転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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4章 中等部後期~高等部~

4-37 言われてみればそうかもしれない

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‥‥‥巨大肉団子怪物襲撃事件から三日後。

 僕らは今、都市アルバニアの方にあるモンスター研究所内で検査を受けていた。

「…‥‥ふむ、元々蜘蛛部分の必要性はだいぶ失せていたからのぅ。内臓がもうほぼこの肉体の方へ移っていたのは分かっていたのじゃが、新たに翼を獲得か…‥‥どういう進化をしたらこうなるのじゃ?」
「それ、僕の方が尋ねたいのですが」
「キュル、私も良く分からないから、所長お婆ちゃんに尋ねたい」

 うーんっと首をかしげるドマドン所長に対し、僕らはそろってそう返答する。

 襲撃事件を経て大きく体が変わったハクロの今の状態を調べるための検査を行ってもらっていたのだが‥‥‥どうも色々と、変わっているようだ。

 その最たるものとしては、蜘蛛の身体が消失し、人の身体と寸分たがわぬ体躯を得たと思えば、その背中に宝石のような翼が生えた事だろうか。

 ある程度のサイズ調整は可能なようで、今は小さく折りたたんでおり、その触り心地は羽毛や蜘蛛の身体とはまた違うふわふわでもふもふ、もこもこと最上級の触り心地。

 羽があるようで一枚サンプルとしてプチッと抜かれたが、その状態はかなり硬く、本当に純度の高い宝石のようにもなっているようなのだ。

 生えている間は柔らかく、抜けると硬質化…‥‥いや、宝石化というべきか、不思議な性質を持っているらしい。

「それと、火の魔法の性質も変わっておるのぅ。前までは魔力消費量が他と比べてかなり激しかったようじゃが、今では他とは大差ないほどの、いや、同じだけの出力で全部の消費が格段になくなり、効率化されたと言って良いじゃろうなぁ」

 興味深そうに出てきたデータをまとめた書類を手に持ちながら見て、そうつぶやく所長。

 ある程度見たところで、ふと立ち上がり…‥‥

ぷにっ
「ひゃうっ!?」
「それと、おへそもできたようじゃな。いや、人のものとは違うじゃろうし、そもそも人から生まれておらぬのじゃが…‥‥体内構造としては、人にほぼ近くなったと言えるじゃろう」
「ということは?」
「翼が生えていること以外は、人間になっていると言えるのぅ。まぁ、それでも中身は色々と違う様じゃから、人間とは言い切れぬのじゃがなl…‥‥」

 つるつるだったお腹に出来たへそのようなくぼみを触られ、ちょっとドキッとさせられる声を上げるハクロ。

 その声自体も、以前のようなものとはことなっており、はっきりとした人のものになっているようだ。

…‥‥もともと頭とかしっかり人に近かったけれども、のどの構造はまだまだ違っていたらしいからね。今回の検査で、人の声帯にほぼ似たものになったことが判明しており、どうやらそのおかげで人とあまり変わらない声を手に入れたと言えるだろう。

「キュルル、人間、なりそこなっている感じがするけれど‥‥‥それでも、足が立った二つで立つの新鮮な気分で‥‥‥アルスをより、ぎゅっと包み込みやすい♪」

 触られたへそを気にしつつも、僕の方に向き直り、嬉しそうな声を上げて僕をぎゅっと抱きしめるハクロ。

 翼の方も閉じられていた状態から広がり、前の方に曲がって僕を包み込む。

 なお、あの襲撃事件の最中で僕は片腕千切れて全身の骨がバキバキになっていたが、それはもう治療済みなので痛くはない。

 こういう時ばかりは、本当にチートな薬の精製能力にありがたみを感じたよ…‥‥あれ?でもなんかこっちはこっちで性能が上がっている気がする。前まではまだそこまででもなかったはずなのに、何やら上限が引き上げられているような気がしなくもない。

「何にしてものぅ…‥‥話を聞く限り、色々ととんでもない怪物が帝都に出現し、破壊しまくったのはぶっ飛んだ出来事じゃと思えるのぅ」
「一応、まだ復興中だけど…‥‥本当にあれ、どこから来たんだろうか?」

 帝都内の方にも被害が出ていたとはいえ、それでも多少のことでくじける帝国の民ではない。

 復興作業は迅速に行われており、同じようなことが起きても大丈夫なように帝都内改造計画とやらが立ちあげられ始め、年内には着工予定らしい。

「まぁ、一応怪物を消し飛ばしたことで…‥‥今度、帝都の王城で表彰式が行われることになって、どうしようかと悩む羽目になっているけどね」
「潰しに来た怪物の話題よりも、それを消し飛ばした英雄が出たという話題の方が、どう考えても人々が欲するのからのぅ」

 嫌な話題よりも良い話題を求めるのが、どこの世界でも変わらぬ人というもの。

 消し飛ばした話に関しては報告書に即座にまとめて、怪我の療養を理由に早めに夏季休暇も勝ち取って、ほとぼりが冷めるまで領内へ引っ込むことが出来るようになったが…‥‥問題なのは、休暇明けの表彰式とやらである。

 英雄とかそれ以前に、僕らはかかる火の粉を消し飛ばしただけ。いや、ハクロが最悪の化け物を消滅させたといえるが…‥‥その話題は圧倒間に広まっており、「白き蜘蛛の姫」改め「宝石の守護天使」と言われているらしい。

「守護天使ねぇ…‥‥いやまぁ、確かに天使のようだけど、噂の広がりからがすごいよ…‥‥」
「キュル?私、天使じゃなくて、アルスのお嫁さんにして妻だよ?」
「そういう事じゃないのじゃがなぁ。まぁ、中が睦まじいのは良い事じゃ」

 僕を抱きしめながら首をかしげるハクロに、はははっと笑うドマドン所長。

「こういう時は、良いニュースで徹底的にやったほうがいいじゃろう。とは言え、怪物の事などは調べる必要があるじゃろうが…‥‥そこに目を向けようとする愚物どもから目をそらすには、中々良い手段じゃ」

 そう、あの怪物に関してはまだわかっていない部分がある。

 正妃様から話を聞いて知ったのだが、どうやら追い詰められた独占派閥の生き残りが何かを打ち、変わり果てた姿という事だが‥‥‥‥ならば、その要因を作ったのはどこの誰だという謎があるのだ。

 考えると、過去にあの兄モドキを怪物にしていた例に似ており、それと同類のものが深く関わっている可能性が大きいが、今すぐに答えを得ることはできない。

 ただ、それでも一つ言えるのであれば、そう遠くないうちにそのものたちが終焉を迎えるということぐらいか。…‥‥以前のどこかで天罰が落されたものと似たような兆候が出ているらしいからね。こりゃ、何もしなくても滅びる気がする。

 それに、この件を素早く終息できずに命の危機にさらしてしまったという事で、ファンクラブの方からもお詫びの話と徹底的に死力を尽くしての原因解明、元凶殲滅を約束する手紙が来たので、その滅びも加速するだろう。


 何にしても、面倒事をずっと考えていたくはない。

 なのでここは、さっさと得られた夏季休暇を利用して…‥‥休み明けに表彰式があるという現実から目を背けつつ、領内でゆっくりと過ごそうと思う。

「何にしても、もう検査が終わりなら僕らは寮へ向かうよ。ドマドン所長、ちょっと予定が早くなりそうだけど、例の件は大丈夫でしょうか?」
「ああ、それなら大丈夫じゃ。きちんと来週あたりには準備を終えるからのぅ。楽しみにしているのじゃ」

 この夏季休暇内で計画していることも話し合いつつ、さっさと休暇のために研究所を去って、大空を舞う。

「…‥‥でも、蜘蛛部分が無くなっても糸がどこからともなく出せるとはいえ、この方法はなんかどこかのカラスでの移動方法に似ているのがなぁ‥‥‥」
「キュル?居心地、悪い?」
「いや、そんなことは無いよ。安定性に優れているし‥‥‥‥ただまぁ、絵面がなぁ」

 ふわもこな背中にのれなくなった残念さはあれども、それでも彼女の温かさは変わらない。

 でもこの位置、上を向くのがまずいんだけど。足に糸を捲いてハンモックモドキを作って飛ぶのは良いとして、何でスカートなの?そこはズボンにして欲しいと思う。

 ハクロの飛行用の衣服を考えるべきかと思いつつも、夕暮時の赤い空を僕らは飛翔するのであった…‥‥


「しかし、飛行速度はちょっと落ちたね」
「キュルル、翼まだ慣れない。魔力の翅と違って、空気抵抗結構大きいもん」

 それでも本気を出せば音速を突破できるのはどうなんだろうか。しかも足が多かった分が二本に集約されたせいか、蹴りの力も強くなっていたりするんだよね…‥‥見た目あんまり変わらないのに、何で強化されているんだろう…‥‥

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