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3章 学園中等部~

3-45 ちょっとは考え始めていることも

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‥‥‥夏季休暇の間、過ごすモンスター研究所。

 とは言え、ここでダラダラと過ごすことはない。

 何かと手伝いなどもして、研究所内を見て回り、色々と楽しむのだ。

【キュル‥‥‥でも、ココも中々居心地良いかも。牧草、ふわふわで座り心地良い】
「地下なのに、空があるように見える魔道具のせいで地上と同じように感じ取れるからね」

 この時期は何かと暑いはずだが、この地下にある研究所内は比較的涼しく、過ごしやすい。

 モンスターの飼育もしているので、体調を崩さないように飼育スペース内はそれぞれのモンスターが自然の中で過ごす環境とできるだけ同じ様にされているようだが、暑さなどはカットされて何かと過ごしやすいようになっているのは良い事である。


【ブモァァァモォォ】
【ベェェェェッ】

「‥‥‥あと、何かと他のモンスターたちも、昼寝中だね」
【皆、ココ安心できて気持ちが良いって】

 種族が違えども、モンスターと言うくくりが同じなせいなのか、ある程度ハクロは他のモンスターと話が通じるらしい。

 けれども、わざわざ翻訳してもらわなくとも、周囲で寝ているモンスターたちの姿が見事に表しているんだよなぁ‥‥‥

「『レッドホーンバッファロー』に、『スチールシープ』…‥‥その他にも、家畜に近いモンスターたちが多いけれどね‥‥‥」

 モンスターからとれる素材や、その他諸々活かせるところを研究している研究所なので、飼育スペースでは飼育されているモンスターたちが、各々自由に過ごしていたりする。

 ここにいるのは他にも、『ライトホース』に『キングゴート』、結構前にドマドン所長を追いかけまわしていた『アイバイソン』‥‥‥何かと居心地がいい場所と気候になっているのか、皆お昼寝中のようだ。

「こうやって、過ごしやすい環境にいるのは良いけど、‥‥‥なんか研究所と言うよりも牧場だよね」
【言えているかも。でも、私としては‥‥‥アルスがこうやって、一緒なのが一番居心地が良い。キュル♪】

 うとうとと眠気が襲ってきているようだけど、僕を抱きしめてそう口にするハクロ。

 うん、僕としても彼女とこうやって一緒にいるのは、居心地がいいからね‥‥‥ああ、平和だなぁ。

「しかし、こうやって見ると、領地の方で牧場経営もありかもなぁと思うな‥‥‥」



‥‥‥先日の襲撃事件のせいで、安全の確保が確認できるまでは領地に寄る機会はないだろう。

 けれども、今は国から送られてきた代官たちが治めていたりするとはいえ、将来的には自分自身の手で経営しなければいけないだろうし…‥‥そう考えると、領内で牧場経営もやってみたいかもしれない。

 何しろ、侯爵の位にもなるけれども、今は男爵領地。

 色々とやっているようだけれども、ぱっといくようなものがあるわけでもないし、薬の手も使えるとはいえ、できればずるしないでゆっくりと着実にものにできるようなものを領地内でやりたい思いもある。

「昔は、そんな事も考えなかったけどね」
【キュル、アルスの、兄モドキに、投げる気だったっけ?】
「そうだよ。まぁ、今では何処かで過ごしているだろうけれども‥‥‥‥元々あの兄モドキに投げつける気満々だったからね」

 元家族であった兄モドキたちに、僕は任せっきりにして去るつもりだった。

 貴族の位に執着もないし、前世の記憶がよみがえってからはそれを利用してつつましい平民の暮らしも考えていたし、そこまで領地にこだわっていなかったのだ。

 まぁ、領民たちを見たらもう少しどうにかすればいい暮らしができそうで、どうにかしたいという想いが無かったわけでもないが…‥‥それでも色々あって、領地を治める立場になったからには責任を放棄し切る気はない。

 いや、正直なところこのまま国に任せて吸収されていけばいいかなと思う部分があったりするが‥‥‥それでも、正式な後継者となったからには、きちんと管理すべきだろう。

 責任を持つのであれば、しっかりと責任を果たせる人になるべきである。持ちたくなかったと言っても、頑張って発展させて、誰かを幸せにできればそれはそれで良い事だろうしね。

 後は、ハクロと一緒に過ごすのであれば、穏やかに過ごせて楽しい領地生活にしたいし‥‥‥そう考えると、やっぱり関わらないといけないだろう。

「ハクロとの結婚云々は何かと問題が多くてすぐにはできないけど‥‥‥でも、一緒に住むためには、良い場所にしたいからね。こういう専門的なところにいるならば、活かさないとね」

 モンスター研究所は何かと多くのモンスターに関する情報が集まりやすいし、家畜にできるモンスターなどの情報を集めて、活かすこともできるはず。

 ハクロなら他のモンスターともある程度ならば会話可能だし、何か問題があった時に動きやすい。

 怪我や病気が合っても薬を利用できるし‥‥‥‥あれ?結構牧場経営に向いているような気がする。

「貴族家の中には、広い領地を活かして当主自ら畑を耕したり、牧場を経営していたり、体を張ってのパフォーマンスをするところもあるし…‥‥おかしくもないよね」
【キュル、アルスのやる事、おかしくはない。私、アルスについていくもの】

 経営方針は各貴族家違うところはあれども、やれることがあればやっている家もある。

 とは言え、帝国の末端部分では腐ってしまうような輩も出てしまうらしいが…‥‥それでも、僕らは腐る気はない。

「穏やかに、のんびりと過ごせるように…‥‥将来に向けて、ここでも色々と学ぼうね、ハクロ」
【うん♪】

 とりあえず今は、この穏やかな空気の中で、昼寝をしたい気分である。

 そう思いながらハクロの背中に寝転がらせてもらいつつ、そろって一緒に寝息を立てはじめるのであった‥‥‥



ボォォォォォン!!
「ぎやぁぁぁぁぁぁ!!養蜂していた『ダンシングビー』が暴れ出したのじゃぁぁ!!」

「‥‥‥寝ようとしたのに、なんか騒ぎが」
【所長お婆ちゃん、嵐を呼ぶ…‥‥でも、大丈夫。ココには来ない】
「そうなの?」
【うん、ちゃんと糸張った。アルス害するようなの、通り抜けできないように守っているからね‥‥‥】

‥‥‥いつの間にか、周囲にはハクロによる安全ネットのようなものが作られていたらしい。

 何かと守る手段を増やしているというか、用意周到と言うべきか…‥‥安全なら、それで良いか。

「まぁ、ダンシングビー自体も針があるとは言え、毒はどうせコサックダンス30時間踊らされるだけだし‥‥‥解毒薬も用意しているから、問題もないね」
【キュル、そうそう、だから一緒にお昼寝続ける♪】

「のじゃぁぁぁ!!体が勝手にぃぃぃ!?」
「「「所長何をしているんですかぁぁぁぁ!!」」」

 ちょっと遠くで、職員たちが叫び声をあげていたけど…‥‥うん、聞えなかったことにして、昼寝の続きをしよう。
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