上 下
704 / 718
Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-113 ある悪魔からの視点

しおりを挟む
―――こいつ、中々厄介だな。

 空中を飛びつつ、時折攻撃を仕掛けながら、アルケディア・オンラインの運営会社であるメーゼ・イワド社の開発部主任…時々この世界の裏界隈の仕事も押し付けられる人物…いや、人ならざるものであるからこそできる苦労人もとい悪魔ゼリアスは心の中でそうつぶやく。


 今、目の前で対峙しているのは、どこかの世界からの来訪者。
 話が通じる相手ならばまだどうにかなったが、そう都合の良いことはない。

 何も通じず、かろうじてこの世界に引き寄せた者を利用して顕現している様子だが…この様子であれば、あと数分もせずに崩壊しきり、この世界から追い出されるであろう。

「ただまぁ、その前に女神を狙われたら厄介か…そうなる前に、奴をもうちょっと良いところへ隠せよ!!海底も安全じゃないのにさぁ!!」

 不味いことになるのは理解しているため、戦闘によって足止めを行っているが、それでも相手が相手だけに結構厳しくはある。

 善戦は一応出来ているのだが…人ならざる立場からこそ、相手の底知れない恐ろしさも感じ取れるのだ。

「ああもう、こちとら今日帰った後は異界プログラムの構築作業等が色々残っているから、あとくされ残さずにさっさと終われよ!!左の義手もだいぶガタ来たしさぁ!!」
「それ義手なの!?道理でロケットパンチみたいなものを、飛ばせるなと思っていたんだけど!!」
「その時点で気が付けよ!?いやまぁ、普段わかりづらいように偽装しているけどな!!」

 この相手に対して共同で戦う相手の中で、この世界の真祖の一人らしい奴が驚愕の表情を浮かべているが、その攻撃を見て大体察してほしい。

「それはそうとして、相手の依り代と言うべきモノがもう持たないはずなのに、内部エネルギー量が変わらないデスネ」
「いや、むしろ増しているというか…こりゃ、当たりたくなタイプの一つか?」

 様々な兵器を搭載している別の奴が言った言葉に、同意して答える。

 あと少しで終わりそうなはずなのにアレは確実に何かを残している。




 たとえ何もかも通じ合えるものが無くとも、この世界に来て学んでいるものがあれば、多少は同じものを理解している可能性がある。
 その中で、出されるものとしては‥‥


―――フォンフォンフォンフォォォォォン!!
「な、何!?なんか急に輝きだした!?」
「これは…なるほど、不味いですネ。相手、どうやら我々の与えてきたダメージを蓄積して、自身のエネルギーと結合させたようデス」
「つまり?」
「崩壊直前に、大爆発を引き起こしますネ。しかも、普通の爆発よりも逃げられない瞬間的な超爆発…この星、いや、星系が瞬時に蒸発しマス」
「「どう考えても確実にヤバいものだ!?」」

 窮鼠猫を噛むとは言うが、それ以上のとんでもないことをしでかす気満々のようだ。

「というか、そんなことをしたらこちらが把握できている相手の目的、黒き女神も一緒に蒸発しかねないのだが!?良いのかそれで!?」
「んー、どうやら概念的なものを喰らうことができるようで…蒸発したそのわずかな瞬間に、概念すらも消し飛ぶ前に取り入れるようデス。肉体よりも、女神という概念そのものを喰らうと考えれば、相手の行動すらもできないように肉体やその他邪魔な周囲の環境をまとめて消し飛ばすのは、正しい判断でしょウ」
「そんなむちゃくちゃな!!」

 爆発落ちだのなんだのと言われそうな行動。
 せめてそのエネルギーを周囲に撃ちまくって弾幕を張るとか、強行突破を図るとかならまだわかるが…何もかも吹き飛ばしたうえで勝利をもぎ取ろうとするのは予想外。

 何をどうしたらその結論を導き出せるのだと言いたいが、元よりこちらとは何もかも通じないのであれば、やってもおかしくは無いのかもしれない。


「計算上、後15秒で爆発デス!!」
「短っ!!」
「覚悟即座に決まり過ぎ!!」

 ツッコミを入れてしまうが、流石にこれはどうにもならない。
 強大なエネルギーが増加しているらしく、この状態で下手なショックを与えたら、その瞬間に何もかも終わる。

 流石にどうしようもないと思った…その時だった。


「ーーっ!!」

…感じ取った。目の前の自爆寸前の相手にも負けず劣らずの力を。
この世界にあって良いのかと思うものだが、アレは確かに例外の様なものなのだろう。

 だが、この残り僅かな時間をどうにかできるかは…彼女/彼に賭けるしかないのであった…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...