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4章 中等部後期~高等部~

4-45 ひと息つきつつ、夏季の終わりを見据えつつ

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 激辛なハンバーグが混ざっていた件に関しては、マニア向けにすればいいという判断を下しつつ、出来た後に出てくる商品の課題について報告書をまとめ上げ、僕らはひと息をついていた。

「ふぅ‥‥‥ひと段落出来たけど、疲れたね」
「キュルゥ、一杯計算、疲れた」

 くてーんっと僕の後ろから寄りかかってくるハクロ。

 常人よりも確実に頭がいいので、難しい計算を任せたのだが、いくら処理が出来てもその分疲労はするらしい。まぁ、間違いがないのか数回ほど確認作業をしたのもあるだろうけれどね。

 でも、これで大体は終わっており、後はもう国に投げられる分だけである。

 水一滴で出来る手軽さは良いけど、その管理の注意点やら、味の改良、売れ行き次第ではもうちょっと方法を変えるなどの課題が多いが、全部関わる必要はないからね。むしろ関わったら仕事量が増えてパンクするよ。

 とにもかくにも本日分の作業も終えたが、座って作業していた分ちょっと動きたい。でも、本日の日差しはそこそこ強く、注意はするけれども熱中症などの危険性もあって出づらい。

 ではどうするのかと考えてみれば‥‥‥‥



「キュルル、風呂場での、お気軽な行水♪」
「広く作っていたから、ここでもそこそこは泳げるしね」

 邸内にてかなりこだわりまくったお風呂部分のお湯を抜き、代わりに水を張って簡易的なプールを作り上げ、僕らはそこで泳ぐことにした。

 帝都の方なら大プールがあるけれども、この炎天下で飛行するとまともに強烈な日光が直撃するからね‥‥だからこそ、お手軽なここにしたのだ。こだわりまくっていたからこそ、それなりに広いしね。広いお風呂というのは、前世がなんであろうともこだわる人は多分いるはずである。

「んー、でも家の中なら、裸で良いかも」
「いや、流石に気分的に水着を着たほうが良いよ」

 首をかしげるハクロではあったが、場の雰囲気を作りたいのもある。というかそもそも、確かにここでなら人目も特に気にせずに泳げもするのだが…‥‥目のやり場に困るからね。これ、挙式を挙げた後の夫婦生活で、僕の方が大丈夫なのか不安になるなぁ…‥‥

 にしても、本日のハクロに来てもらった水着はまた新しいやつのようだ。

 蜘蛛の身体を失った分、きちんとしたビキニタイプ‥‥‥いや、クロスホルターってやつかな?種類をそんなに知らないのだが、それでも彼女に似合う白い水着である。赤とか黒とかあったけれども、やっぱり白が一番似合うかもなぁ。

「そう言えばハクロ、泳ぐ際にその翼邪魔にならないよね?」
「大丈夫!きちんと小さく折りたたんでいるの!」

 広げればかなりのサイズの宝石のような翼だが、使用しない時は本当にかなり小さいサイズにまでたたまれているのが不思議である。

 だがしかし、前と後ろの方で重りがあるようなものだから、肩こりしやすいらしいが…‥‥今度肩もみをしてあげて、ちょっとでも楽になってもらおう。


 とりあえずざぶんっと入って、泳ぎまくる。

 水泳ってのは普段は使わない筋肉も使用するし、結構楽しい。惜しむらくは、ハクロの蜘蛛部分が失せたので彼女の上に乗って漂うことができなくなったが、違う方法で楽しむこともできる。

「糸でボートを作るってのもすごいけれど、なんかふわふわしているね」
「ふふふ、折り方工夫して、空気たっぷり、ふんわり感出るようにしてみた!」

 蜘蛛部分が無くともどこからともなく糸が生成出来るようで、作り上げたのは一つの板状のボート。ただ硬くもないし、乗るとふんわりとした柔らかさが存在しており、泳ぎ疲れたところで休みやすい。

「こういうのが作れると、帝都の大プールでも利用価値があるかも。今度遊びにいったら頼めるかな?」
「うん、これのると楽なの分かっているから、言われなくても作る!」

 にこにこと笑顔でそう告げつつ、一緒に休憩する気のようで横に来るハクロ。

 互いにぷかぷかと浮かぶボート上で寝転がり、泳いだ後の疲れによる眠気を誘う気怠さを味わう。

「でも、お腹を出すと冷えるから軽く布を織ってかけてほしいかな」
「それも、用意済み♪」

 準備万端というか用意周到というべきか、ちゃっかり布を織り終わっていたハクロ。

 一枚の大きな布地をかけつつ、ベッドで横になるように一緒に寝転がる。

 ゆらゆらと揺られつつ、泳いだ後のこの眠気というのもまた心地いいものだ。

 ハクロの方も眠くなってきているようで、ふわぁっと欠伸を出す。

「キュル、眠い‥‥‥軽くお昼寝いいけど、ひっくり返って溺れないか、ちょっと心配」
「だったら糸で固定できないかな?こう、寝相で転がって落ちないように軽く柵みたいなものも作れないかな?」
「それ、良いかも、やってみる」

 眠気に襲われつつ、くいくいっと彼女が指を動かすとあっという間に糸が束ねられ、堕ちないように固定と柵を備え付けた。
 
 器用に作っているようで、これなら万が一のことがあっても溺れることは無いだろう。

「それじゃ、軽くお昼寝をしようか。お休み、ハクロ」
「お休み、アルス‥‥‥」
 
 言い終わる前にハクロが先に寝落ちをして、僕の意識が沈む前にその顔を見ながら寝ることが出来た。

 こうやって一緒に過ごし、ゆったりとした時間というのが本当に良い時間で、出来れば何時までも続いて欲しいと思うだろう。まぁ、当主になってからも仕事があるので、楽でない時もあるだろうが、それでも穏やかに一緒に過ごしたい。

 ふと、たまには僕の方から積極的になってみようかなと思いつつもヘタレなのは自覚しているので、そっと寝ている彼女の手を僕は握る。

「温かいね‥‥‥ハクロの手」

 愛しい人の温かさを感じ取りつつも、瞼がおりて眠るのであった‥‥‥‥



‥‥‥なお、軽い昼寝のつもりだったが、夕方まで爆睡してしまい、布をかけていたとはいえ薄着で長時間寝ていたせいで、翌日風邪を引いて寝込む羽目になったのは言うまでもない。

 いやまぁ、薬を精製できるので直ぐに復活は可能だったが、使用人全員からいくら復活しても絶対安静を強く言われて、ハクロと一緒にベッドで横になり続けるのであった。

「まったく、ご当主様はもうちょっと自分の体をいたわってほしいものですな」
「いくら治せる腕前を持っていても、それで油断しては意味もありません」
「後ついでに、清い交際とお聞きしてますが、多少は羽目を外してもらいたいものです」
「出来れば挙式前に、もう子供がいてもいいのですがなぁ…‥‥」

 部屋の外から使用人たちの声が聞こえるけど、なんか既成事実をさっさと作って確定させろと遠回しに言われているような感じなのは気のせいだと思いたい。。確かに貴族家だから後継ぎを早めに用意してほしいというのもあるかもしれないけど‥‥‥‥
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