転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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2章 学園初等部~

2-21 理由はちゃんとありました

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 モンスター研究所に到着したところで、牛騒動に巻き込まれつつ、所長ドマドンが自らが出た。

 所長の年齢と容姿の合わなささに驚愕しつつ、色々とツッコミを入れたい所ではあったが、その前に研究所の方から人が出てきた。

「所長!!ご無事でしたか!!」
「遅いのぅ、何していたんじゃ?」
「遅くも何も、最初の方でふっ飛ばされたせいで気絶していたんですよ!!」

 どうやら彼らはここの研究所の職員のようで、先ほど姿を見せなかったのはあの牛のようなモンスターの群れに巻き込まれ、気絶していたらしい。

 幸い大きな怪我はないようだが、ぷんすかと所長に詰め寄って怒っている。

「所長、そもそもあの鐘をまだ残していたんですか!!あれはこの間の実験後に取り外すって所長自らが言っていたでしょうが!!」
「すまんのぅ、歳でちょっと忘れていたのじゃ。ついうっかりじゃったが‥‥‥まぁ、怪我人が出なかったのは幸いじゃなぁ」
「幸いじゃないですよ!!大体物忘れをするとか言っておきながら、3週間前の朝食に食べた物まではっきり言えるほど頭がしっかりしているでしょうがぁぁあ!!」

 ドマドン所長があははっと笑えば、職員全員がツッコミを入れる。

 こんな研究所で大丈夫なのかなと思い、ハクロと顔を見合わせれば彼女もそう思ったような表情をしていた。


「そもそも、何で鐘が‥‥‥っと?‥‥‥所長、もしかしてそちらの二人が、予定の御客様でしょうか?」
「ん?そうじゃな。この間来ることが決定したアルス、ハクロという者たちじゃよ。お客様の前で、激怒する醜態は晒してほしくないのぅ」
「「「「その原因が貴女なんですがぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

「‥‥‥苦労していそうだなぁ」
【キュルルゥ‥‥】

 もうこの時点でここは本当に大丈夫なのか、すごく不安に思うのであった…‥‥






 とにもかくにも、先ほど捕らえられた牛のモンスターたちは連行されていき、所長が軽く職員たちに説教された後、場所を移動して研究所内へ入り、所長室とやらで改めて向き合った。

 職員たちはまだまだ所長への説教が足りないようだが、客人でもある僕らがいる手前ここで一旦切っておき、後でしますからねと所長に口ずっぱく言っていた。

 はいはいとそこまで反省したそぶりを見せずに、所長は生返事をしてこちらに向く。

「さてと、先ほども名乗ったのじゃが、儂はこの研究所の所長ドマドンじゃ。お主らの事はガルバンゾーから聞いているし、先ほど確認をしたのじゃが職員たちの手前、改めてそちらの紹介も欲しいのぅ」
「ええっと‥‥アルス・フォン・ヘルズです。それでこちらが、僕と一緒に住んでいるモンスターのハクロです」
【キュルゥ、ハクロ、デス】

 ぺこりとお辞儀をすれば、ハクロの方もきちんとお辞儀をしてそう名乗った。

「ふむ、二人とも固くなる必要は無いのじゃ。夏季休暇の間中はここで過ごすのであれば、気軽におればいいからのぅ。無理に丁寧に話さずとも、自然体で良いのじゃ」

 年相応のような口調をしつつ、見た目との凄い違和感に僕らはどう返事するべきか分からない。

 先ほど80歳とも聞いたが、そんな風にも見えないし、何かと不思議そうな人である。

「何にしても、まずは先ほどのことから謝っておくかのぅ。あのモンスターたちじゃが、ここで研究しておる『アイバイソン』でな…‥‥」


 ここでしばらく過ごすことになる前に、一旦場の雰囲気を和らげようとしたのか、所長は先ほど起きていた騒動についての謝罪となぜ起きたかについての説明をしてくれた。

――――
『アイバイソン』
多くの眼球を体表に持つ牛のようなモンスター。視界が非常に広く、その目の多さから周囲を素早く把握して肉食動物やモンスターから逃げるために役立てている。
ただし、激怒した時に全部の目が赤く光って勢いで動くものすべてに体当たりを仕掛けるという習性がある。
――――

「こやつらはこやつらで、牛乳や肉の質が良いからこそ、より質の向上を高めるための研究をしているのじゃ。その過程の中で、激怒させたその瞬間に瞬時に何もかも濃い味になることが分かっており、その濃度を測定するための魔道具を作製して実験をしたことがあったのじゃが…‥‥」

 その実験は僕らが来る少し前に行われており、結果が出たそうだがいまいち予測した物とはズレていたらしい。

 なので、また次回に実験を計画していたそうなのだが…‥‥あろうことか、その魔道具は鐘に取り付けるタイプであり、近くにあった研究所の門の鐘に付けっぱなしだったそうだ。

 新しい鐘をわざわざ用意するのが面倒だったがゆえに、手ごろなところにあった鐘を利用したが、それをうっかり外し忘れていたらしい。

 ゆえに、僕らが来て鳴らしてしまい‥‥ちょうど飼育場所から移動中だったアイバイソンたちが聞いてしまい、激怒状態になっていたようなのだ。

「ってことは、元をたどれば管理能力不足ですよね?…‥‥本当に大丈夫ですか、この研究所」
「大丈夫じゃ!」
「「「「大丈夫じゃないから、さっき騒動が起きただろうが!!」」」」

 ドマドン所長がぐっと指を立ててそう告げれば、一斉に職員たちがツッコミを入れるのであった。

 なお、ここまでミスをしているというのに所長の座を下ろされたり、リストラされないのには訳があるようだが…‥‥一応、職員たちもそこまでするつもりはないそうだ。

「というか、所長が所長でなくなったらそれこそ色々と危ない」
「今でさえこういう人だけど、所長になる前の方がもっとヤヴァイ」
「いい人なんだけど、目をつけ忘れるとそれこそ歩く天災」

…‥‥どんな評価を受けているのかはともかく、全員一致しているのはドマドン所長は所長のままでいて欲しいという事のようであった。






 とにもかくにも、職員たちからの評価も聞きつつ、話題を僕らの方へ切り替える。

「それで、今回来たのは夏季休暇の間で、ここで過ごさせてくれる代わりに、ハクロを調べたいという事のようでしたが‥‥‥」
「それにもきちんとした理由があるのじゃ」

 いわく、そもそもハクロのようなモンスターの例はほとんどなく、どういうものなのかが分からない。

 実はわずかに記録だけならば存在しているようだが‥‥‥王城の方での機密文書に当たるような物が多いせいで、詳細を把握しづらいのだとか。

 モンスターの研究所と言えども、そのあたりの機密は触れることが出来ないらしい。

 ゆえに今回、ハクロの話が出た時から密かに色々と調べたかったようなのだが‥‥‥

「それを、皇帝陛下に横やりを入れられて、お目にかからせてもらう機会を失っていたからのぅ‥‥‥なので、どうにか都合のいい機会が無いのかとうかがっていたのじゃ」

 そこで今回の夏季休暇の話を聞き、僕らにここで過ごしてもらえればそれなりにデータを得られるのではないかと思い、招待してきたらしい。

 もちろん、ただ受け取るのではなく見返りに僕らが過ごしている間不自由が無いように色々な要求を受け入れるそうだ。

「例えば、お風呂に入りたければ様々なモンスターに合わせた湯船に、食事関係ならばこの研究所でしか得られない新鮮な食材を使った料理。また、睡眠の質向上にリラックスできる音楽や書籍を読みたければ取り寄せる事も可能じゃ。一応、予算として下りるからのぅ」
「予算外なことになれば?」
「儂の個人の貯蓄から出すに決まっているじゃろ。まぁ、そんな要求をするような者には見えぬのじゃが、呼んだのは儂自身。ゆえに、きちんと責任者としての責任は取るのじゃ」

 問いかければ堂々と、所長としての風格を表してそう告げるドマドン所長。

 職員の人達の苦労は底知れ無さそうだが‥‥‥それでも、所長としてしっかりしているようだ。

「ちなみにじゃが、ここで自由に生活しているだけでもいいのじゃ。モンスターの生態は自然な物に近づけたほうが良いからのぅ。普段と変わらぬ日常生活でも、それだけで十分に良いデータとなりうるのじゃ」

 無理な実験もさせず、ただ自由に過ごしてもらうだけで良い。

 それだけで十分ならば‥‥‥まぁ、断る理由もないかな。

 でもさっきのような牛騒動が起きたら、今度は手助けしたくないけどね。多分、そう言う騒動が多く起こって苦労する可能性が目に見えているし、ゆっくりしたいからね。

 そのあたりのこともきちんと話し合いつつ、僕らはここでの滞在をしっかりと決めたのであった…‥‥

「ああ、それと普通に身体測定なども行うのじゃ。健康そうに見えても、モンスター自身が気が付かぬようなものもあるのじゃし、今日はやらずとも明日あたりに一旦やらせてほしいのぅ」
「確かにそれも必要かも。ハクロの健康診断的な物はまだやってないからね」
【キュルルゥ?】

 今でこそ健康に見えるけど、初めて会ったときは瀕死の重傷だったもんね…‥‥治ったとしても何か後遺症がある可能性も捨てきれないし、この際そのあたりも調べてもらおう。









 
‥‥‥アルスたちが健康診断の予定に関して詳し説明を受けている丁度その頃。

 帝都の方では、間諜たちが動いていた。

「‥‥‥はぁ‥‥‥これだから帝都勤めな間諜だと後を追えないのが辛い」
「まぁ、無理もないさ。彼女の生き生きとした行動は、都市アルバニアの担当になったやつらに記録してもらうしかあるまい」

 いつのまにか彼らの集まる場所となっている建物で、主が異なれどハクロファンクラブとなっている間諜たちは溜息を吐きながらそう語り合う。

 間諜と言えば他の場所にも自由にいけそうなのだが、生憎そうはいかないもので別の任務に向かわされたりすることがある。

 ゆえに、直ぐにその場を好きに動けるわけではないものたちが存在しており、自由にまだ移動できる者たちを羨ましがっていた。

「とはいえ、研究所の方に出向いたというが‥‥‥当分はそこから動かないだろうな。そう考えると、出来ればあとをついていきたいが‥‥‥」
「んー、むりじゃねーかな?あの研究所、他国の間諜ですら入れないほど、意外に警備もしっかりしているからな。まぁ、自国の間諜である会員たちに、そのあたりを探ってほしいぜ」
「まぁ、我が国の機密の一部があるからな…‥‥とは言え、同じ会員だからこそ会いたい気持ちはよく分かるぞ」

 時と場合、雇い主によっては敵対関係になることもある間諜たち。

 けれども今は、公私をしっかりと分けつつもハクロファンクラブの名誉ある会員としての仲間意識を持ち、気持ちを通じ合わせていた。

「ああ、そう言えば他のところから連絡があったな。何やらそこそこの盗賊団が、都市アルバニアを襲撃する気があるのか、向かっているそうだ。盗賊を雇う貴族家があるそうだが、その情報を知っているやつがいるか?」
「いや、知らんな」
「聞いたことが無いが…‥‥おそらく、今出ているやつの中にいるだろうし、情報を探るしかあるまい。とは言え、都市アルバニアを襲撃する盗賊団か‥‥‥帝国の都市を襲撃するのは愚の骨頂にしか思えぬのだが?」

‥‥‥エルスタン帝国は、村などの小規模な場所は少し危いところがあるが、帝都や都市に関しての守りは非常に堅牢である。

 ゆえに、盗賊団がわざわざ襲撃してきても大抵返り討ちにされるケースが多く、内通している者がいたとしてもそう容易くはいかないはずである。

 だからこそ、大きな盗賊団ほどその話は有名であり、帝国内での盗賊の被害はほとんどないのである。

「それなのに、襲撃を企む盗賊団か‥‥‥雇い主が誰であれ、非常に無謀にしか思えん」
「どうやら何かとやる方法はあるらしいが‥‥‥気になるな。その件に関しては、我々も全力を持って調べ上げるとするか」
「ああ、都市一つの襲撃に関しては国がすぐに対応するだろうが、今はそこにある研究所に、ハクロちゃんがいるからな」
「「「「そう、我々ファンクラブとして、しっかりと守らねばならぬ!!」」」」

 ぐっとこぶしを掲げ、一致団結してそう叫ぶハクロファンクラブとなっている間諜たち。

 心を一つにして力を合わせ、都市アルバニアに迫ろうとする盗賊たちについて、調査を行うとするのであった‥‥‥

「とはいえ問題は、雇い主がそれを許してくれるかだよな?帝都の方に滞在している貴族家の監視が、数件あるのだが‥‥‥」
「可能な奴から順にやってしまおう。出来ないのであれば誰かが素早く代わりにサポートするべきだ」
「しかし、間諜という立場ゆえに表立って動けないのが歯がゆい…‥‥騎士団たちの方に情報を流し、どうにか動いてもらいたいな‥‥‥」
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