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2章 学園初等部~
2-28 反動は思いっきりありまして
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‥‥‥モンスター研究所で起きた、モンスターたちの大暴走。
突然凶暴化して暴れまわっていたが、どうやら都市アルバニアにとある盗賊団が接近しており、その頭が変な魔道具を使用して出た音に影響されたようである。
その魔道具に関しては捕縛後に押収して確認しているようで、家族と共に過ごしていたドマドン所長も呼び出されて色々と調べているらしい。
一応、今は都市から離れた特別な施設の方へ移動させられたようで、効果範囲に限りがあるせいか皆落ち着いたようだが…‥‥
【キュルルゥ‥‥‥キュルルゥ‥‥‥】
「…‥‥ハクロ、泣いているの?」
【キュルルゥ‥‥‥】
盗賊団員たちが全員捕縛されていき、研究所内も落ち着いた夜。
与えられている部屋の中で、いつもならば枕元にいるはずのハクロが、元のサイズのまま僕を抱きしめ、涙を流していた。
ぎゅううっと強く、それでいて苦しくないように配慮されているようだが、それでも流れる涙は冷たい。
怒りに震えて盗賊団を壊滅させたのは良いのだが‥‥‥頭が冷えてきた今になって、僕を傷つけたことに関しての罪悪感と悲しみ、自身の不甲斐なさに泣けてきたらしい。
【私、ヤッチャッタ。アルス、大事、ナノニ、傷一杯ツケチャッタ…‥‥キュルルゥ】
しくしくと涙を流し、そうつぶやくハクロ。
魔道具による音で操られ、僕の作った薬で戻ったとはいえ、それまでにやらかしたことをしっかり覚えていたらしい。
道具の効果には、どうやら自分よりも弱者と見られるような相手を集中攻撃するようなものもあったようで…‥彼女から見れば、僕が一番弱くもあったようだ。
そのため、他の研究所の職員たちではなく、僕を狙ったのもそのせいであり、もう少しで取り返しのつかなくなるところだったようだ。
「‥‥‥それでもね、ハクロはちょっとはまだ、抵抗できていたんじゃないかな?」
【キュ?】
「だって、その効果が本当なら、一撃で即死させていてもおかしくなかったからね」
操られて暴れていたとはいえ、まだ彼女の心はあったんじゃないかと僕は思う。
あれだけ盛大に攻撃され、殺意を持った状態だったのにも関わらず‥‥‥僕の命は失われなかったのだから。
それこそ、やるようによっては首を糸で切ったり、はたまたは力づくで全身をへし折るなんて真似事もできたはずなのに、そこまで至らせずにゆっくりとしていたのだ。
「そう考えると、ハクロはもしかすると精神的には負けていなかったんだよ。それだけ僕を思っていてくれたから、こうやって今無事に生きているからね」
涙を流している彼女の頭に、僕はそっと手を伸ばして優しく撫でる。
操られていたにしては、直ぐに命を奪う様子もなかったし、そう考えると心のどこかで無意識に、彼女は僕を守ってくれたのだろう。
そう口にすると、彼女は僕の方に顔を向け‥‥‥ぶわっとさらに号泣し始める。
【デモ、デモ、デモ!!結局、アルスヲ、私‥‥‥】
「‥‥‥はぁ、まだ嘆くの?それならハクロ、ちょっと顔を向けて」
【‥‥キュル?何、ヲ‥?】
まだまだ不甲斐なさで泣き足りないのか、涙を流すのを辞めないハクロ。
でも、彼女の悲しい顔は見たくないので…‥‥思いきって僕はちょっと荒療治をする。
ギュウウウッ!!
【ヒャビゥ!?】
彼女のほっぺを両方ともつまみ、思いっきり引っ張り上げる。
結構柔らかかったようで、思ったよりも伸びたところでばっと放せば、ばちんっと良い音が鳴った。
【イ、イタヒィ‥‥‥】
「ハクロ、僕に怪我をさせた罪悪感なら、これでお相子だ。僕の痛みよりも小さいだろうけれど、これで僕もハクロを傷つけているし‥‥‥喧嘩両成敗とはまた違うけど、これで一緒だよ。だからもう、泣かなくて良いよ」
頬を抑えるハクロだが、僕の言葉を聞いて目を丸くした。
そしてしばし考えこみ、涙をぬぐった。
【キュ、キュルゥ‥‥‥ウン、コレデ良イナラ、泣カナイ‥‥‥キュルゥ】
涙がまたこぼれそうになったがこらえ、彼女は僕を抱きかかえたまま、ベッドに体を傾けた。
体の構造の都合上、蜘蛛部分だけはベッドの横に座りつつ、無理やり人型部分だけを曲げてのせているようだが、一緒に横になる。
【‥‥‥ゴメンネ、アルス。モウ、二度トヤラナイヨウニ、私、頑張ル。デモ‥‥‥今日、枕放棄、デ、一緒ニ寝テ良イ?】
「良いよハクロ。たまには枕じゃなくても、その蜘蛛の背中に乗せて寝るのじゃなくて‥‥‥こうやって一緒に寝よう」
【キュ‥‥‥キュルルゥ♪】
ようやく涙を完全に拭き取り、僕の言葉に喜んで笑顔に変えて嬉しそうに彼女は返答した。
いつもの寝方とは違うけど、こうやって顔合わせで横になるのもいいだろう。
しいていうのであれば、この寝方だと彼女の体に負担がかかるので、蜘蛛部分もまとめて横になれるような大きなベッドが後で必要そうだが‥‥‥それは、今度所長に要求しよう。これぐらいは良いだろうしね。
「ハクロ、お休み。今日はもう遅いし、僕と一緒に夢の中へ行こう‥‥‥」
【キュルル♪オ休ミ、アルス‥‥良イ夢、見ル…‥‥‥‥大好キ、アルス】
色々とあり過ぎたせいで疲れ、横になっただけで一気に眠気が来たせいで、残念ながら最後まで聞いてはいなかった。
けれども、意識を夢の中へ向かわせる前に見たのは、室内が暗いけれども眩しいくらいに見える、彼女の安らかな笑顔であった…‥‥‥
…‥‥アルスとハクロが、共に寝息を立てはじめた丁度その頃。
都市アルバニアから離れた場所、今回の騒動で使用された魔道具が研究所に及ばないところにて、盗賊団たちに対する取り調べが行われていた。
「ふむ‥‥‥これまた厄介そうな道具じゃが‥‥‥モンスターを凶暴化させて操る道具とはのぅ」
その取り調べが行われている部屋とは別室にて、押収した魔道具を調べていたドマドン所長がそうつぶやく。
「仕組みとかは、普通の笛とは大差ないですよね」
「ああ、そのようじゃな。ただ、音を出す部分に仕掛けが施され、モンスターにしか聞こえぬ領域に伝わるだけの単純な仕組みなのじゃが‥‥‥問題はこれをどこで入手したのかという事なんじゃよなぁ」
取り合調べ室から聞こえてくる盗賊たちの悲鳴を耳にしつつ、この場に集められた調査班の者たちと共に所長はそうつぶやく。
家族と一緒に過ごすはずだったのに、なぜこんなことをやらなければいけないのだと不満に思いつつも、モンスターの研究職に携わる以上、この件に関して放置はできないのだ。
「幸いなのは、この製作技術は人では無理な代物なところじゃろ。高確率でダンジョン産なのじゃが、それをわざわざこの地に来てまで効果を確かめるとは考えにくい」
モンスターを暴れさせる道具を用いて、都市を襲撃させる手段は慣れたものようではあったが、それはまだどうでもいい方だ。
盗賊家業をしているだけであれば、自然とスムーズに作業が進むように創意工夫をして行くのは勝手だろう。
だがしかし、この道具はただの盗賊団が手に入れられるような代物ではない。
というかそもそも、そんな危険な道具があると処分する国が多いのだが‥‥‥免れたにしても、盗賊へ流れるとは考えにくいのだ。
「人為的に、誰かの指示を受けた者じゃな。盗賊団なのはいざという時の隠れ蓑にしたつもりなのじゃろうが‥‥‥その頭本人は、明かにただ者ではなかったしのぅ」
身を分かりにくくさせる認識疎外の魔道具や、モンスターを襲撃させる手段に植物系のモンスターの種を持ち歩く用意の良さ。
盗賊団員たちへの指示などは勝手に出来上がったのだろうが、それでもそのような道具一式をただの盗賊がそろえられるはずがない。
出来れば、偶然そう言う魔道具を取り扱う馬車を襲撃して手に入れ、使い方を独学で習得しただけにして欲しいのだが‥‥‥‥残念ながら、現実は非情だった。
こんこんっとドアがノックされ、盗賊団を調べてきた途中報告を聞かされ、室内にいた者たちは溜息を吐く。
どうやら最悪の可能性と言うべきか、面倒だからやらかされて欲しくなかった可能性が出てしまったようだ。
「‥‥‥面倒じゃなぁ。今帝国は平和じゃというのに、なぜかき乱そうとする輩が出るのやら」
「悪意ある者が尽きぬ事と同じことなんじゃないですかね?」
出てきたのは、他国の存在。
盗賊団の頭とは裏の顔であり、その正体は帝国内を荒らそうとしていたどこぞやの国の工作員のようで‥‥‥しかも、この一人で終わるわけでもなく、まだまだいる可能性が示唆されたのだ。
はぁっと深い溜息を吐きつつ、所長たちは机に伏す。
「これはもう、国に押し付け案件じゃな…‥‥皇帝陛下に報告するしかないじゃろう」
平和を脅かされたくないなと所長たちは思いつつ、内容の重さから考え、国の上層部へ思いっきり押し付けるのであった…‥‥
「‥‥‥そう言えばじゃが、なぜあの盗賊の頭は巨大な髪の毛玉と化していたのかのぅ。ハクロが自ら動き、何か薬を投げつけたという話があったようじゃが、あとでアルスたちに詳しい事を聞く必要がありそうじゃな」
「でもその反動か、取り調べ中なのに、どんどん毛が抜けていっているようで、髪ならまだしも眉毛や鼻毛などを含む体毛が全滅したようです」
「おっそろしい薬でも使ったのかのぅ…‥?」
突然凶暴化して暴れまわっていたが、どうやら都市アルバニアにとある盗賊団が接近しており、その頭が変な魔道具を使用して出た音に影響されたようである。
その魔道具に関しては捕縛後に押収して確認しているようで、家族と共に過ごしていたドマドン所長も呼び出されて色々と調べているらしい。
一応、今は都市から離れた特別な施設の方へ移動させられたようで、効果範囲に限りがあるせいか皆落ち着いたようだが…‥‥
【キュルルゥ‥‥‥キュルルゥ‥‥‥】
「…‥‥ハクロ、泣いているの?」
【キュルルゥ‥‥‥】
盗賊団員たちが全員捕縛されていき、研究所内も落ち着いた夜。
与えられている部屋の中で、いつもならば枕元にいるはずのハクロが、元のサイズのまま僕を抱きしめ、涙を流していた。
ぎゅううっと強く、それでいて苦しくないように配慮されているようだが、それでも流れる涙は冷たい。
怒りに震えて盗賊団を壊滅させたのは良いのだが‥‥‥頭が冷えてきた今になって、僕を傷つけたことに関しての罪悪感と悲しみ、自身の不甲斐なさに泣けてきたらしい。
【私、ヤッチャッタ。アルス、大事、ナノニ、傷一杯ツケチャッタ…‥‥キュルルゥ】
しくしくと涙を流し、そうつぶやくハクロ。
魔道具による音で操られ、僕の作った薬で戻ったとはいえ、それまでにやらかしたことをしっかり覚えていたらしい。
道具の効果には、どうやら自分よりも弱者と見られるような相手を集中攻撃するようなものもあったようで…‥彼女から見れば、僕が一番弱くもあったようだ。
そのため、他の研究所の職員たちではなく、僕を狙ったのもそのせいであり、もう少しで取り返しのつかなくなるところだったようだ。
「‥‥‥それでもね、ハクロはちょっとはまだ、抵抗できていたんじゃないかな?」
【キュ?】
「だって、その効果が本当なら、一撃で即死させていてもおかしくなかったからね」
操られて暴れていたとはいえ、まだ彼女の心はあったんじゃないかと僕は思う。
あれだけ盛大に攻撃され、殺意を持った状態だったのにも関わらず‥‥‥僕の命は失われなかったのだから。
それこそ、やるようによっては首を糸で切ったり、はたまたは力づくで全身をへし折るなんて真似事もできたはずなのに、そこまで至らせずにゆっくりとしていたのだ。
「そう考えると、ハクロはもしかすると精神的には負けていなかったんだよ。それだけ僕を思っていてくれたから、こうやって今無事に生きているからね」
涙を流している彼女の頭に、僕はそっと手を伸ばして優しく撫でる。
操られていたにしては、直ぐに命を奪う様子もなかったし、そう考えると心のどこかで無意識に、彼女は僕を守ってくれたのだろう。
そう口にすると、彼女は僕の方に顔を向け‥‥‥ぶわっとさらに号泣し始める。
【デモ、デモ、デモ!!結局、アルスヲ、私‥‥‥】
「‥‥‥はぁ、まだ嘆くの?それならハクロ、ちょっと顔を向けて」
【‥‥キュル?何、ヲ‥?】
まだまだ不甲斐なさで泣き足りないのか、涙を流すのを辞めないハクロ。
でも、彼女の悲しい顔は見たくないので…‥‥思いきって僕はちょっと荒療治をする。
ギュウウウッ!!
【ヒャビゥ!?】
彼女のほっぺを両方ともつまみ、思いっきり引っ張り上げる。
結構柔らかかったようで、思ったよりも伸びたところでばっと放せば、ばちんっと良い音が鳴った。
【イ、イタヒィ‥‥‥】
「ハクロ、僕に怪我をさせた罪悪感なら、これでお相子だ。僕の痛みよりも小さいだろうけれど、これで僕もハクロを傷つけているし‥‥‥喧嘩両成敗とはまた違うけど、これで一緒だよ。だからもう、泣かなくて良いよ」
頬を抑えるハクロだが、僕の言葉を聞いて目を丸くした。
そしてしばし考えこみ、涙をぬぐった。
【キュ、キュルゥ‥‥‥ウン、コレデ良イナラ、泣カナイ‥‥‥キュルゥ】
涙がまたこぼれそうになったがこらえ、彼女は僕を抱きかかえたまま、ベッドに体を傾けた。
体の構造の都合上、蜘蛛部分だけはベッドの横に座りつつ、無理やり人型部分だけを曲げてのせているようだが、一緒に横になる。
【‥‥‥ゴメンネ、アルス。モウ、二度トヤラナイヨウニ、私、頑張ル。デモ‥‥‥今日、枕放棄、デ、一緒ニ寝テ良イ?】
「良いよハクロ。たまには枕じゃなくても、その蜘蛛の背中に乗せて寝るのじゃなくて‥‥‥こうやって一緒に寝よう」
【キュ‥‥‥キュルルゥ♪】
ようやく涙を完全に拭き取り、僕の言葉に喜んで笑顔に変えて嬉しそうに彼女は返答した。
いつもの寝方とは違うけど、こうやって顔合わせで横になるのもいいだろう。
しいていうのであれば、この寝方だと彼女の体に負担がかかるので、蜘蛛部分もまとめて横になれるような大きなベッドが後で必要そうだが‥‥‥それは、今度所長に要求しよう。これぐらいは良いだろうしね。
「ハクロ、お休み。今日はもう遅いし、僕と一緒に夢の中へ行こう‥‥‥」
【キュルル♪オ休ミ、アルス‥‥良イ夢、見ル…‥‥‥‥大好キ、アルス】
色々とあり過ぎたせいで疲れ、横になっただけで一気に眠気が来たせいで、残念ながら最後まで聞いてはいなかった。
けれども、意識を夢の中へ向かわせる前に見たのは、室内が暗いけれども眩しいくらいに見える、彼女の安らかな笑顔であった…‥‥‥
…‥‥アルスとハクロが、共に寝息を立てはじめた丁度その頃。
都市アルバニアから離れた場所、今回の騒動で使用された魔道具が研究所に及ばないところにて、盗賊団たちに対する取り調べが行われていた。
「ふむ‥‥‥これまた厄介そうな道具じゃが‥‥‥モンスターを凶暴化させて操る道具とはのぅ」
その取り調べが行われている部屋とは別室にて、押収した魔道具を調べていたドマドン所長がそうつぶやく。
「仕組みとかは、普通の笛とは大差ないですよね」
「ああ、そのようじゃな。ただ、音を出す部分に仕掛けが施され、モンスターにしか聞こえぬ領域に伝わるだけの単純な仕組みなのじゃが‥‥‥問題はこれをどこで入手したのかという事なんじゃよなぁ」
取り合調べ室から聞こえてくる盗賊たちの悲鳴を耳にしつつ、この場に集められた調査班の者たちと共に所長はそうつぶやく。
家族と一緒に過ごすはずだったのに、なぜこんなことをやらなければいけないのだと不満に思いつつも、モンスターの研究職に携わる以上、この件に関して放置はできないのだ。
「幸いなのは、この製作技術は人では無理な代物なところじゃろ。高確率でダンジョン産なのじゃが、それをわざわざこの地に来てまで効果を確かめるとは考えにくい」
モンスターを暴れさせる道具を用いて、都市を襲撃させる手段は慣れたものようではあったが、それはまだどうでもいい方だ。
盗賊家業をしているだけであれば、自然とスムーズに作業が進むように創意工夫をして行くのは勝手だろう。
だがしかし、この道具はただの盗賊団が手に入れられるような代物ではない。
というかそもそも、そんな危険な道具があると処分する国が多いのだが‥‥‥免れたにしても、盗賊へ流れるとは考えにくいのだ。
「人為的に、誰かの指示を受けた者じゃな。盗賊団なのはいざという時の隠れ蓑にしたつもりなのじゃろうが‥‥‥その頭本人は、明かにただ者ではなかったしのぅ」
身を分かりにくくさせる認識疎外の魔道具や、モンスターを襲撃させる手段に植物系のモンスターの種を持ち歩く用意の良さ。
盗賊団員たちへの指示などは勝手に出来上がったのだろうが、それでもそのような道具一式をただの盗賊がそろえられるはずがない。
出来れば、偶然そう言う魔道具を取り扱う馬車を襲撃して手に入れ、使い方を独学で習得しただけにして欲しいのだが‥‥‥‥残念ながら、現実は非情だった。
こんこんっとドアがノックされ、盗賊団を調べてきた途中報告を聞かされ、室内にいた者たちは溜息を吐く。
どうやら最悪の可能性と言うべきか、面倒だからやらかされて欲しくなかった可能性が出てしまったようだ。
「‥‥‥面倒じゃなぁ。今帝国は平和じゃというのに、なぜかき乱そうとする輩が出るのやら」
「悪意ある者が尽きぬ事と同じことなんじゃないですかね?」
出てきたのは、他国の存在。
盗賊団の頭とは裏の顔であり、その正体は帝国内を荒らそうとしていたどこぞやの国の工作員のようで‥‥‥しかも、この一人で終わるわけでもなく、まだまだいる可能性が示唆されたのだ。
はぁっと深い溜息を吐きつつ、所長たちは机に伏す。
「これはもう、国に押し付け案件じゃな…‥‥皇帝陛下に報告するしかないじゃろう」
平和を脅かされたくないなと所長たちは思いつつ、内容の重さから考え、国の上層部へ思いっきり押し付けるのであった…‥‥
「‥‥‥そう言えばじゃが、なぜあの盗賊の頭は巨大な髪の毛玉と化していたのかのぅ。ハクロが自ら動き、何か薬を投げつけたという話があったようじゃが、あとでアルスたちに詳しい事を聞く必要がありそうじゃな」
「でもその反動か、取り調べ中なのに、どんどん毛が抜けていっているようで、髪ならまだしも眉毛や鼻毛などを含む体毛が全滅したようです」
「おっそろしい薬でも使ったのかのぅ…‥?」
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