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エピローグ

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「‥‥‥そして、その日、蜘蛛のお姫様は翼を得て、ついに恋人と結婚することができましたとさ」

 そう言って劇の幕が閉幕すると、観客たちは拍手喝さいを行っていた。


 ここは、とある帝国の中でもずっと長い間栄えている領内で作られた劇場。

 そして今、ここで行われていた劇は、この領内で伝わり続ける一つのおとぎ話である。

 それは、とある一体の蜘蛛が恋をして、数多くの試練を乗り越え、初代領主と結ばれる一つの物語。

 本当にそんなことがあったのかと、人々はすでに夢物語のように感じているようだが…‥‥幻想でも作り話でもなく、その話はこの地で本当に起きた出来事なのだ。





「とは言え、人の寿命も考えつつ、口伝の不確かさを考えると無理もないなぁ…‥‥」

 いくら長く語り継がれようとも、起きた出来事はいずれ忘れ去られてしまう。

 完全に語りたくとも、その時に抱いた思いや感想は人によって異なり、どんどん失われていく。

 けれども、やはり人はどこかでその物語に惹かれるからこそ、すべてが失われずに残されることもあるのだ。


「さてさて、あの劇はだいぶ再現していたとはいえ、それでも起きていた出来事をすべて再現できていない。いや、できないような情報もあるからこそ、何処かで不完全さを感じ取れたとは言え、それでも人の作ったものとしては面白かったなぁ」

 ふっと笑みを浮かべ、ハッピーエンドで終わった劇の感想を口にしつつ、空を見上げれば綺麗な夕焼けとなっており、それなりに時間が経過したことを知らせてくれるだろう。

 夜空に月が浮かび始め、その光が人々を照らし合い、そして星々も共に輝き合う。

「‥‥‥さてと、人々はここまで幸せな物語で終わったと思っているが、彼らの幸せな日々は劇にしがたいほど更に多い。そしてその続きを見たいものたちも多いだろう」

 そう口にしつつ、シャランっと鈴の音を鳴らし、翼を広げて彼は手をかがげる。

「だからこそ、この後の物語を、新しい生でのその美しい生きざまを見せてほしいなぁ‥‥‥ひいがいっぱいつくおじいちゃんとおばあちゃん、そろそろ落ちてまた物語を紡ぐ時だよ」

 その声に答えるかのように、夜空に輝く星々の中で、二つの寄り添っていた星が流れ星として落ちたようだ。

 星々を見る人たちにとっては、あれはただの流れ星であって、夜空に変化が起きたとは思わない。

 けれども、理解している者たちにとっては、再び始まる新しい物語を予感させる。

「さて、どこに落ちたかは分からないけど、運命というのは人でさえもモンスターでさえも、神やそうでない者たちにとっても抗うことはできない。だからこそ、如何にして手繰り寄せるかはその手にかかっているよね♪」

 機嫌良くそう口にして、翼を広げてその人物は飛翔していく。

 その姿はまるで、この地に伝わるおとぎ話に出てくる彼女に似つつ、その容姿はその相手にも似ているのだけれども、誰もそのように気が付かないのであった…‥‥













「ふんふ~ん♪森の探検、大冒険っと♪」

‥‥‥その少年は口ずさみながら、森の中を歩いていた。

 まだまだ幼いけれども、好奇心から近くに合った森にどこか心が惹かれ、勝手に親元から離れて入り込んだのである。

「んー、でもなんでここに、探検したくなったのかなぁ?やっぱり、森の中に入るなとか言われたら、やりたくなっちゃうからかな?」

 ある意味人のやらかす行動のお手本をしながらも、それでも不思議と恐怖をこの森で感じることは無く進んでいく。

 そしてある程度歩んでいたところで、ふと朽ちた一軒家を見つけた。

「何だこれ?結構古そうだけど‥‥‥あれ、でもなんか足跡があるな?」

 見捨てられた一件家みたいなのに、人の住んでいる形跡がある様子に彼は首をかしげる。

 けれども、その足跡は人じゃないようで、何か別の物が住んでいるようにも見えなくはない。

「お邪魔しま~す‥‥‥誰もいないのかな?」

 こっそりと入り込んだが、足跡はまだ中に続いている。

 奥へ奥へ、そして一つの部屋の前にたどり着く。


「…‥‥誰か、この部屋にいるのかな?」

 扉に手をかけ、中に入ってみると…‥‥中はすごい蜘蛛の巣だらけだった。

 けれども、その蜘蛛の巣に混ざってハンモックがあり、そこには…‥‥

「んにゅ?誰‥‥?」
「…‥‥え、誰?」


‥‥‥お互いに目が合い、その瞬間彼らは時が止まったように感じ取れた。

 初めて遭遇し、この場においては互に不審者にしか思えないはずなのに、何故だろうか?

「‥‥‥えっと、僕ら初めて会ったよね?でも、何処かで出会った?」
「ううん、けれども‥‥‥あなたももしかして、既視感というか、懐かしい感じがするの?」
「うん。おかしいね、互に知らないのに‥‥‥何でだろう」

「僕は君を知っている」
「私はあなたを知っている」

「「…‥‥でも、安らげるような気持ちがあるのは、何故?」」




‥‥‥それは、今の彼等には出ることの無い答え。

 けれども、その記憶がなくとも魂に濃密に刻まれた想いと言うのは、どれだけ時間が経過しようが失せることは無いだろう。

 そして彼らのその後は…‥‥毎晩夜空に浮かぶ月が目にしていくのであった…‥‥

―――完―――
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みんなの感想(574件)

tamo
2021.06.13 tamo
ネタバレ含む
志位斗 茂家波
2021.06.13 志位斗 茂家波

完結済み作品の、ご指摘ありがとうございます。
ですが申し訳ございません、どこの個所なのか少々分かりにくいです。

2-4の72行目なのか、4-2の72行目、もしくは違うのか、
対応しきれず、本当に申し訳ございません。
ご指摘をしてくれたのに、修正を行えずすみませんでした。

解除
沁
2021.01.31
ネタバレ含む
志位斗 茂家波
2021.01.31 志位斗 茂家波

とにもかくにも、しかしながら、なんやかんやで・・・・

何かと多用してしまう。
治せないか、他の表現も考えてみたいところ。

プロだったらどうするのかなぁ。まだまだ至らない身なのが、お恥ずかしいです。

解除
loar
2020.11.13 loar
ネタバレ含む
志位斗 茂家波
2020.11.13 志位斗 茂家波

人によって、苦手もありますからね。
一応、具体的過ぎる表現は流石に苦手なのでそこまで蜘蛛要素が感じにくいとは思うのですが‥‥‥


‥‥‥いやまぁ、自分で言うのもなんですが、それでも人によって合う合わないはあるので、他の人の作品も楽しんでください。
作者の作品は、まだほんのちょっとに過ぎず、他の人の作品が優れていますからね。

解除

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