転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

文字の大きさ
152 / 229
4章 中等部後期~高等部~

閑話 たまにはこうやって話し合っていたりもする

しおりを挟む
【キュル‥‥‥そう言う訳で、念のために警戒の糸を張りたいけど、良い案ない?】
「ふむ、姉君の考えは良いとは思いますが…‥‥我々の糸はそこまで万能ではないですからなぁ」

‥‥‥学園内のとある休み時間、ハクロはベイドゥと相談していた。

 学園に編入してきた貴族令嬢の執事として仕えている彼だが、その正体はハクロの弟たち。

 中身に3匹の蜘蛛がいて、そろって操って一人の人間に見せかけている人形とも言えるが、一応数少ない血縁者なのでそれなりに話し合う機会はあった。


「我々の糸は確かに周囲の感知を行うには向いているでしょう。感知範囲は広いですし、やろうと思えば極小で人に気が付かれないものも可能ですが‥‥‥‥捉える事のできないような相手に対して、効果的に感知できるのかと言われるとそうでもないですしね」
【やっぱり?】
「ええ。まぁ、我々は操ることに特化しているので、別方向に使うのであれば姉君の方が向いているのでしょうが…‥‥話を聞く限りでは、そんな得体のしれない化け物に対しての感知には、不十分としか思えないのです」

 ハクロが相談していたのは、先日の化け物対策のために、少しでも素早く感知できる糸を各所に張り巡らせられないかという事である。

 ある程度の相手の位置や動き方、速度などを素早く判明することが出来れば、万が一襲撃があったとしてもある程度の余裕を持つことが出来る。

 そう考えつつも、並みの方法では当たらない相手だったことを思い出し、その手の類でもつかえるような糸が無いかと相談していたのだが…‥‥ベイドゥからは良い回答を得ることはできなかった。

 同じ蜘蛛のモンスター同士、糸の扱いに関してはお互いに長けている。

 しかし、その使い道はそれぞれ異なっており、だからこそ別の視点から着想出来るようなことがないかと思ったのだが、そううまくことは運ばない。

「そもそもですね、姉君のありとあらゆる攻撃が透過するような相手に、糸を通せるとは限りません。罠を仕掛けてその効果を失せさせて攻撃できるようにしたという方法もありましたが、あらかじめ感知するためにと考えると、先ずその効果をどうにかしなければいけないという話になり、結局はどうしようもないという結論しかできませんからね」
【キュルゥ…‥‥】

 攻撃が通じないような相手に、糸での感知が通じるとは言えないだろう。

 ある程度空気の流れかたなどで察知できる部分があるとはいえ、攻撃を透過させるような相手に糸は無力に等しいのである。

 一応、今回はある程度の気配を漏らしていたために、襲撃前に確認できたとはいえ、もしも気配のないような輩であれば、今ここに彼女はいなかったかもしれない。

 見えない、気配の得られない、攻撃の通じない、そんな悪夢のような相手が出来てしまえば、その時こそお終いと言えるだろう。

「しかし、姉君を狙うような輩がいるという事実は、それはそれで見過ごせませんね‥‥‥‥我々の主であるお嬢様を狙うような輩へ抱く殺意と同じようなものを抱きたくなりますね」

 数少ない血縁者がそんな手段で狙われるのは、嫌らしい。

 群れが全滅している現状だからこそ、出来る限り真摯になって相談には乗ってくれるのだが…‥‥それでもできない部分もある。


【キュルゥ、やっぱり、難しい問題】
「ええ、糸が通じないというのは、我々にとっても脅威ですからね…‥‥最大の特徴を一気に潰すような相手は、相性が最悪です」

 互いに腕を組んで同意し合い、悩み合うのだが良い案が思いつかない。

 自分達の得意分野が通用しない相手がいるということ自体、非常に困ることなのでどうにかしたいのだが‥‥‥‥っと、そこでふとベイドゥは思い出したかのようにぽんっと手を打った。

「あ、そう言えばその手の輩に関して、どうにかする手段はあったかもしれません」
【本当!?】

 先ほどまでできないことに悩んでいたのに、突然出てきたその発言にハクロは目を丸くする。

「はい。そのような輩は確か、我々が住まいにしていたダンジョンでも似たような事例があったのですが…‥‥ああ、でもあの時確か姉君は、母上の背中で熟睡してましたね」
【‥‥‥何かあったっけ?】
「あったのですよ。まぁ攻撃が通じないというか、糸を燃やす焔の相手がね」




‥‥‥かつて、ダンジョン「ゲードルン」の中に群れが存在していたころ、小さな襲撃事件が多少あった。

 大きな蜘蛛の群れが隠れて住んでいるとはいえ、モンスターによっては大量のごちそうとみなし、襲ってくる輩がいるのだ。

 とは言え、ギガマザータラテクトが居を構えつつ、その群れの蜘蛛たちも戦闘に長けていたので大抵の場合は返りうちにしてその晩のごちそうになっていたのだが…‥‥その襲撃の中で、とある事例が存在していた。

「糸を燃やす『フレイムシザー』という燃えるカマキリというようなモンスターがいたのですよ」

――――――――――――――
『フレイムシザー』
カマキリの形を持った、生きた焔の塊であるモンスター。
その鎌が最大の武器ではなく、燃え盛る焔の体そのものが武器であり、燃料として周囲の生物を取り込み激しく燃え盛る。
―――――――――――

 そんなモンスターであったからこそ、蜘蛛の糸なんぞ直ぐに焼き尽くし、感知も攻撃もほぼ通用しなかったのだが…‥‥それの襲撃は、彼らの母親が動いたことであっという間に片付いてしまったのである。


「母上がどういう訳か燃えるモノを拘束する糸を作り出し、全身を縛り上げて動かなくなるまで捕まえていたのです」
【キュル?お母さんが?】

 ギガマザータラテクトの前では、その命も文字通り蟷螂の斧。

 あっという間に捕縛され、そのまま消火して終わったようだが…‥‥そこに、今回ハクロがやりたいことへのヒントが存在していた。

「燃えるものは普通は糸が通じません。とはいえ、母君の糸は通用していた‥‥‥‥糸の本質そのものはほぼ同じなはずなのに、出来ていたという事実があるのです」
【‥‥‥お母さん、どうやったんだろう?】
「7番目の兄が、確か秘訣を聞いていたはずでしたが‥‥‥‥生憎、その兄は一人立ちしましたからなぁ。どこにいるのか、もう分かりません」
【キュル、7番目のお兄ちゃん…‥‥確か、世界最強の格闘蜘蛛になるんだって意気込んで、蜘蛛の身体なのにどこをどうしてか筋肉ムキムキになって飛んでいったんだっけ?】

 その秘訣さえわかれば攻撃が通用しないような相手にも糸を使えるかもしれないのに、その秘訣は既に絶たれているようだ。

 いや、何匹かの兄弟姉妹は自ら聞いていたようだが‥‥‥‥それでも群れが全滅した以上、全員の消息は不明である。

「これ以上は…‥‥ええ、考えつきませんね。申し訳ございません、姉君」
【キュル、別に良いよ。私、その話しを聞いただけでも、希望持てたもの】


 何をどうすればいいのかという具体的な方法は不明だが、それでも捕らえられないようなものを捕らえることが出来るような手段は存在している。

 絶対にできないという事ではないという事実に、ハクロは希望を見出した。

 とにもかくにもこれ以上考えても分からないだろうし、今はその話しから構想を練って、実験を行うしかないようであった…‥‥‥


「それはそうと姉君、番となられる方と挙式はいつでしょうか?」
【んー、まだ先かも‥‥‥なんか、色々難しいことがあるみたい。でも、絶対に夫婦になれるように頑張っている途中なの。‥‥‥でも、聞いてどうするの?】
「いえ、単純に挙式をするのであれば呼んでほしいと、お嬢様の方からも頼まれてまして。お嬢様の前世の兄君とやらが、姉君の番殿らしいですからね」

‥‥‥そしてついでに、ベイドゥは執事として頼まれた業務をこなそうと動くのであった。
しおりを挟む
感想 574

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...