転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
158 / 229
4章 中等部後期~高等部~

4-30 ストレス発散も考えて

しおりを挟む
‥‥‥面倒な派閥とやらの話を聞き、視線の原因ははっきりとした。

 一応、現状は様子見をしつつ潰すことは確定だが、それまで何をしでかすは分からない。


【キュルゥ…‥‥面倒な視線、疲れる】
「人の視線って案外力を持つからなぁ‥‥‥」

 見られているというのを意識してしまうと、嫌でもその視線は感知してしまいやすい。
 
 そしてその分、精神的な疲労も積み重なって大きなストレスとなってしまう。

 これからもう間もなく夏季休暇があるというのに、その休暇前にストレスを貯めたくはない。

 そもそも休暇中にもないとも限らず、ずっとストレスを受け続けたくはない。

 だったらどうするべきかと考えつつ、少しでも減らす方法を模索した結果‥‥‥‥


「‥‥‥一応許可をもらったけど、ログハウス内ならそんなに見られないはず」
【閉め切っているけど、アルスと一緒だから良い】

 学園内の中庭の片隅に、先生方に特別に許可をもらい、寮から一旦離れて過ごすための仮設小屋というか、ログハウスを作らせてもらった。

 毎度おなじみ薬で作ったログハウスではあるが、その防犯性は非常に高い。

 木自体も滅茶苦茶硬いと言われるメタルウッドを利用したので、ちょっと鋼鉄製のログハウスという口にしたら意味の分からないものになっているのだが…‥‥それでも、そう簡単に入り込むことはできない。

 ネズミ返しはあるし、そもそもつるつる滑って上る事も普通はままならない。

 周囲から覗こうにも閉じ切ってしまえば覗きようが無いし、様々な手段で見たくともしっかりと妨害用の罠も張り巡らせている。

 ある意味引き籠りにとっては究極の籠城方法かもしれないが、今はこれが最善策。

 まぁ、休暇が始まったら領地へ向かうので、その道中に出てくる可能性もあるが…‥‥それまでに問題が片付いていると思いたい。



 とは言え、ずっと引き籠るのも普通は酷なものである。

 暗い室内にいると時間の感覚も分からなくなってくるし、室内に居続けるのも気が滅入ったりする。

 なので工夫が色々と必要でありつつ‥‥‥‥そのノウハウに関しては、ちょうどいい相談相手がいた。


「にしても、本当にここでもきちんと光るんだな…‥‥研究所の天井に生えているこのコケ。太陽光に近いし、しっかり時間で変化をするし、感覚はおかしくならないかもね」
【キュル、それにこんなのももらった】

 籠ることに関しては、モンスター研究所の方がかなり優れた知恵を持っている。

 そもそも地下にある研究所だからこそ、飼育しているモンスターたちが地上と変わらない生活を出来るように創意工夫されており、条件が多少違えども籠っている現状は近いので知恵と道具を借りれるのだ。

「それと、籠っていても遊べる道具や、小さくなる薬を利用して遊べる小さな遊び場も結構もらったし‥‥‥‥これでしばらくは過ごせそうかな?」

 相手が全部潰されるまで多少の時間はかかるだろうが、正妃様はお茶会の後に約束をしてくれた。

 必ず、夏季休暇当日までにはすべてを全力を尽くして消し飛ばし、安全を保障してくれると。

「ふふふふ、あなたたちは帝国の民であり、その民への悪意というのは、わたくしたちへ喧嘩を売っているも同然。その喧嘩を買わずして、何が出来るのかしらねぇ」

‥‥‥ニコニコと優しく微笑みながらそう告げていたが、何となく恐怖を感じた。

 普段怒った様子を見たことがないのだが…‥‥あの言葉の裏に感じた、強い怒りの感情。

 この人絶対に心の底から大激怒していると思いつつも、相手に同情はしない。

 ハクロに対して悪意を持っているのであれば、容赦しなくていいからね。しっかりと正妃様のもてる力を尽くせるように、こちらも強化薬などを献上したのである。


 相手がこの世から消滅しかねないとは思うけれども、それでも彼女への負担をかけたくはないので、天秤は容易に傾く。

 普通はそうそう作る事もないけれども、しっかりと働いてもらって徹底的にやってもらわないといけないからね。チート薬生成、こんな特に役に立つ。


 何にしてもそこはもう大人たちに任せるとして、夏季休暇までは引き籠り生活である。

 そこまで長くはないとはいえ…‥‥こうやって密室で互いに過ごすのも、なんか悪くはないかも。

「なんとなく、学園で最初のころにやっていたのと近いからねぇ…‥‥」
【キュル、そう言えばそんなこともあったかも】

 初等部の頃、まだハクロの存在がバレるのは不味いかとも思っていた時に、彼女を小さくなる薬で小さくして、室内で過ごしてもらっていた。

 あの時と状況は多少違うとはいえ、籠る状態はなんとなく似ており、少しばかり懐かしく思うだろう。

 何にしても今は全てが終わるまで、休暇までの短い引き籠り生活を始めるのであった‥‥‥‥

【でも、それだと授業、どうするの?】
「あ、それは大丈夫。補習とかが入るけれども、先生方に事情を話して少し受けなくていいことになった。そもそも高等部の授業はだいぶ減っているし、ハクロへ向けられる害意の可能性を話すとすぐに協力してくれたんだよ」

 気になるのは教師陣の一部に、ポケットや机の上などからちらっとファンクラブの許可書らしいのが見えたような気がするのだが…‥‥うん、もしかして結構侵食しているのだろうか?







‥‥‥知らなくても良かったかもしれないファンクラブの根の深さにアルスが悩んでいる丁度その頃。

 そのファンクラブの中でも独占派閥以外の派閥は今、結集していた。


「…‥‥以上が、夏季休暇に入る前に行うべき掃討作戦である」
「ああ、それでいこうか」
「今は派閥争いはいらない…‥‥ただ単純に、彼女のために動くべき時なのだからな」

 様々な派閥が入り混じり始め、色々とおかしい部分が出てきたりすれども、大事な部分が根底から同じな者たちは協力し合い、組織内の大整理としてファンクラブにふさわしくない者たちを掃除する決意を固めていた。

 色々と言い争う事があるとはいえ、ハクロが大事なのは変わりなく、そんな彼女に対して身内から、いやもう身内と呼びたくもない者どもが害意を向けるのであれば放置できないからだ。

「綺麗な輝きを、あの笑顔を奪わせないためにも」
「我々の本当に、最初に結成された当時の想いを載せて」
「すべてをすぐに解決し合い‥‥‥‥しっかりと、足元を見据えなければならない」
「「「「想いを忘れた者どもには、徹底した鉄槌を!!」」」」


…‥‥くだらない部分で争ってしまうこともあったが、それでも大事な想いは一つであり、その想いを忘れた者はもはやファンクラブの者ではない。

 派閥が色々とあれどもすべての想いを一致させつつ、ファンクラブ創立以来初めての大掃除を行うのであった‥‥‥‥


「ああ、それと同時並行だが、例の怪物の件も忘れずにな」
「組織を見つけても、こちらの件で放置している間に逃げられたらいやだからなぁ…‥‥」
しおりを挟む
感想 574

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

処理中です...