41 / 229
2章 学園初等部~
閑話 たまには誰かの昔話 その1
しおりを挟む
‥‥‥人の欲望というのは限りがない。
誰よりも強くなりたい、偉くなりたい、金持ちになりたい、綺麗になりたい、モテたい、遊び惚けて過ごしたい‥‥‥ちょっと考えてあげるだけでも、その欲望には限りがない。
欲望があるからこそ人はその欲へ向かって進み、満たそうとするからこそ生きる意欲がわき、繁栄するというのもあるだろう。
だがしかし、時としてその欲望は他者を害するものになることもあって‥‥‥
「‥‥とまぁ、大体欲を持って良からぬことをする人はそれなりに出るのじゃが‥‥‥こうやって見ると、お主たちはそんなに欲望が無いのぅ」
「そうですかね?」
【キュルゥ?】
モンスター研究所の食堂にて、たまたま昼食の席をドマドン所長はアルスたちと共にする中で、そう口にした。
「そもそものぅ、ここで色々と調べさせてもらっている以上、要求なども色々として良いのじゃが‥‥‥お主らの要求と言えば、勉強をもっとしたいとか、お手伝いさせてほしいとか、ベッドの大きさを変えて欲しいとか‥‥‥もうちょっとこう、欲を持たぬのか?」
「持てと言われても‥‥‥欲しい物って、そこまで無いかな。ねぇ、ハクロは何か無いかな?」
【キュル‥‥‥アルス、一緒。ソレ、最重要】
もきゅもきゅと本日の昼食の研究所食堂名物品の一つ、タボラレッシャー肉まんをほおばりながらハクロがした回答に、ドマドン所長は溜息を吐きたくなる。
こういう欲望関連も、モンスターでは人と違う点が多く見られると思ったのだが‥‥‥どうもその部分では彼らは薄いようで、少しばかりデータとして不足する。
というかこの二人は、お互いに満足しているならばそれで良いというような感じがしており、まだまだ若いのに達観しているというべきか、欲望をそこまで持ってないように見えるのだ。
「んー、色々もったいないというか、枯れているのぅ…‥‥人の欲求とは果てしない物なのに、なぜこうもこやつらは無いのじゃと言いたい」
「そう言われてもねぇ」
【キュルゥ】
所長のつぶやきに対して、アルスとハクロが顔を見合わせて苦笑する。
互いにない物は無いと言いたいのだろうが‥‥‥こうも似た者同士というか、欲望が無さすぎるのは将来が違って意味で不安になるだろう。
「むぅ、儂の知っておるような人のなかでも、お主らのような珍しいのじゃ」
「そうですかね?まぁ、ハクロと一緒で何かと満足しているのもあるのですが‥‥‥なら、所長だと僕らの立場に立った時に、どういう要求をしたりするのですか?」
「む?儂か?」
【キュル、参考にしたい】
思いつかないことで発想を転換させたのか、アルスとハクロに問いかけられ、ドマドン所長は少し考えこむ。
モンスター研究所の所長としてここに就任しており、なにかと満たされてはいるのだが‥‥‥言われてみれば、自身が求める欲求はあるのかどうかという点に疑問を持ったのだ。
相手が欲しい?いや、すでに夫も子供も孫もいるので問題ない。
金が欲しい?権力が欲しい?それもすでに所長の座についているし、色々な成果のおかげで収入もそれなりにあり困る事もない。
尋ね返されたせいで、自分の方もそこまで欲がないのではと所長は少し考えたところで‥‥‥ふと、一つだけあることはあったと思いついた。
「‥‥‥ふむ、言われてみれば、儂じゃったら要求するものがあったのぅ。まぁ、その要求自体は、普通は無理じゃと思うのじゃけどね」
「というと?」
「歳を返してほしいということじゃな」
「【‥‥‥歳?】」
ドマドン所長の言葉に、アルスとハクロは首をかしげる。
見た目こそ、瓶底メガネ白衣幼女という色々ツッコミどころが満載なドマドン所長だが、年齢80歳のお婆ちゃん。
それなのに、歳という返答がどういうものなのかよくわからなかったのだ。
「うむ、言い方が悪かったかのぅ…‥‥正確に言うのであれば、『老いる事』を返してほしいのじゃよ。まぁ、寿命までは無理なので、間際まではこのままじゃけどな」
「…‥‥どういうことでしょうか?」
所長がはははっと乾いた笑い声をあげたことに対して、アルスはそう問いかける。
「まぁ、それには色々とあるのじゃが‥‥‥‥いや、そもそも、儂がこの容姿になった理由から話したほうがいいかのぅ」
どっこせいっと座り直し、昼食後にすぐに仕事があるわけではないので、ドマドン所長は昔話を語り始めるのであった‥‥‥‥
‥‥‥それはそれは、今からずっと昔の話。
ドマドン所長がまだ年若い研究員であり、未婚でもあった時は、実は今のような容姿ではなかった。
普通の年相応の女性の容姿をしていたようで、春真っ盛りと言うべきか、研究所の中でもそれなりの花形として目立っていたようだ。
とはいえ、モンスター研究所に勤めている人は研究に熱が入り過ぎることが多く、全然甘い話しだとか恋愛事とかは入ってこずに、所長たちは研究に日夜明け暮れていたらしい。
研究に明け暮れる毎日が楽しくもあり、新しい発見があればそれこそ世紀の発見のように喜び合い、きちんと安全性などを徹底的に確認し、我が子のように世の中へ送り出す。
そうして得た成果は帝国の成長にもつながり、自分達のやっていることは無駄ではなく誰かのためになっているという事を実感して、毎日が充実していたそうな。
そしてそんなある日、研究所に新しい職員が入って来たのだが‥‥‥‥その職員が、その後の所長の命運を分けてしまったようだ。
「そ奴は若い男の職員でな、何かと良い奴じゃったが、研究に熱心になり過ぎると周りが見えなくなってのぅ、何かと問題を起こしていたのじゃ。まぁ、今の儂らと大差はないのじゃが…‥‥その周りの見えなさで、ある日事故を起こしたのじゃ」
モンスター研究で、熱心過ぎて徹夜をしてしまう事はあるだろう。
その職員もまた同様に、連続徹夜をし過ぎたようで、流石に研究所で自業自得の過労死が起きたというのは醜聞が悪すぎるのもあり、一旦同僚たちと一緒に何とか休息を与え、寝かせたらしい。
‥‥‥だが、その眠りから覚めた後が、問題だった。
「‥‥‥モンスターにも色々とあり、何かと摩訶不思議な力を持っているのもいるじゃろう。とは言えハクロ、お主のように人に近い容姿を持った者はあまりいないのじゃが…‥‥容姿を持たずとも、そう見せかける者もいるのじゃよ」
人に近い容姿を持つのではなく、人そのものに見せかけるモンスター…‥‥幻術だとかそう言う類で惑わせ、自らを人と偽ってくるモンスターも、実は何かといる。
その代表格として知られているのは『夢魔』というモンスター。いわゆるサキュバスだとか、インキュバスだとか言われているような者達が存在しており、その職員はその休息時に、あろうことか接触してしまい、虜になったそうだ。
――――――――――――――
『夢魔』
サキュバス、インキュバスなどの名前で有名な、夢の中でしか接触することがないモンスター。
その本体はピンク色の靄と言われているが、容姿は夢の中だからこそ、夢の主にの望むような姿を形作って接触し、生気を吸いっとってしまう。
――――――――――――――
「まぁ、適度に虜になるのであれば、むしろ仕事の効率などが向上し、役に立たないわけでもないのじゃ。とは言え、薬の取り過ぎが毒になることがあるように…‥‥あまりにも酷くなると、永遠に寝付く羽目になる」
…‥‥最初のうちは、自制が効いて研究の効率を上げていた。
だがしかし、その職員は次第に夢魔に嵌ってしまい‥‥ある時、全職員が協力しても目覚めない状態になってしまったのだというのだ。
「それってつまり‥‥‥」
「放置すれば、栄養も何も取らず、自然に死に至ってしまうのじゃ。まぁ、夢魔の対処の方の一つには、そのものを愛する存在が愛を耳元でささやきまくる事で対峙するというのがあるのじゃが…‥‥残念ながら当時のそ奴には研究こそが愛だったようでな、誰の言葉も聞かなかったのじゃ」
研究馬鹿も極まっていたというか、愛を人に向けていなかったというべきか、最悪の事態が想定されてしまった。
とはいえ、職員を失くしたくもないし、日夜研究に励み合う仲間を失いたくは無かった所長は…‥‥思いきって、自ら夢魔に接触することにしたらしい。
「夢魔を追い出す方法には、さっきの愛のささやき以外にも、もう一つある。それは、他人がその夢の中に入りこんで、そこで直談判をすることじゃ」
「他人の夢に、入りこむ事ってできるんですか?」
「ああ、可能じゃ。幸いにしてその治療法は、昔研究所で同様のケースがあった時に確立されたようでな、やり方はあったのじゃ」
だがしかし、その交渉方法に限っては、実はリスクが存在していた。
それは、夢の世界で夢魔に直接交渉したとしても簡単に出て行ってくれることはなく、むしろ何かを代償にしてようやく話を少しは聞いてくれるだけのようだ。
つまり、夢に入る事は出来ても、交渉次第では何かを失ってしまうのは想像に容易くはない。
しかも、夢の世界は完全に夢魔の領域なのか、普通はあり得ないような力を夢の中で発揮することが可能であり、それこそ魔法のような出来事を引き起こし、想像だにしないような代償を求められることがあるそうなのだ。
「‥‥‥ゆえにのぅ、仲間を失いたくはないが、誰が入るのかということに関しては、難航したのじゃ。誰でもわが身が可愛い所もあるし、夢魔に虜になったやつが悪いという意見もあったのじゃが‥‥‥」
‥‥‥多くの研究員が、流石に自らの身を大事にしてしまう中で、所長は唯一手を上げ、夢魔と直接対図する道を選んだ。
所要自身は自らの身が惜しくもないという訳でもないのだが‥‥‥‥それでも、大事な仲間を失いたくはなく、夢魔との交渉役を買って出たのだ。
「そして、その夢の中に入りこみ‥‥‥儂はそこで、夢魔に会ったのじゃ」
夢魔の姿は、その夢を見ている本人が望む姿。
ゆえに、その夢の中に入ったら、所長の方ではなく寝ている職員の望む姿で夢魔がいたそうだが…‥はじめてその姿を見た時、所長は交渉できるのかどうかがまず疑問に思ったようである。
「全部が、研究のレポートじゃとか、報告書の類の夢魔の姿は初めて見たのぅ…‥‥会話が可能なのかすら、疑問じゃったわい」
研究こそが愛であるという職員ではあったが、夢魔の姿まで研究一色で染め上げるその精神には、流石の所長も呆れを通して感心したらしい。
そして少しあっけにとられつつも、なんとか声をかけて交渉を試せば‥‥‥話せる相手ではあった。
「けれども、話せる相手であることと、夢から手を引いてもらう交渉条件が比例するわけでもなかったのぅ。あの夢魔は、夢から出る条件として…‥‥儂がこれから先『老いる事』を奪うとしたのじゃ」
それはいいかえれば、ある意味不老になるとも言えるだろう。
だがしかし、夢魔のその交渉の内容はそう都合のいい物ではなく…‥‥所長の幼女時代から区切りをつけた、その成長した姿を永遠に奪わせてくれるならと言われたようだ。
当時も研究熱心だったとはいえ、これから先幼女の姿のままにされるのは嫌だった。
研究があるとは言え人並みに家庭も持ちたいし、そう考えるのであれば普通の大人の女性でいたいのだが‥‥‥夢魔はその要求に答えなかった。
「永遠の幼女になるか、仲間を選べという問いじゃったが…‥‥儂は悩みに悩んだ。そして出したのは‥‥‥まぁ、今見て分かる通り、今の姿になることじゃった」
‥‥‥永遠に老いることがなくとも、寿命がある。
長い人生、先はまだまだあるのに、ずっとそのままの姿で過ごすことをドマドン所長は選んだのだ。
「その選択をすると、夢魔はちょっと驚いたようでな…‥‥本当にそれで良いのかと何度か尋ねられつつも、選択させてもらったのじゃ」
例え譲歩できずに永遠の幼女の姿になったとしても、仲間が助かるのであればそれで良い。
それに、寿命はそのままならば普通に過ごせるだろうし、何も問題はない。
そう、自分の容姿が大人に見えなくなるだけで、済むと結論付け、交渉が成立したのだ。
そして夢魔は去り、職員は目覚めたが‥‥‥‥その時には、ドマドン所長は今の姿になっていた。
それからしばらくの間、幼女になっても何も問題は無いと楽観していた。
だがしかし…‥‥世の中は、そう甘くもなかった。
「人とはな、人であったとしても人ではない者には恐怖を覚えるのか、儂は次第に世の中から孤立したのじゃ。幼女相手では夫もできぬしのぅ」
段々人とのつながりが失せ、研究所内に引きこもりがちになっていき‥‥‥そして、同僚たちからも彼女は距離を置き始めた。
寿命があるとは言え、ずっと変わらぬ姿に人は受け入れる事をしてくれず、次第にその厳しさを知るたびに所長は荒れてしまい‥‥最終的には、自殺の一歩手前にまで来たらしい。
けれども、命を絶つことは無かった。
そう、彼女のその世間の厳しさを知って、孤立をしている中で、救いあげてくれた人が現れたのだ。
「それが、今の夫‥‥‥いや、当時はまだ、夢魔から解放されたにすぎぬ職員じゃった」
助けてくれたことへの恩だけならば、いっその事このまま放置してほしいと、当時の荒れていた彼女はそう叫んだ。
けれども、その職員はその言葉を聞きつつも‥‥‥ドマドン所長を孤立させる気はなく、むしろその日から猛烈なアタックをし始めたそうなのだ。
「なんど衛兵たちに犯罪まがいだと連行されかけ、人目に付くたびに何かと言われてしまったのは数えきれん。じゃが、それでもあやつは…‥‥儂から離れなかったのじゃ」
その理由を問い詰めたら、ただの恩を返しているだけではなかった。
研究のみを愛していた彼だったが‥‥‥‥所長のその献身的な交渉を聞き、本気でドマドン所長を愛してしまい、どうしてもその命を散らせたくなかったらしい。
何度も何度も繰り返し、時間をかけて所長に対する偏見の目や好機の目をな排除していき…‥‥ついには、ドマドン所長にプロポーズがされ…‥‥彼女はようやく、荒れた時から解放され、受け入れたそうだ。
そして現在、その職員であったドマドン所長の夫は、他の国の研究所に招かれているが、時々時間を合わせて互いに都市に建てたマイホームへ帰り、甘い時間を過ごしているそうである。
幼女の体になったとはいえ、それでも中身までは奪われていなかったのか子供も設け、今では孫もいるのである。
夢魔によって変わり果てた姿にはなったが…‥‥それでも、補ってあまりまくる幸せをドマドン所長は手に入れたのであった。
「…‥‥とは言えのぅ、それでも時々、思うのじゃ。儂じゃって、普通に歳相応の姿になりたいとな。年々老いてゆく夫に対して儂の姿は変わらぬし…‥‥これでも愛してくれるとはいえ、老人になりたいとな」
そう話し終え…‥昼食も終え、所長は食器を置いた。
「そうだったんですか…‥‥その姿には、そんなわけが…‥‥」
【キュルルゥ…‥‥愛、スゴイ】
所長の話を聞き、アルスとハクロはそうつぶやく。
特にハクロは愛の話に感動したのか、滅茶苦茶号泣していた。
「ま、その程度の欲しかないのじゃが、それでもいいじゃろう。どうせ叶ってもかなわなくとも、寿命はそのままじゃ。それにこれは、一種の呪いに近いしのぅ…‥‥夢魔との契約ともいえるせいで、どうあっても無理なことは無理じゃ」
そう言いながらドマドン所長はアルスの方を見て、そうつぶやいた。
アルスの薬の精製能力に関しては、ある程度把握もしていたりするのだが…‥‥それでも、その薬を用いてもおそらくは効かないであろう。
全てに万能という訳でもないだろうし、病でもない。体を変えようにも一生変える事が出来ない、そんな代償。
ゆえに、諦めてはいるのだが…‥‥それでも、あの時選択したことは、もう後悔はしていない。
最初のうちこそは、確かに後悔して荒れてしまっただろう。
けれども、世の中何があるかもわからず、むしろより大きな幸せを手に入れることだってできるのだ。
「まぁ、そう言う訳じゃし、儂の欲に関してはこれで良いかのぅ。これが参考になれば、お主たちも何か欲望が出てこぬかのぅ?」
そう言いながらも、ドマドン所長はニヤッと笑って、この話の最初の方に問いかけていた欲に関してアルスたちに尋ねるのであった‥‥‥‥
「‥‥‥うーん、でも僕の方はまだ無いかな‥‥‥あ、でもしいて言うのであれば、男爵家とか相続せずに何とかなる方法が知りたいかも」
【アルス、一緒。ソレ変ワラナイ】
「お主ら、今の話を聞いても全然変わらぬのぅ‥‥‥‥‥というかむしろ、アルスの方はもっとどうにかならぬのか?悪化していないかのぅ?」
誰よりも強くなりたい、偉くなりたい、金持ちになりたい、綺麗になりたい、モテたい、遊び惚けて過ごしたい‥‥‥ちょっと考えてあげるだけでも、その欲望には限りがない。
欲望があるからこそ人はその欲へ向かって進み、満たそうとするからこそ生きる意欲がわき、繁栄するというのもあるだろう。
だがしかし、時としてその欲望は他者を害するものになることもあって‥‥‥
「‥‥とまぁ、大体欲を持って良からぬことをする人はそれなりに出るのじゃが‥‥‥こうやって見ると、お主たちはそんなに欲望が無いのぅ」
「そうですかね?」
【キュルゥ?】
モンスター研究所の食堂にて、たまたま昼食の席をドマドン所長はアルスたちと共にする中で、そう口にした。
「そもそものぅ、ここで色々と調べさせてもらっている以上、要求なども色々として良いのじゃが‥‥‥お主らの要求と言えば、勉強をもっとしたいとか、お手伝いさせてほしいとか、ベッドの大きさを変えて欲しいとか‥‥‥もうちょっとこう、欲を持たぬのか?」
「持てと言われても‥‥‥欲しい物って、そこまで無いかな。ねぇ、ハクロは何か無いかな?」
【キュル‥‥‥アルス、一緒。ソレ、最重要】
もきゅもきゅと本日の昼食の研究所食堂名物品の一つ、タボラレッシャー肉まんをほおばりながらハクロがした回答に、ドマドン所長は溜息を吐きたくなる。
こういう欲望関連も、モンスターでは人と違う点が多く見られると思ったのだが‥‥‥どうもその部分では彼らは薄いようで、少しばかりデータとして不足する。
というかこの二人は、お互いに満足しているならばそれで良いというような感じがしており、まだまだ若いのに達観しているというべきか、欲望をそこまで持ってないように見えるのだ。
「んー、色々もったいないというか、枯れているのぅ…‥‥人の欲求とは果てしない物なのに、なぜこうもこやつらは無いのじゃと言いたい」
「そう言われてもねぇ」
【キュルゥ】
所長のつぶやきに対して、アルスとハクロが顔を見合わせて苦笑する。
互いにない物は無いと言いたいのだろうが‥‥‥こうも似た者同士というか、欲望が無さすぎるのは将来が違って意味で不安になるだろう。
「むぅ、儂の知っておるような人のなかでも、お主らのような珍しいのじゃ」
「そうですかね?まぁ、ハクロと一緒で何かと満足しているのもあるのですが‥‥‥なら、所長だと僕らの立場に立った時に、どういう要求をしたりするのですか?」
「む?儂か?」
【キュル、参考にしたい】
思いつかないことで発想を転換させたのか、アルスとハクロに問いかけられ、ドマドン所長は少し考えこむ。
モンスター研究所の所長としてここに就任しており、なにかと満たされてはいるのだが‥‥‥言われてみれば、自身が求める欲求はあるのかどうかという点に疑問を持ったのだ。
相手が欲しい?いや、すでに夫も子供も孫もいるので問題ない。
金が欲しい?権力が欲しい?それもすでに所長の座についているし、色々な成果のおかげで収入もそれなりにあり困る事もない。
尋ね返されたせいで、自分の方もそこまで欲がないのではと所長は少し考えたところで‥‥‥ふと、一つだけあることはあったと思いついた。
「‥‥‥ふむ、言われてみれば、儂じゃったら要求するものがあったのぅ。まぁ、その要求自体は、普通は無理じゃと思うのじゃけどね」
「というと?」
「歳を返してほしいということじゃな」
「【‥‥‥歳?】」
ドマドン所長の言葉に、アルスとハクロは首をかしげる。
見た目こそ、瓶底メガネ白衣幼女という色々ツッコミどころが満載なドマドン所長だが、年齢80歳のお婆ちゃん。
それなのに、歳という返答がどういうものなのかよくわからなかったのだ。
「うむ、言い方が悪かったかのぅ…‥‥正確に言うのであれば、『老いる事』を返してほしいのじゃよ。まぁ、寿命までは無理なので、間際まではこのままじゃけどな」
「…‥‥どういうことでしょうか?」
所長がはははっと乾いた笑い声をあげたことに対して、アルスはそう問いかける。
「まぁ、それには色々とあるのじゃが‥‥‥‥いや、そもそも、儂がこの容姿になった理由から話したほうがいいかのぅ」
どっこせいっと座り直し、昼食後にすぐに仕事があるわけではないので、ドマドン所長は昔話を語り始めるのであった‥‥‥‥
‥‥‥それはそれは、今からずっと昔の話。
ドマドン所長がまだ年若い研究員であり、未婚でもあった時は、実は今のような容姿ではなかった。
普通の年相応の女性の容姿をしていたようで、春真っ盛りと言うべきか、研究所の中でもそれなりの花形として目立っていたようだ。
とはいえ、モンスター研究所に勤めている人は研究に熱が入り過ぎることが多く、全然甘い話しだとか恋愛事とかは入ってこずに、所長たちは研究に日夜明け暮れていたらしい。
研究に明け暮れる毎日が楽しくもあり、新しい発見があればそれこそ世紀の発見のように喜び合い、きちんと安全性などを徹底的に確認し、我が子のように世の中へ送り出す。
そうして得た成果は帝国の成長にもつながり、自分達のやっていることは無駄ではなく誰かのためになっているという事を実感して、毎日が充実していたそうな。
そしてそんなある日、研究所に新しい職員が入って来たのだが‥‥‥‥その職員が、その後の所長の命運を分けてしまったようだ。
「そ奴は若い男の職員でな、何かと良い奴じゃったが、研究に熱心になり過ぎると周りが見えなくなってのぅ、何かと問題を起こしていたのじゃ。まぁ、今の儂らと大差はないのじゃが…‥‥その周りの見えなさで、ある日事故を起こしたのじゃ」
モンスター研究で、熱心過ぎて徹夜をしてしまう事はあるだろう。
その職員もまた同様に、連続徹夜をし過ぎたようで、流石に研究所で自業自得の過労死が起きたというのは醜聞が悪すぎるのもあり、一旦同僚たちと一緒に何とか休息を与え、寝かせたらしい。
‥‥‥だが、その眠りから覚めた後が、問題だった。
「‥‥‥モンスターにも色々とあり、何かと摩訶不思議な力を持っているのもいるじゃろう。とは言えハクロ、お主のように人に近い容姿を持った者はあまりいないのじゃが…‥‥容姿を持たずとも、そう見せかける者もいるのじゃよ」
人に近い容姿を持つのではなく、人そのものに見せかけるモンスター…‥‥幻術だとかそう言う類で惑わせ、自らを人と偽ってくるモンスターも、実は何かといる。
その代表格として知られているのは『夢魔』というモンスター。いわゆるサキュバスだとか、インキュバスだとか言われているような者達が存在しており、その職員はその休息時に、あろうことか接触してしまい、虜になったそうだ。
――――――――――――――
『夢魔』
サキュバス、インキュバスなどの名前で有名な、夢の中でしか接触することがないモンスター。
その本体はピンク色の靄と言われているが、容姿は夢の中だからこそ、夢の主にの望むような姿を形作って接触し、生気を吸いっとってしまう。
――――――――――――――
「まぁ、適度に虜になるのであれば、むしろ仕事の効率などが向上し、役に立たないわけでもないのじゃ。とは言え、薬の取り過ぎが毒になることがあるように…‥‥あまりにも酷くなると、永遠に寝付く羽目になる」
…‥‥最初のうちは、自制が効いて研究の効率を上げていた。
だがしかし、その職員は次第に夢魔に嵌ってしまい‥‥ある時、全職員が協力しても目覚めない状態になってしまったのだというのだ。
「それってつまり‥‥‥」
「放置すれば、栄養も何も取らず、自然に死に至ってしまうのじゃ。まぁ、夢魔の対処の方の一つには、そのものを愛する存在が愛を耳元でささやきまくる事で対峙するというのがあるのじゃが…‥‥残念ながら当時のそ奴には研究こそが愛だったようでな、誰の言葉も聞かなかったのじゃ」
研究馬鹿も極まっていたというか、愛を人に向けていなかったというべきか、最悪の事態が想定されてしまった。
とはいえ、職員を失くしたくもないし、日夜研究に励み合う仲間を失いたくは無かった所長は…‥‥思いきって、自ら夢魔に接触することにしたらしい。
「夢魔を追い出す方法には、さっきの愛のささやき以外にも、もう一つある。それは、他人がその夢の中に入りこんで、そこで直談判をすることじゃ」
「他人の夢に、入りこむ事ってできるんですか?」
「ああ、可能じゃ。幸いにしてその治療法は、昔研究所で同様のケースがあった時に確立されたようでな、やり方はあったのじゃ」
だがしかし、その交渉方法に限っては、実はリスクが存在していた。
それは、夢の世界で夢魔に直接交渉したとしても簡単に出て行ってくれることはなく、むしろ何かを代償にしてようやく話を少しは聞いてくれるだけのようだ。
つまり、夢に入る事は出来ても、交渉次第では何かを失ってしまうのは想像に容易くはない。
しかも、夢の世界は完全に夢魔の領域なのか、普通はあり得ないような力を夢の中で発揮することが可能であり、それこそ魔法のような出来事を引き起こし、想像だにしないような代償を求められることがあるそうなのだ。
「‥‥‥ゆえにのぅ、仲間を失いたくはないが、誰が入るのかということに関しては、難航したのじゃ。誰でもわが身が可愛い所もあるし、夢魔に虜になったやつが悪いという意見もあったのじゃが‥‥‥」
‥‥‥多くの研究員が、流石に自らの身を大事にしてしまう中で、所長は唯一手を上げ、夢魔と直接対図する道を選んだ。
所要自身は自らの身が惜しくもないという訳でもないのだが‥‥‥‥それでも、大事な仲間を失いたくはなく、夢魔との交渉役を買って出たのだ。
「そして、その夢の中に入りこみ‥‥‥儂はそこで、夢魔に会ったのじゃ」
夢魔の姿は、その夢を見ている本人が望む姿。
ゆえに、その夢の中に入ったら、所長の方ではなく寝ている職員の望む姿で夢魔がいたそうだが…‥はじめてその姿を見た時、所長は交渉できるのかどうかがまず疑問に思ったようである。
「全部が、研究のレポートじゃとか、報告書の類の夢魔の姿は初めて見たのぅ…‥‥会話が可能なのかすら、疑問じゃったわい」
研究こそが愛であるという職員ではあったが、夢魔の姿まで研究一色で染め上げるその精神には、流石の所長も呆れを通して感心したらしい。
そして少しあっけにとられつつも、なんとか声をかけて交渉を試せば‥‥‥話せる相手ではあった。
「けれども、話せる相手であることと、夢から手を引いてもらう交渉条件が比例するわけでもなかったのぅ。あの夢魔は、夢から出る条件として…‥‥儂がこれから先『老いる事』を奪うとしたのじゃ」
それはいいかえれば、ある意味不老になるとも言えるだろう。
だがしかし、夢魔のその交渉の内容はそう都合のいい物ではなく…‥‥所長の幼女時代から区切りをつけた、その成長した姿を永遠に奪わせてくれるならと言われたようだ。
当時も研究熱心だったとはいえ、これから先幼女の姿のままにされるのは嫌だった。
研究があるとは言え人並みに家庭も持ちたいし、そう考えるのであれば普通の大人の女性でいたいのだが‥‥‥夢魔はその要求に答えなかった。
「永遠の幼女になるか、仲間を選べという問いじゃったが…‥‥儂は悩みに悩んだ。そして出したのは‥‥‥まぁ、今見て分かる通り、今の姿になることじゃった」
‥‥‥永遠に老いることがなくとも、寿命がある。
長い人生、先はまだまだあるのに、ずっとそのままの姿で過ごすことをドマドン所長は選んだのだ。
「その選択をすると、夢魔はちょっと驚いたようでな…‥‥本当にそれで良いのかと何度か尋ねられつつも、選択させてもらったのじゃ」
例え譲歩できずに永遠の幼女の姿になったとしても、仲間が助かるのであればそれで良い。
それに、寿命はそのままならば普通に過ごせるだろうし、何も問題はない。
そう、自分の容姿が大人に見えなくなるだけで、済むと結論付け、交渉が成立したのだ。
そして夢魔は去り、職員は目覚めたが‥‥‥‥その時には、ドマドン所長は今の姿になっていた。
それからしばらくの間、幼女になっても何も問題は無いと楽観していた。
だがしかし…‥‥世の中は、そう甘くもなかった。
「人とはな、人であったとしても人ではない者には恐怖を覚えるのか、儂は次第に世の中から孤立したのじゃ。幼女相手では夫もできぬしのぅ」
段々人とのつながりが失せ、研究所内に引きこもりがちになっていき‥‥‥そして、同僚たちからも彼女は距離を置き始めた。
寿命があるとは言え、ずっと変わらぬ姿に人は受け入れる事をしてくれず、次第にその厳しさを知るたびに所長は荒れてしまい‥‥最終的には、自殺の一歩手前にまで来たらしい。
けれども、命を絶つことは無かった。
そう、彼女のその世間の厳しさを知って、孤立をしている中で、救いあげてくれた人が現れたのだ。
「それが、今の夫‥‥‥いや、当時はまだ、夢魔から解放されたにすぎぬ職員じゃった」
助けてくれたことへの恩だけならば、いっその事このまま放置してほしいと、当時の荒れていた彼女はそう叫んだ。
けれども、その職員はその言葉を聞きつつも‥‥‥ドマドン所長を孤立させる気はなく、むしろその日から猛烈なアタックをし始めたそうなのだ。
「なんど衛兵たちに犯罪まがいだと連行されかけ、人目に付くたびに何かと言われてしまったのは数えきれん。じゃが、それでもあやつは…‥‥儂から離れなかったのじゃ」
その理由を問い詰めたら、ただの恩を返しているだけではなかった。
研究のみを愛していた彼だったが‥‥‥‥所長のその献身的な交渉を聞き、本気でドマドン所長を愛してしまい、どうしてもその命を散らせたくなかったらしい。
何度も何度も繰り返し、時間をかけて所長に対する偏見の目や好機の目をな排除していき…‥‥ついには、ドマドン所長にプロポーズがされ…‥‥彼女はようやく、荒れた時から解放され、受け入れたそうだ。
そして現在、その職員であったドマドン所長の夫は、他の国の研究所に招かれているが、時々時間を合わせて互いに都市に建てたマイホームへ帰り、甘い時間を過ごしているそうである。
幼女の体になったとはいえ、それでも中身までは奪われていなかったのか子供も設け、今では孫もいるのである。
夢魔によって変わり果てた姿にはなったが…‥‥それでも、補ってあまりまくる幸せをドマドン所長は手に入れたのであった。
「…‥‥とは言えのぅ、それでも時々、思うのじゃ。儂じゃって、普通に歳相応の姿になりたいとな。年々老いてゆく夫に対して儂の姿は変わらぬし…‥‥これでも愛してくれるとはいえ、老人になりたいとな」
そう話し終え…‥昼食も終え、所長は食器を置いた。
「そうだったんですか…‥‥その姿には、そんなわけが…‥‥」
【キュルルゥ…‥‥愛、スゴイ】
所長の話を聞き、アルスとハクロはそうつぶやく。
特にハクロは愛の話に感動したのか、滅茶苦茶号泣していた。
「ま、その程度の欲しかないのじゃが、それでもいいじゃろう。どうせ叶ってもかなわなくとも、寿命はそのままじゃ。それにこれは、一種の呪いに近いしのぅ…‥‥夢魔との契約ともいえるせいで、どうあっても無理なことは無理じゃ」
そう言いながらドマドン所長はアルスの方を見て、そうつぶやいた。
アルスの薬の精製能力に関しては、ある程度把握もしていたりするのだが…‥‥それでも、その薬を用いてもおそらくは効かないであろう。
全てに万能という訳でもないだろうし、病でもない。体を変えようにも一生変える事が出来ない、そんな代償。
ゆえに、諦めてはいるのだが…‥‥それでも、あの時選択したことは、もう後悔はしていない。
最初のうちこそは、確かに後悔して荒れてしまっただろう。
けれども、世の中何があるかもわからず、むしろより大きな幸せを手に入れることだってできるのだ。
「まぁ、そう言う訳じゃし、儂の欲に関してはこれで良いかのぅ。これが参考になれば、お主たちも何か欲望が出てこぬかのぅ?」
そう言いながらも、ドマドン所長はニヤッと笑って、この話の最初の方に問いかけていた欲に関してアルスたちに尋ねるのであった‥‥‥‥
「‥‥‥うーん、でも僕の方はまだ無いかな‥‥‥あ、でもしいて言うのであれば、男爵家とか相続せずに何とかなる方法が知りたいかも」
【アルス、一緒。ソレ変ワラナイ】
「お主ら、今の話を聞いても全然変わらぬのぅ‥‥‥‥‥というかむしろ、アルスの方はもっとどうにかならぬのか?悪化していないかのぅ?」
58
お気に入りに追加
3,792
あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦
未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?!
痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。
一体私が何をしたというのよーっ!
驚愕の異世界転生、始まり始まり。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです
はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にて掲載しています。
とある国のお話。
※
不定期更新。
本文は三人称文体です。
同作者の他作品との関連性はありません。
推敲せずに投稿しているので、おかしな箇所が多々あるかもしれません。
比較的短めに完結させる予定です。
※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる