アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-94 軽めの悲劇はプリンの味で

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…たまに、思うことがある。
 ここ最近、割と現実と仮想現実…アルケディア・オンラインの境界が揺らいでおり、お互いに少しづつ変化しつつあるのではないかと。

 オンラインの世界から現実への影響は色々とあり、列車によって相互にモノの行き来ができるようになったり、宇宙エレベーター技術だって計画が立てられていたとしても、そう簡単に実現がしにくい代物のはずなのに、違和感がなぜか薄い状態でだいぶ短い期間でできがあっていた。

 様々なものが流れ込み、あちらへも渡ったりするが…そもそもの話、オンラインの運営会社は何を目的として、このようなことをし始めているのか。

 いや、もっと追求すれば…このアルケディア・オンラインを開始した時点からこのことを想定していた可能性も…




『---と、いかがでしょうか。今晩は、アルケディア・オンラインの発展により、少しばかり出てきた謎の陰謀論を交えて、「VRMMOの発展による光と闇」をお届けいたします』

「…珍しくラジオを聞いたら、こんな話が出るかぁ」
「それだけ、身近になりつつあるからこそ、変なことを考えちゃう人もいるんだろうね」

 ずずずぅとコーヒーを飲みながらハルがつぶやけば、答えるミント。

 本日はログインはまだしておらず、朝からゆっくりと過ごしているわけなのだが…少しばかり面白いものが無いかと思ってつけてみれば、アルケディア・オンラインの話題が出ていた。

「技術の発展に伴うと、こういうのが良く出てくるけど、本当にあるのかな、そんな怪しい話って」
「意外と隠されているのかもしれないけれどね。でも、こうやって話題に上がる時点で信憑性も眉唾物だからなぁ…」
「そういうものなの?」
「本当に隠したいものは、そう簡単に表に出させないからね。ハルだって知っているでしょ、私たち…吸血鬼とか、そもそもハル自身が女神になれたりするとか、そういう非現実的過ぎることがあるけれども、そう簡単に表に出てこないってことを」
「…」

 そう言われると、ぐぅの音も出なくなる。
 割と身近に不思議なものはあふれまくっているが、不思議なものゆえか、そう簡単に表立って出ることはない。

 まぁ、自分の場合は現実の世界やオンラインの世界で色々と女神の姿でやらかしたことがあり過ぎるために、少しばかり表に出てきそうな気もするが…それでも、そうたやすくはバレることはない。


 人は都合の悪そうなものは好んで見つけたがるが、真に都合の悪いものは別物にかぶさったりしてごまかされたりして、出てくることはあまりない。
 本当に暴いてしまうのであれば、それ相応のものが一緒に出てくることもあり…藪蛇を突きたくないように、虎の尾を踏まないように、ミーちゃんがとっておいた冷蔵庫のプリンをうっかり食べてしまったことがばれないように隠すように…そう簡単に、表には出さないように注意を払われ、暴かれることはほとんどない。


「でも、この番組面白いね。オンラインの発展による光と闇と扱ってさ、良いことも悪いことも一応公平的には出しているようだよ。この手の番組だと大抵、どっちかに偏りがちなのに」
「あるいは、偏ることができないほど両方から出まくっているのか…そのあたりはわからないけど、なかなか面白いのは間違いないと思うよ。んー、でもできればテレビで見たい代物かなぁ。音だけだと、やっぱりちょっと物足りない気分も…」
「そこを想像力で補うのがラジオの面白さでもあるけれどね」


 流れゆくラジオ番組の内容だが、つまらないものではなく、興味をひかれるようなものが多い。
 眉唾物じゃないかなと思うようなものも時たま混ぜられているが、大勢の人が一度に集まって遊べる場所だからこそ、様々な話が混ざり合うのだと思う。

『つい先日は、あの噂の黒き女神が恐竜女帝との激戦を繰り広げた話題もありましたね。星々がいくつ塵と化したかは不明ですが、まだオンラインの世界で良かったですが、現実であったら溜まったものではないですね~』

「…何やっているの、ハル」
「そこはまぁ、聞かないで」

 身に覚えのあり過ぎる話が出て、ジトっとした目でミーちゃんが見てくるが、目をそらす。

 あの時は祭りの雰囲気に当てられていたのもあって、今更ながら結構とんでもないことをしでかしたことを、少々冷静になったことで少しばかり後悔しているのである。
 後悔する時点でやるなよと言いたくなるだろうが…残念ながら、いくら女神とはいえ、時を遡って過去の自分をバックドロップしてでも止めることなんてものはできないのだ。

「流石のロロでも、タイムマシンまでは作れないよね?」
【無理ですネ。作れていたらそれこそ…私のほうが、過去の自分を破壊してでも止めたかったデス…】
「「…」」

 思った以上に重い雰囲気だが、無理もない。
 何かしでかしたようで、運営からの強制力だがなんだか知らないが、彼女は今、ビキニアーマー風のメイド服を着ており、家事を行っているのである。

 一応、拘束具の類ではないので自由に動けるのは良いのだが…過去を後悔しているのは彼女も同じらしい。
 
 1週間も経過すればだいぶ慣れたのか、それとも開き直ったのか堂々といつも通りの仕事をこなしているのだが…時折恥ずかしいのか、真っ赤になる時がある。

 なお、マリーたちも箱庭から見ており、彼女の心境はある程度察しているらしく、先日のティラリアさんとの買い物で得たものはしまっており、黙っている様子だ。
 うかつに発言したりすれば、巻き添えになる可能性を考慮しているのだろう。

 うん、そう考えると僕も今、ちょっと危なかったかもしれない。
 ここで女神の姿になるように強制されて、ビキニアーマー(現実版)を着用させられるなんてことになったら…どんな恐ろしい未来だろうか。


 主の立場ゆえにそんなことは強要しないだろうが、それでも触れないほうが良いのだろう。
 見なかったことにして、話題を変える。

「それはそうと、大型のレイドがあったから…しばらくは少し、空くのかな?」
「どうなんだろうね。少しずつ小出しでイベントがありそうだけど…フィールドはもう宇宙まで行ったのなら、アップデートがちょっと難しそうな気もするね」
「でも、そういう予想を立てても斜めの上をぶった切ってくるのが運営の常套手段…慣れたとはいえ、予想外の場所から来そうなのがちょっと怖いな…」

 正直な話、恐怖度で言えばあの欲望戦隊共だが、それは恐怖を超越した変態なので例外としておきたい。
 今はとりあえず、ゆったりと過ごし‥‥後から、オンラインへログインしようかと僕らは話すのであった…



「あ、そういえばロロ、冷蔵庫から私のプリン、取り出してくれないかな?」
【プリン?それ、先ほど主様が食べてましたガ】
「---え」



…数秒後に、恐怖度に関して新しい更新があったことは言うまでもない。
食べ物の恨みというものは、どの生物でも関係なく、例え瞬時に女神に転じて超高速で逃亡を図ろうとしても、逃げきれぬものだと…


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