっぱり、豊かさをただもたらすのは意味ないし、こうやってきちんと真面目なのが一番いいよ。
あの国に縛られて自由でなかったときに比べると、物凄く今の自由が心地いいな。
そんなこんなですごしていたある日のことである。
「ヴィーラちゃん、ちょっとおつかいに行ってくれないかしら?」
「はーい、分かりましたー」
近所のおばちゃんが腰を痛め、世話をしていたのだが、今日はおつかいを頼まれた。
そんでもって、村近くの市場でそのおつかいをしていた時だった。
「えっと、次に買うのは薬草と・・・」
「・・・・っ!!ヴィーラか!?」
「え?」
ふと、何か名前を叫ばれたので見てみれば、そこにいたのは・・・・
「‥・・・第2王子?」
あの馬鹿王子の弟であった、第2王子様。
その方がまさか市場にいるとは・・・・でも、ここってノーンガス王国から離れているはずだよね?
ちょっと場所を移し、とりあえず市場近くの喫茶店で話すことになりました。
あの馬鹿王子とは違って、この第2王子様は印象良いからね。根も腐っていなかったし。
「‥‥まさか、貴女がここにいるとは思ってもいませんでしたよ」
「ええ、でもどうして貴方がここにいるの?」
第2王子がこの場にいる理由が今一つわからないのだが・・・・・
「実は、貴女が天使だという存在なのは、神のお告げで聞いていました」
「え?」
なんでも、あの馬鹿王子の親である国王にお告げに行ってから数年後、神はこのお髄の枕元に絶ったそうなのです。
「いわく、貴女は最初から国外へ出る気満々で、確実に将来ノーンガス王国は滅亡の道へ歩むとおっしゃったのです」
・・・・・婚約破棄で国外逃亡計画、神にバレてた。いやまぁ、確かに神にバレるよね。
とはいえ、神自らが干渉しづらく、それゆえにお告げという形で何とか第2王子に言う事しかできなかったようなのである。
「ですが、貴女の決意が固いのは明白。ゆえに、わたしも実は国がいつ滅びてもいいように、鍛えていたのです」
「え?どうして?」
「だって・・・・・貴女の事が好きだったのですから」
「・・・・・・・ふわぃっ!?」
まさかの告白に、私は驚愕しました。
何でもある日、私を見かけた際に一目ぼれしたそうなのです。
ですが、その時すでに私はあの馬鹿王子の婚約者のみであり、どうしようもなかった。
そんな中で、その神からのお告げを聞き、この王子は私が国外へ出てもいいように、自らも王族の身分を捨てても大丈夫なようにしていたそうなのです。
国から出て、婚約者でなくなった私ならば、求婚しても問題ないからだとか・・・・・
「もはやあのノーンガス王国の第2王子ではありません。貴女を探すのに時間がかかり、その間に婚姻していたら陰から見守ろうとしていましたが・・・・・見たところ、未だに独身の様子。ですから、どうか結婚を前提にどうかお付き合いください!!」
堂々と第2王子・・・・いや、もはや国もなき元第2王子様はそう告げてくださった。
まさか、ここまで正面から来るとは思ってもいなかったけど・・・・・・良いかもしれない。
だって、何かと優しかったし、あの馬鹿王子とは天と地ほどの差があるんだもの。
「・・・・はい、喜んで!」
その後、私たちは一旦村へ行き、元第2王子さまも一緒に住み始め、1年後結婚した。
私は天使だったけど、人間と結ばれると死後に再び天使になるまで人間と同じ体になるらしい。
それ故に、彼との子供も生まれ、生涯穏やかに一緒に過ごすことができた。
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「だって、一生を共にすると言ったからね!!」
・・・・・死後、天使に戻った際に、彼もまた天使になってしまったのは偶然だろうか?
いや、あの神がやらかしたのだろう。
どうやら婚約破棄をして自由を得たと思ったら、一生愛する男と結ばれてちょっと結婚相手の自由が無くなったらしい。
まぁいいか。幸せならいいんだもの。
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だが、元第2王子と結ばれて、死後再び天使となったときにまさかの一生のパートナーとして決まってしまったことにより、他の天使たちから「バカップル天使」と呼ばれることを今はまだ知る由もない。
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割とまともそうな思考だが、国を見捨てることを早々に決意していたのでどうなのだろうか?
ヴィーラに一目ぼれし、馬鹿王子の婚約者となっていたのであきらめかけていたが、神のお告げで婚約破棄後にフリーになることが分かり、其のために一生懸命彼女に釣り合うような男になるために努力をした。
ヴィーラの逃亡後、国があっという間に衰退する前に逃亡に成功し、結婚できたいわば勝ち組。
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なお、本名はドール・ノーガスだったけど、本作では名前を出す機会がなかった。
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ヴィーラいわく「魂まで完璧に汚れた典型的なダメ人間」。
ヴィーラの逃亡後、国王から恵みをもたらしていた天使を追い出したとして王籍を剥奪され、再び彼女を国へ戻すまで一生平民の身分へと落とされた。
探そうとしたが、早々に犯罪に手を染め、国の崩壊とともにその原因となった者として見つけ出され、袋叩き後に行方不明。一説では、どこかの国で奴隷をしているのだとか。
「マツーリン・チッビ」
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国の衰退が見えると同時に逃亡し行方不明。別の国で新たに別の王子へ接近したが、既に所業がすべてバレており、国を滅ぼす要因として犯罪者として逮捕。後に、娼館で一生働くことを義務付けられた。
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いわゆる取りまきABC。ヴィーラの逃亡後、それぞれの家から追放され、平民へ身分を落とした。原因が馬鹿王子だと言い張り、それぞれの才能を活かそうとしたが見事に下の下しか能力がなく、国の崩壊ともにあの馬鹿王子と同類とされ袋叩き後に行方不明。一説では、馬鹿王子と同じところに飛ばされたのだとか。
「ノーンガス王国の国王陛下」
空気。とりあえず、神からお告げをもらって国の衰退を免れたと思っていたが、まさかの馬鹿王子がやらかしたために心労で3日後には全部の毛が抜けてしまった。
第2王子を国王にして、国の崩壊を招いた要因が王家だと言われて威信が急落するのを避けようとしたが、第2王子がさっさと逃亡したために、残っていた王子たちから次の王を決めねばならなかったが・・・・・他にも子がいたために、王位継承権争いが発生。そのどさくさで毒殺されたある意味最も哀れな人物。
「神」
この世界を担当している神。実は他にも神々がいるのだが、その中でも下っ端なほう。
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【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
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2年前の作品とは言え、読んでくださりありがとうございます。
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