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7章 死がふたりを分かつまで

7-6 これが若さというのか

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「だうーう!!だうだーう!!」
「ぴやぁぁぁ!!ぴゃあぁぁぁぁ!!」

「ちょっと二人とも、待ってぇぇぇ!!」
「なんで私達よりも、滅茶苦茶早いんですかぁぁ!!」
「ほうほう、流石と言うべきか才能はすごいのぅ。寄る年波のせいで全然追いつけんのじゃ」
「「脱走させた本人がのんきに言うな(言わないでください)!!」」

 ずるずると簀巻きにされた状態で引きずられるドマドン所長にツッコミを入れつつ、僕とハクロは今、先日ようやく生まれた我が子たちを追いかけていた。

 男の子には『ジーク』、女の子には『ローズ』と名付けたのは良いだろう。前世での伝説神話などに出てくる英雄の名前や花の英名をもじったものだけど、似合っているはずである。

 だがしかし、少々子育てを甘く見ていたというか、うちの子がちょっと特殊なだけなのか‥‥‥後半の方が確実だとは思うけれども、我が子たちは今ハイハイしながら研究所内を爆走していた。
 
 しかも滅茶苦茶早い。まだ数日しか経過していないはずなのに、行動力と成長力があり余り過ぎるというか、赤子の思考をちょっと舐めていたかもしれない。

 まだあと1週間ほどは滞在して精密に調べ、何も問題が無ければと思っていたのだが…‥‥元気さは流石に測定不可能だった。

「だうだうだうぅぅ!!」
「ぴゃいぴゃいぴゃぁぁい!!」

「というか何でハイハイであんなに早いの!?」
「走り方としては、蜘蛛の身体があった私に近いかも!!お腹の中にいても、歩き方を本能的に受け継いじゃったかもしれない、キュル!!」

 超高速移動すぎるハイハイゆえに、追いつくのが非常に難しい。

 ハクロが翼を広げて飛翔し始めたが、その飛行速度すら上回るってどういう赤子なんだろう、僕らの子供たち。彼女、その気になれば音速突破も可能なはずなんだけど!?




 万が一に備えてかつ、今後のことも考えて研究所内はバリアフリー化されており、障害物とか危険物はどかされているとはいえ、それでもあの速度は心配である。主に跳ね飛ばされる人が。

 怪我する心配もあるのだけれども、一応産着などはハクロの糸で念入りに頑丈さを増しており、更に安全を確保するために衝撃吸収材なども編みこまれているのだが…‥‥ある程度走ったところで、ぴたっと急に動きを止めた。

「だうだうだ‥‥‥うぅぅぴえぇぇぇん!!」
「ぴゃい、ぴゃいいいいいいい!!」
「あ、ちょうどお腹が空いて鳴きはじめた」
「止まった今が、ようやく確保、できる!!」

 赤子ゆえにまだまだ泣くことで意思を示すことも多く、お腹が空いたがゆえに動きを止めて鳴きはじめた。

 そのチャンスを見逃さずにすぐに追いつき、ハクロが授乳させ始めてようやく暴走が収まるのであった‥‥‥‥

「というか、飲んでいる時は普通の赤子にしか見えないのに‥‥‥ジークもローズも、元気過ぎでしょ」
「キュルル、元気なのはいいけれども、子育て大変。お母さん、こんな苦労していたのかも」
「いや、普通のご家庭じゃとこれはないからのぅ?というか、何時になったら自由になるのじゃ…‥」







 何にしても、ようやく暴走赤子事件も収まったところで、次が無いように対策を練り始める。

 赤子が産まれて早十数回目の対策会議なのだが‥‥‥毎回改善点を徹底的にやるはずなのに、なんでこうも繰り返す羽目になるんだろうなぁ。

「そりゃ、お主らの子供が凄まじいからのぅ。検査場の数値じゃと、普通の人の赤子のはずなのじゃが‥‥‥どうなっているんじゃよコレ」
「それは僕らの方が知りたいんだけど」
「キュル、調べるの、ドマドンおばあちゃんの方が適任」

 毎回やらかされては、こちらが先に過労死しかねない…‥‥赤子たちはまさか、それを狙ってはないだろうか?

「キュルル、今はすやすや寝ていて、可愛い。でも、子育てって本当に大変キュル‥」
「本当だよね。まぁ、僕らの赤ちゃんが特殊過ぎるだけと思いたいけれども…‥‥どうにかならないものかなぁ」
「特殊過ぎるだけというか、その言葉では言い表せぬのじゃが…‥‥しかし、解決しないといけないのは間違いないじゃろうなぁ」

 うーんっと職員たちも巻き込んで全員でああでもないこうでもないと議論を交わすが、いい案は出てこない。

 本当にうちの子供たちがすいませんと謝りたくもなるが、それでも付き合ってくれているのは感謝し足りないだろう。

「こうなってくると、皆で追う前に専門家とかいたほうが良いのかもしれぬ。素人が手を出すには、難しい領域じゃろうしな」
「専門家?でも、赤ちゃんハイハイ爆走の専門家ってそう都合よくいないですよね?」
「言い表すと、確かにいないかもしれない‥‥‥‥いや待てよ?いるかもしれぬ」
「え、いるの?」
「可能性としてじゃ。とは言え、確かアレを利用するのは一般的には無理なはずじゃったような…‥‥ふむ、ここは皇帝陛下に確認したほうがいいじゃろ」

 そう言いながら、ドマドン所長はどこからともなく通信用の魔道具を取り出し、皇帝陛下へ向けて連絡を取り始めた。

 この国の皇帝に、何か解決案でもあるのだろうか?あの家は家で、普通だとは思うけれども…‥いや、第2皇子第3皇子からは目を背けるとしてね。

 そうこうしているうちに話は付いたようで、やることが決まったらしい。

「ふぅ、一応許可は得れたのじゃ。国の機密の一つじゃけれども‥‥‥お主らなら問題ないと言ってくれたから良いじゃろうな」
「ちょっと待って。今さらっと機密扱いって言わなかった?」
「まぁ、国としては少々関わりたくないというか、のめり込み過ぎるのも怖いというのは分かっているからのぅ。じゃが、大丈夫だと思うのならば、それで良いのじゃ」

 どこにどう頼むかは知らないが、ドマドン所長は手紙を書き始め、職員に運ばせた。

 数日もあれば手紙が届き、解決策が来るらしいが…‥‥一体何を呼んだというのだろうか?

「そう言えば、その類の人じゃと雇うための給料も必要になるのじゃが、お金は大丈夫かのぅ?」
「ん?一応、儲けてはいるから余裕はあるよ」

 色々やっているので資金自体は潤沢だし、そもそも消費に関してそこまで無いので貯蓄に回している。

 なので、やろうと思えば大勢を雇うこともできるのだが、使用する機会ならば惜しみなく使えばいいか。

 とにもかくにも、ドマドン所長が思いついた解決策とやらを、僕らは待つのであった…‥‥


「‥‥‥個人的な意見を言えば、あまり国の機密になりそうな家に寄せるのもどうかと思うがのぅ。まぁ、お主らがロクデモナイ人物ではないのは分かるし、そもそもそう言う類じゃとやってくれないじゃろうから問題もないかのぅ」
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