アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波

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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-76 お祭り騒ぎはどこにでもある

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「さてさて、宴に参加している諸君!!そろそろ一つのメインイベントだ!!」
「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」

 ステージ上で、拡声器無しで大声で響き渡らせるマッスルバーンの声に対して、答える客たち。

 レイドボス勝利祝いの宴もそろそろ終盤に差し掛かろうとしている中で、行われるメインイベント。

 その横にいる中三病さん…今回のレイドバトルで一番良いところをかっさらったプレイヤーが何を手に入れたのか、興味を持っている人が多いのだろう。


「さぁ、中三病氏よ、それを見せたまえ!!」
「おおぅ!!」

 マッスルバーンの掛け声に乗りよく答え、中三病が取り出したのは、レイドボスから手に入れた戦利品。
 どうやらトドメの一撃を刺した人物に与えられた代物。

 出したるは、巨大なひまわりの種…しかし、よくあるような黒と白の縞模様ではない。


 ギラギラと照りつける太陽のような輝きと、塗りつぶした墨汁のような真っ黒な線が引かれた、ちょっと変わった種だった。

「これはどういうものだ?レイドボスが種をまき散らし、モンスターにしていたのはあったが…それと同じような類なのか?」
「いや、違う。こいつは単純に、レイドボスの種が手に入ったのではなく…神系スキルをもつプレイヤーの眷属と同等、いや、扱い方によってはそれ以上の強さを持つという『グランドサンフラワー』というものを召喚できる道具だ!!」
「ほう?使い切りとかではなくか?」
「そのとおり!!一度使えば再使用までのインターバルはあるようだが、それでもあの、レイドボスに負けず劣らずの強力な仲間を呼び出せるらしい!!制限時間は3分というウルトラな仕様だが、それでも相当なものになるだろう!!」

―――
『グランドサンフラワーシード』
全てのMPを消費する代わりに、グランドサンフラワーを味方として呼び出せる、特別な種。
この種自身が発芽するのではなく、別の場所にいるものを呼び寄せ、使役が可能。
強大な力を持つため、3分間しか呼び出せないが…
――――

「…そう、普通の戦闘ならば。しかし、こいつはちょっと特殊で、レイドボスクラスのような物が相手ならば、顕現時間に一時的に制限がなくなる。その代り、ガンガン他のステータスを消費するらしいが…それでも、いざという時の切り札として大きく役立つだろう!!」

 レイドボスがそう何度もあるわけではないが、それでもいざという時にプレイヤーたちにとって、かなり大きな対抗手段として使えるようになったのは非常に大きい。
 毎回ああいう無茶苦茶なボス相手では中々難しいところもあるが、だからこそ一種の救済装置のような物があるというのは助けになるだろう。

 バランス調整によってナーフされる可能性もあるだろうが…それでもかなり強力なものを手に入れた。


 一人のプレイヤーのものとはいえ、今後のオンラインでのイベントにおいて、全プレイヤーにとってかなり救いの手ともなる、強力な手札。
 なおかつ、中三病であれば、あの女帝に対する切り札としても役立つだろう。


 なんとなく、その女帝に対しても制限なしの部類に入る気がするが…そう思わせるほどの相手という時点で、それはそれでどうなのだろうか。


「でもまずは、実際にどういうものか見たいぞー!!」
「良いだろう!!今はお試しでやってみよぉう!!」
「「「いえぇぇぇい!!」」」

 叫びに呼応し、答え、その言葉に湧き上がる者たち。
 宴の場ということもあってか、その場のノリはかなり強そうではある。

 戦闘はここではなさそうなので、見せるだけなのがもったいないような…なんだろうか、この少しいたずらしたくなるような気持は。

 うん、決して苦労したレイド戦で、滅茶苦茶美味しいところを取られたとかいう理由ではない。
 
 単純にこれは、そう…


―――女神の気まぐれだ。

「ん?どうしたの、ハル?ちょっと悪そうな顔をして」
「え?あ、いやなんでもないよ。なんか、そんな顔していた?」
「うーん、気のせいなら良いけど…」

 ふと、ミーちゃんの問いかけに対して取り繕ったが、何となく感じた今のは何だろうか。
 ちょっと疑問に思ったが、気にしないほうが良いか。

「でも、あのまま見せるだけというのも、もったいないかな。個人的にはこう、戦う姿も見てみたいけど…」
「聞いた感じだと、眷属並とかいうからね。ボスバトルに使えそうだし、生半可な相手は厳しいかも」
「それもそうか。まぁ、眷属との戦闘も見たいけど、そう都合のいい奴なんて…いけるか?」

…なんとなく、思いついてしまった小さな悪だくみ。
 いつもいつも何かと理不尽な目に遭っていることが多かったが…こういう時ぐらい、ちょっとは自分からやってみるのも悪くはないかもしれない。

 バレないようにそっと離れて…少しばかりは、やってみるとしようか…ふふ…
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