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4章 中等部後期~高等部~
4-29 知らぬ間にそんなものが
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「…‥ふむ、それまた面倒なことになっているようね」
「やはりですか?」
「ええ、そうね」
帝国の王城内にある中庭。
お茶会の場が設けられている中で、正妃様はそうおっしゃった。
‥‥‥最近、ハクロが感じている奇妙な視線。
その原因は何なのか、心当たりが多すぎて今一つ分からないが、とりあえず相談できる人を考え、何かしらの面倒な輩が相手の可能性を考えるのであればそれを上回る権力を持つ正妃様に頼れないかと思い相談していた。
そこでひとまず話を聞くために、わざわざお茶会の場を設けてくれたのだが…‥‥どうやら正妃様には思い浮かぶ心当たりがあるらしい。
「とは言え、この話を言うのもなんだけど‥‥‥ハクロちゃんの気分が悪くならないかしら?」
【キュル‥‥‥うん、大丈夫。正妃様、ぜひ、話をお願いします】
ちょっと考え込みつつ、深々と頭を下げて頼みこむハクロ。
このお茶会の場が設けられるまでにあった視線に関して精神的に疲れて来たようであり、癒しや安心感を求めてかより一層僕にくっ付いている。
「そうね、なら話すわ」
ハクロが僕にくっ付いているのを見て微笑ましそうに、それでいて精神的に疲れているのを痛ましそうな目で見ながらも、正妃様は考えをおっしゃった。
「…‥‥つまり、一部のファンクラブとやらが、暴走していると?」
「そうなるわねぇ…‥‥分かっているだけでも、現状いくつかの派閥が出来上がっているらしいのよ」
分かりやすく話してくれた結果…‥‥どうやら視線の原因は、ハクロのファンクラブの一部が向けているらしいという事のようである。
以前の誘拐事件の際にもその存在は確認されていたが、ハクロについているファンクラブ。
その存在意義は彼女の幸せのため、笑顔を絶やさないためであり、日夜色々と動き、失われないために動いている組織でもあるそうな。
最初はほんの僅かだったが、徐々に数を増やし始め、現在では各国に支部が設けられているほどの大規模な組織になっているらしい。
【‥‥‥そんなに、いるの?】
「いるわね。とは言え普通は貴女に話すこともなく、本当に陰から見守る形で皆応援しつつ、守っているのよね。ああ、わたくしも会員になっているわ」
ほら、と言いながら正妃様が見せてくれたのは一枚のカード。
金糸で模様を施された白いカードであり、会員番号がしっかりと記されていた。
‥‥‥どうやら会員に申し込むと貰える証であり、ファンクラブ限定市などに無料で入れるようになる特典などが付いているらしい。
「それでもね、肥大化した組織というのは、何処かでおかしくなることがあるのよねぇ‥‥‥‥」
正妃様の話によれば現在、ハクロファンクラブとやらは世界に類を見ないほど大きな組織になっているそうだ。
それこそハクロを崇め称えて国を建国できそうなものであり、彼女のために動く組織力は強大らしい。
だがしかし、人が多く群れているからこそ、何処かで考え方が違う部分が存在し、派閥が発生するらしく、完全な一枚岩にはなっていないそうなのだ。
「原点を求める原点派閥、幸せの先にある未来を考えて動く未来派閥、新しい改革意識をもって切り開く改革派閥、ひたすら称えて女神にしたい女神派閥‥‥‥‥ちょっと口にするだけでも、結構な数がいるのよ」
「一部、おかしいような」
【何でそんなにあるの?】
ツッコミどころが色々とあるがひとまず置いておくとして、今回の不気味な視線を考えるのであれば、その別れている派閥の内いくつかが該当すると予想できるそうだ。
「その中でも、ストーカーじみたものを向ける可能性があるのは…‥‥改革派閥に、主点派閥、独占派閥かしらね」
「前2つは良いとして、最後の一つがどう考えてもろくでもなさそうなのですが」
「実際に、ろくでもないのよねぇ…‥‥だからこそ派閥の規模としては少数派のはずなのだけれども、変に権力を持っている人もいるから厄介なのよ」
派閥の名称だけでも嫌な予感しかしないが、実際にそうらしい。
というのも、大抵の派閥の大体の共通点としては「ハクロの幸せ」を第一に考えてためになるようなことを進んで行うそうなのだが…‥‥その独占派閥とやらはズレており「ハクロを手の下に置けばそれだけで幸せにできる」というようなものらしい。
そばにいて欲しいとかそういう事ではなく、「物」として扱い保管する。
自由を与えず、けれどもいけない薬物などで作られた偽りの幸せを与えれば良いというような…‥‥それはどう考えてもファンクラブを名乗るべきではないと言えるような思想である。
というか、何をどう思ってそんなことを考えたのか。作られた幸せなんて意味もないのだが。
【私、アルスと一緒なのが幸せなのに、それ嫌!!】
容易に想像できたのか、ぞっとして体を震わせつつ、僕にしがみつくハクロ。
離れたくないというように、独占派閥とやらへの強い拒絶を示す。
「ええ、それは分かっているわ。貴女が一番幸せそうなのは、彼の側にいる事…‥‥大好きな人と一緒にいる方が幸せなのは当たり前なのよ」
そんなことも考えずに動く独占派閥…‥‥愚物どもがいるようで、ファンクラブの全体の総意としては警戒しているそうだ。
そもそもそんな動きをしている時点で即刻除名&排除の動きに出るはずなのだが‥‥‥‥いかんせん、その愚物にはなかなか厄介な者たちがついているそうなのだ。
「他国にもファンクラブは存在するのだけれども、その独占派閥の主たる資金源に他国の貴族や王族が関わっているらしいのよねぇ…‥‥帝国は強大な国だけれども、全部を力で制御し切れるわけでもないし、相手が国内で無い分厄介過ぎるの」
しかもファンクラブの存在自体が秘匿されるべきことのようであり、表立って言う訳にもいかない。
そのため現在、一旦争わないように各派閥が協力して愚物の掃除を行おうとしているそうなのだが、そう容易く排除されてたまるかと言うように、愚物たちの抵抗があるそうだ。
金があるからこそ人を雇い、情報を集め、目をそらすために陽動するものたちを作り上げ、身を隠して逃げまくる。
それはもうファンクラブという組織から飛び出た異質な者たちであり、制御し切れないそうだ。
「‥‥‥とは言えね、黙って見ていることは無いわ。わたくしだって、ファンクラブ会員の一員であり‥‥‥支援している立場にあるからこそ、出来ることもあるのよ」
資金を動かし、権力を動かし、頭脳を活かす。
一国の皇帝の側にいる正妃と言う立場もまた強い力を持ち、活かしまくってくれるようだ。
「だからこそ、最近は動きが活性化してきて‥‥‥一発逆転のために、狙っている可能性があるわ」
ゆえに、ハクロに対しての視線を向けており…‥‥何かをやらかすためにうかがっている可能性があるようだ。
一応今後は、早いうちに全容を把握し切り、全部の不穏分子を粛清する予定はあるらしい。
けれどもその前に動かれる可能性を考えると十分ではないため、ファンクラブから選抜した護衛役の者たちなども多くそばにおいてくれるそうだ。
「表立って、動くことはできない。けれども、陰から見守ることぐらいは出来る‥‥‥‥それぐらいはさせてもらうわ。いえ、ファンクラブだからという理由で動くというよりも、一国の正妃としての思いもあるのよ、国民すべてが大事な我が子であり、ハクロ、貴女も大事なのよ‥‥‥」
【キュルゥ…‥‥正妃様、ありがとう】
正妃様の言葉に対して、お礼を述べるハクロ。
ひとまず今は様子見の状態を続けつつ、何かあればすぐに連絡をすることになった。
後は、万が一に備えての自衛手段の模索などもしつつ…‥‥全てを任せるのではなく、僕らの方からも動きたい。
「領地へ戻る時期も近いし、そこらへんで動く可能性も考え…‥‥ちょっと用意しないとね」
色々と襲ってくるシチュエーションは想像できるし、すべてに対応できるようにしなければいけない。
万が一が起きないように防止してもらうが、全てを防ぎきることはできないので、少しでも被害が無いようにしなければいけない。
そうでなければ、守れない。
本当に大事な彼女を守れなければ、男が廃る。
そう思いつつ、彼女を守るために手を尽くすことを心に誓うのであった…‥‥
「やはりですか?」
「ええ、そうね」
帝国の王城内にある中庭。
お茶会の場が設けられている中で、正妃様はそうおっしゃった。
‥‥‥最近、ハクロが感じている奇妙な視線。
その原因は何なのか、心当たりが多すぎて今一つ分からないが、とりあえず相談できる人を考え、何かしらの面倒な輩が相手の可能性を考えるのであればそれを上回る権力を持つ正妃様に頼れないかと思い相談していた。
そこでひとまず話を聞くために、わざわざお茶会の場を設けてくれたのだが…‥‥どうやら正妃様には思い浮かぶ心当たりがあるらしい。
「とは言え、この話を言うのもなんだけど‥‥‥ハクロちゃんの気分が悪くならないかしら?」
【キュル‥‥‥うん、大丈夫。正妃様、ぜひ、話をお願いします】
ちょっと考え込みつつ、深々と頭を下げて頼みこむハクロ。
このお茶会の場が設けられるまでにあった視線に関して精神的に疲れて来たようであり、癒しや安心感を求めてかより一層僕にくっ付いている。
「そうね、なら話すわ」
ハクロが僕にくっ付いているのを見て微笑ましそうに、それでいて精神的に疲れているのを痛ましそうな目で見ながらも、正妃様は考えをおっしゃった。
「…‥‥つまり、一部のファンクラブとやらが、暴走していると?」
「そうなるわねぇ…‥‥分かっているだけでも、現状いくつかの派閥が出来上がっているらしいのよ」
分かりやすく話してくれた結果…‥‥どうやら視線の原因は、ハクロのファンクラブの一部が向けているらしいという事のようである。
以前の誘拐事件の際にもその存在は確認されていたが、ハクロについているファンクラブ。
その存在意義は彼女の幸せのため、笑顔を絶やさないためであり、日夜色々と動き、失われないために動いている組織でもあるそうな。
最初はほんの僅かだったが、徐々に数を増やし始め、現在では各国に支部が設けられているほどの大規模な組織になっているらしい。
【‥‥‥そんなに、いるの?】
「いるわね。とは言え普通は貴女に話すこともなく、本当に陰から見守る形で皆応援しつつ、守っているのよね。ああ、わたくしも会員になっているわ」
ほら、と言いながら正妃様が見せてくれたのは一枚のカード。
金糸で模様を施された白いカードであり、会員番号がしっかりと記されていた。
‥‥‥どうやら会員に申し込むと貰える証であり、ファンクラブ限定市などに無料で入れるようになる特典などが付いているらしい。
「それでもね、肥大化した組織というのは、何処かでおかしくなることがあるのよねぇ‥‥‥‥」
正妃様の話によれば現在、ハクロファンクラブとやらは世界に類を見ないほど大きな組織になっているそうだ。
それこそハクロを崇め称えて国を建国できそうなものであり、彼女のために動く組織力は強大らしい。
だがしかし、人が多く群れているからこそ、何処かで考え方が違う部分が存在し、派閥が発生するらしく、完全な一枚岩にはなっていないそうなのだ。
「原点を求める原点派閥、幸せの先にある未来を考えて動く未来派閥、新しい改革意識をもって切り開く改革派閥、ひたすら称えて女神にしたい女神派閥‥‥‥‥ちょっと口にするだけでも、結構な数がいるのよ」
「一部、おかしいような」
【何でそんなにあるの?】
ツッコミどころが色々とあるがひとまず置いておくとして、今回の不気味な視線を考えるのであれば、その別れている派閥の内いくつかが該当すると予想できるそうだ。
「その中でも、ストーカーじみたものを向ける可能性があるのは…‥‥改革派閥に、主点派閥、独占派閥かしらね」
「前2つは良いとして、最後の一つがどう考えてもろくでもなさそうなのですが」
「実際に、ろくでもないのよねぇ…‥‥だからこそ派閥の規模としては少数派のはずなのだけれども、変に権力を持っている人もいるから厄介なのよ」
派閥の名称だけでも嫌な予感しかしないが、実際にそうらしい。
というのも、大抵の派閥の大体の共通点としては「ハクロの幸せ」を第一に考えてためになるようなことを進んで行うそうなのだが…‥‥その独占派閥とやらはズレており「ハクロを手の下に置けばそれだけで幸せにできる」というようなものらしい。
そばにいて欲しいとかそういう事ではなく、「物」として扱い保管する。
自由を与えず、けれどもいけない薬物などで作られた偽りの幸せを与えれば良いというような…‥‥それはどう考えてもファンクラブを名乗るべきではないと言えるような思想である。
というか、何をどう思ってそんなことを考えたのか。作られた幸せなんて意味もないのだが。
【私、アルスと一緒なのが幸せなのに、それ嫌!!】
容易に想像できたのか、ぞっとして体を震わせつつ、僕にしがみつくハクロ。
離れたくないというように、独占派閥とやらへの強い拒絶を示す。
「ええ、それは分かっているわ。貴女が一番幸せそうなのは、彼の側にいる事…‥‥大好きな人と一緒にいる方が幸せなのは当たり前なのよ」
そんなことも考えずに動く独占派閥…‥‥愚物どもがいるようで、ファンクラブの全体の総意としては警戒しているそうだ。
そもそもそんな動きをしている時点で即刻除名&排除の動きに出るはずなのだが‥‥‥‥いかんせん、その愚物にはなかなか厄介な者たちがついているそうなのだ。
「他国にもファンクラブは存在するのだけれども、その独占派閥の主たる資金源に他国の貴族や王族が関わっているらしいのよねぇ…‥‥帝国は強大な国だけれども、全部を力で制御し切れるわけでもないし、相手が国内で無い分厄介過ぎるの」
しかもファンクラブの存在自体が秘匿されるべきことのようであり、表立って言う訳にもいかない。
そのため現在、一旦争わないように各派閥が協力して愚物の掃除を行おうとしているそうなのだが、そう容易く排除されてたまるかと言うように、愚物たちの抵抗があるそうだ。
金があるからこそ人を雇い、情報を集め、目をそらすために陽動するものたちを作り上げ、身を隠して逃げまくる。
それはもうファンクラブという組織から飛び出た異質な者たちであり、制御し切れないそうだ。
「‥‥‥とは言えね、黙って見ていることは無いわ。わたくしだって、ファンクラブ会員の一員であり‥‥‥支援している立場にあるからこそ、出来ることもあるのよ」
資金を動かし、権力を動かし、頭脳を活かす。
一国の皇帝の側にいる正妃と言う立場もまた強い力を持ち、活かしまくってくれるようだ。
「だからこそ、最近は動きが活性化してきて‥‥‥一発逆転のために、狙っている可能性があるわ」
ゆえに、ハクロに対しての視線を向けており…‥‥何かをやらかすためにうかがっている可能性があるようだ。
一応今後は、早いうちに全容を把握し切り、全部の不穏分子を粛清する予定はあるらしい。
けれどもその前に動かれる可能性を考えると十分ではないため、ファンクラブから選抜した護衛役の者たちなども多くそばにおいてくれるそうだ。
「表立って、動くことはできない。けれども、陰から見守ることぐらいは出来る‥‥‥‥それぐらいはさせてもらうわ。いえ、ファンクラブだからという理由で動くというよりも、一国の正妃としての思いもあるのよ、国民すべてが大事な我が子であり、ハクロ、貴女も大事なのよ‥‥‥」
【キュルゥ…‥‥正妃様、ありがとう】
正妃様の言葉に対して、お礼を述べるハクロ。
ひとまず今は様子見の状態を続けつつ、何かあればすぐに連絡をすることになった。
後は、万が一に備えての自衛手段の模索などもしつつ…‥‥全てを任せるのではなく、僕らの方からも動きたい。
「領地へ戻る時期も近いし、そこらへんで動く可能性も考え…‥‥ちょっと用意しないとね」
色々と襲ってくるシチュエーションは想像できるし、すべてに対応できるようにしなければいけない。
万が一が起きないように防止してもらうが、全てを防ぎきることはできないので、少しでも被害が無いようにしなければいけない。
そうでなければ、守れない。
本当に大事な彼女を守れなければ、男が廃る。
そう思いつつ、彼女を守るために手を尽くすことを心に誓うのであった…‥‥
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