転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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3章 学園中等部~

3-58 こういうこともできるのであれば

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‥‥‥都市アルバニア、研究所の上部。

 ショゴススライムの襲撃によって大穴が空き、崩落していた場所は今、再建工事中であった。


「‥‥‥とは言え、この様子ならさっさと復旧できるかものぅ」
「モンスターたちの力で、工事もガンガン進みますしね」
「この様子なら、前以上に機能性を良く出来そうです」

 いつもの瓶底メガネ白衣幼女姿ではなく、黄色ヘルメットをかぶっているドマドン所長の言葉に、同じ格好をしている職員たちは頷く。

 大穴が空いたのであれば、それを活かしていっその事、地上の光も取り込みやすくすればいいという事をアルスが提案し、ならば大穴を利用して空を見れるような透明な天井を作ればいいかもしれないという意見がまとまり、現在穴の形状を整えつつ大きなガラス張りの透明な天井への改装を施しているのだ。

 なお、ガラスに関しては内部での騒動なども考慮してガッチガチに強化させているので、そう簡単に割れるような代物ではない。

 さらに言えば、一枚のガラスではなく何枚ものガラスをつなぎ合わせるのだが、その作業前には骨組みが必要であり、大穴に被せる骨組み自体の建築が大変なはずであったが…‥‥

「こういう糸の使い方も面白いのぅ。飛行可能になった分、より範囲も広がって全体を覆えるのはすごいのじゃ」

 あちこちのガラスの骨組み代わりにされているのは、張り巡らされたハクロの糸。

 端から端までしっかりと何本もの糸をまとめて出来たもので覆われており、軽量化や耐久性も考えると今回の再建築の素材には優れていた。

 また、飛行可能になった彼女のおかげで、崩落して邪魔になっていた岩石などにも糸を付けやすくなったそうで、撤去もできるようになり、普通にやるよりもかなり速い速度で再建工事が進んでいるのだ。

「ハクロー!!そっち側もガラスを張るから、一時補強用の接着糸を出してー!!」
【キュル!了解ー!!】

 っと、向こう側の方で手伝ってくれているアルスが糸の上で声をあげれば、素早くハクロが現れてすぐに作業に取り掛かる。

 薄い魔力で出来ているらしい翅を動かし、縦横無尽にあちこちを飛び回り、素早い動きでこなしていく。


「‥‥‥にしても、ハクロちゃんの機動力がさらに上がりましたけれども、彼女はどこを目指してあんな変化を獲得したのでしょうか?」
「そんな事を言われても、儂でも分かるわけがないのじゃよ」

 職員の言葉に対して、肩をすくめて答える所長。

 人に近づいていくかと思いきや、飛行能力を獲得していくなど、何かとわからないことが多い。

「あとは月の光を集めたような攻撃などもありますし‥‥‥まだまだ、調べないと未知数な部分が多いですな」
「糸の質も、飛行前の時に比べるとかなり向上していますし、魔法に関してもさらに繊細なコントロールができるようになった影響なのか、そちらも様々なものを扱っている様子ですしね」
「あやつ、本当にどう変わっていくのかのぅ…‥‥観察していて興味が尽きぬのじゃ」

 ドマドン所長の言葉に対して、同意して頷く職員たち。

 客観的に見ていれば、大好きな人と一緒にいて嬉しそうな女の子と言うようにしか見えないのに、その持っている能力やまだ見せぬ可能性などを考えると末恐ろしくも思えてしまう。

 だけどその分、興味関心を高められて、飽きないものでもあるという印象を抱くのだ。

「何にしても、再建速度は早いですが、建築終了時には夏季休暇も終わりますね」
「ぬぅ、出来ればもうちょっと休みが長くなって滞在してほしいのじゃが‥‥‥まぁ、移動速度が向上した分、よりここに来てくれる機会も増えるじゃろうし、文句も言うまい」

 色々と調べたい部分が多くなったとはいえ、今はまだ研究所自体の再建のために、我慢する時である。

 とりあえず今は、再建工事を早く進めるように、設計図の再確認などを行うのであった…‥‥

「あ、そう言えば第3皇子様はどちらへ?」
「ぬ?あやつなら、今回の件の報告もあって、先に王城の方へ帰城したのじゃ。手持ちのスライムに、マッハスライムと言うのがいたのでな…‥‥」











「‥‥‥と言う訳で、研究所は再建決定となったのさぁ」
「‥‥‥なるほど、ショゴススライムの襲撃か…‥‥」

‥‥‥ドマドン所長たちが話している丁度その頃、王城の方にて無事に到着した第3皇子変態は今、謁見室にて皇帝に報告をしていた。

 流石に皇帝の前にいるからか、それとも皇子であるという矜持があるのか、TPOをしっかりとわきまえて姿勢を正し、まともな皇子としての服装で真面目な表情で詳しく内容を告げていく。

 簡潔に、それでいていくつか皇子の視点としても気になる点も述べており…‥‥

「それにしても、今回見たけれども‥‥‥あのモンスター、ハクロと言ったっけ。彼女がスライムだったら、ソレはソレで色々と興味深かったのにさぁ」
「スライムだったら突撃する気だったのか?」
「もちろんさ!!とは言え、流石に相手がいるのであればわきまえるし、スライムじゃない時点で興味を持つわけでもないのさ。‥‥‥ああ、でも」

 っと、そこでふと何かを思いだしたかのように皇子は口にした。

「月の光で、色々とパワーアップしたようだけど‥‥‥このスライムたちの話もまとめると、月自体に何か秘密があるような気がするのさ。そのあたりは今後、調べてみたいのさ」

‥‥‥真夜中であり、月が輝いていた晩。

 その月夜の中で、ハクロの飛行能力の獲得や、月の光を利用した攻撃方法を見て、モンスターの研究者としての側面からその部分を皇子は気にしていた。

 スライムたちの話も翻訳してもらうと、固定化だとか新しい力の獲得だとか‥‥‥何かと興味深い話を今回得ることが出来たのだ。

「とは言え、月まで行けないし、今はスライムたちで調べるのさ。何か良い事が分かれば、今後また報告するのさ」
「そうか。なら、良い報告を期待しよう」

 スライムに憑りつかれたかのようにのめり込む我が子とは言え、それでも親としては子供の応援はしたくなる。

 スライム以外で、月という別のものに目を付けたその行動に、ちょっとは変わる部分もあるのかと感心したくな、

「ついでにスライムたちも、もっともっと月の明かりで調べてみるのさぁ!!月光スライムとかそういうのが産まれればソレはソレでわくわくするのさぁ!!行くぞ、スライムたち!!」
【【【ピキェーーーー!!】】】

 腕を掲げ号令をかけた第3皇子の言葉に対して、どこからともなくスライムたちが出現し、皇子を囲んであっという間にその場を去っていく。

「‥‥‥全然、変わってなかったかもしれん。むしろ、月の明かりでよりスライムの可能性を見出して、より深淵を覗きに行ってないか‥‥‥?」

 全然変わることが無い第3皇子息子である変態に、頭を抱えたくなる皇帝であった‥‥‥
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