アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-99 予感は当たる時は当たるものだが

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…個人でやれることには、限度があるだろう。
 たとえ、それが人ならざるものだとしても、人の世にいる以上は人の枠組みに収められた範囲での行動しかできないほど、大きな制限がかかる。

 それゆえに、大抵の場合は大きな力を持つものが動こうとしてもできず、その枠組みの中でうまく行使できる人たちへ任せることしかできないというのもあり…


「…だからこそ、会社のその手の部署に連絡し、伝えた結果、必要なものの買い出しをさせられるって…まぁ、この程度で済んだのは良かった方か…」

 盗聴器だったとはいえ、それでも一個人の持ち物だった忘れ物を、個人で持ち出したことに関して、一社員でしかない身であったがゆえに、少々大目玉を貰った春。

 女神の力を有しているとはいえ、その身はいまだに人であり、人の法に縛られるのは当然のことであり、己の手で動いてしまう癖が悪い方へ動いてしまっただろう。

 だがしかし、それでも事情に対してある程度の考慮がされたのはまだ良かった。
 下手をすれば人事異動…左遷もありえただろう。

 しかしながら、それでも示しがつかないので、しっかりとした行動を行うようにと命じられた結果…今、その対策の一つに必要なものの買い出しを行う羽目になっていた。


 

「えっと、バナナ、液体窒素、木綿豆腐、藁付き納豆、五寸釘、鏡…バラバラ過ぎるけど、何か変な想像が出来そうなものが多いな…」

 一体何を買い出しに向かわされているのか、意図がいまいちわかりにくいようで、組み合わせた時の目的が少し見えそうな、ややこしいモノばかり。
 というか、まともに売っていないものだろと言いたくなるものもあれども、きちんと販売している店も指示されており、的確に買い集めることはできていた。

 この材料で、本当に何をしようとするのだろうか、うちの会社は。
 滅茶苦茶に組み合わせて考えるのであれば、凍らせたバナナで丑の刻参りをさせて、豆腐の過度に相手が頭をぶつけるようにとか…いやいや、流石にそんなことはないだろう。

 あまりも非科学的過ぎるうえに、そんなことはしないはずである。



「と、言い切れないのが怖いよなぁ…」

 改めて思うが、そんな呪いの類でも、眉唾物の話と言い切れないのが何とも言えない。
 女神や吸血鬼、その他色々と実は潜む世界の中で、知らないだけで存在している者もあるかもしれない。

 そう考えると、何か恐ろしくも思えるが…それと同時に、そういったものがあるというのに、表に出てくることはないことにも気が付く。

 これだけのものたちが、何も表に出すことはなく、潜み続けるのはあり得るのだろうか。
 大昔ならともかく、今はネットなどの科学技術が発達した世の中であり、隠されたものであっても広まりそうなものなのだが…そんなに変わっていない気がするのだ。

 何かと不思議だが、目立つ気が無ければ別に良いだろう。
 人ならざる者たちが、ひっそりと暮らせるだけでも十分なはずで…

「…ん?」

 そこでふと、人混みの中でとある人物の姿を見かけた。

「あれは…あの盗聴器を持っていた、記者?」

 名前はド忘れしたが、確かみ、み、み…ミンミンゼミオ…なわけでもないか。

 でも、顔は覚えており、他人の空似と言うには姿が同じとしか思えない。



 しかし、何やら様子がおかしい。
 記者として、取材しに来ていた時はまだ周囲をよく観察しているような顔だったはずだが…妙に、焦った顔をしており、どこかへ駆け抜けていく。

 ここで姿を見つけたからには、会社へ通報したほうが良いのかと思ったが、思った以上に素早くその姿は人ごみに紛れて消えてしまった。

「…まぁ、気にしなくていいか」

 あらかた必要な書類などは提出しており、会社のほうで何かしらの裁きが起こるはずである。
 ここで手を出さずとも、社会という名の力が、押さえつけてしまうだろう。

 この情報社会の中、人間程度であれば身をひそめることも難しいはず。

 そのため今は、自ら動かずに会社へ任せる選択を取る。


…だが、何となく嫌な予感を抱くのであった。

「ロロに、何かこう某青猫ロボのスパイ道具みたいなものとかもらっておくべきだったか…いや、流石にそんなもの、持ってないよね」

 はははと軽く笑ったが、後日その方面でのフラグも回収されることを、まだ彼は知らない…



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