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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-91 無限の燃料の一つ

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…アルケディア・オンラインにおいて、魔導船という道具がある。

 あちこちを移動するための乗り物として、実装されて以来、様々な場面でプレイヤーたちは利用しまくり、その利便性を理解しているだろう。

 可能であれば、現実の世界にも欲しくはなるが…残念ながら、そううまいことはいかない。

 オンラインの、ゲームの世界だからこそあり得る金属やその他の部品で構成されたエンジンは、そうたやすく現実で作成することはできない。
 
 強化するために使用人にお願いしたりもするが、その技術を人は再現しきれない。

 それゆえに、一部の例外を除けば、大抵の場合強化するために、その手の専門職の人に力を借りて、改造を施したりするのだが…その船は、また変わった改造を施されていた。




 何を糧に、動くのか。
 石炭、石油、ガソリン、MP、特殊鉱石に次元からくみ上げたエネルギー…等々、様々なものを使い、動く魔導船のエンジン。

 そこに一つの魔改造が施された結果…その燃料は、時としてモノに限らないものが使える時もある。

 そう、例えば…無限にわきだすような、人の欲望を糧にして…




ドォォォォォォォォォウ!!

 凄まじい勢いいで、無数の砲撃をかわし、先へ向かう一隻の魔導船。 

 極限まで速度と回避性能だけを引き上げられた結果、並のエンジンでは満足できる性能ではなくなってしまったため、搭載されたそのエンジンが燃やすのは…

「うぉぉぉぉぉぉ!!なんとしても、ここを突破して、拝みに行くぞぉぉぉ!!」
「ほんのわずかな情報筋から得ることができた、女神様のビキニアーマーの可能性!!」
「それを見るために、目に焼き移すために!!」
「この欲望は燃え尽きぬ炎で動かすのだぁぁ!!」


…そう、あまりもろくでもなさすぎるが、無限の欲望を持っているのではないかとさえ噂される、欲望戦隊の欲望である。
 わきだし続ける欲望を常に注がれつつ、燃焼して稼働しているわけなのだが、その出力は欲望が高まれば高まるほど向上し、今まさに、オンライン世界でも2、3位を争う速度と機動力を有しているだろう。

 永遠の1位にはかなわぬが…それでもこの瞬間だけは、グレイ号の最大出力すらも凌駕するほどである。


 そんなエンジンが唸り声をあげて暴走しまくっている欲望戦隊が、なぜそこまで欲望を燃やせるのか。

 単純明快、彼らはただ、見たいのだ。


 先日の宴の中で、聞いてしまった黒き女神のビキニアーマーの話。
 可能であればその姿を拝みたいと思ったのだが、いかんせん情報統制がかなりかかっていたのか、情報がほぼ手に入らない。

 ワープの追跡を試みても、そこまで感度の良いセンサーもなく、かといって帝国へ乗り込んで探ろうにも、欲望戦隊の欲望の強さは知れ渡っており、要注意人物として警戒され、情報が手に入らないのは目に見えていた。


…しかし、それでも欲望は運命すら捻じ曲げるのか、とある偶然から座標を手に入れ、そこで今、黒き目外がビキニアーマーを着るだろうということを、確認した。


 あとはそのまま欲望が大噴出し、大暴走させた結果…何万もの大群であるはずの軍勢すらも潜り抜け、どんどん目的地へ迫っていた。


 なお、欲望戦隊の抑止力と言って良いようなマッチョンやアティ、ミートンの奥さんやその娘に関しては、何の因果ゆえか、本日は不在。
 それぞれ少々手が離せない用事が出来ており…結果として、誰も止めるものがいなくなった今、欲望が濁流のごとく流れ出し、この暴走を引き起こしたのであった。


 宇宙空間であるはずなのに華麗なドリフトさばきも見せ、バレルロールで突撃してくる小型船すらも回避し、最低限の武装であるビームショットガンでミサイルを爆破させて直撃を避ける。

 絶対に、欲望の出し先が間違えまくっているだろと、明らかにもっと別の道へ進んだほうが世のため人のためになるようなパワーを出すが、それもこれも彼らの欲望が燃え上がるため。

「むっ!!前方に敵旗艦を確認!!」
「ここで自ら最後の盾となって防ぐ気なのだろうが…あまいわぁぁ!!カックウ、スッケン、オーバーブースターを作動させ、バリアを前面部へ集中させろ!!」
「「合点!!」」

 もはやエンジンが爆発するのではないかと思うほど、欲望を垂れ流し、燃焼させていく欲望戦隊。
 その執念やるや、鬼気迫るほどで…








「…うわぁ、大体の予想がついていたけど、改めてカメラで確認すると…凄まじいな、やつら」
『HAHAHAHAHA!!まさかそんな欲望で、ミーのせっかく作った恐竜たちの軍勢が突破されそうになるとは、笑うしかなくなるのデース!!』

 グレイ号に乗船し、上部スクリーンで映し出されたその光景を見て、思わずそんな感想をこぼすハル。
 別の船に乗って通信で閲覧して、笑い声をあげているティラリアだが…その表情は、完全に笑っているものではなく、どこかあきれ果てまくったものを感じさせられるだろう。


【ひとまず、奴らの目的は主様の…黒き女神のビキニアーマー姿目当てのようデス】
「そんなくだらない理由で、あの軍勢を突破するのかよ…」

 ここまでのガッチガチの防衛体制にも驚かされたが、それを通過しようとしている欲望戦隊の欲望の怖さには畏怖すらも覚えるだろう。

 しかしながら、これまで積み重ねまくってきた実績があるせいで、ありえないことではないとも思ってしまう。

「それに、もしも仮にその目的だけだとして、見せて帰ってくれるなら良いけど…絶対にそれだけでは済まないような気がするんだよなぁ」

 悲しいかな、彼らの欲望の素直さには、ある種の信頼もあり、だからこそどれほどのやばさがあるのかというのも少々垣間見えてしまうだろう。

 これ以上犠牲を出さないためにも、ビキニアーマーを着た黒き女神の姿で前に出れば良いだけの話もするが…そんなもの、他人に見せたくはない。
 かとって、ここで普通に着替えてさっさと帰ってしまっては…宇宙のもくずと化してしまった防衛ラインを守り抜いていた者たちには申し訳ないことになる。


「いっそ、奴らが一発で帰還してくれるようなことでもできればなぁ…こういう時に限って、抑止力の面々が用事で出られないのは何の悪い冗談だと思いたいよ」

 欲望を押しとどめられるはずのストッパーたちはおらず、その欲望は加速していく。
 太陽よりも熱く、光よりも速く、深淵よりも深い深い欲望は、よりヒートアップするのだ。

『まぁ、確かにそうれもそうデース。できれば素直にお引き取り願いたいのデースが、黒き女神がただビキニアーマーを着こんだ姿だけを見せても、もう止まりそうにもなさそうデース』
「もっと強いショックでもあればな…」
『そうデースね、一発で回れ右をしてくれるような、欲望の梅方でもあれば良さそうデースが…あ、いや、待つのデース?たしか、彼らの好みを考えると…ふむ、良い案を思いついたのデース』
「え?」

 何か思いついたのか、ポンっと手を打ってそう口にするティラリア。
 あそこまで過剰燃焼している欲望の塊共を、どうにかできるのだろうか。

『そのためには、女神の協力が必要デース…以前使われた、アレをちょっと変えてやってほしいのデース』
「アレ?…あー…いや、確かにその手が…使えても嫌だなぁ」

 どういうことなのか、内容を軽く説明してもらい…ハルは嫌そうな顔をする。

 しかし、このまま放置もできないということで、渋々やるしかなさそうであった…



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