アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
683 / 718
Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-93 いらぬ称号はどこにでも

しおりを挟む
…アルケディア・オンラインの称号は、プレイヤー自身の行動で生じることがある。
 オンラインなだけあって多種多様なプレイヤーが存在するからこそ、その数以上に有ってもおかしくはないだろう。

 中には不名誉すぎるものもあるらしいが…その中でもこれは…

―――
>称号『煩悩花火師』を手に入れました!!
>称号『傾国の魔女』を手に入れました!!
―――

「…前者はまだ良いけど、後者が…男に付くのはおかしくない?」
「いや、女神の姿でやって付いたのならば、おかしくはないのデース」

…真っ赤な花火がさく裂した後、ログを確認したところ、いつの間にか称号を獲得していた。

 どうやら、あの欲望戦隊を爆破したことが原因で獲得したようだが…欲しくはないものではある。

―――
『煩悩花火師』
相手を煩悩で爆破したものにだけ獲得できる特殊な称号。
一度爆破した相手ならば、1時間に一回だけ最大HPの1割を爆破させることが可能になる。
なお、爆破時には花火のエフェクトが発生し、相手の煩悩の多さによって色合いが変化する。


『傾国の魔女』
スキルに頼り切らず、自身の魅力によって相手を悩殺するほどの魅了をもったプレイヤーが、極まれに獲得することが可能な称号。
この称号が付くと種族問わず異性に対しての特攻が常時攻撃乗せることが可能になる。
また、『魅了状態・邪』を付ける確率が付与される。

―――

 前者はまだ良いが、問題は後者。
 こんなものが、男である自分について良いのか…せめて、『傾国の女神』だとかまだかろうじて飲めそうな称号名にして欲しかったところである。

「あー、それは無理だと思うのデース」
「なんでさ」
「神系スキル所有者の中に、そのスキル名を持っているプレイヤーがいると聞くのデース。称号はなるべく、スキルと被らないような名称になるようなので、つけられなかったと思うのデース」

 既にいるのか、傾国の女神。
 いるのならば、何をしでかせば、そのようなスキルを獲得できるのかと思ったが、気にしたら負けであろう。

 こういう厄介そうなのは、合わないのが吉というもの…なんとなく、黒き女神のスキルを持つせいなのか、少しばかり反発するような気持ちがわかないでもない。


 とにもかくにも、気持ちを切り替えたほうが良さそうだ。
 危機は去った、悪しき欲望は爆破されて、宇宙の塵と化した、その結果だけで十分ではないか。

「それにしても、すぐに女神状態を解除した上に…何なのデース、その装備!!ビキニアーマー状態なら面白かったのに、何で!!」


 ちょっとばかり怒っている様子のティラリアさんだが、その声に従う意味はない。
 正直言って、女神2柱のビキニアーマー姿になった時点で、色々と限界だったので…籠りたくなったのである。

【こんなこともあろうかと、用意しておいたゆるっとアーマーシリーズと呼ばれる、特殊な装備品デス。私の姉妹の中の一人が、ある主様と一緒にブランドを立ち上げたようで、その試供品として提供してもらった代物なのデス】
「ロロさんのその解説はいらないのデース!!ミーだってそのシリーズは知っているのデースが、何故よりによってその着ぐるみなのデース!!ミーの苦手なーーーーーー」














…どこかの女帝が珍しく、本人の苦手なものを告げていたそのころ。
現実世界の一室では、こちらはこちらで修羅場のような光景になっていた。

いや、違う。修羅場が過ぎ去ったような、惨状と言うべきなのか、それとも…

「おっ、おっ…おっつふぅ…」
「あばば…ぶぅ」

「…周囲がまき散らされた赤いもので、事件現場位しか見えぬのじゃが」
「全員、留守の間に強盗でも入った…わけでもないわよね?」
「うわぁ、全員失血死寸前だ…:

 室内でそうつぶやくのは、アティにミートンの奥さんに、その孫娘。
 そして目の前に広がっているのは、それぞれの縁者とも今はもう死者にもなりかけているような大惨事の状態になっている者たち。

 オンライン世界での影響が強烈過ぎたゆえか、現実世界の肉体の方も色々と振り切れたらしく、こうして殺人現場もここまでやらないよというな、大惨状の場になっているのである。


「あ、通知が…何かしでかしたようで、アカウントしばらく凍結に近い処理されるようじゃな」
「え、なにをしたのこの人たち」
「明らかに、相当踏み入ってはいけない線を越えたようだし…お仕置きしたほうが良いのだろうけれども、まずは人語をまともに話せるようになるまで、待ったほうが良いかも」

 いったい何をどうしたら、自分たちが留守の間にここまでの惨劇を生み出せるのかは理解できない。
 しかし、一つ言えるとすれば、彼らの欲望の暴走が引き起こしたものであり、自業自得な末路になっているともいえるだろう。

「とりあえず、運営のほうに情報の確認と、状況資料の要請と…帰宅して早々、仕事を増やすかのぅ…」
「今度やらかしたら、まとめてぶった切ると脅しておいたはずだけど…ここはもう、意識がしっかりとある状態で引きちぎったほうがいいのかしらね」
「何を、とは言わないけど、それでもそこから自己再生をしそうなのが…」
「「…」」

 その言葉に、どういう光景か想像できてしまう。
 並の人間ならばそんなことは絶対にできないだろうが…欲望がわきだす泉ともいえる彼らであれば、不可能ではないかもしれないと思えてしまうからだ。」

 ひとまずはこの赤い部屋をどうにかしなければいけないので、流石に自力では厳しいため、業者を呼ぶことにしたのであった…




…1時間後に到着した業者が惨状を見て、想像を超えるヤバさに腰を抜かしたのは言うまでもない。

しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

処理中です...