転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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4章 中等部後期~高等部~

4-26 もちろんこちらも忘れずに

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 夏季休暇が近づいてくるという事は、夏日になってくるという事。

 もう間もなく迫ってくる大きな休みに対して、いくつになっても生徒たちはワクワクを隠し切れずにそわそわと休暇に関しての予定で盛り上がっていたり…‥‥

「なぁなぁ聞いたか!!今年度、ついに噂の帝都大プールが出来上がるって!!」
「ああ、ダンジョンに飲み込まれているプールもあれはあれで良いが、やっぱりあの太陽のもとにキャッキャウフフと遊ぶ女の子たちを眺めたいよなぁ」
「それ何処か違うような‥‥でも、大空の下で遊びたいというのは分かるなぁ」


「‥‥‥そう言えば、休暇の2週間前にはついに開店するんだっけ、帝都大プール」
【キュルゥ、それはそれで楽しみ♪】

 昼食時、生徒たちがわいわいがやがやと盛り上がる中で噂話を僕らは耳にしていた。

 帝都大プール‥‥‥元々この学園のある帝都には、以前から城壁近くにプールがあった。

 だがしかし、ある時ダンジョンに飲み込まれ、以降はダンジョン内で夏季に開かれるダンジョンプールとしての観光名所になってしまい、大空の下でのプールができなくなってしまったのだ。

 まぁ、それでも楽しもうと思えば楽しめる近場の水辺という事で人気があったが、それでもやっぱり太陽が照らす中で冷たい水の中に身を投げ込みたい人が多かった。

 ゆえに2~3年ほど前からプールの移設計画が計画されつつ、帝都内の拡張工事などに合わせてより大規模なものを作ろうという話になり、今年度に完成するという話があるのだ。

 なお、夏季休暇だけにしか使われないのであれば無駄だと思われるという意見も合ったらしく、その要望にも応えた結果、冬季には温水プールにしたり、全部湯に変えて大浴場に変えるという計画も立てられているので、年間を通して無駄なく運用されるらしい。

 大きな風呂場になる話は、それはそれで楽しみだったりする。

【プール♪プール♪暑い中泳ぐの、すっきりして気持ちが良い!!】
「もう水着も用意していたっけ?」
【うん!今年の流行りも考えて、しっかりと新調したの!】

 ちょっと口ずさみながら嬉しそうに答えるハクロ。

 陸と空を自由に動ける身でありながらも、水の中も制覇する気なのだろうか。

 いや、違う。純粋にプールを楽しみにしているだけである。…‥‥毎年プールだけど、たまには海とかも行ってみたいかも。卒業後にちょっと記念旅行として狙ってみるべきか?

 とにもかくにもプールの話を聞いて、ハクロが嬉しそうに口ずさみ始めたところで周囲の生徒たちも釣られて鼻歌を口ずさみ始めていたり、近づくプール開きにワクワクし始める。

 皆で遊べて楽しい事は、待ち遠しくなることである。

 まぁ、ごく一部が遊べるだけじゃなくて彼女の水着姿に関してだとかの話題になっている点は気になることころだが…‥‥うん、気にしないほうが良いだろう。

 とにもかくにも、もう間もなく近付く夏季休暇の前のお楽しみに、僕も待ち遠しくなるのであった‥‥‥

「というか、毎年水着を変えているよね」
【だって、流行もあるけど着れなくなるの。着れないことはないけど…‥‥きつくなるもん】

‥‥‥何処が、とは尋ねない。分かっているというか、何と言うか。

 普段そこまで気にしないけど、検査の度に少しづつ変わる部分があるからね。でも蜘蛛部分の体積がちょっと減っていたりするらしいけれども…‥‥そのあたりもどうなのだろうか。








‥‥‥新しいプールの話で学園が盛り上がっている一方で、こちらは浮かれてはいなかった。

 浮かれるどころか、凄まじい気迫で取り組んでおり‥‥‥


「…‥‥となると、軍事国は既に機能停止か」
「ああ、現地の情報も既に得たが、完全にダメになっている。元々が愚物の集団だったようだが、そこを利用して混乱も起こし、乗じて逃げ出した者たちがいることも判明したぞ」

 帝都のとある一件の屋敷の中、会員の中から好意で提供された本部内にて報告会が開かれており、出てきた結果を受けとっていた。

「色々と洗ってみたが、先日の人間が怪物にされたルートとほぼ同じだろう。すでに禁忌の領域に踏み入れるような実験が行われていたことが確認されており、その技術に関して持ち出しはされたが、データがいくつか残されていた」
「わざと残している可能性もあったが、どうやら本当に時間はなかったらしい。我々の到着の一歩手前に抜け出されたという悔しさはあるが…‥‥それでも、ある程度相手がどういうものなのか捉えることはできた」
「ついでに他国の会員にも既に通達済みであり、他のところでも各自潰し始めたようだ。中には生け捕りの報告も出てくる」

 あちこちから出てくる報告を聞きつつ、彼らは情報がいくら集まって来てもまだ核心を突けていないことに警戒をし、油断する気はない。

「しかし、この時期にようやくつかんだか…‥‥この様子では、夏季開催予定のファンクラブ特別市は中断し、全力を投入するしかあるまい」
「惜しくもあるが、彼女のためを思うのであれば根絶しなければいけないからな」
「なぁに、その分の鬱憤をぶつけまくって発散すればいい話しさ」

 会員ごとの個人特定を防ぐために仮面を付けたりフードを着こなしたりして彼らは話し合うが、その想いは皆一致している。

 文句を言う事もないが、それでも出てくる不満に関しては、元凶に対してぶつける気でもある。

「ああ、つい数秒前に届いた話では、新しい水着を作ったという話もあるが…‥‥その事に関しては後程魔道具で記録し、会員に無料配布を。いつもならばある程度の制限をかけるが、今回の仕事のせいで楽しむ暇もないからな‥‥‥少しでも底上げするために、徹底しなければいけない」
「ここで手を抜けば泣くのは自分達、いや、ハクロちゃんだからな」
「「「「泣かせるようなことは絶対にさせない!!」」」」

 全員が調べれば調べる程、出てくるおぞましい情報。

 放置をすればいずれハクロに対して、いや、既に出ている魔の手が襲い掛かるのが目に見えており、ファンクラブの者たちは守りに徹底しつつ、攻勢に移る隙を探し出す。

「そもそも彼女だけではなく、放置していたら全部の国が危ないからな…‥‥どうして危険な研究にのめり込む輩が出るのか、その思考が理解できない」
「そうだよな。とは言え、相手の理由を探すよりも、確実に全部を秘密裏に消し飛ばすしかあるまい。彼女の手を煩わせるようなことが無いように近いうちに確実に根絶しなければいけないだろう」
「「「「すべては、ハクロちゃんを守り、その笑顔を失うことが無いように!!」」」」


…‥‥ファンクラブは年々拡大しており、帝国から遠く離れた国にまで手を伸ばしていた。

 その組織力を考えると、これからぶつかり合うであろうおぞましい組織を凌駕していると言えなくもないが、それでもすべてを制覇し切るわけでもない。

 それでも確実に勝っていると言える点を挙げるのであればその心の持ちようであり、固い結束と強い想いはをまとめあげ、夏季休暇前までには終わらせようと動くのであった‥‥‥‥


「‥‥‥ところでだが、念のために帝都の新しい大プールの方にも魔道具は仕掛けているよな?」
「ああ、間違いない。無人撮影可能、日の出から日の入りまで確実に無人で作動し、遠隔で記録。取られたくないようなことも自動的に判断して映像を加工し、それでいて音声も細かく捉えた映像記録も可能なはずだ」
「溺れた時に備えて浮き輪の無料配布機能などもアピールしつつ、国からの許可も得ている」
「というか、バックに会員の中でもすさまじい影響力を持つお方がいるからな…‥‥‥感謝をしつつ、今は敵をこの世から消滅させることだけ考えておこう」

 ついでに色々色と技術が発展しているが‥‥‥‥そのあたりは後年、帝国に貢献されるのであった。
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