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2章 学園初等部~

2-43 道のりは分かっているけれども

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…‥‥冬季休暇となり、生徒たちは各々の故郷へ向かう。

 夏季と異なるとすれば、冬季はこもりがちになるので、その間に出会えないであろう友人たちとのしばしの別れを惜しむ者たちが多い。

 そして、故郷に対しては貴族家の子息は自分たちの親からの馬車、平民であれば公共の乗合馬車を乗り継ぎ、宿場町での宿屋や野宿によって目指していく。

 そしてアルスたちの場合は‥‥‥‥



【キュルルルルルル!!道、こっちで、良かったっけ?】
「間違いないはずだよ。まぁ、馬車道を辿っていけばいいだけの話だし、この調子なら宿場町をいくつか越えられるかもね」

 ハクロが疾走する中、その背中に落ちないように乗りつつ、僕はそう答えた。

 行くまでは一週間ほどかかる馬車の道ではあるが、ハクロの脚力であればかなり短縮できる。

 とはいえ、休憩しながら宿屋も利用したいので、3日ほどかけての宿、野宿、宿のペースで向かうことにしたのだが…‥‥相変わらず、爽快な速度である。落ちないように糸で固定しているけれど、本当にハクロって素早いなぁ…‥‥

「にしても、一応国から公表されているだけあって、問題もなく進めるのも良いよね。驚く人はいるけれど‥‥‥」
【馬車とはまた違う、帰りの道、面白いのが多くて、なかなか楽しい♪】

 初めて学園へ向かう際は、小さくなる薬で隠しながらハクロと一緒に向かった道。

 今は国から公表されているので、堂々と表立って駆け抜けて帰郷する道であり、驚く人々が出ようとも文句なしで突き進めるのは良いだろう。

 まぁ、声をかけようとして来た人がいても素早過ぎてその暇もなく、あっという間に彼方まで駆け抜けてしまうのが問題かもしれないが…‥‥特に、困るようなことは無いと思いたい。



【ところでアルス、このフカフカ、暑くなってきたけど、脱いでダメ?】
「んー、暑くなってきたなら脱いで良いけど、夕暮時には着直したほうが良いよ。この時期、寒くなってくるのはあっと言う間だからね」
【わかったよー♪キュルゥ♪】

 店で買った、彼女用の防寒着。

 ふわふわなファーがついており、色合いは黒いコートで、全体的に白い彼女とは対極的だが、むしろ映えているだろう。ちょっとどこぞやの銀河鉄道の人にも見えなくはないが…‥‥それでも、ふわもこな彼女にさらにふわふわが付いたので防寒性は格段に上がっている。

 手袋はモコモコすぎずにフィットするモノであり、指先の器用さを失わせない配慮もされており、いざという時に糸が扱えないことが無いように、滑り止め付き。

 その他諸々機能性がそれなりにある防寒着で包まれている彼女ではあったが、駆け抜けていると流石に暑くなるようであった。


 まぁ、冬季だけに油断したら寒くなるので、気を付けないとね。道中で風邪でも引かれたら大変だし、健康管理はしっかりしよう。

 薬が使えても、一番良いのは元気に過ごせることだからね。

【それじゃ、どんどん、突き進む~♪キュルキュル、キュルルゥ♪】
「というか、これだと風邪すらも振り切りそうだよなぁ…‥‥」

 風と一緒に風邪も切り裂いて進みそうな勢いなので、そこまで心配することもないかもしれないと思えるのであった。

 しかし、本当に早いな彼女。夏季休暇の時よりも早くなっているような…‥‥そこはまぁ、帰郷後のモンスター研究所で調べてもらえばいいかな。






‥‥‥ハクロの全速力疾走で、快適に過ごせている丁度その頃。

 ヘルズ領地では、とある動きがあった。

 かつては、元当主代理の手による無理な経営によって、破綻しかけていた貧乏領地。

 その無理なやり方の中身には、元当主代理の妻の座に無理やり収まっていた罪人たちの影響もあったのだが、今は貧乏状態から抜け出していた。

 それらのマイナスな要因も取り除かれ、国からの適切な管理下に置かれると、いくらでも戻しようがあったのだ。

 そもそも、元侯爵家でもあるので、その侯爵家が残した男爵家サイズの領地は、適切な経営が施されれば困る事もなかったのだが…‥‥こうしてみると、いかに元当主代理たちが領地経営の大きな悪化の要因になっていたのが良く分かるだろう。無能というほどでもなかったはずなのに、堕落したらどこまで落ちるのかが良く分かった事だろう。

 とは言え、そこまで裕福になった‥‥‥とまでは流石にまだ行っていないのだが、それでも失われた領民たちも少しづつ戻ってきており、徐々に回復傾向にあると見ていいだろう。

 そんな中で、素早く帝都からの情報で来たのは、正統な後継ぎの一時帰郷の知らせ。

 その後継ぎはここに残っていた領民たちでもそれなりに知っていた三男であり、なおかつ一時期畑の害獣を狩ってくれるなどの貢献をしてくれたことを、彼らは覚えていた。

 また、その情報を聞いている人は何も領民たちだけではなく…‥‥かつての侯爵家時代に仕えていた人たちの耳にも入り、行動を起こさせる。


 アルスにとってしてみれば、単純に見て回るだけの気楽な帰郷ではあったが…‥‥どうやら、そう単純な帰郷にはならない様子を見せるのであった…‥‥
 


【キュルキュル♪あ、ところで、雪ってまだ降らないのー?】
「もうそろそろ降りそうだけど…‥‥領地を出るギリギリまでは、まだかな?」
【んー、早く見たいな♪雪って初めて、どんなのか楽しみ♪】
「冷たいけど、やりようによってはかなり楽しめるし、積もるのを楽しみにしようか」
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