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4章 中等部後期~高等部~
4-19 踊るものの外で蠢く者
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‥‥‥帝国と軍事国との争い。
それは圧倒的な戦力差や大勢の裏切りによって、簡単に終わりを迎えようとしていた。
だがしかし、その争いの中で、蠢く者はいたりするのだ。
「‥‥‥ははは、あまり役立たなかったとはいえ、こういう事に使えるから棄てたものでもないか」
闇夜の中、その青年がつぶやく目の前の光景は、一言で言えば地獄絵図というのにふさわしいものが広がっていた。
「ぎゃああああああ!!助けてくれぇぇぇぇ!!」
「なんで、なんで、なんでこうなったぁぁぁ!!」
「どこでどうなってぎべばばぁぁl!?」
悲鳴、断末魔、絶望の声をあげつつ、最後に皆静かになっていく。
戦場から逃げ伸びた敗走兵に、戦況の悪化から裏切ろうとした貴族に。上層部にふんぞり返っていたが逃げようとしていた者達‥‥‥身分や立場が違えども、等しくソレらに捕食されていく。
「もっと大勢の犠牲が、本来は必要だったが…‥‥準備が出来る前に、あっと言う間に裏切り者たちが出たりするせいで、予定よりも少ない犠牲しか出なかったが…‥‥うまくいっているようだな」
あちこちで潰れるような音や食いちぎられるような音、その他の音も添えて、等しく犠牲者‥‥‥いや、大事な養分となっていく光景は、地獄絵図と言えるだろう。
それでもどうにか用意していたソレらへの供物としては捧げられるが‥‥‥‥予定していた量を得られなかったことに、彼は、ゲシュタリアは内心腹を立てていた。
「原因を探ると、かつて得損ねたところの当主となる奴の側にいる蜘蛛か…‥‥本当に何をどうしたら、こんなに多くの予定を狂わせるのだろうか」
その回答に関しては、その原因となっている者たちにはわからないだろう。
周囲にいる者たちが勝手に動きまくったがゆえに、この状況になったというしかないのだが…‥‥それでも、元凶がいる事を考えるとゲシュタリアとしては面白くはない。
「この様子だと、他の場所で同じようにやったとしても…‥‥同様に予定が狂って、駄目になる可能性があるし‥‥‥それを考えると、さっさと潰したほうがいいのか」
企んだところで、何処かで関係を持ってしまえばそこから崩壊してしまうと予想できる。
ならば、その関係を持つようなことが無いように、後の憂いというか大問題点というようなものたちを消す方が良いのだが…‥‥容易い事ではないという事も分かっており、腹が余計に立ってきた。
「何にしても、今は血肉を吸わせ、こいつらを元に更に完成度を高めるしかないが…‥‥この様子だと、成長不十分だろう」
腹が立つことは置いておいて、今は目の前の光景に集中しようとゲシュタリアは思ったが、それでもうまくいかないのが目に見えている。
足りないのだ、多くの血肉が。
少ないのだ、多くの憎悪や怨嗟、その他の黒い感情の類が。
手に入らないのだ、戦乱の中で得られる人の欲望の数々が。
「‥‥‥とは言え、せっかくここで得られる分でできたこともあるし…‥‥実験と今後の参考も兼ねて、やってみるべきか」
今は自分の制御下にソレらはあるが、いっそここで開放してこの少ない事態に陥った原因たちへ向けるのも悪くはないだろう。
やるのであればさらに強化したほうが良いかもしれないが‥‥‥あくまでも倒しきるのではなく、何かしらの情報を得る事だけを考えるだけでいい。
そう思いつき、ゲシュタリアはソレらに付けていた枷を外す。
「さて、どうなるのかが楽しみだが…‥‥少なくとも、ちょっとした嫌がらせにはなるだろう」
役に立つとは思えない部分も多いが、それでも多少は溜飲が下がると思う。
ゲシュタリアはつぶやきつつ、巻き添えになる前に安全な場所へ移動するのであった‥‥‥‥
【‥‥‥キュルゥ、お月様、今日は見えないの】
「新月ってことかなぁ‥‥‥月明かりが無くとも星明かりがあるけど、やっぱり月がある方が夜景がこう、綺麗に映えるからなぁ‥‥‥」
どこかの場所で起きている惨事を知らない中、アルスたちは起きていた。
本日の授業も終え、就寝の時間となっていたが…‥‥寝付くまで、ちょっとだけ時間がかかっていた。
【お月様、光っていて綺麗、私なんかよりも、ずっと綺麗なのに見れないの残念】
「光る光景は確かに美しいけれど…‥‥綺麗さで言えばいい勝負だとは思うよ」
まぁ、月明かりとハクロの美しさにどう比べろとツッコみたくもなるが、彼女が美しい事は変わりはない。
なお、本日は枕ではなく彼女の背中に寝かせてもらっている形ではあるが…‥‥ふわもこなベッドというのは何故こうも居心地が良いのだろうか。
「柔らかさか、その反発力か…‥‥それとも、ハクロの背中だからかな?」
【私の背中、アルスにとってちょうどいいなら嬉しい。それに、アルスがくっついているし、もっと嬉しい♪】
ゴロンっとちょっと寝転がりながらつぶやけば、ハクロが答えてくれる。
居心地の良さは良いのだが‥‥‥‥うん、好きな人と一緒に寝ているというのが寝心地の良さに直結しているのかもしれない。
「それにしても、本日の授業はハードだったねぇ‥‥‥晩餐会とかに備えてダンスをするために、何種類もある踊りを連続でやって…‥‥くたくたになったね」
【キュル、私も疲れた。アルスと一緒に手をつないで踊るのはいいけれども…‥‥足が違う分、大変だった】
ハクロの場合、人の足のように見える食指があるが、日常生活では普通に蜘蛛の足の方を扱っており、それに対応してダンスを行ったのだが、これまた色々と大変だった。
ターンやステップを踏む順番だとか、足の角度から位置、その他諸々…‥‥一口に踊りと言っても事細かに決められている部分が多く、それに対応するために動いたとはいえ、注意をしながら踊ると精神的にも肉体的にも疲労が貯まった。
途中で人化の術というべき魔法でハクロが人の姿形に近くなって、その姿で対応したが…‥‥
【結局見せかけで、実際は浮いているだけで、余計に大変になった‥‥‥‥】
「大丈夫、ハクロ?」
【大丈夫だけど、食指疲れた…‥‥】
食指を伸ばし、手でもみほぐすハクロ。
普通は触肢とかそう言うはずの部分が食指と制定されている理由はわからないけど…‥‥人の足のように見えるその部分を、本当の人の足のように動かすふりをしていたのは結構大変だったらしい。
【…‥‥ここで立てれば、まだ良いんだけどね。アルスと一緒に、普通に地面に下ろす‥‥‥‥でも私の足、コレだもの】
くいっと片足を上げ、ハクロは溜息を吐く。
彼女なりに、色々と思う部分があるのだろうけれども…‥‥こればっかりはどうしようもないんだよなぁ。
「いっそ、ハクロが本当に人になれるような薬も作れればいいけど、それはできないんだよね」
チートな薬の精製能力を使って、ハクロを本当の人間のようにできないかと考えたことは何度かあったりする。
けれどもこれは、制限の対象になるのかそれとも僕の実力の至らなさゆえか、作ることはできない。
動植物そっくりに変身可能な変身薬は作れるのだが‥‥‥‥それとは何が違って、どこで出来ないことになっているのかがわからない。
結局は神のみぞ知るのだろうけれども…‥‥その不明な制限をかける判断点をもうちょっとだけはっきりとして欲しいとは思ってしまう。
…‥‥でも、文句を言おうにも言える相手ではないだろう。
そもそも、この世界に転生させてもらえなかったら、ハクロに遭うことは無かった。
だからこそ、言いたくとも言いにくいというか、そもそもまたどうやって出会うのかという話になったりするのだが…‥‥うん、深く考えないでおこう。ようやく眠気がやって来て、夢の世界への時間が近づいて来たからね。
「でも、ハクロが本当に人と変わらないようになるのも良いけど、今のままでも十分かな…‥‥ハクロ自身のことが好きであってその容姿などは気にしてないからね」
【それを言うなら私も、アルスが好きで、気にすることないよ。お互いに好きなのは変わらないもん』
「それもそうだよねぇ…‥‥」
【うん、そうだよ】
互いに好きだという事を改めて口にしあい、ふふふっと思わず笑みが浮かんでしまう。
大事であり、愛し合っており、離れがたいパートナー。
そう思うと、細かい事なんかがどうでもよくなるような気がしてくるのであった…‥‥
それは圧倒的な戦力差や大勢の裏切りによって、簡単に終わりを迎えようとしていた。
だがしかし、その争いの中で、蠢く者はいたりするのだ。
「‥‥‥ははは、あまり役立たなかったとはいえ、こういう事に使えるから棄てたものでもないか」
闇夜の中、その青年がつぶやく目の前の光景は、一言で言えば地獄絵図というのにふさわしいものが広がっていた。
「ぎゃああああああ!!助けてくれぇぇぇぇ!!」
「なんで、なんで、なんでこうなったぁぁぁ!!」
「どこでどうなってぎべばばぁぁl!?」
悲鳴、断末魔、絶望の声をあげつつ、最後に皆静かになっていく。
戦場から逃げ伸びた敗走兵に、戦況の悪化から裏切ろうとした貴族に。上層部にふんぞり返っていたが逃げようとしていた者達‥‥‥身分や立場が違えども、等しくソレらに捕食されていく。
「もっと大勢の犠牲が、本来は必要だったが…‥‥準備が出来る前に、あっと言う間に裏切り者たちが出たりするせいで、予定よりも少ない犠牲しか出なかったが…‥‥うまくいっているようだな」
あちこちで潰れるような音や食いちぎられるような音、その他の音も添えて、等しく犠牲者‥‥‥いや、大事な養分となっていく光景は、地獄絵図と言えるだろう。
それでもどうにか用意していたソレらへの供物としては捧げられるが‥‥‥‥予定していた量を得られなかったことに、彼は、ゲシュタリアは内心腹を立てていた。
「原因を探ると、かつて得損ねたところの当主となる奴の側にいる蜘蛛か…‥‥本当に何をどうしたら、こんなに多くの予定を狂わせるのだろうか」
その回答に関しては、その原因となっている者たちにはわからないだろう。
周囲にいる者たちが勝手に動きまくったがゆえに、この状況になったというしかないのだが…‥‥それでも、元凶がいる事を考えるとゲシュタリアとしては面白くはない。
「この様子だと、他の場所で同じようにやったとしても…‥‥同様に予定が狂って、駄目になる可能性があるし‥‥‥それを考えると、さっさと潰したほうがいいのか」
企んだところで、何処かで関係を持ってしまえばそこから崩壊してしまうと予想できる。
ならば、その関係を持つようなことが無いように、後の憂いというか大問題点というようなものたちを消す方が良いのだが…‥‥容易い事ではないという事も分かっており、腹が余計に立ってきた。
「何にしても、今は血肉を吸わせ、こいつらを元に更に完成度を高めるしかないが…‥‥この様子だと、成長不十分だろう」
腹が立つことは置いておいて、今は目の前の光景に集中しようとゲシュタリアは思ったが、それでもうまくいかないのが目に見えている。
足りないのだ、多くの血肉が。
少ないのだ、多くの憎悪や怨嗟、その他の黒い感情の類が。
手に入らないのだ、戦乱の中で得られる人の欲望の数々が。
「‥‥‥とは言え、せっかくここで得られる分でできたこともあるし…‥‥実験と今後の参考も兼ねて、やってみるべきか」
今は自分の制御下にソレらはあるが、いっそここで開放してこの少ない事態に陥った原因たちへ向けるのも悪くはないだろう。
やるのであればさらに強化したほうが良いかもしれないが‥‥‥あくまでも倒しきるのではなく、何かしらの情報を得る事だけを考えるだけでいい。
そう思いつき、ゲシュタリアはソレらに付けていた枷を外す。
「さて、どうなるのかが楽しみだが…‥‥少なくとも、ちょっとした嫌がらせにはなるだろう」
役に立つとは思えない部分も多いが、それでも多少は溜飲が下がると思う。
ゲシュタリアはつぶやきつつ、巻き添えになる前に安全な場所へ移動するのであった‥‥‥‥
【‥‥‥キュルゥ、お月様、今日は見えないの】
「新月ってことかなぁ‥‥‥月明かりが無くとも星明かりがあるけど、やっぱり月がある方が夜景がこう、綺麗に映えるからなぁ‥‥‥」
どこかの場所で起きている惨事を知らない中、アルスたちは起きていた。
本日の授業も終え、就寝の時間となっていたが…‥‥寝付くまで、ちょっとだけ時間がかかっていた。
【お月様、光っていて綺麗、私なんかよりも、ずっと綺麗なのに見れないの残念】
「光る光景は確かに美しいけれど…‥‥綺麗さで言えばいい勝負だとは思うよ」
まぁ、月明かりとハクロの美しさにどう比べろとツッコみたくもなるが、彼女が美しい事は変わりはない。
なお、本日は枕ではなく彼女の背中に寝かせてもらっている形ではあるが…‥‥ふわもこなベッドというのは何故こうも居心地が良いのだろうか。
「柔らかさか、その反発力か…‥‥それとも、ハクロの背中だからかな?」
【私の背中、アルスにとってちょうどいいなら嬉しい。それに、アルスがくっついているし、もっと嬉しい♪】
ゴロンっとちょっと寝転がりながらつぶやけば、ハクロが答えてくれる。
居心地の良さは良いのだが‥‥‥‥うん、好きな人と一緒に寝ているというのが寝心地の良さに直結しているのかもしれない。
「それにしても、本日の授業はハードだったねぇ‥‥‥晩餐会とかに備えてダンスをするために、何種類もある踊りを連続でやって…‥‥くたくたになったね」
【キュル、私も疲れた。アルスと一緒に手をつないで踊るのはいいけれども…‥‥足が違う分、大変だった】
ハクロの場合、人の足のように見える食指があるが、日常生活では普通に蜘蛛の足の方を扱っており、それに対応してダンスを行ったのだが、これまた色々と大変だった。
ターンやステップを踏む順番だとか、足の角度から位置、その他諸々…‥‥一口に踊りと言っても事細かに決められている部分が多く、それに対応するために動いたとはいえ、注意をしながら踊ると精神的にも肉体的にも疲労が貯まった。
途中で人化の術というべき魔法でハクロが人の姿形に近くなって、その姿で対応したが…‥‥
【結局見せかけで、実際は浮いているだけで、余計に大変になった‥‥‥‥】
「大丈夫、ハクロ?」
【大丈夫だけど、食指疲れた…‥‥】
食指を伸ばし、手でもみほぐすハクロ。
普通は触肢とかそう言うはずの部分が食指と制定されている理由はわからないけど…‥‥人の足のように見えるその部分を、本当の人の足のように動かすふりをしていたのは結構大変だったらしい。
【…‥‥ここで立てれば、まだ良いんだけどね。アルスと一緒に、普通に地面に下ろす‥‥‥‥でも私の足、コレだもの】
くいっと片足を上げ、ハクロは溜息を吐く。
彼女なりに、色々と思う部分があるのだろうけれども…‥‥こればっかりはどうしようもないんだよなぁ。
「いっそ、ハクロが本当に人になれるような薬も作れればいいけど、それはできないんだよね」
チートな薬の精製能力を使って、ハクロを本当の人間のようにできないかと考えたことは何度かあったりする。
けれどもこれは、制限の対象になるのかそれとも僕の実力の至らなさゆえか、作ることはできない。
動植物そっくりに変身可能な変身薬は作れるのだが‥‥‥‥それとは何が違って、どこで出来ないことになっているのかがわからない。
結局は神のみぞ知るのだろうけれども…‥‥その不明な制限をかける判断点をもうちょっとだけはっきりとして欲しいとは思ってしまう。
…‥‥でも、文句を言おうにも言える相手ではないだろう。
そもそも、この世界に転生させてもらえなかったら、ハクロに遭うことは無かった。
だからこそ、言いたくとも言いにくいというか、そもそもまたどうやって出会うのかという話になったりするのだが…‥‥うん、深く考えないでおこう。ようやく眠気がやって来て、夢の世界への時間が近づいて来たからね。
「でも、ハクロが本当に人と変わらないようになるのも良いけど、今のままでも十分かな…‥‥ハクロ自身のことが好きであってその容姿などは気にしてないからね」
【それを言うなら私も、アルスが好きで、気にすることないよ。お互いに好きなのは変わらないもん』
「それもそうだよねぇ…‥‥」
【うん、そうだよ】
互いに好きだという事を改めて口にしあい、ふふふっと思わず笑みが浮かんでしまう。
大事であり、愛し合っており、離れがたいパートナー。
そう思うと、細かい事なんかがどうでもよくなるような気がしてくるのであった…‥‥
応援ありがとうございます!
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