アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
上 下
680 / 718
Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-90 見ている者はいるのデス

しおりを挟む
【…まぁ、予想できていたことなのデス】
『レーダーにも、ばっちりとらえているけれども…相当ヤバい状況になっているようですネ』

…港にて、錨を下ろし停船中のグレイ号、その艦橋内部。

上部モニターに映し出された、このはるか上空の宇宙空間での映像を見てつぶやいたロロに対して、グレイ号もそう答える。

彼女たちは、わかっていた。
グレイ号に備え付けられた特殊レーダーによって、捉えた影を。

上空で待機して守りを固めていた恐竜兵たちの動きも見ていたが…いかんせん、相手が悪かったようだ。

【指揮や装備に設備、その他系統も悪くはないのですが…いかんせん、欲望をたぎらせたものへの対処が、まだまだ甘いとしかいようが無いですネ】
『人のことは言えないが…うん、同情するヨ』

 上空には、実は他に先日の騒動からようやく修理を終えた3番艦や4番艦なども待機しており、詳細な情報がそこからより収集できているのだが、戦況は思わしくないようだ。

 欲望をマグマのように煮えたぎらせ、遂に噴出させた活火山のようなものの強さというのは、どれほど厄介なものなのか理解できるだろうが…その強さだけで、何十万の大群を相手にできている事実にも、呆れどころか感嘆すら抱いてしまうほどであろう。



 とはいえ、何もせずに見ているだけでは意味がない。
 下手をすれば、自分たちの主であるハルに対しての危害…例え、彼らが物理的に傷つける気持ちが無くとも、被害を及ぼす可能性だって十分に考えられる。

 そこで密かに、データの収集速度を速めさせたり、それとなく電気信号の活性化による思考能力の外部干渉による向上や、微量のナノマシン散布による性能向上などの手助けを行っていたのだが…それでも、奴らには通用しきらないようだ。

 下に恐ろしきは、人の欲望かな。

 グレイ号もロロも造られた存在であり、一応は感情を持つが…それでも、生者の欲望の底知れぬものには、恐ろしさも感じるだろう。


【…主様へ、ひとまずデータを転送。この状況を聞いて、どのような判断をされるのかは大体予測できますが…主様も絶対に思いますよね】
『こういう執念、本気で怖イ。人であろうとモノであろうと神であろうとも、やろうとするだけの力というのは侮れないシ…』
【それは本当にそうですヨネ】

 だが、それでも命じられれば動くしかないだろう。
 例えどれほどのやばい相手だとしても、こちらとて引き下がれぬのであれば、やるしかない。


【…と、GOサインが出ました。どうやら、動くことにされたようデス】
『それならば、動きましょウ。エンジン始動、発艦準備!!』

 考えている間にハルからの指示が飛び、船は動き出す。

 補助エンジンからの動力を伝達させて、メインエンジンを稼働し…いつでも全力で戦えるように準備を整える。

【主様たちが乗船後、直ぐに戦闘海域へ入れるように小ワープ準備。予定座標軸をセット】
『全力で、果たしてどれほどやれるか…女神の姿で使われていなかった、あの戦いに参戦できていなかった雪辱を、晴らせたら一番良いのですガ』
【身バレ防止のために、使用されなかったのを少し気にしているようですネ…まぁ、先日の戦いのダメージも十分に癒え、なおかつ改良を今もなお施し強化された力を、お見せするいい機会デス】

 グレイ号自身、既にロロの手による魔改造は、あきらめの境地に達しているので何も言わない。
 他姉妹艦も修理ついでにその毒牙にかかってしまったが、諦めろとしか言いようがない。


 そんなことは間違っても口には出すまいと心に刻みつつ、出航の準備を行うのであった…



『…ところで、メインエンジンの具合が修理後から、妙に変なのですガ、何かしましたカ?』
【エ?バイパス周りの強化改造は施しましたが、修理以外でエンジン自体には何もしてないですヨ。何か、具合が悪いのでしょうカ?】
『悪くは無いですが、何かこう、抜けているような…』


しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...