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4章 中等部後期~高等部~

4-2 地道にやってはいるので

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‥‥‥ヘルズ男爵家領地内、当主の邸。

 そこでは今、使用人たちと代官たちが次期当主の帰還日を手紙で知らされていたので、その出迎えの用意をしていた。

「ほっほっほっほ、また帰って来るようですが‥‥‥もうそろそろ、継ぐ時期が近づいているようですな」
「ああ、そうなる。もう間もなく仕事も終わり、帝都へいったん戻ることになるのだが‥‥‥時間がかかったとはいえ、ようやくこれでかという達成感と寂しさがあるな」

 邸の掃除をしている使用人たちに指示をしている執事の言葉に、代官のドンデルはそう答える。

 アルスの代わりに国から派遣され、この領地を治めている身であるが、その役目ももう間もなく終わりを告げるだろう。

 ここまで発展させてきたことを考えると、愛着もあるのだが…‥‥それも仕方がない事だと思う。



 着実に領内に関するノウハウなどもやり取りでアルスへ授けつつ、あちこちの改革も行い、ここはもう貧乏な男爵領地ではなくなっていた。

 と言うか、あの当主代理をしていた輩の手腕が酷すぎたというか、罪人たちの手によって滅茶苦茶にされ過ぎていたというのもあるのだろうが…‥‥それでも、今の領内の様子は当時とは比較にはならないほど豊かになっているだろう。

「まぁ、代官として治めはしたが…‥‥気が付いていないだろうな。この領内に対して改革案を提案してもらっていたが、この様子を見る限り、才能はあるだろうし、このまま任せて問題はないはずだ」
「次期当主様はそこを分かっておられるのか疑問ですが…‥‥それでも、手腕は確かなようですな」

 豊かになってきた領地とはいえ、何も代官が手を加えまくったということではない。

 実はアルスたちが帰郷したり手紙で領内の状態を伝える際に、こっそりと領内の経営に関してどの程度任せられそうなのかのテストを行っていたのだが‥‥‥結果を見る限り、このまま任せてしまっても問題ないはずだろう。

 領内で得られる収穫物の種類や、その栽培に適した条件、公共施設などの整備やその他の改革案なども出てきており、それらを実行して見ればなかなかうまいこと行っているのだ。

「しかし、こういう手腕を見せられますと、もっと早く次期当主様として就いてくださればよかったですなぁ」
「無理もないだろうな‥‥‥罪人共が色々とやらかしていたせいで、彼自身の経営手腕も自覚していなかっただろうし、そもそも継ぐ気も当初は無かったようだ」

 才能がないのであれば、補助をして持たせるという事も考えてはいたのだが、この様子を見る限りその必要性はない。

 むしろ、本当に何故あのような輩たちに領地の経営を任せてしまったのか…‥‥もしもアルスがもっと早く経営に関わっていれば得れた税収などももっと想定でき、国にとってよりためになったはずなのに、損しかしていなかった時があるのが非常に悔やまれる。

 けれども、それはもう過去のことであり、今は未来に目を向ければいい。

 このままゆっくりと領地を発展させてもらえれば、国にとっても良い事でもあるし、そもそも罪人たちを考えたくもない。


「この冬で、残っている領地経営に関することを学ばせつつも…‥‥この様子ならば、越えるところでもうだいぶ任せられるはずだ。とは言え、まだ就いたばかりではわからぬところもあるだろうし、そのあたりの助言などをしてもらえるとありがたい」
「ええ、そうさせてもらいます。我々とて、次期当主様が困っているのは見たくないですし、尽くすのです」

‥‥‥元々は侯爵家でもあり、罪人たちのせいで去っていたとはいえ、使用人たちもしっかりと領地経営の手助けをするぐらいの知識は有しており、アルスたちの手助けはするつもりである。

 しっかりと仕え、この領地をより発展させていくためには努力を惜しむつもりはない。


「ああ、それとドンデル様。まだ先になるとは思いますが…‥‥次期当主様と奥様になられるかたが挙式を上げる際にはしっかりと招待状をお送りいたしますので、予定をしっかりと立ててくださいませ」
「分かった。…‥‥とは言え、何時になるかはわからないが、そう遠くもないだろうし‥‥‥その時が楽しみだ」
「ええ、今はまだ奥様とは呼べませんが、それでもあの方の隣に立つのであれば、しっかりと奥様と呼びたいですからなぁ」

 アルスとハクロの将来を考えると、彼等も楽しみに思う。

 今はまだ厳しい冬だが、やってくる暖かな春と言えるような者たちがつくのを彼らはゆったりしながら待ちわびるのであった…‥‥


「ところでふと思ったが、もっと先になるのだが子供が出来た場合、どうなるのだろうか?」
「ふむ、男の子か女の子か、そのあたりが気になりますが…‥‥どちらにせよ、そのあたりは我々では想定し切れないでしょうなぁ…‥‥」









‥‥‥そして領地の方でそんなほのぼのしまくった会話が行われている中で、その話題の本人たちは今、領へ向かっていた。


「んー、空の旅も良いけど、やっぱり冷えてくると空も寒いね。ハクロ、大丈夫?」
【大丈夫大丈夫!私の身体、この程度で負けないもの!】

 びゅぅぅぅん!!っと音を立て、空を駆け抜けながらハクロとそう言葉を交わす。

 寒くはなって来たけれども、こうやって空の旅路を行くのも良いものだ。


【それに、この防寒着、新作!アルスも私も、あったかいから、このぐらい平気だよ!】
「そういうものかな?‥‥‥まぁ、風で少し肌寒いけど、それでも服が温かいから大丈夫か」

 ひゅうひゅうと風に乗って飛んでいくので、少々肌寒さはあるだろう。

 けれども、この防寒着もしっかり作り込まれているし、着こみまくっているので凍結する心配はない。


「そもそも、こうやってくっついているから寒くなろうにもならないもんね…‥‥うん、ハクロの背中、温かい」
【ふふふ、アルス、落ちないようにくっ付いてくれて、私も温かい】

 寒空とは言え、お互いの体温を感じ取り、冷え切ることは無いだろう。

【でも、飛び続けると魔力結構消費…‥‥そろそろ、休憩して良い?】
「ハクロが休みたい時に、休めばいいよ。無理に急ぐ必要もないからね」

 毎度おなじみログハウスにできる薬もあるし、新作も色々と用意している。

 万が一襲撃があっても、撃退可能な護身用の薬品もたっぷり作ったからね。

 地面に着陸し、ひとまず休憩をしつつ、回復して空へ再び飛翔するのであった‥‥‥‥

「こうしていると、空のデートって感じかなぁ‥‥‥んー、吹雪は流石にきついけど、この時期だとふんわりと柔らかな雪が降ってくれたらもっと雰囲気あったかもね」
【降らす?魔法で、雪、ちょっと再現できるよ】
「あ、できるの?」
【キュル、でも調節間違えると、雪だるま降って来るかも】
「…‥‥それはそれで見たいかも」

 でも、落下したら雪だるまの末路が悲惨そうだしなぁ‥‥‥‥うん、やっぱりそれは無しで。


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