婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波

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既に見限ってました

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‥‥‥深い森の中、その場に彼女は馬車で連れてこられ、その場に下車された。


「ふははははははは!!ざまぁ見ろミアスよ!!お前はこれからずっと一人でこの地をさまよい、僕ちんは愛しのズーバッレ・フォン・アーチビィと共に城で暮らすのだ!!国外追放故に、わざわざ親切でこの地まで送って来たこの寛容さに感謝しろ!!ではさらばだ!!」


 そう言い残し、パスタリアン王国の自称次期国王・・・・・・であるズービク殿下は去っていった。



「‥‥‥ぷっ、何が寛容な人よ」

‥‥‥わざわざ国外追放のために、ここまで自らの馬車で連れてきてくれている辺り、寛容さを見せつけるためだという馬鹿さ加減に思わず笑いがこみあげてしまいました。




 私、ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、本日をもってあの馬鹿王子のズービク殿下との婚約が破棄及び国外追放されたようです。


 歩けばそこそこの距離にある、パスタリアン王国の隣国に隣接する森林地域まで送られたので、結構楽ですけどね。


「さてと、これからどういたしましょうかね?」


 そう思いながら、私はとりえず森を抜けて、隣国のミストリアンへ向かう事に決めたのであった。







 さてさて、森の中を歩きながら、暗いので活発化しているらしい夜行性の動物やモンスターを薙ぎ払いながら、今日あったことを整理いたしましょうかね。

 あ、そこのイノシシさん、貴方は今日の夜食用にするためにちょっとここで命を差し出して頂戴。








 今日は、ある意味私が予想していた通りの事が起きました。

 実は私には前世というものがあったようで、どうやらその前世でのゲームにこの世界が似ているようなんですよね・・・・・・・・・・・・

 とはいえ、その前世でも私は女の子でしたが、ちらっと学校で話を聞いただけで、当時はゾンビを撃ち抜くゲームや、モンスターを捕まえて育てて戦わせるような、男の子が好むようなものばかりやっていましたけどね。



 とにもかくにも、ほぼにわかのような物でしたが、印象深かったこととしては、そのゲームはよくある乙女ゲームのような物だったようです。

 なんでも婚約破棄物の、悪役令嬢がヒロインにざまぁされるという、王道物でしたっけ?

 なんかこう、何か大事なものを忘れているような気がしますが、その前世を思い出した時に私は気が付きました。



「あ、これ私悪役令嬢じゃん」と。

 




 残念ながら、ゲーム開始時期でもある、その舞台でもある学園に入学してすぐの事でしたからね。

 その前に思い出せていれば、あれやこれやという手段で防げたでしょうけど‥‥‥‥別に防ぐ意味もなかったかな?



 だってこのパスタリアン王国終わっているようなものだもん。ゲームに似ていると言いましたけど、あくまで外見上だけでした。

 いつのまにか婚約者になっていたあの馬鹿王子は、入学したその時点で屑っぷりを発揮していたからね。


 自分の都合の悪いようなことが無いように、教師たちに賄賂を渡して成績を改ざんしたり、いじめを行って自分よりも優秀な人を追い出そうとしたりと、やりたい放題。

 立場としては、第1王子で他の兄弟がいないから次期国王が決定していたようなものとはいえ、あんなものが王子になったらこの国終わるじゃん。



 せめて矯正しようとしたけど、結果として全く変わらず私を邪魔者扱い。

 つい最近だと、身体の関係を強要してきたけど、婚約中でまだ早いといって、金的潰しで思わずぶっ倒したのよね。国王陛下に事の顛末を言って、一応無かったことにして許してもらったけど‥‥国王陛下も溜息をはいて、どうしようかと頭を抱えていたあの悲痛な表情は同情したよ。




 そんでもって、王子たちの取りまきたちも一人を除き屑ぞろい。

 次期将軍と自称する、あの「憤怒の将軍デストロイ」様の息子であるコザトロイは、父親にビシバシと鍛えられているはずなのに、猫かぶりで、学園では本性を表してガキ大将並に、悪いところを集約させたような人だった。

 次期宰相と自称する、あの「叡智の宰相ケジャン」様の息子であるシャッグは、私に成績では負けていたとはいえ、そこそこの頭はあったのでしょうけど‥‥‥勉強ができても、その能力が残念だった。よくいる、俺は有能だと言って物凄い無能だった感じかな?


 次期財務大臣と自称する、あの「豊穣の財務大臣スビーエ」様の息子であるビボーンは、計算が苦手な様で、ほぼ適当に金銭管理をしているようで、実は金をだまし取られていたり、借金したりしていたある意味最も悲惨な人でしたね。


 次期宮廷魔導士筆頭と自称・・・・いや、自称ではなくあの「爆炎氷結の魔導士オーチャン」様の息子のギースさんはあの中で唯一まともであり、いや何で取りまきに混じっているのと言いたくなるような人でしたね。能力はあるし、優しかったりするし、冷たそうに見えて、雨の日に捨て猫のために魔法で傘を作って守ってあげていたりと、ひと昔前の健全な不良のような優しさが、微笑ましかったですね。

 なんでそんなギースさんが取りまきに入っていたんだろうか‥‥‥あ、もしかしてあれかな?




 とにもかくにも、そのギースさんを除く取りまきと王子たち馬鹿御一行に加えて、そこにカオスをもたらしたのはズーバッレ・フォン・アーチビィとかいうどこぞやの準男爵令嬢であった。

 この国では、準男爵家は1代限りの貴族であり、身分としても低いのだが‥‥‥彼女がどうもヒロインだったようである。

 とはいっても、にわかにあった知識だとヒロインは本当にヒロインという言葉が当てはまるぐらい、清廉潔白で純粋で、綺麗で可愛いらしかったのですが…‥‥現実は非情です。




 何やねんあのヒロイン。

 思わず関西弁もどきで言いたくなるほどのひどさでした。




 名前はまぁいいとして、色々とひどすぎてね‥‥‥‥多分、私と同様の転生者のようで、時たま「ヒロインだから―」みたいなことを言っていましたね。

 私にはよく「あんたは悪役令嬢」と言っていましたっけ。




 まぁ、それは良いとして、ものの見事にヒロインらしからぬ好き勝手な行動を彼女はしていたんですよ。

 清廉潔白?いやいや、とんだ…‥ええと、なんていうんだっけこういうのって。そうそうビッチもしくはアバズレって言葉が似あうほど、他の男性の方々と爛れた生活をしていたようですからね。どこ行ったんだろうか清廉潔白さは?

 純粋?いやいや、よく偽っていましたし、他の令嬢の婚約者たちと肉体関係を持って別れさせて囲ったりと、純粋どころか沼地のようにズブズブした腹黒さがありましたよ。ああ、王子を寝取ったのもそのあたりですかね?


 綺麗で可愛らしい?それこそとんだ大間違い。

 常時首に様々なネックレスをかけていたようですけど、見る人が見ればわかる魔道具マジックアイテム「変化の首輪」。

 それを付けている限り、自分の理想の姿になれるそうですが、幻惑や魔法に関しての耐性が高い人すぐに見ぬける、国際的にも禁止されていて犯罪となるとんでもないものです。




 それを偶々外した姿を見たときは‥‥‥いえ、記憶から消しました。

 ネックレスに汚れが付いて、慌ててふき取りに行ったからなんだろうと思って、見に行ったんですよね‥‥‥ああ、思い出したくもないような容姿で、むしろこの真実を知ったら彼女と関係を持っていた人たちは多分ショックを受けるでしょうね。

 あまりのすさまじさに、もしかしたら禿げるかも?


 流石に彼女のその真の姿を述べようにも‥‥‥確かめるために外しますよね?絶対その姿を見たくないので言えないんですよね・・・・・・。

というか、今気が付いたけどもしかして、ギースさんって魔法耐性が高いから彼女の隠していることが分かっていたんじゃないでしょうか?


 あの取りまきや馬鹿王子は見事に囲われていましたけど、ギースさんだけ明らかに一歩距離を置いてましたし。







 そんなこんなで月日が過ぎて、彼女が学園の馬鹿たちを手中に収めたところで、本日の卒業記念パーティの場であの王子は婚約破棄を言ってきて、ありもしない調べればすぐにわかるお粗末な冤罪を述べて、断罪して国外追放したのですが‥‥‥むしろしてくれてありがたいです。



 あの屑が国王になって、その妃にあの女だとすると‥‥‥終わってますからね。

 流石に逃げたかったですし、処刑と言わずに国外追放になったのはいいことでしょう。単純に、処刑するにも費用が掛かるそうで、こちらの国外追放の方が安いというのが理由だそうですが。









 ま、そんな今さら見限った者たちの事なんて考えないでおきましょう。

 一応、万が一にでも肉体を強要されては困るために、あの金的潰し以来、私の容姿をそこそこに控える魔道具マジックアイテムを付けましたし、隣国へさっさと逃亡するに限ります。

 にしても、やっぱりゲームとは違いますねぇ…‥私の行動の時点ですでに異なっているのでしょうけど、この美貌とかさっさと抑えておけば、あの気色悪い感触を味合わずに王子を遠ざけれたでしょうしね。

 それに、何でか知りませんけど‥‥‥にわかとはいえ、ヒロインが持っているはずの力を全部私は得ているようですしね。

 知られないように隠してますし、隣国へ向かってもできるだけ目立たないようにして、適当な店で働かせてもらいましょうかね。

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